少子高齢化で人材不足が見込まれる今、対策として業務効率化を検討している企業が増えています。業務効率化の手段として挙げられるのがRPAとVBAです。RPAとVBAはPCでの作業を自動化し業務の効率化を図れるといった同じ特徴を持っています。しかし、自動化できる範囲など違った点が多くある為、それらを理解し、それぞれに適したシーンによって使い分けることが必要です。
本記事ではRPA・VBAを知らない方や実際にどちらを導入しようか迷っている方に向けて、RPA・VBAの概要からどちらを使うべきなのかを判断する方法、それぞれに適した業務といった応用まで紹介します。
目次
RPAとは
RPAとは、「Robotic Process Automation」の略称で、ソフトウェアによるロボット化でホワイトカラーの仕事を効率化する業務自動化技術、またはその業務自動化ツールやソフトウェアロボットそのものを意味します。
「RPA」という言葉は、グローバルでTOP3のベンダーにRPAソフトウェアベンダーであるBluePrism社が初めて使ったと言われています。
日本語でも「RPA(アールピーエー)」と呼ばれ、「AI→人工知能」のような広く使われる訳語はありません。また、ソフトウェア化されたロボットのことをデジタルレイバー(Digital Labor)と呼ぶこともあります。
ロボットというと、人型のロボットなどを思い浮かべる人がいますが、PC内やサーバー内で動くソフトウェアだと考えてください。
18世紀半ば〜19世紀の産業革命以降、職人(ブルーカラー)が手作業で行なっていた業務が産業機械(ロボット)により代替され生産性が向上してきたように、現代ではRPAを用いたホワイトカラー業務の自動化によって生産性の向上が進んでいます。
▼RPAについて詳しくはこちら▼
VBAとは
VBAとは、「Visual Basic for Applications」の略称で、マイクロソフト Officeアプリケーション専用に作成されたプログラミング言語です。
簡単なプログラミングを行うことができ、長年にわたってExcelやマイクロソフト Officeアプリケーションの手動タスクを、自動化するために使用されてきました。
VBAとセットでマクロがよく挙げられますが、マクロはコンピューターの操作を自動化する機能そのものを指します。
「マクロは簡単、VBAは難しい」と誤解されることがあります。
実際は、「マクロを作成するための手段の1つがVBA」というのが正解です。
RPAとVBAの違いとは
RPAとVBAの違いは、下記の表の通りです。
RPA | VBA | |
対応業務 | 広い | 狭い |
データの処理速度 | 速い | 遅い |
導入難易度 | 高い | 低い |
プログラミングの必要性 | なし | あり |
費用 | 有料 | ※無料 |
非定型業務への対応 | 可能 | 不可能 |
※Microsoft Officeと契約している必要があります。
対応業務
RPA | VBA | |
データの処理速度 | 速い | 遅い |
RPAの中には、特定の業務に特化しているRPAや浅く広く対応しているRPAなど、違う機能を持ったツールが多くあります。
扱うRPAによって仕様が変化するため、念入りな確認が必要です。
それに対し、VBAはマイクロソフトのプログラミング言語なため、マイクロソフトが提供するアプリケーションやブラウザのみにしか使用できません。
制限はありますが、OfficeやEdgeなどのみの業務を効率化したい方にとっては、RPAほど事前確認は必要なく、導入することが出来ます。
【まとめ】
VBA:マイクロソフトが提供している製品のみ対応可能
データの処理速度
RPA | VBA | |
データの処理速度 | 速い | 遅い |
RPAは、大量・高速なデータ処理の自動化が可能です。
サーバー型・デスクトップ型・クラウド型と3つの種類があり、クラウド上やサーバー上で処理を行うため、パソコンの性能にデータの処理速度が左右されず、処理速度を高速に行えます。
一方、VBAはPC上で逐次実行するため、データが増えるとともに処理速度が遅くなります。加えて、Excelワークシートの最大容量以上のデータは処理できません。
小規模な自動化・効率化は安定して稼働するため、自社の自動化したい業務量によって、適したツールが変化します。
【まとめ】
VBA:PC内部のみで処理されるため、処理速度はPCのスペックに依存
導入難易度
