働き方改革に有効であることから人気のRPA。その絶大なる効果が認知されたことで数多くの大企業がRPAを導入しています。しかし、中小企業では導入率が大企業と比べて低く、導入を途中で辞めてしまう企業が多い事を知っていますか?なぜそんな事になってしまうのか。簡単に言うと、コストや人員不足が原因となって失敗に陥ってしまう事が多いからです。
やはり中小企業での導入は難しいか……と、諦めないでください!しっかりとポイントを抑えれば問題ありません。本記事にて失敗事例を元に、中小企業でRPAを導入する際に気を付けたいポイントを紹介していきます。
目次
RPAとは?
RPAとはRobotic Process Automation(ロボティック・プロセス・オートメーション)の頭文字をとったもののことで、一言で言うと「ホワイトカラーの業務自動化」の事を指します。今まで人が手作業で行っていた帳票管理や、在庫の管理などの単純な事務労働を、ロボットが代りに正確、且つスピーディーに行ってくれます。
既存の業務のやり方を変えること無く自動化することで、効率的に仕事を進めることができ、働き方改革にも大きく力を貸してくれます。
RPAに関しての詳しい理解を進めたい方はこちら↓
RPAの中小企業での導入状況
ここでは、中小企業におけるRPA導入の現状について見ていきます。下記のグラフを見ると、2019年11月時点でRPAを導入している企業は年商1,000億円以上の大手企業で51%、年商50億円以上から1,000億円未満の中堅・中小企業は25%となっています。
大手企業が50%を超えているのに対して、中小企業では約半分の導入割合となっていることから、やはり現状としては中小企業のRPAの導入はあまり進んでいないという事がわかります。また、2019年1月時点と2019年11月時点を比較しても、RPA導入が完了している企業の割合は大手企業の場合、39%→51%と大きく成長しているのに対して、中小企業では27%→25%と、あまり成長がみられず、むしろ失敗等でRPAを辞めている企業の割合が増えていることもデータとして見られます。
それでも、中小企業の7割の企業が導入済み・検討中であると答えていることから、RPAの導入に成功する企業が増えることで、今後よりRPAに対して注目が集まり、他の中小企業でも導入を進めていこうという流れができることが予想されます。導入で失敗しないような対策を十分にとり、RPAの利便性とその効果の絶大さを実感してもらう事で、中小企業でのRPA導入が停滞しているという現状を打破できるのではないでしょうか。
参考:株式会社MM総研 RPA国内利用動向調査2020―企業のRPA導入率は38%、大手企業は51%
RPA導入において中小企業が抱える問題
先程のグラフからも読み取ることができたように、中小企業は大企業と比べてRPA導入率が半分となっているだけでなく、導入しても失敗に終わってしまう事で、途中で諦めてしまう企業が多いという現状がありました。なぜこのようなことが起きてしまっているのか。大きく3つのポイントから考えていきましょう。
問題点1 RPAの導入にリソースがさけない
(大企業に比べて人がいない:RPA専任担当、情報システム部門 兼業の人など……)中小企業のRPA導入が進まない1つ目の原因として考えられるのが“RPAの導入にリソースがさけない”という事です。
リソース1:費用面
導入の第一の壁として考えられるのが、RPAの導入および運用・保守費用が高額であるという点です。RPAツールの多くは、最低でも年間数十万~、高いものになると数千万円のコストが掛かる他、自社の業務を自動化するためにRPAロボットの開発を外注するとなると、さらにコストがかかってしまう場合があります。
リソース2:コスト(人材)
中小企業は、大企業に比べて人が少ないためRPA専任担当を用意することが難しくなってしまいます。大企業には情報システム部門を設置している企業も多くありますが、中小企業ではそのケースはなかなか難しいです。実際に導入した後に運用をする事ができる人材の少なさから、RPAの導入を諦めてしまう企業が多くなってしまうのではないでしょうか。
問題点2 業務が可視化できていない
中小企業は、大企業と比べて・会社全体でどんな業務が存在しているのか明確になっていない場合が多いです。そのため、マニュアル化がされていない業務が多く残り、業務の可視化が出来ない状態に陥ってしまっています。
