働き方改革などの社会的な背景から、RPAは近年注目を集めています。導入効果や導入の流れをご存知でしょうか?
本記事では導入効果を最大化するための活用方法・ポイントをまとめています。RPAについてきちんと知って、業務の効率化に役立てましょう。
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RPA・シナリオとは
まずは、RPAとシナリオの意味をご説明します。きちんと理解して、導入時に困らないようにしましょう。
RPAとは
RPAは「Robotic Process Automation」の略称で、ソフトウェアロボットを用いてホワイトカラーの仕事を効率化する業務自動化技術、またはそのための業務自動化ツールやソフトウェアロボットそのものを指します。
ただし、ロボットと言ってもいわゆる人型のものではなく、PCやサーバー内で動くソフトウェアのことをいいます。このソフトウェア化されたロボットのことを「デジタルレイバー(Digital labor)」と呼ぶことがあります。
RPAを導入することは、「指示通りのことを淡々とこなすロボット社員を採用する」とイメージすると良いでしょう。また、AIとRPAの違いが曖昧になりがちですが、実際は明確な差があります。AIは自分で判断する能力がついている一方で、RPAにはそのような判断能力がありません。すなわち、RPAは指示をしないと「ただ置いてあるだけ」になってしまいます。
しかし、逆に言えばRPAはルール化された定型業務やルーティン業務を速く正確に行うことに長けており、業務効率化だけでなくヒューマンエラー防止にも効果的です。
18世紀後半の産業革命以降、ブルーカラー(職人)が手作業で行っていた業務の機械化により生産性が向上してきました。現代ではホワイトカラーの業務をRPAで自動化することにより、更なる生産性の向上が実現しています。
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シナリオとは
RPAのシナリオとは「ロボットが行う業務の手順」を指し、ロボットに出す指示に相当します。
シナリオ作成の難易度は、自動化する業務によって異なります。業務の規模や複雑さを考慮しつつ、「自社で全て作成する」「専門家に相談しながら自社で作成する」「外部のベンダーに委託する」など作成方法を選択しましょう。
RPAの導入による6つの効果
RPAとシナリオについてわかったところで、RPAを導入することの効果を見ていきましょう。RPAの効果は、大まかに6つにまとめられます。
①業務を効率化できる
人間が作業する以上、ミスが発生することは避けられません。ミスが発生するとフォローアップのために労力が必要となり、他の業務を圧迫してしまうこともあるでしょう。
しかしRPAは単純な業務を速く正確にこなします。そのため、マニュアル化された単純作業をヒューマンエラーなく実施でき、業務の効率を上げられます。
②人的リソースを最大限生かせる
単純作業をRPAに任せることで、労働者の業務が軽減され、人材不足の解消や業務の質の向上に繋がります。
また、従業員に余裕が生まれれば他の業務を任せられます。「人にしかできない創造的な業務」に挑戦することもできるでしょう。RPAを導入すれば、従業員が最大限活躍できる場をつくることができます。
③業務を見直す機会になる
RPAに業務を任せるには、前段階として業務フローを作成する必要があります。業務フロー作成のために業務プロセスを細部まで把握することで、これまで無意識に行っていた非効率な作業や業務の不要な部分を見つけることができるでしょう。したがって、RPA導入をきっかけに業務自体を見直し、効率化することができます。
④業務の質が向上する
RPAを導入すると、単純作業による従業員の拘束時間を削減できます。したがって、これまで時間が足りず形式的に行っていた業務をより丁寧に行えるようになり、業務の質向上につながります。
⑤事業拡大につながる
RPAを導入することで生じた従業員の余裕は「今まで人手が足りず、思うように時間を割けなかった業務」に回すこともできます。そのため、RPAの導入により事業成長にリソースを投下できるようになり、新規事業に挑戦しやすくなります。
⑥人件費を抑えられる
「RPAに人間の仕事が奪われるのではないか」と考える従業員の方は少なくないでしょう。しかしRPAはあくまで「指示待ちロボット社員」であり、人間の仕事をすべてRPAに置き換えることは不可能です。本項目は「従業員をリストラしてRPAに代替させることで人件費を削減する」という意味ではありませんのでご安心ください。
