働き方改革に欠かせないツールといわれているのが「RPA」。いまや大企業だけが利用するものではありません。MM総研が調査した「RPA国内利用動向調査2020」によると、RPAの導入を検討中の「中堅・中小企業」は全体の44%と割合が大きく、RPAの導入を前向きに考えている企業が多いことがわかります(参考:RPA国内利用動向調査2020ー株式会社MM総研)。今後もますますRPAの導入は日本国内で広がりを見せることでしょう。
「自社にもRPAを導入したい!」「RPAを使ってみたい…」と思われた方に向けて、今回は一歩踏み込んだ話として、実際にRPAの導入をする際の、メリット・デメリット・導入ステップ・費用・注意点について紹介していきます。この記事を読んでいただければRPA導入の基本的なことは全て理解いただけます。
目次
RPAとは?
RPAは「Robotic Process Automation」の略で、パソコン上でこなす単純作業を自動で処理してくれるソフトウェアのことです。RPAはロボットですのでで365日24時間働いてくれる上、ミスもおこしません。RPAの導入が進むのはいまや金融業界だけではなく、製造業やその他の業種、官公庁などにも広がりを見せています。
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RPAとは何か?簡単にわかるまとめ!特徴~導入ポイントまで幅広く解説
RPAを導入することのメリット・デメリットとは?
こちらではRPAを導入することへの主なメリットとデメリットを一つずつ紹介していきます。
RPA導入のメリットー業務効率化、人手不足を解消
人間は働く時間に限度がありますが、RPAは24時間働くことが可能です。そのためRPAの導入により、今まで人が行なっていたデータ入力作業や転記作業などの単純作業が圧倒的な速さで処理され、手動により起こるミスからも解放されるようになります。今まで人材不足で悩まされている企業の方も、RPAの導入により人材不足が解消され、本来人間がやるべき創造力を使う仕事などにリソースを割くことができるのです。
RPA導入のデメリットーセキュリティに関するリスクの発生
RPAを導入することにより、生じるリスクもあります。RPAは人間の代わりに働きます。つまり人間が業務の際に使用するアプリやデータベースへログインするために必要なIDやパスワードをRPAにも教えることになります。もし、RPAに教えたパスワード等の機密情報が第三者に漏洩してしまえば、結果的に企業データへ不正アクセスが行われることになってしまいます。RPAを導入する際は、業務効率化が達成できるというメリットだけを考えるのではなく、セキュリティ対策の面も意識する必要があります。
RPAによる自動化に向いている業務とは?
RPAに魅力を感じていても、いざ自分の会社に当てはめてみるといまいち想像ができない…という方は多いのではないでしょうか。こちらでは、RPAの自動化に向いている業務について紹介します。
RPAの自動化に向いている業務は、大きく分けて以下の3つです。
1.PCで作業する業務
(エクセルから業務システムへの入力などの簡単なデータ入力)
2.平準化された業務
(定型業務のように人や状況に左右されず、業務フローが決まっている業務)
3.反復する業務
(請求書作成メール送信、注文書のシステム入力など)
この3つから、自動化するべき業務が大まかに絞れたのではないでしょうか。「他の企業はどのような業務を自動化しているのだろう」「もっと詳しく自動化した業務を知りたい」、まだ導入に踏み切れていない方におすすめしたいのが「RPA活用辞典_全100事例一覧表」です。こちらは、大企業から中小企業までの幅広いクライアントに対して、RPA導入後の活用サポートを行ってきた弊社が、2020年12月に公開したものです。
今までの実績を基に、各部署ごと(営業、経理、人事、総務、マーケティング、広報、情報システム)のRPA化しやすい業務を100事例集め、レポートにまとめました。無料でダウンロードできますので、一度ご覧になってみて下さい。
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RPAの導入を成功に導くステップとは?