RPA導入にはどの業務に対して自動化・効率化していくかを明確にすることが必要になってきます。そのため可視化できていない状態では、結果的にどの業務を自動化すればいいかがわからなくなり、導入が進まないという現状に繋がっていくと考えられます。
どの業務が自動化可能であるのか。その業務はどれくらいの頻度で行われていて、どの程度効果が上がるのかなどを予め計ることで、導入が失敗に終わってしまうという結果を防ぐことができます。
問題点3 ITリテラシー
問題点1で扱った「コスト面」と少し被ってしまいますが、中小企業には情報システム部が無い場合があり、社内サーバーやネットワークなどのITリテラシーを持つ社員が少ないことから、RPAを導入するための環境整備やインストール作業を内製化出来ない企業様も多いのではないかと思います。
社内に新しくITリテラシーを持った人材を確保するにしても、採用活動や、新規育成を行うには、なかなかの時間とコストを要することから、RPAの導入・運用に失敗したときのリスクを考えて、導入を踏みとどまってしまう場合が多いと考えられます。
中小企業でのRPA導入の成功事例と効果
ここでは、実際にRPAの導入に成功した企業について見ていきましょう。
株式会社GWC(アースフレンズ東京Z)
株式会社GWC様は、男子プロバスケットチーム「アースフレンズ東京Z」の運営法人です。チケットやグッズ、飲食の販売・集計などの定型業務が大量にありました。その弊害として本来、間を割くべき人とのコミュニケーションが必要となる業務やクリエイティビティが必要となる業務に時間を上手く使う事ができていませんでした。そこでその現状を打破するべくRPAの導入を検討し始めました。
チケット売り上げの集計管理業務に、1回あたり毎回40分〜1時間程度の作業時間を要していましたが、RPAツールであるBizRobo!を導入したことで「ほんの数分」で作業を終える事ができるようになりました。
参考:BizRobo! ブログーRPAを中小企業に導入した際の効果・効能とは?中小企業のRPA活用を徹底解説!
昭和電機産業株式会社
昭和電機産業株式会社様は、電設資材・産業機械・空調システム・情報通信機器の総合商社です。2017年に、経営管理部長の鶴の一声で検討を始め、お試し利用や、RPAが適用できそうな業務の洗い出し、RPAツールの比較検討を行ってきました。まず始めに、管理職の会議用に週報を集めてまとめる作業にRPAを活用し「締切が近づくと未提出者にメールを配信。週報が届くと、1つのファイルに編集し、関係者に送付」という一連の作業をすべて自動化しました。
現在では「WinActor」「AUTOジョブ名人」「AUTOメール名人」を組み合わせることで40の業務にRPAを適用し、月間350時間もの作業時間の削減に成功したとの事です。
昭和電機・経営管理部のICTシステムグループチーフ・春山国彦氏は「欲しいデータ項目は変化しますし、基幹システムの改変に時間とお金がかかることを考えると、RPAで柔軟に対応する利点は大きい」「空いた時間で仕事の高度化を行い競争力を確保したいと考えています」と仰っていました。
参考:COMPASS ONLINEー40の業務にRPAを導入! 挑戦してわかったこと・見えたこと
中小企業でのRPA失敗事例
これから、実際のプロジェクトで失敗してしまった例を3つ紹介します。どうして導入に失敗してしまったのか。その原因をしっかりとおさえ、教訓にすることでRPAの導入成功確率がぐっとあがります。
業務プロセスを可視化せずに業務導入をしたパターン
このパターンが、失敗してしまう原因で1番多いのではないかと考えられます。
このような見切り発車をしてしまうと、RPAに即した作業手順の変更や作業内容の見直しが行われていないことからRPA化できる作業部分の分断が起こりやすくなってしまいます。
分断例:電話オペレーター業務のRPA化
顧客との電話対応の業務のみを自動化したことで、通話履歴の保管、案件ごとに分類する作業が残ってしまい、人間の負担が軽減されなかった。(ロボットが一連の流れを全て行うのではなく、人とロボットが細切れに作業を行っている状態)アメリカなどRPA先進国では、RPAを導入する前から業務プロセスの可視化ができている事が多く、その結果導入もスムーズで、確実に導入後の効果を見込めています。しかし、日本では現場主義をとっている企業が多い事から、業務プロセスが可視化できないという弊害が起きてしまっています。