RPA | VBA | |
導入難易度 | 高い | 低い |
先述の通り、RPAは対応領域が広いため、僅かな仕様の違いで、理想と実際の使用感にズレが生じます。
導入後も管理や保守・運用が必須なため、長期的な見通しが必要です。
一方、VBAはExcelを中心とした、Officeアプリのみを自動化できる範囲です。
対応範囲が狭いことから、RPAに比べて導入準備に時間がかかりません。
自動化したい業務によって、RPAとVBAどちらを導入するか検討しましょう。
【まとめ】
VBA:対応箇所が狭いゆえに、見通しが比較的簡単
プログラミングの必要性
RPA | VBA | |
プログラミングの必要性 | なし | あり |
RPAは、ノーコード/ローコードで開発ができるため、プログラミングの必要性がありません。
プログラミングの専門知識がなくとも使えるため、RPAエンジニアは必要ですが、現場の方もアプリ開発に関われます。
大規模なシステム開発の場合は、プログラミングが必要となりますが、多くの業務はノーコード/ローコードで開発されたRPAで対応可能です。
それに対し、VBAはプログラミングの専門知識が必要不可欠です。
そのため自動化を実行する場合、現場の人が設定や修正に関われません。
プログラミングスキルを持った人に一任する形となるため、現場と開発する人たちの認識にズレが起きていないか、注意が必要です。
【まとめ】
VBA:プログラミング経験が必須。未経験者は携われない。
費用
RPA | VBA | |
費用 | 有料 | ※無料 |
RPAの費用は、種類や規模、自動化の内容によって大きく変動します。
ですが、VBAのほうがRPAの費用より安くなるケースがほとんどです。
VBAはMicrosoft Officeに含まれている、アプリケーションソフトの拡張機能の1つです。
そのため、既にMicrosoft Officeと契約していれば、初期費用や継続費が新たに必要となることはありません。
一方、RPAはライセンス費用、開発費用、運用・保守費用と、3つの費用がかかります。
ライセンス費用は年額制で、種類や導入形態によって違いがあります。
20222年3月時点の費用は、数10万〜200万以上まで様々です。
RPAは普及期に入ったため、将来的に価格が落ちると予測されています。
導入を検討している方は、新情報をよく見ておきましょう。
次に、開発費用です。
開発費用は、内製と外注の場合で違いがあります。
内製の場合は、RPAツールを使いこなすためにかかるトレーニングの費用として、10万円前後必要です。
外部の場合は社内に常駐してもらい開発する場合と受託開発の2つのケースがあります。
常駐は月に70〜150万円、業務委託はロボット1体に30万円以上が必要です。
最後に運用・保守運用費についてです。
RPAを正常に活用するために、運用・保守は必須です。
運用・保守を外部に委託する場合は、作業時間によって費用が変動します。
目安となりますが、5000円〜/時間は必要となります。
【まとめ】
・ライセンス費用:数10万~200万以上/年
・開発費用:70万~150万円/月(外注+外部のRPAエンジニアを常駐)
30万~/ロボット1体(外注+受託開発)
10万円前後/1回8時間のハンズオントレーニング(内製)
・運用・保守費用:5000円~/時間(外部に依頼する場合)
VBA:Microsoft Officeと契約していれば無料
非定型業務への対応
RPA | VBA | |
非定型業務への対応 | 可能 | 不可能 |
RPAは高度なAIの搭載やアップデートが常に行われています。
そのため、すべて自動化・効率化する内容を導入者が決める必要はなく、機械学習により、非定型業務の効率化にも柔軟に対応できます。
ですが、VBAはプログラミングによって業務を自動化・効率化します。
そのため、非定型業務に対応するためには、開発者が全てのケースを想定して作成する必要があります。
情報社会の今、事前に作成することは不可能に近く、VBAの言語自体のアップデートが止まっていることを考えると、非定型業務にVBAで対応することは困難でしょう
【まとめ】
RPA:高度なAIにより、非定型業務の1部を効率化できる
VBA:自動化・効率化ともに非定型業務は不可能
RPAとVBAの得意業務とは
ここまでの内容として、RPAとVBA、それぞれの違いを解説しました。
