ヒューマンエラーを放置したままでいると、やがて大きなトラブルや事故に発展する恐れがあります。最初は小さなミスであっても損害賠償責任を問われるような事態になれば、企業の存続が危ぶまれるでしょう。大きなトラブルを避けるためには、エラーが起こる要因について理解を深め適切な対策を取り入れることが大切です。
この記事では、ヒューマンエラーの概要と種類、対策の具体例について解説します。業務工程などにいくつか工夫を取り入れるだけで最小限に減らすことができます。本記事を通じて自社に蔓延るヒューマンエラーの種類と要因を押さえ、削減を図りましょう。
目次
ヒューマンエラーとは
ヒューマンエラーとは、人間の思い込みや聞き間違いなどによって起こるミス・事故のことです。どのような人でもミスは起こり得るもののため、「ヒヤリハットの共有」や「過去に起きたミスの経緯・解決策の共有」など、企業では事前にミスを防ぐためのさまざまな工夫を取り入れています。
ヒューマンエラーの種類
ヒューマンエラーには、意図的なものと過失によるものの2種類に分けることができます。それぞれの特徴は下表の通りです。
意図的なヒューマンエラー |
過失によるヒューマンエラー |
・人間の意図に基づき起こるエラー ・ルール・手順が決まっているのにもかかわらず、守らなかったり省略したりすることで発生しやすい |
・うっかりミスによるエラー ・確認・注意不足をはじめ、聞き間違えや勘違いなどで起こることが多い |
それぞれの特徴を表にまとめた場合、以下のようなエラーが挙げられます。
意図的なヒューマンエラー |
過失によるヒューマンエラー |
・提出期限が残り僅かだったため、ダブルチェックを省略して取引先に書類を送付したところ、誤記が多く再送付することになった ・作業効率を自分なりに工夫し1つの工程を飛ばしたところ入力ミスが生じトラブルになった |
・上司からの指示を聞き間違えたことで数字を1桁少なく記入しトラブルが起きた ・提出期限を確認しなかったために書類提出が大幅に遅れた |
意図的・過失によるヒューマンエラーは理由こそ違いますが、従業員や業務工程数が多いほど起こりやすいと考えられます。大きなトラブルや事故に至る前に、どのように対策していくべきかについて検討することが大切でしょう。
ヒューマンエラーの要因
ヒューマンエラーにはどのような要因が潜んでいるのでしょうか。大きく分けると以下6つに分類されます。
業務プロセス・フローに対する思い込み
従業員の先入観や固定観念によってヒューマンエラーが発生することがあります。
・Aの業務に取り組んでいたつもりがBの業務フローを取り入れていた ・上司から今回に限り会議資料を50部用意してほしいといわれていたのにいつも通り30部だけ用意してしまった |
これらの多くは従業員の思い込みや先入観によって起きたヒューマンエラーです。従業員は無意識であることが多いため、なぜそのようなトラブルに至ったのか理由が判然としない特徴があります。
確認不足
確認が義務付けられていたのに省いたり雑に行ったりしたことで起こる場合もあります。
・プリンターを使用する際、パソコン上でデータチェックを済ませてから印刷することが義務化されていたが省略したところミスが多く注意を受けた ・朝礼後のメール確認が疎かだったために社内からの緊急連絡に気付けなかった |
日常的に行われる業務ほど確認作業が疎かになりやすいため、適切な対策を取り入れることが必要といえるでしょう。
従業員の知識・経験不足
入社したばかりであることや異動によって、業務に慣れていない場合もヒューマンエラーにつながることがあります。
・入社して間もないため、指導された通りにデータ入力ができずミスが起きた ・事務に必要な知識が不足していたために、誤った方法で発注金額を出してしまった |
入社して間もない従業員ほど「指示された通りにできているはずだ」と思い込み、そのまま業務を進めてしまいます。上司や先輩に何度も同じ質問をすることで「仕事ができない人材」と思われたくない人もいるためです。
このようなケースは、上司や先輩従業員が正しく教育しても起こりやすい問題でもあるため、新人研修にロールプレイングを取り入れる、部署専用のFAQを用意するなど適切な対策を検討する必要があるでしょう。
報連相不足
従業員同士や上司への報告・連絡・相談がきちんと行われていなかった場合もヒューマンエラーにつながります。
・先輩の指示に従って業務を進めたつもりが、完了報告が怠っていたために業務フローを飛ばして進めていたことが発覚した ・退社した先輩従業員から正しい引き継ぎがなかったため、顧客対応においてトラブルがあった |
報連相不足は従業員個人に限らず組織的に起こる場合もあるため、大事にならないよう日頃から注意が必要です。
過信・気の緩み
一定期間従事した仕事であればあるほど、過信や気が緩み、ヒューマンエラーにつながることがあります。
・作業フローについて理解できたので自分なりに工夫したところデータ入力にミスが生じた ・ミスをしたことがないため確認作業を飛ばしたところ顧客から不良品とのクレームが届いた |
これらは比較的ベテラン従業員に起こりやすいケースです。仕事に慣れたとしても初心を忘れず、フローが決まった業務は正確にこなす姿勢を心がけましょう。
疲労・体調不良・ストレス
