近年、働き方改革の風潮が強まるにつれて、RPAなどの業務自動化・効率化ツールへの注目が高まっています。RPAという用語を耳にする機会は増えたものの曖昧な認識で留まっており、必要とされている背景や他ツールとの違い、対象業務を理解している方は少ないのが現状です。
本記事では、RPA導入を検討している担当者の方々に正しい情報を届けることを目的とし、基本的なRPAの概要や導入方法などをお伝えします。各項目で、より深く説明している他記事も併せて紹介するので、業務自動化のためのRPA活用の完全版としてお役立てください。
RPAとは
RPAとは、「Robotic Process Automation」の略称です。ソフトウェアによるロボット化でホワイトカラーの仕事を効率化する業務自動化技術、またはその業務自動化ツールやソフトウェアロボットそのものを意味します。
ロボットといっても人型のロボットではなく、パソコン内やサーバー内で働くソフトウェアがRPAです。18世紀半ば~19世紀ごろには職人(ブルーカラー)が手作業で行っていた業務が産業機械(ロボット)により代替されたように、現代ではRPAのような新たなテクノロジーがホワイトカラーの業務を代替し生産性の向上をもたらしています。
RPAが必要な背景
RPAの注目度が高まっている背景には2つの社会的背景があります。
①:生産年齢人口減による労働力不足
生産年齢人口とは15歳〜64歳の人口を指し、グラフ内ではピンクで表示されている部分です。生産年齢人口の減少は14歳以下人口の減少(少子化)や65歳以上人口の増加(高齢化)に並んで深刻な問題となっています。
この分析結果に対して総務省は以下のようにコメントしています。
少子高齢化やこれに伴う人口減少は、我が国経済の供給面と需要面の双方に負の影響を与え、我が国の中長期的な経済成長を阻害する可能性がある。
人口減少下において経済を持続的に成長させるためには、労働参画の拡大のほか、教育・人材育成の充実による労働の質の向上等を通じイノベーションを促進し、生産性を上昇させることが重要である。引用:総務省|平成29年版 情報通信白書|期待される労働市場の底上げ (soumu.go.jp)
②:働き方改革の推進
生産年齢人口の減少が各企業での慢性的な人手不足を招くのは言うまでもありません。そこに更なる課題としてのしかかっているのが働き方改革の存在です。
長時間労働が美徳とされていた時代が過ぎ、過労死や違法な長時間労働が問題視されてからは様々な法律が制定、施行され、1人当たりの労働時間を増やして人手不足を凌ぐことは仕組み上不可能になりました。一度劣悪な労働環境を摘発されてしまえば、採用に悪影響を与え、更に人材不足が深刻化するという負のスパイラルも発生しています。
国の状況として人員確保に期待できず、更に労働時間も増やせない中で、事業を継続・拡大するためには誰に任せてもいいような定型業務を時間制約のないロボットたちに任せ、人間は生産的な業務に集中する必要があるのです。
AIとの違い
RPAとよく混合されるものとしてAI(Artificial Intelligence)が挙げられます。これらは組み合わせて使われることはあるものの、全く異なるツールです。
AIは膨大なデータに基づき、判断を下す技術やシステムです。「人工知能」という和名の通り、人間でいう「頭脳」を代替する存在であり、自律的に意思決定をするのが特徴です。
一方で、RPAは人間が指定した動作を自動で再現するシステムです。AIのように自ら判断を行うわけではなく、一連の作業を人間が設定したルールに則って行います。AIが頭脳を代替する存在であれば、RPAは「手」や「筋肉」を代替する存在と言えるでしょう。
このように自動化担当業務や特徴が異なり、それに伴って導入難易度にも差が生じます。手元の業務を自動化したいのであれば、まずはAIを搭載していないRPA単体で動くツールがおすすめです。
RPAのメリット・デメリット
RPAのメリット・デメリットを紹介していきます。定型業務から人間を解放し、生産性の高い業務に集中させてくれる画期的なツールであっても、デメリットは存在します。しかしながら、それをデメリットと捉えるかは受け手次第なので、どういったものが存在し、自分は当てはまるのかお確かめください。
RPAのデメリット①:継続的な管理の必要性
「導入部分」に重きを置いている人に注意していただきたいデメリットです。RPAは導入・開発して終わりではなく、導入後も継続的に管理が必要です。AIとの違いで前述したように、RPAツールは能動的に業務を改善するツールではないため、使用しているExcelのシートの変更や連携しているシステムの更新などがあれば、人間がロボットを修正する必要があります。
こうした修正を行わずに使わなくなった(使えなくなった)ロボットは野良ロボットと化し、不要な動作や処理を行なってトラブルを引き起こしてしまいます。
野良ロボットの発生は仕様変更以外にも担当者が不在になった場合に起こり得ます。予算に余裕がある際、ロボットの外注も視野に入れる企業が多くありますが、社内にRPAの管理ができる人間がいない、もしくはRPAの唯一の担当者が異動・退職してしまった場合にも野良ロボットを生み出してしまう可能性が高いので、開発時から意識して継続的に管理できる体制を整える必要があります。
RPAのデメリット②:費用対効果
