プロセスマイニングツールが、自社のどんな課題解決に向いているのか。
先日UiPathがドイツのプロセスマイニング大手、Celonis(セロニス)と連携した「RPAスカウトサービス」の開始を発表するなど、盛り上がりを見せているプロセスマイニング。「興味はあるけど、まだ今ひとつわからない」と思っていませんか?
前回の取材では、プロセスマイニングを取り巻く市場環境と、プロセスマイニングツールの「myinvenio」と操作ログの収集に強い「CICERO」の組み合わせでどんなことが可能になるのかについてお伝えしました。
今回の取材では、ハートコア株式会社 DX事業本部/本部長 三宅立悟さんに、プロセスマイニングツールがどんな課題解決に向いていて、どう使われているのかについて聞いてきました。
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プロセスマイニングツールのニーズとは?
–「myinvenio」と「CICERO」を組み合わせたプロセスマイニング(以下、プロセスマイニングツール)について、どのようなお問い合わせがきていますか?
「働き方改革に向けてRPAの導入をして頑張っているけれども、なかなか結果が出なくて、ボトルネックがどこにあるか可視化したい」という問い合わせが多いですね。
RPAは作業効率を上げるスゴい製品ですが、個人PCの業務効率を上げるものなので、他の人と連携している業務フローの場合には、全体としてどういった業務をしているのかわからず、ブラックボックスが発生しています。つまり、RPA単体では解決できない課題解決のために、プロセスマイニングツールに興味を持ってくださっているようです。
—RPAを導入した後で、組織的な業務プロセスの把握も重要だったと感じていると言うことでしょうか?
そうですね。果たして組織全体が最適化されたのかわからないとか、効果測定をどうしたらよいのかわからないといった課題も多いようです。業務自動化から始めたけど、遡って現状把握・業務全体の把握から始めるべきとお客様がお気づきになってきているように思います。
そもそも業務全体が見えてなくてよいのかという課題が大きくなってきた時に、プロセスマイニングツールというソリューションが出てきたので、関心を持って頂いたということかなと思っています。
大手ソフトウェアの課題解決策にも
—RPA以外で、お客様が興味を持っているのはどのような点でしょうか?
SAPとかオラクルとかERP製品などのアプリケーションが、業務効率化に便利だということで導入するのですが、導入した後で社内の業務フローにあっていないという課題に気づき、トラブルになったり、カスタマイズしたものを作り直すとか、違う製品を入れ直すといったケースが発生しています。
そういった課題に悩まれている場合、業務プロセスの可視化とソフトウェアの導入を1セットにして解決したいというご要望が出てきています。
先日、セールスフォースがタブローを買収しましたが、これまでのように製品単体の利用を促すパターンではなく、今後はソフトウェアの品質を上げるために、データを分析して解決する製品がオプションで付いてくるようなパターンが増えてくるのではないかと思っています。
–どのような業界の方が、プロセスマイニングツールに興味を持っているのでしょうか?
金融や保険。それから、製造業ですね。
金融や保険業界などは、コンプライアンスが厳しいので、逸脱したプロセスが発生すると問題になってしまう可能性があります。それを防ぐために、1つ1つのプロセス可視化できるプロセスマイニングツールに期待されていますね。
生産システムで言うと、例えば、審査工程を通らねばいけないのに、通っていないプロセスがあるとリコールが起きる可能性があります。プロセスマイニングツールを利用すると、そういった逸脱プロセスをリアルタイムで発見して防ぐことができるので、期待されています。
–コンプライアンスのチェックはどのように行うのでしょうか?
原則は、頂いたTo-beプロセスを挿入して、操作ログから現状のAs-isプロセスと比較して逸脱したプロセスをチェックするやり方をとります。
ただ、myInvenioには、システム側でTo-beプロセスを提案する機能もあります。
システムがTo-beプロセスを提案するケースでは、イベントログを解析して、システム側でこれが優れたプロセスだというプロセス(ハッピープロセス)を導き出して、それをTo-beプロセスとみなして現状のAs-isプロセスから逸脱しているかをチェックします。
プロセスマイニングツールを取り巻く状況と可能性
–現在、課題に感じていることはありますか?
プロセスマイニングツールの事例は、海外が多く、国内はまだまだ少ないのが課題です。
1つ目の理由としては、情報不足です。まだまだ国内では新しい技術なので、システムログからリアルタイムにボトルネックを見つける方法をそもそも知らない事業者さんが多いです。もう1つの理由として、文化の違いです。海外では業務プロセスの把握や改善をするために、システムを利用して解決する方法が普及しているのに対し、日本では社員やコンサルタントなどのマンパワーを利用して解決する方法が常識となっています。そのため、日本国内の企業は、システムを利用して業務プロセスを把握・改善する体験が少ないように感じます。
ちなみに、オランダの大学では、プロセスマイニングの講義があるくらい普及しているんですよ。
—マンパワーで業務プロセスを把握する方法には、どのような問題がありますか?
先ほど説明した逸脱したプロセスの発見の例で言えば、人間が業務プロセスを把握しようとすると、毎日発生している業務は拾えるのですが、たまに発生しているようなイレギュラー処理を見落としてしまうケースもあります。
こういった見落としによって、導入したソフトウェアが合わないなどの問題が発生することがあります。
我々は、マンパワーを否定する考えではなく、マンパワーで行う業務プロセスの解析・改善にかかる高負荷な部分をシステム導入で解決したいと考えていますので、業務設計をされているコンサルティング会社さんやシステムベンダーさんと相性が良いと思っています。
例えば、プロセスマイニングツールでは、レガシーなシステムのリードタイムを取って、新しいシステムを導入した場合に効率化されるリードタイムの正確な数値予測をすることが可能です。
システム開発やERPの導入前に、古いシステムの課題発見と新しいシステムの導入効果の予測が立てられるので、コンサルティング会社さんやシステムベンダーさんの提案精度を上げるお手伝いができます。
–プロセスマイニングツールの本質的な価値は、どのような点にあるとお考えですか?
データサイエンティストがデータロボのようなAIのASPを使って、売り上げ予測や製品動向を予測するアウトプットを作りますが、実は、AIが立てたKPIをもとに目標を立てても、バックヤードの業務が変わらないとAIが求めた結果がでないんです。
つまり、いくらAIが素晴らしくても、AIの目標値と人間の業務改善のバランスが取れてないとダメだということです。
よくあるのが「AIで分析したところこのような予測になるから」と経営層から現場の担当者に伝えるんですが、どの体制でどのように業務を行うと、この目標値を達成するのかについては、現場が考えるパターンです。
現場からしてみると、これまで属人的にやってきたので、何をどう改善して良いのかわからず、業務コンサルタントに依頼するということがあります。そして、業務プロセスの把握に6ヶ月、導入後の効果測定に6ヶ月もかかって、経営目標の結果が明確になるのが1年先。一期終わってしまうというのが今までよくあったケースです。
–後編ではプロセスマイニングの操作画面を見ながらご説明いただきます。
後編に続く↓
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