RPAを導入すると、従業員が単純作業にかける時間を短縮できます。すなわち残業を減らすことができ、人件費の抑制に繋がります。
ただし、別途RPAツールのライセンス料等がかかることに注意しましょう。
RPAを最大限活用する4つのコツ
RPAの効果を最大限発揮させるためにはコツが必要です。ここでは最初に知っておきたい4つのコツをご紹介します。
①マインドマップを使う
RPAの導入目的を明確にするために、マインドマップで考えを整理すると良いでしょう。XMindやMiroといったツールを利用すれば、PCで手軽にマインドマップを作成できます。
マインドマップを作成するとゴールが明確になるだけでなく、業務の課題や従業員と経営者側の考えなどが視覚的に捉えやすくなります。
現状を的確に把握する過程で、より良い改善案が思いつくこともあるでしょう。
②ショートカットキーを使う
簡易型のシナリオを作成する際、PCの動作を記録してそのままフローに組み込むことがあります。マウス操作を記録することもできますが、ショートカットキーを使用した方がより速く正確です。
以下の表に代表的なショートカットをまとめました。積極的に活用して、正しく動作するロボットを作りましょう。
ショートカット内容 | Windows PC | Mac |
コピー | Ctrl+C | Command+C |
切り取り | Ctrl+X | Command+X |
ペースト | Ctrl+V | Command+V |
全選択 | Ctrl+A | Command+A |
検索 | Ctrl+F | Command+F |
印刷 | Ctrl+P | Command+P |
元に戻す | Ctrl+Z | Command+Z |
アクティブウィンドウの切り替え | Alt+Tab | Command+Tab |
アプリケーションの終了 | Ctrl+F4 | Command+Q |
最新情報に更新 | F5 | Command+R |
③サンプルシナリオを活用する
シナリオを全て自力で作成するのは難しいでしょう。シナリオ作りに慣れているRPAエンジニアであれば話は別ですが、できるだけサンプルを取得して参考にすると精度の高いロボットが簡単に作れます。
多くのRPAツールは「場所を指定してファイルをダウンロードする」「Excelのデータを1シートにまとめる」などの基本的な動作のシナリオが用意されています。サンプルシナリオを組み合わせるだけでも十分なオリジナルのシナリオを作成できるため、ツール選定の際は「サンプルシナリオのライブラリの充実度」を考慮すると良いでしょう。
④RPA稼働時の処理時間を上手に使う
RPAは業務を自動で実行しますが、デスクトップ型のRPAツールを自らのPCにインストールしている場合、RPA実行中はPCがRPAに占有され他の業務ができなくなります。
処理が終了するまで従業員が長時間待機していては本末転倒です。ロボットが処理をしている間に従業員の手が空かないよう、シナリオを勤務形式や時間帯に合わせる必要があります。無駄を最小限に抑えるため、シナリオ作成時に処理のタイミングを調整しましょう。
RPA導入のステップ
RPAの効果や活用のコツを踏まえた上で、導入の流れを見ていきましょう。上の図はRPA導入の6ステップを表していますが、本記事では運用準備段階として「⓪ルールの整備」を追加しています。
⓪ルールの整備
RPAは突然システム障害が生じることや、自動化対象のアプリケーション更新に伴いロボットのメンテナンスが必要となることがあります。迅速に対応できるよう、ガイドラインや対応マニュアルを作成して環境を整えておきましょう。
またスムーズな導入と運用のため、RPA専門チームや担当部門を決め、必要に応じてコンサルティングサービスを利用してアドバイスをもらうと良いでしょう。
①業務の洗い出し
RPAを導入する際、むやみに自動化を進めても逆効果になってしまいます。まずは課題を発見するため、実際に現場の声を聞くためにアンケートを取ったり、従業員に直接話を聞きに行ったりすると良いでしょう。
②自動化業務の選定
従業員から吸い上げた「自動化したい業務」から「自動化すべき業務」を抽出し、優先順位を決めてから自動化を進めましょう。
自動化すべき業務の3つの条件は
- 簡単で、PCで作業する業務
- 平準化されている業務