たとえば、隣の部門の作業内容を知らない従業員も多かったり、同じ部署内だとしても属人化により作業内容がブラックボックスで、把握できなかったりという状況も多いです。たとえ定型業務だとしても、内容が複雑だとロボット開発自体にかなりの時間がかかってしまいますし、長い業務プロセスに無理やりRPAを導入してしまうと、細かいイレギュラーが発生した際に業務全体がストップしてしまう危険も潜んでいます。
本来、正しくRPA化を進めていけば多くの業務をロボットに任せることができるのに、それが可能かどうかの判断ができていないために多くの仕事量を人間が担い続けなくてはならなくなってしまします。
経営陣と現場に温度差があり、活用ができないパターン
次に、経営陣と現場に温度差があり、現場での活用ができずに失敗に終わってしまったパターンを紹介します。経営陣は、業務効率化を目指してRPAツールの活用を進めていきます。しかし、実際にRPAツールを使うのは現場の人間である事を忘れてしまうと
このように感じている現場の人たちに使ってもらう事が出来ず、コストの無駄遣いに繋がってしまいます。一部の従業員だけがRPAの目的やメリットを理解していても、導入はスムーズに行えない事をしっかりと認識しておく必要があります
管理体制が構築されておらず、野良ロボットなどが発生するパターン
RPAの「誰でも使う事ができる」という素晴らしい特性が、使い方によっては仇になってしまう事も忘れてはいけません。責任者や、他部署との連携をとらずに誰でもRPAを作成して使う事ができる状況だと、予測していない行動を行う野良ロボットの発生率が高まってしまいます。野良ロボットとは、端的に言えば「管理者が不在となっているRPAロボット」の事を言います。
野良ロボットが勝手に動き、業務全体をストップさせてしまう原因にもなるので注意する必要があります。またITに疎い人材がRPAツールを作ってしまうと、設計ミスによりロボットが誤作動を起こしてしまう危険性もあります。こういった万が一のトラブルは、IT部門が解決しなければならない問題にも関わらず現場とうまく連携が取れていないことから解決に時間が掛かり、RPA導入の効果を実感できず、失敗に終わってしまいます。
中小企業でRPAを導入する際のポイント
ここで実際に中小企業の方がRPA導入する際に気をつけておくべき点をまとめます。
RPA導入の際の大切なポイント①業務の可視化
先程紹介した事例でも紹介した通り「業務の可視化が不足している」という事が原因でRPA導入に失敗してしまう企業様が非常に多くあります。RPAを実際に業務で活用するには、まず業務プロセスの可視化が必要不可欠になります。誰が、どんな部門と連携して、どんな作業を行っているか。作業を順番に並べて可視化することで、RPAを導入する目的づけができるようになります。
業務の可視化を行うためには、自社のことを適切に把握することが非常に重要になってきます。まずは、現状どの部門で、どんな業務があるのかを徹底的に調べつくしましょう。ここで忘れてはいけないのが「RPAツールを実際に使うのは現場の人である」ということです。実際の業務に取り組んでいる人たちから入念にヒアリングを行い、最終的には現場の人間が納得して積極的にRPAツールが活用される環境を構築できるようにしていきましょう。
RPA導入の際の大切なポイント②業務を大きく3つにわける
業務の棚卸が終わった後は、その業務を大きく3つに分けていきましょう。
1.経験や知識が高度に必要となる「感覚型」
2.一定のパターンから選択する「選択型」
3.誰でも作業可能な「単純型」
RPAで代替可能な業務は「選択型」と「単純型」です。3つに分類した後は、この中で費用対効果が高いものから順に選んで自動化していく事がRPAの導入成功への近道となっていきます。この選定作業の際に、作業負荷が少ない業務を自動化しようとして失敗する事例が多くあるので、その点は注意しながら進めていきましょう。業務可視化のステップや、ツールの選定方法などの詳しい情報に関しては以下の記事を参照ください。
RPA導入の際の大切なポイント③大きな成果を最初からもとめない
大きな成果を最初から求めない。このように言ってしまうと、RPAには業務改革を大きく進める力がないかのように思われてしまいそうですが、そういった意味ではありません。
一気にドカンと大きく効果を発揮させよう!