こちらでは、実際にRPAを導入するまでの手順を6段階に分けて説明していきます。RPA専門部署(情報システム部門)と現場の部門が、どのようにして業務の自動化を進めていくのか、自分の会社だったら…と当てはめながら読み進めてみてください。
①自動化できそうな業務を洗い出す
まずはじめに、自動化できそうな業務を考えます。一つの業務に対して、「PCで行う業務であるか」「業務の手順が決まっているか」などの項目を上記の画像のようにYesか No で判断することにより、RPAを導入すべき業務を洗い出します。しかし、すべての業務をこのように仕分けるのはやはり難しく、挫折してしまうところでもあります。
そこで、もうひとつの判断方法として自動化を検討している業務が「PCで行なっている単純作業で時間がかかっている、繰り返しのある面倒くさい作業」に当てはまるかどうか、という判断方法もあります。これに当てはめると、多くの企業が自動化する業務として「あるデータをシステムに入力する作業(転記)」「web上の多くの情報をまとめてレポートを作る作業」に絞ることができると思います。すべての業務を洗い出そうとこだわるのではなく、まずは大まかでいいので、やってみるという姿勢が大事です。
②自動化しやすい業務を一つきめる
次は、自動化しやすい業務を一つ決めます。ここでの注意点は、欲張って30分~1時間かかるような仕事を自動化しないことです。理由としてはこれらの作業を自動化すると、ロボットの設計が複雑になり、エラーが発生しやすくなってしまうからです。エラーによって開発し直す作業が続くと、導入の挫折にも繋がります。
そこでとりあえずは5分以内の仕事を自動化しましょう。「短い…」と思われるかもしれませんが、それでも1日に何度も発生する仕事など頻度が多いものは効果がでやすいので、そのような仕事から自動化に取り組みましょう。
③業務の詳細をヒアリングする
RPA専門部署(情報システム部門)が、業務担当者にRPAで自動化する業務の詳細をヒアリングします。RPAが導入される部署として、経理や人事労務、営業が多く挙げられます。
RPA専門部署(情報システム部門)の方は現場の方が手動で実際どのように業務を進めているかをヒアリングし、その業務をロボットに置き換えた場合どのような業務フローになるのかイメージする必要があります。イメージしていく際、現場の方と齟齬がおきないよう、実際に業務を行っている風景を動画に撮ったり、開発を担当するRPA専門部署の方が自動化する業務を試しにやってみるなどしてみるとうまくいきやすいです。
④トライアルを活用する
そして、洗い出した業務の中でRPAで自動化できそうなものを実際に自動化していきます。RPA は、個人のPC1台から始めることができ、また多くのRPAツールには無料トライアルが用意されています。自動化したい業務のある部署で実際にRPAツールの無料トライアルを使ってみて、どんなことができるのか、どんな成果がでるのかを体験してみましょう。
実際にロボットを作ってみることで、足りない機能があるか、自動化しづらい業務があるかどうか(例:自社の基幹システムをRPAツールがうまく認識しないなど)を知ることができます。また、気づいていなかった業務フローを見つけることができたり、現場の人のRPAツールに対しての反応も見ることができます。
⑤効果とRPAツールを検証
トライアルの自動化によって、得られた効果を検証します。ロボットを作成することによって、業務時間が削減できた、というような「定量的な効果」と、間違えられない入力をロボットに任せられることで精神的に楽になった、というような「定性的な効果」を得られたかどうかを振り返ります。
効果の検証に加えて、RPAツールの検証を行います。最も自動化しやすい業務にトライアルのRPAツールが適応しているかを確認しましょう。
⑥有償ライセンスの購入
これらの行程を経て、十分な効果が確認できた場合、有償ライセンスの購入に移ります。無料トライアルでは使用できなかった機能を有償ライセンスではご利用いただけるので、それらを駆使しながら別の業務にも自動化を適用していきましょう。
RPAの導入においての注意/ 気をつけるべきこととは?