長時間労働や体調不良、ストレスによってヒューマンエラーにいたる場合もあります。
・残業が続いたため、社用車を使用中に事故を起こした ・頭痛が続いていたものの、至急提出しなければならない書類があったため対応したところ、誤記が多く再作成に至った ・休日出勤が続きストレスが溜まっていたため、確認作業を雑に済ませたところ不要な書類まで取引先に送付してしまった |
多忙を極めるときほど自身の疲労感やストレス度合いに気付けないこともあるため、労働環境や業務の改善が必要と考えられるでしょう。
ヒューマンエラー対策の具体例
さまざまな要因で起こり得るヒューマンエラーはどのように対策するとよいのでしょうか。ここからは9種の具体例について解説します。
業務プロセス・フローの見直し
業務プロセスやフローは、作業時のあらゆる可能性を想定して構築されるため、煩雑になりやすい部分です。実際に取り組んでみると無駄を感じる工程も多く、その結果、従業員が作業フローを信用しなくなりヒューマンエラーにつながることがあります。
このような可能性を考慮し、まずは業務プロセスやフローの見直しを図り、改善すべき工程や削減しても問題のない工程を洗い出しましょう。
マニュアルの作成・共有
次にマニュアルの作成・全社への共有です。作業効率が下がる工程や無駄に感じる工程を洗い出した後は、それらを省いた上でマニュアルを作成します。なお、作業に慣れたベテラン従業員の視点で作成すると業務工程が省略されたりわかりにくかったりする場合があるため、新入社員でもわかるマニュアル作成を心がけましょう。
チェック体制の構築・強化
従業員1人だけでミスを防ぐには労力や時間などに限界があります。ヒューマンエラーを組織的に削減するのであればダブルチェックの徹底を業務の一環にするなど、チェック体制の構築・強化を図りましょう。部署や業務ごとにチェックリストを作成・共有するなどの方法によって、効率的にミス・エラーを防ぐことができます。
デジタル技術・システムの活用
業務そのものにデジタル技術やシステムを導入・活用する方法も有効です。人間が携わらないように環境を変えることでエラーやミスを抜本的に解決できるからです。データ入力にダブルチェックが欠かせず時間効率がネックになっているといった場合、RPAツールを導入し人間の代わりにロボットを働かせれば生産性や品質を保った状態で業務を進められます。
エラーを防ぐ設計の構築
エラーが多発する業務や部署があるのであれば、エラーを防ぐ設計を構築する方法もおすすめです。誤った操作をしても重大なトラブル・事故に至らない設計を「フールプルーフ」と呼びます。例えば、本来の操作方法とは異なる操作が行われた場合、パソコン上にエラーが表示されるシステム・技術などが挙げられます。
注意喚起の実施・徹底
ミスが生じやすい業務に取り組む従業員などに対して注意喚起を実施・徹底させる方法もひとつです。例えば書類をポストに投函する際、郵便物に「水濡れ厳禁」と書くことで、配達員は水に濡れてはいけない書類であると一目で理解できます。このような小さな工夫を業務・部署に取り入れることでヒューマンエラーを予防できます。
印刷物におけるミスを防ぎたいときはプリンターの近くに印刷時用チェックリストを貼り付ける、業務に対する不安・不明点について共有されたマニュアルを確認することを習慣化するといった工夫だけでもミス・エラーを削減できます。
スキル向上を目指した研修・教育の実施
従業員1人ひとりのスキル向上を目指した研修や教育を実施する方法も効果的です。例えばミスやエラーが起きやすい業務に対する研修を実施すれば、理解が深まるきっかけになりヒューマンエラーの削減に期待できます。危険予知トレーニングを取り入れ、業務に関するリスクリテラシーの向上を図る方法も有効です。
職場環境の改善
複数の従業員によって同じミスが繰り返されている場合、職場環境に問題がある可能性があります。例えば反応が鈍いパソコンを使っているためにメール送信がうまく行われているか不安になり、もう一度送信したところ2通同じメールが取引先に送信されていたなどです。このような場合は原因を特定しやすいので、改善を図り、働きやすい環境構築に取り組みましょう。
対策実施後の効果測定と改善
業務システムや端末を変更したときは効果測定を実施しましょう。例えば時間・労力が掛かりやすいデータ入力業務にRPAツールを導入した場合、従来と比較してどのようなミスが減少したかが効果測定で明らかになります。ロボットに代替したことで、一定時間で品質維持につながるといったメリットに気付くきっかけにもつながるでしょう。
事例で学ぶ!ヒューマンエラー対策の成功事例
ここからは企業のヒューマンエラー対策の成功事例について解説します。
株式会社アドバンテスト
株式会社アドバンテスト様では、MicrosoftのPower Platformを導入し、業務プロセスの自動化推進活動、自動化フローの作成を行っています。
導入前は業務の自動化に対してネガティブな意見がみられたほか操作性に複雑さを感じたものの、現在は業務のほとんどにPower Automateを活用し、業務工数やヒューマンエラーの削減につなげています。
関連記事:半導体テスタ大手アドバンテスト社におけるPower Platform活用!上達の秘訣はプロのサポートで「理解効率化」!