という考えで進めるのではなく、小さな業務を自動化して社内に広がり、そこから更にいろいろな業務に広がって行くというイメージを持っていただきたいです。RPAは何でも出来る万能ツールではありません。ロボットと聞くとどうしても何でも自動化してくれるのでは。という期待を持ってしまいがちですが実際はそんなことはありません。
このことを認識した上で、身近にある作業で小さなものからRPAで自動化出来るものを自動化進めていくことが非常に重要となってきます。大規模なものを作ろうとするとコストも膨大になり中々上手く行かなくなってしまうため、1つ業務の自動化・効率化を成功体験とすることで社内の他の業務でも同じように自動化出来るものはないか。もう少し応用すればもっと大規模な業務を自動化出来るのではないか。といった形で社内にRPAでの自動化を広めていくようにしましょう。
RPA導入の際の大切なポイント④適切に外部の専門家活用する
冒頭部分でも述べたように、中小企業では人員が少なかったり、人的コストのためにRPAの専門家を採用し、社内で常駐してもらうことが難しいという現状があります。そのため、中小企業が社内でRPAを導入する際には、コスト面も含め他の業務と兼業する形でRPA担当者を作ることをおススメします。
他の業務と兼業するRPA担当者は、初めはRPAに関する知識が乏しく、社内で育成していくことが必要になっていきます。まだ、RPAに関する知識が十分に備わっていない状態で、大きな結果を求めた導入を進めてしまうと失敗してしまうことが非常に多くなってしまいます。
このような状態を打破するためには、RPA専門家を上手く活用していくことが大事になっていきます。RPA専門家は、初期のRPA導入においてどんな場面で失敗することが多く、どのようなRPA導入をすれば効果が高く活用できるかをよく理解しています!大企業とは違って社内に中々常駐のRPA専門家を置けない分、上手く外部のRPA専門家を活用していくことがRPA導入を成功させていく秘訣です。
Robo Runnerの紹介
RoboRunnerではRPA専門家を多数抱えており、外部からのサポートを専門的に行っているので、社内にRPA専門家を常駐させておくことが難しい中小企業には非常におすすめです!
さらに、他のRPAサポートサービスに比べ安価であり、サポートも充実しているということ、多数のサービスがあり、自社のRPA導入に合ったサービスを選べることも魅力の一つです。せっかくコストをかけて導入したRPAツールを失敗に終わらせないためにも、Robo Runnerのマンツーマンサポートで、いつでも不安を解消しながらRPAの絶大なる効果を実感してみませんか。
中小企業のRPA推進担当者の方へ
今回は、中小企業におけるRPA導入の現状や、失敗事例、導入する際に気を付けるべきポイントなどをみていきました。RPAは、万能ツールではありません。業務プロセスを可視化した上でどんな箇所に適用するか見定め、業務体制を整えた上で活用できるよう準備をすることではじめて機能することを念頭に入れておいていただきたいです。
また、経営陣が現場の目線に沿って導入をしていく重要さも忘れてはいけません。一般的な事業会社では、RPA化対象業務の1つ1つはそれほど多くの導入効果を発揮することができないため、より大きな効果を発揮させるためにも現場の理解を深め、より多くの業務をRPA化していくことに努めていきましょう。
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