RPA導入には様々な費用が必要です。導入前には既存業務の洗い出し、対象業務の選定、RPAの動作確認など準備段階から発生する人件費、RPAの運用方法や開発方法を学ぶ研修費、RPAツール自体も高額なものが多く、年間数十万を要します。
「これらの支出も長期的に見ればRPAで回収できる」というのは確かでしょうか。業務改善・自動化のための手段はRPAだけではありません。範囲がOfficeアプリ内だけで留まるのであればマクロ・VBAの方が安価で済ませられますし、そもそも自動化しようとしている業務自体不必要で、その工程をなくしてしまった方が自動化よりもよっぽど効率的という場合もあります。
「とりあえずRPA」「RPA=業務改善」という考えを捨てて、費用対効果を慎重に考えてみてください。
RPAのメリット①:人的コストの削減
1番のメリットは人件費を削減できることです。複数人で多くの時間をかけて行なっていた定型作業も、RPAの管理を担当する人のみを残してロボットで代替できます。
ロボットなら残業代や深夜手当を支払わずに24時間稼働させることも出来るので、業務のスピードを向上させながら大幅に人件費を削減できます。
RPAのメリット②:ヒューマンエラーの防止
長時間労働をしても疲れない、注意力が散漫にならない、集中力が途切れないのがロボットの特徴です。RPAを導入することでヒューマンエラーを無くし、作業の精度を向上させることができます。
RPAのメリット③:従業員満足度の向上
膨大な単純作業に追われている社員に心当たりはありませんか。その人は果たしてその業務がやりたくて入社したのでしょうか。
RPAは業務を代替しますが、全ての業務を担えるわけではありません。営業や企画などの非定型業務は人間にしかできない仕事です。定型かつ単純な業務をRPAに任せることによって、人間はこれらの創造性の高い業務に専念することができます。
RPAが業務を自動化するツールだと知ると、自分の行なっている仕事を奪われてしまうのではないかと心配する人がいますが、そういった場合は分業のイメージを抱いてください。定型部分(作業)をRPAが担当し、それを人間が非定型部分(仕事)に活用するといった相乗効果を意識すると、奪われるという誤った認識が取り除かれるはずです。
メリット |
デメリット |
コスト削減 ヒューマンエラーの防止 従業員満足度向上 |
継続的な管理の必要性 高額な導入費用が費用対効果に見合わない可能性 |
RPAの導入ステップ
RPAのイメージを掴んでいただいたところで、具体的な導入方法の説明に移っていきます。ここではRPAの導入手順について留意点と合わせてお伝えします。
導入ステップ①:既存業務の洗い出し
まずやるべきことは既存業務を見直すことです。普段何気なく行なっている業務内容を洗い出して、全体像を把握しましょう。RPAを意識し過ぎずにこの過程を行うことで、自動化以前に無くすべき業務や非効率な業務に気づくことができます。
現場の社員にヒアリングを行うのも有効です。その中で「データ入力などの単純業務が大部分を占めている」「定型業務の繰り返しでモチベーションが下がっている」などの課題が見つかればRPAの出番と言えます。
導入ステップ②:導入目的の設定
RPAの導入目的を設定し、それに沿って目標を決めましょう。明確な導入目的を持たずに流行っているからとRPAを導入してしまうのはよくある失敗の原因です。ステップ①で見つけた課題をもとに納得感のある目的を設定しましょう。
目的を明確にした後はそれを現場社員と共有しましょう。導入後にRPAを活用するのは現場社員です。聞き慣れないツールの導入を歓迎し、円滑に進めてもらうためにも現場社員に導入目的を理解してもらう必要があります。
導入ステップ③:RPA対象業務の選定
RPAの特性を理解して課題から浮かび上がった「自動化したい業務」から「自動化すべき業務」を抽出しましょう。RPAに向いている業務は大きく分けて次の3つの特徴を満たすものです。
- PCで作業する業務
- エクセルから業務システムへの入力などの簡単なデータ入力
- 平準化された業務
- 定型業務のように人や状況に左右されず、業務フローが決まっている業務
- 反復する業務
- 請求書作成メール送信、注文書のシステム入力など繰り返し行われる業務
RPAの自動化に向いている業務と向いていない業務をさらに詳しく確認する場合は以下の記事をご覧ください。
RPA導入の失敗原因についてはこちら
導入ステップ④:定性的・定量的な目標設定
目的と目標は異なります。目的に続き、目標を具体的に定めることで、逆算して今すべきことを割り出したり、プロジェクトの進捗を確認することが出来ます。
定性的な観点と定量的な観点を併せ持ち、明確な目標を設定しましょう。
導入ステップ⑤:RPAツールの選定
一言でRPAといってもツールによってさまざまな違いがあります。対象業務や組織の状態に適したRPAツールを選択しましょう。
例えば、現場主導で導入を進めたい場合、操作の簡易さが重要な決め手になってきます。この場合はプログラミングコードを挿入してより複雑な操作ができるツールよりも、直感的な操作性を売りにしたツールを選択するのが良いでしょう。
導入後に利用するであろう研修サービスや開発支援サービスも対象RPAツールを指定している場合が多いので、ツール選定の際にサポートの充実度も検討材料の1つにしてもいいかもしれません。
導入ステップ⑥:導入開始