- 反復が多い業務
です。以上の3つを踏まえ、適切な業務を選定しましょう。
本サイトから無料でダウンロードできる「業務スコアリングシート」では、自動化する業務の選び方についてより詳しく解説しています。業務自動化の推進にご活用ください。
RPA業務スコアリングシートをDL③業務のヒアリング
(例)業務フロー図
次は、RPA専門チームを中心に、自動化する業務の担当者から業務の詳細をヒアリングしましょう。従業員がどのような手順で業務を進めているのかを把握し、シナリオを開発する際どのようなフローを作成すれば良いのかをイメージしておくとスムーズです。また、現場で働く従業員との齟齬を生まないため、RPA専門チームが実際に業務を行ってみた上で業務フローを作成することをおすすめします。
④トライアルを活用
RPA製品は複数メーカーが提供しており、その機能や操作性は様々です。導入の規模や自動化する業務、自動化したいアプリケーションとの相性、価格・サポート体制などを考慮して判断しましょう。
多くのツールは無料トライアルを提供しているため、本格導入前に使用感を確認できます。上手に活用して、本格導入後に「意外と使いづらかった」とならないようにしましょう。
⑤効果検証
トライアルを行ったら、次は効果測定です。RPA導入効果は「定量的な測定」と「定性的な測定」の2種類の方法で検証できます。
それぞれの特徴・具体的な測定方法を見ていきましょう。
1. 定量的な測定
「数値(量)に基づいた測定」のことで、計算で様々な指標を求めて検証します。
・特定の業務を遂行するためにかかるコストの変化
・人件費の変化
※なお、人件費の変化は
1件あたりの処理時間処理件数担当者の時給
(1件あたりの処理時間)×(処理件数)×(担当者の時給)
という計算式で求められます。
などのデータを得られ、「数値として目に見えるため、分かりやすい」という特徴があります。
定量的に測定する効果は主に「費用対効果」と「投資対効果」の2種類です。
・費用対効果
人件費の削減効果・ヒューマンエラー削減による効果など、短期間で数値に現れる項目に着目した効果です。
利益-費用 (円)
または
利益-費用費用100 (%)
という式で簡単に求められます。「得られる利益」には削減できる人件費・事業拡大により発生する収益などの和が入り、「かけるコスト」にはRPAのライセンス費用、保守費用、教育費用などの和が入ります。どの項目まで含めるかによって多少数値が変動しますが、大まかに求めるのであれば削減できた人件費と導入費用を考慮すると良いでしょう。
・投資対効果(投資利益率、ROI)
投資額に対してどれくらいのリターンがあるかを、長期的な視点から測定するものです。費用対効果と似ていますが、「投資をやめても、将来にわたって続くリターンを評価する」という点が特徴です。
売上-売上原価-投資額投資額100 (%)
で求められます。
2. 定性的な測定
「数値では表しにくいもの(特性、性質)の評価」のことで、実際に対象となる人に話を聞いたり、アンケートを取ったりして検証します。
・従業員のスキル
・従業員の仕事に対する満足度
・顧客からの信頼度
などの情報を得られ、事業の質の向上には欠かせない評価方法です。
⑥有償ツール購入
準備が整ったらいよいよ本格導入です。まずは小規模な業務をロボットに任せ、効果や使い勝手などを確認しましょう。導入後に規模を拡張することもできるため、まずはスモールスタートから入ることをおすすめします。
また、RPAは導入したら終わりではありません。業務手順やシステムの更新に伴う仕様が変更されると、ロボットを修正する必要があります。トラブル発生時以外の定期的なメンテナンス実施やロボット管理も重要です。
継続的に効果検証・見直しを行うことで、RPAの恩恵を最大限受けることができます。
さらに、RPAで自動化した業務でもきちんと内容や手順を把握しておくことが必要です。ロボット修正時はもちろんですが、エラー発生時は手作業で業務を行う可能性があります。「RPAで自動化してから時間が経ち、誰も業務内容を把握していなかった」ということにならないよう、きちんと業務内容のマニュアル化・情報共有・引き継ぎをしておきましょう。
RPA導入時の5つの注意点
ここまでRPAの良い面をご紹介してきましたが、導入・運用に関する注意点もあります。きちんと理解して、導入後のトラブルを防止しましょう。
①コストをきちんと把握する