こちらではRPAの導入をする際に気をつけるべきことを紹介します。
RPA導入は目的ではなく手段という意識をもつ
工場などの生産現場で使われる業務改善方法としてECRSの原則というものがあります。
このECRSの原則は、「E(Eliminate):排除、C(Combine):結合、R(Rearrange):再配置、S (Simplify):単純化」の4つの改善の視点にもとづき、改善部分を洗い出すことを表しています。
RPAの導入を進めていくことは、業務効率化のためにECRSを達成することです。つまり、RPAの導入は、業務を洗い出す中で無駄なものを取っ払うことと同じなのです。RPAを導入することだけに拘ってはいけません。
すべての業務をRPAで自動化することを意識してしまうと、本当にRPAを必要とする業務ではなくても、RPA化を強行してしまい結果的に効果が薄くなってしまいます。あくまでRPA導入は目的ではなく手段です。もし適切に判断した結果「RPAを導入しない」という選択肢を選んだ場合でも、業務の可視化を行うことで問題点が浮き上がり、改善すべき点を見つけられたことは企業にとって大きな意義があります。
まずは大きな結果を求めない
人員やコストをかけた分だけ、RPAの効果を期待しますよね。しかし、最初から「業務時間を何千時間減らすぞ!」という大きな結果を求めることは、失敗につながります。小さな業務を自動化して社内に広げ、そこから様々な業務に広がって行くというイメージを持っていただきたいです。RPAは何でも出来る万能ツールではありません。
このことを認識した上で、身近にある作業で小さなものからRPAで自動化を進めていくことが非常に重要となってきます。1つの業務の自動化・効率化を成功体験とすることで社内の他の業務でも同じように自動化出来るものはないか、少し応用すればもっと大規模な業務を自動化出来るのではないか、というように社内にRPAでの自動化を広めましょう。このプロセスを経ることで、結果的に大きな効果が見込めます。
RPAの「スモールスタート」について詳しい説明はこちら↓
中小企業におけるRPA導入の現状とは? 課題や解決策を紹介!
RPA専門家を上手く活用していく
RPA導入におけるコストを説明する際にも後述しますが、RPAを導入する際には外注と内製の2つの場合があります。外注の場合はRPAの専門家を採用し、社内に常駐してもらいますが、中小企業などはコスト面で外注が難しく内製のケースが多いです。内製の場合は、他の業務と兼業する形でRPAの担当者を決めますが、ほとんどがRPAに関する知識が乏しく、社内で育成していくことが必要になります。
その際に大事なのがRPA専門家を上手く活用していくことです。RPA専門家は、RPA導入においてどんな場面で失敗することが多く、どのようなRPA導入をすれば効果が高く活用できるかをよく理解しています。大企業とは違って社内に常駐のRPA専門家を置けない分、上手く外部のRPA専門家を活用していくことがRPA導入を成功させていく秘訣です。
RPA導入の成功事例ー株式会社ギオン(物流)
株式会社ギオンは、未だに手作業の文化が根強い物流業界で、経理の請求書を処理する業務においてRPAの導入に成功しました。RPA導入のきっかけは、デジタル化を進め、「人がやることで価値を発揮する業務」の効率や質を高めたいという想いでした。
導入の結果、「今まで人がやらざる負えなかった業務の行程が削減された」「ミスできない単純作業がなくなり精神的負担がなくなった」という2つの効果がみられ、実質100万円以上の価値ある業務削減に繋がったそうです。
また、RPA導入のゴールとして、外部に開発を委託して終わりではなく、自社の中で開発できるようになることを掲げていました。実際に現場で働く人が開発することで、自動化に対する熱量も高くなり、より効率的な方法で開発ができるからです。そのため、ギオンには弊社のオンラインRPA定着支援サービスRobo Runnerをご利用いただきました。Robo Runnerはあくまでもサポーターとして、RPA開発のサポートをオンラインで低価格に行うサービスですので、RPAの内製化を実現したい方にはおすすめです。
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物流企業の総務部次長が業務をこなしながら、 RPA学習→ ロボット開発できたワケ
RPA導入における失敗事例とは
RPA導入に成功した事例も多くあるように失敗してしまった事例も中にはあります。ある会社では業務のプロセスの可視化を行わずにRPAの導入をし、結果としてその会社は期待した効果を得ることができませんでした。
このように業務プロセス可視化せず、どのような業務にどのようなムダや課題があるのかを洗い出さずに導入してしまうと、逆にRPA導入が従業員の負担になってしまったり、人が手作業で業務を進めていった方が早いというケースにもなりかねません。RPAは基本的に単純作業を効率化するツールです。導入する前に、自動化する業務をきちんと見極める必要があります。
RPA導入の詳しい解説はこちら↓
RPA導入のメリットとは?デメリット・導入事例・導入ステップも合わせて解説! | RPA HACK
RPAの導入におけるコストとは?