一見すると、RPAは対応領域が広く、処理速度が速いため、VBAを採用する理由がないと考える人が多いでしょう。しかし、、必ずしもRPAがVBAよりも業務自動化する手段として最適とは限りません。
そこで、表を用いて詳しく解説していきます。
RPA | VBA | |
対応業務 | 広い | 狭い |
データの処理速度 | 速い | 遅い |
導入難易度 | 高い | 低い |
プログラミングの必要性 | なし | あり |
費用 | 有料 | ※無料 |
非定型業務への対応 | 可能 | 不可能 |
RPAが得意な業務
RPAは、大量のデータの処理が必要な業務や転記作業、レポート作業やメールの送信作業といった作業に向いています。
具体的には、人事が社員に入力・提出する勤務表の集計と管理が統一されておらず、各部署の管理表の作成に工数がかかっているので削減したいといった場合です。
RPAを用いることで、提出された勤務表から特定のデータを抽出、Excelの様式に合わせて情報整理と集計を行い、部署毎の管理表の作成までをRPAで自動化できます。
他にもリサーチ作業やチェック作業などができます。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
VBAが得意な業務
VBAはマイクロソフト製品のみで完結する定型業務が向いています。
例えば、Outlookからメールを送信する、決まった請求書を自動発行・印刷、自社の売上を集計し、グラフにするなど、大量のデータを扱わない業務に最適です。
連携したいシステム、アプリがマイクロソフト製品の場合可能なため、費用を抑えて業務の自動化ができます。
自動化したい業務がマイクロソフト製品かつ、小規模な場合にRPAを導入した場合、大きなコストを抱えるため、注意しましょう。
RPAとVBAの活用事例
RPAとVBA、それぞれの違いや得意な業務について解説してきました。
しかし、違いや得意な業務だけでは導入イメージがハッキリしないのではないでしょうか。
そこでこの項目では、RPAとVBAを導入し、活用している事例を紹介します。
RPAの活用事例2選
三井住友銀行
◆導入理由
・生産性向上、業務効率化を徹底し、業務改革するため
・1000億以上のコストが無駄になっていたから
◆活用業務
・営業力・企画力の強化に必要となる情報収集業務
・営業店支援業務(「お客さま宛運用資料」、「住宅ローンチラシ」作成等)
・「預金・為替・融資業務」等の事務センターにおける大量の定型業務
・その他、高頻度の本部定型業務(「各種計数報告」、「各種支払・申請事務」等)
その他の業務にも活用されており、RPAの導入を開始してから約1年で110万時間もの時間を削減できています。
ニチレイロジグループ
◆導入理由
・人手不足解決のため
・手入力による時間を削減するため
◆活用業務
・注文業務
ニチレイロジグループ社は、RPA導入前、ファックスで届いた注文をパソコンで手入力していました。
ですが、RPAを導入し、手書き文字を自動的に読み取ってデータ化に成功することで、類型の業務時間を1万時間以上短縮することができました。
▼RPAの導入事例について詳しく知りたい方はこちらをご参照ください
VBAの活用事例2選
データをもとに複数のシートを自動作成
◆詳細
・100件以上の取引先データを、正確に取引先ごとの伝票を作成可能
・顧客の個人情報を一瞬でまとめることが可能
従業員の勤務状況を自動でまとめる
◆詳細
・部門ごとの従業員の勤務状況を比較可能
・月ごとの残業時間を自動でグラフを作成し、把握可能
VBAは、同じソースコードを作成できれば、どの企業でも同じ働きをしてくれます。
簡単なソースコードなら、無料でインターネットに掲載されています。
上記の2選と同じ業務を自動化したいと考えている方は、外部に依頼するのではなく、調べてみるのも1つの手です。
まとめ:RPAとVBAには明確な違いがある!
RPAとVBA(マクロ)との違いは理解できたでしょうか?
本記事を参考にRPAとVBA、それぞれを比較し、どちらを導入するのかを検討してみてください。
それぞれの課題や悩みは、サポートサービスを使うことで解決できます。
サポートサービスを使うことによって、ロボットを上手く開発できない、保守・運用が上手くできるのかといった、不安や課題をなくすことができます。
RPA活用をサポートするRoboRunnerの紹介
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