RPAを利用するには、年間更新のツールの利用料(ライセンス料金)がかかります。また、ロボットの構築を外部に委託したり、コンサルティングを利用したりする場合はさらに追加料金が発生します。さらに、一度開発したロボットの保守が必要となるため保守費用も発生します。
もちろん、うまく活用すれば十分に導入の価値があることは確かです。むやみに導入するのではなく、運用コストに見合った使い方をできるのかどうか・どのようなプランで導入するべきかなどをきちんと検討しましょう。
②自動化に囚われすぎない
RPA導入時に業務自動化を目的としてしまうと、本来自動化する必要のない業務にまでRPAを取り入れてしまい、結果的に効果が薄れてしまいます。重要なのは、自動化に適する業務と適さない業務を判別することです。本末転倒にならないよう、あくまでRPAは業務効率化のための手段と考えましょう。
③成果を求めすぎない
導入に人員やコストをかけるほど、RPAの効果を期待してしまいます。しかし最初から大規模な自動化を試み、「業務時間を何千時間削減する」といった大きな成果を求めると失敗しやすくなります。身近にある小さな業務から自動化を進め、少しずつ応用して規模を拡大していきましょう。
④最適なシナリオ作成の方法を検討する
次はいよいよシナリオ作成です。
まず、シナリオの作成方法には以下の2種類があります。
- 簡易型(画面操作記録型)
シンプルで小規模な作業の自動化に用いられており、誰でも簡単に、すぐにロボットを開発できる方法です。その名前からもわかるように、普段のPC操作を記録することで自動的にシナリオを作成できます。記録した内容をロボットが再現する形で業務を自動化しています。
記録内容をカスタマイズする機能があり、やや複雑な業務でも対応可能です。
プログラミングの知識がなくても気軽に取り入れられるため、初心者向けの方法です。 - 開発型
開発型は主に大規模な導入に用いられており、簡易型よりも柔軟にフローを作成できます。「コーディング型」とも呼ばれ、ロボットをゼロから作り上げていきます。
しかし、開発型でもプログラミングスキルが必須なわけではありません。RPAツールにはデフォルトで様々な動作コマンドが用意されているため、パーツを組み合わせることで容易にロボットを開発できます。
ただし業務が複雑になると用意されているコマンドだけでは対応できないため、一部プログラミングコードが挿入できるRPAツールがあります。そのため、自動化する業務の複雑さによってはソフトウェア開発経験のある技術者人材が必要になります。
RPAの導入規模や担当者の経験を考慮した上で、どちらが良いか選択しましょう。
開発方法を選択したら、整理した業務フローに基づいてシナリオを作成しましょう。
RPAは基本的に「決められたルール通りのこと」しか処理せず、融通を効かせた対応ができません。そのため、ロボット開発段階で誤ったフローを作成してしまうと、業務をきちんと完了できない・エラーが発生して止まってしまうなどのトラブルに繋がります。前段階で整理した業務の手順を確認しつつ、不安な時はRPA専門家など信頼できる人に相談すると良いでしょう。
また、ロボットを開発したらすぐに運用開始するのではなく、綿密に動作テストを行いましょう。デモデータを用いて通常時やエラー発生時の動作を確認し、使用感を確かめる必要があります。さらに、継続的に使用した場合の耐久性も重要です。初めはきちんと作動していても、突然問題が発生する場合がありますので、エラーが発生した場合の処理(エラーハンドリング)も追加するようにしましょう。
これらのことを確認した上で、本格的にロボットの運用を開始しましょう。
⑤RPA専門家とコミュニケーションを取る
RPAを活用する際、社内にRPAに関する知識を持った人材を置く必要があります。RPA専門家は「導入時に失敗することが多い場面」「より効果的に活用する方法」などをよく理解しています。アドバイスをもらえるサービスを利用し積極的にコミュニケーションを取ることでRPA導入成功につなげましょう。
まとめ:RPAの効果を最大限引き出そう
RPAの効果やシナリオ作成方法について、イメージはつかめたでしょうか。RPAは、特徴と仕組みを理解して使いこなせば業務効率化に大きく貢献してくれます。本記事が業務自動化へ一歩踏み出すきっかけになれば幸いです。
RPA HACKではRPAに関する様々な情報を発信していますのでぜひご覧ください。
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