ついに導入を開始するわけですが、この段階で気をつけてほしいことは、最初から大きな成功を目指さないことです。RPA導入成功のカギはスモールスタートだとよく言われます。
まずはテスト運用も兼ねて、小規模で開発の難易度の低いものから自動化を進めていきましょう。この際に無料RPAツールを使って効果測定を行うのもおすすめです。無料RPAツールは以下の記事で紹介しているので是非ご参照ください。
RPAの開発方法
導入の次はロボットの開発です。開発には「自社開発」と「外部委託」の2種類があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。整理してどちらが自社に向いているか検討していきましょう。
自社開発のメリット
メリット①:開発コストが抑えられる
社内の人材を活用するため、外部のベンダーに依頼するよりも費用を抑えられます。ただしコストが一切かからないわけではなく、トレーニングプログラム等を受ける場合は別途費用が必要になります。
メリット②:社内人材をベースに開発できる
一度開発を社内で行うと、そのノウハウを社内に蓄積し、次のロボット開発に役立てることができます。
更に、元々その業務を担当していた人がRPA開発に取り組むことになるため、認識のズレが生じることなく現場視点を取り入れた最適なロボットを作成することができます。
メリット③:迅速かつ柔軟に対応できる
外部エンジニアとの連携が不要な分、ロボット開発にスピードをもって着手できる点も特徴です。自動化対象の業務を最も熟知している人が直接開発に関わることで、業務フローを整理・把握する手間が省けます。
また、フローが変更された際すぐに対応できるという特徴もあります。外部エンジニアと逐一連絡を取っていると時間がかかってしまい、ロボットの修正のハードルが上がってしまうでしょう。
自社開発のデメリット
デメリット①:自社の人材の実力以上のことができない
自社開発の場合、開発途中でトラブルや悩みが生じた場合でも、自力で解決する必要があります。専門家の意見やアドバイスがないためスキル習得が容易にできず、実力レベル以上のロボット開発の実現が難しくなってしまいます。
ただし、完全に社内の実力のみで開発するのではなく、RPA専門家の支援を受けながら開発を進めることもできます。この場合は社内の人材のスキルアップが容易になりますが、追加で費用がかかることを押さえておきましょう。
外部委託のメリット
メリット①:精度の高いロボットや開発難易度の高いロボットを作成できる
外部エンジニアはロボット作成の専門家です。そのため、自社開発よりも効率的かつ安定的なロボットを開発できるでしょう。ロボットの精度が高ければエラーが発生する頻度は低くなり、運用開始後の改善の頻度も下がります。
外部委託のデメリット
デメリット①:コストがかかる
自社開発よりもロボットのクオリティが上がる分、費用が高くなってしまうことは避けられません。しかし外部委託の中でも「社内に外部のエンジニアを常駐させる場合」と「必要な時のみ外部に委託する場合」があり、それぞれコストが異なります。自社のRPA導入の規模に合わせて最適なものを選択しましょう。
デメリット②:ブラックボックス化してしまう
外部委託して開発してもらった場合、ロボットの中身について文書を残してもらうこと、納品時に中身について丁寧に説明を受けることが大切です。ロボットがエラーで止まったときに情報共有を受けていないと自分たちで改修することができず、外部の会社に依存することになります。
ブラックボックス化はRPAデメリットの紹介で述べた野良ロボットの原因になってしまうので、継続的に管理できる体制を整えることを意識しましょう。
RPAは専門家に相談しながら自社開発がおすすめ
RPAの開発方法である「自社開発」と「外部委託」を比較してきましたが、どちらの方法が良いのでしょうか。
それぞれの導入規模や環境により異なり、1つの明確な答えを出すことは難しいです。しかし、作成するロボットのクオリティを高めることや企業内にITの知識を蓄えていくことを考慮すると、「RPA専門家に相談しながら、自社開発をする」という選択をおすすめします。RPA専門家が開発者としてではなくコンサルタントとして企業につくケースは多く、確かな知識と経験で、精度の高いロボットを開発しながら社内でITに強い人材を育成することが可能です。
とはいえ、RPAの運用にそこまでコストをかけられない・より高性能で確かなロボットを作成したいといった場合もあります。運用環境をきちんと考慮したうえで、RPAの効果を最大化し、自動化を推進できる道を選択しましょう。
Robo Runnerのご紹介
RPAが注目される背景から導入方法、開発方法まで抑えていただけたでしょうか。もっと詳しく知りたいテーマについては、リンク先の記事をお役立てください。
RPAHACKを運営するPeaceful Morning株式会社でもRPAの運用をサポートするサービス「Robo Runner」を提供しています。
RPA導入に関する基本的な内容を理解し、いざRPAを導入しようと導入前に入念に準備をしていても、実際にRPAを導入してみると想定外の困難に直面する可能性は十分にあります。当社の「Robo Runner」はそうしたRPAに関する「困りごと」をオンラインサポーターが即座に解決するサービスです。
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