RPAの導入におけるコストは、大きく分けて3つあります。
①RPAツールのライセンス費用、②RPAツールを使ってロボットを開発する際にかかる開発費用、③RPAロボットを定期的にチェックしたり円滑に動かす際にかかる運用・保守費用です。
ライセンス費用
まずRPA導入コストとして考えておくべきなのが、RPAツール自体の価格であるライセンス費用です。多くのRPAツールのライセンス費用は年額制で、RPAツールの種類や導入方法によって違いがあります。最近はRPAの普及率が上がり、RPAツールのライセンス価格も低くなりつつあります。
費用:数10万〜200万以上/年くらいまで様々
開発費用
RPAツールを購入しただけで満足してはいけません。業務の自動化のためには、RPAツールを使い、ロボットを開発する必要があります。その際に必要なコストがRPAの開発費用です。そしてこの開発費用は、自社の現場の社員がロボットを開発する「内製」の場合と、外部のエンジニアや業者に委託して開発を進める「外注」の場合とで違いがあります。
外注の場合
ロボット開発を外注する場合は、社内に外部のRPAエンジニアを常駐させて開発を進めてもらう、もしくは開発が必要になった時のみ外部に受託開発してもらう、という2つのケースがあります。
社内に、RPAエンジニアを常駐させ開発を進めてもらうケース
費用:70万〜150万円/月
ロボット1本単位で受託開発をしてもらうケース
費用:30万〜/ロボット1体
内製の場合
RPAを内製する場合、自社の社員がロボット開発をすることになるので、外注するよりもコストが抑えられます。しかし、プログラミング未経験の社員がRPAツールを使いこなすには、きちんとトレーニングや研修を受ける必要があります。内製の場合にはそのトレーニングコストがかかります。
費用:10万円前後 / トレーニング1回8時間のハンズオントレーニング
運用・保守費用
自動化のロボットが完成し動かしてみたはいいものの、トラブルが発生したり、メンテナンスが必要だと感じる場面があるでしょう。RPAロボットを正常に動かし、会社全体で活用していくには、ロボットの運用・保守が必須になってきます。開発と同じように、外部にこの運用・保守を委託するとなると、その分コストが必要となってきます。
運用・保守にかかるコストは委託する会社によって違いがありますが、作業時間ベースで費用が変わってくることが多いです。目安として以下の費用をご参考ください。
費用:5000円〜 / 時間
「RPA活用辞典_全100事例一覧表」の紹介
先ほども軽くご紹介をした「RPA活用辞典_全100事例一覧表」。こちらは、大企業から中小企業までの幅広いクライアントに対して、RPA導入後の活用サポートを行ってきた自社が、2020年12月に公開したものです。どのような業務を自動化すればよよいのか、いまいちピンと来ていない方にぜひ読んでいただきたいです。
この活用辞典では、今までの実績を基に、各部署ごと(営業、経理、人事、総務、マーケティング、広報、情報システム)のRPA化しやすい業務を100事例集め、レポートにまとめています。企業の課題ごとに、RPAでどのように自動化したのかも詳しく書いてあります。100事例もあるので、きっとあなたの会社に当てはまる事例もいくつか見つかるはず…!ダウンロード無料ですので、一度ご覧になってみて下さい。
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RPA活用辞典を無料でDLRobo Runnerの紹介
RPA導入に関する基本的な内容はご理解いただけましたか?導入前に入念に準備をしていても、実際にRPAを導入してみると想定外の困難に直面する可能性は十分にあります。先ほどの「RPA導入の成功事例」でも紹介したPeaceful Morning株式会社が提供する「Robo Runner」はそうしたRPAに関する「困りごと」をオンラインサポーターが即座に解決するサービスです。
企業におけるRPA運用でボトルネックとなりがちな引き継ぎや学習、開発やその他RPA導入〜本格稼働までの間に出てくる様々な困りごとを経験豊富な専任サポーターが丁寧に解決します。Robo Runnerは低コストで、全てのサービスをオンラインで利用できるため、企業の立地を問わず求めるサービスをいつでもどこでも受けることができます。
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RPA担当者に伴走し、オンラインで困りごとを解決するサービス「Robo Runner」とは?
RPA導入に一歩踏み出そう
RPAをぼんやりとしか捉えていなかった方でも、RPAを具体的に、そして身近に感じていただけたのではないでしょうか。「RPAを導入する」という文言だけを聞くと、ロボットなんて難しそう、となんだか自分には遠い話のように聞こえがちです。しかし、ここまで読んでいただければわかるように「RPAを導入すること」のまず第一歩は自分の仕事を見つめ直すということです。
「この作業は何のためにやる必要があるのか」「自分がやるべき作業は何か」というように、一回立ち止まって日々の仕事と向き合ってみてください。それが、より充実した働き方へと繋がるはずです。
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