阪和興業株式会社
阪和興業株式会社様では、RPAツールの導入により人為的ミスの削減に成功しています。人によって業務の進め方が違うことや、マニュアルを作るのが難しい作業であることから、属人化が生まれました。その結果、業務の引き継ぎ時に特定の従業員に負荷が掛かり、疲労からの人的ミスまで発生しました。
RPAツールを導入後は業務引き継ぎによる従業員の疲労軽減によるミスの減少、さらには2名相当の工数、30%程度の残業時間削減に成功しています。
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ヒューマンエラー対策に有効なツール
ヒューマンエラーの要因について理解を深めた後は、どのような方法で対策を講じればよいのでしょうか。結論から述べると、できる限り完璧にこなしたい業務ほどシステムやツールに代替させる方法が有効です。ここからは人間の代わりに品質・生産性向上に期待できるツールについて解説します。
RPAツール
RPAツールは、定型的・反復的な業務をロボット・AIを中心としたデジタル技術によって自動化するツールです。ローコードまたはノーコードで自動化したい業務を設定できるツールのほか、自社の業務プロセスやフローに限りなく近いツールを1から開発することもでき、業務や作業に生じやすいミスを防ぎたいときに有効です。
関連記事:自動化ツール(RPA)とは?おすすめの16種類や選び方、導入の注意点を解説!
生成AI
生成AIは、画像や動画、文章などを生成できるデジタル技術です。知りたい情報や依頼したい内容について会話形式で回答が得られる特徴から、最近ではGoogle検索同様、幅広い年代に用いられています。例えば生成AIを搭載したチャットボットを社内に導入すると、パソコンやスマートフォン上で容易に解決でき、ヒューマンエラーの削減につながります。
関連記事:生成AIにできること・できないことを徹底解説|今すぐ使える活用例も紹介
OCR(AI-OCR)
OCRは、紙媒体の文書をデジタル形式に変換する技術を指します。一方AI-OCRはこのOCR技術にAIが搭載されたもので、紙媒体の読み取り技術が優れたものです。定型フォーマットであることが多い請求書や発注書などは、紙媒体のままで残すと確認したいときに探さなければならないといった手間があります。
しかし、OCRやAI-OCRによって各資料のデータ化を図れば、確認作業がスムーズに進むほか、他部署への共有・編集・チェックも容易に行うことができます。
関連記事:AI-OCRとは?OCRとの違いやメリット・デメリット、製品の比較ポイントを解説
各ツールの選び方と導入時の注意点
各業務・部署におけるヒューマンエラー対策としてツールを導入する場合は、以下の点に注意が必要です。
- RPAツール:イレギュラーな事態には対応できない
- 生成AI:ファクトチェックが必要
- OCR(AI-OCR):紙媒体すべてを読み取れるわけではない
ほんの一例ではありますが、各ツールにはそれぞれ長所と短所があるため、導入の際はこれらについて念頭に置く必要があります。例えばRPAツールの場合、効率化したい業務プロセス・フローをあらかじめシナリオ登録する必要があり、業務プロセスに変更があった場合、このシナリオも変更しなければなりません。
また、業務効率化につながる業務プロセスがあったとしても、RPAツールに記憶させなければ瞬時に対応することができません。
ツールを導入する際はいくつかの欠点があることを念頭に置き、その上で自社業務に適したツールは何かについて熟考することが大切です。
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RPAツールの導入・運用には「Robo Runner」が有効です。RPAツールにおける不明点や導入後の使用方法について、月4時間の画面共有を通したオンラインサポートといつでも相談可能なチャットサポートの利用を通じて即座に解決しながら運用することができます。
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AI-OCR|AI JIMY
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まとめ
ヒューマンエラーは、人間の思い込みや聞き間違い、確認不足などによって引き起こされるミス・事故です。最小限に減らすためには、業務プロセス・フローの見直しをはじめ、マニュアルの作成・共有、繰り返し起こるミスであればツール・システムを導入し、ロボットやシステムに代替させるなどの対策を講じる必要があります。
ヒューマンエラーを最小限に減らすことを視野にシステムやツールを企業に導入したい担当者様は、この機会にお気軽にPeaceful Morningへご相談ください。
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