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【業界別導入事例】学校現場の働き方改革、自動化ツールが担う業務改善とは

本記事では2021年12月15日時点の教育業界におけるRPA等の自動化ツールの活用について紹介いたします。教育業界の現状と課題、導入事例についてお伝えするので、教育業界に携わっている方、自動化について興味のある方は是非ご覧ください。

学校における働き方改革の現状

平成31(2019)年1月25日の「学校の働き方改革」に関する中央教育審議会答申を受けて、同日、文部科学大臣を本部長とする「学校における働き方改革推進本部」が設置されました。

平成28年度から開始された学校の働き方改革のための取組状況調査ですが、令和2年度は新型コロナウイルス感染症対応に伴う教育委員会の調査負担を考慮し、令和1年度の約2割の必要最小限の項目である

  1. 教職員の勤務実態の把握
  2. 改正給特法の施行を踏まえた対応状況
  3. 具体の取り組みの実施状況
  4. 取組の好事例

の4つに調査項目を絞り、調査が実施されました。

調査の結果からICカードやタイムカード等の記録による客観的な方法で勤務実態を把握をしている各都道府県別の実施自治体割合がほぼ全ての都道府県において昨年度よりも増加したり、教員の負担軽減を担う学習指導員等が都道府県68.1%、政令市100%、市区町村60.2%の自治体で配置されるなど、いくつかの項目で教育現場の労働環境が改善傾向に向かっていることが分かりました。

一方で、時間外勤務の経年比較の項目では、新型コロナウイルスによる休校期間や部活動の活動時間の短縮・自粛等の影響を直接的に受けて、前年度と比較し減少した月もあるものの、通常登校が再開された後は増加している月が続きました。この結果から登校日を減らして勤務時間を短縮するのではなく、既存業務の見直し、削減により力を入れて働き方改革を進めていくことの必要性が浮き彫りになりました。

また現在の働き方改革は文部科学省主体でトップダウン型に進められており、今後は教育委員会や各学校における「働き方改革」の自走サイクルの構築を目標として掲げていくとされています。

それでは各学校、教育機関が主体となって既存の業務を見直し、働き方改革を進めていくにはどういった取組みが有効なのでしょうか。

令和2年度 教育委員会における学校の働き方改革のための取り組み状況調査

教育現場の抱える問題

既存の業務を見直し、働き方改革を進めていくためには更に課題を深ぼる必要があります。文部科学省の目指す姿とは裏腹に「勤務時間が思うように短縮されない」という課題の背景には大きく分けて以下の2つの現状課題があります。

①事務作業で溢れている

教師になるためには大学において4年間、担当教科の教育法や教育課程論、生徒指導法といった専門的な教職課程を履修し単位を取得、そして採用試験に合格する必要があります。授業計画の進め方について専門的な知識を蓄積してきたにもかかわらず、いざ勤務が開始すると専門性を活かすことの出来ない(=誰でもできる)授業外の事務作業に翻弄されます。

教師の仕事というのは専門的な仕事であるため、勤務年数に応じてその人ならではの指導方法や授業スタイルが確立されてくるのも珍しい事ではありません。当時の授業が印象に残る教え方・授業構成だったからこそ、ある1つの単元だけ得意になったり、時が過ぎても普段全く使わない数学の公式を覚えていたりするものです。これらの業務は良い意味で属人的であり、代替手段がありません。

一方で情報の転記作業や入力作業といった授業外の事務作業は教師以外のリソースを用いて代替が可能です。授業外の事務作業の負担が軽減すれば本来の業務である授業に集中することが可能になり、子供たちの未来にも良い影響を与えることが出来ます。

②ICT化が進んでいない

GIGAスクール構想という単語をご存じでしょうか。教育業界に携わっている人であれば耳にしたことあると思います。

GIGAスクール構想とは2019年12月に打ち出された「各生徒向けの端末と、高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備し、多様な子どもたち一人ひとりの創造性を育む教育を、全国の学校現場で持続的に実現させる構想」のことです。

GIGAスクール構想の目的は「子供たちが変化を前向きに受け止め、豊かな創造性を備え、持続可能な社会の創り手として、予測不可能な未来社会を自立的に生き、社会の形成に参画するための資質・能力を一層確実に育成していくこと」にあるとされていますが、文部科学省はこれを「校務負担軽減」「教員の働き方改革」に繋げる狙いも示しています。これは裏を返すと、「ICT化の遅れが働き方改革の壁として立ちふさがっている」という現状を表しています。

1人1台の学習者用PCが配布され、新しい社会に適合しようと取り組んでいる生徒達をただ見守り支援するのではなく、教職員自体もICT化を進めていく必要があり、それが働き方改革を進めるうえでの武器になります。

これら2つの問題を解決する手段の1つとして本記事では「RPA等のツールを用いた自動化」について紹介していきます。

デジタイゼーションとは

DXという言葉を耳にされたことがありますでしょうか。デジタルテクノロジーの導入を広い範囲で行い一企業の取り組みを超えて社会的な影響を及ぼすことをDX(デジタルトランスフォーメーション)と言います。

そこに関連する、広い意味での「デジタル化」に含まれる用語として、業務工程を効率化するためにデジタルテクノロジーを導入するなど、部分的なデジタル化のことをデジタイゼーションと言います。デジタイゼーションは既に多くの業界、企業で進められており、デジタイゼーションの代表的な手法として導入する企業が増加しているのがRPA等の自動化ツールです。

RPAとは、「Robotic Process Automation」の略称で、ソフトウェアによるロボット化でホワイトカラーの仕事を効率化する業務自動化技術、またはその業務自動化ツールやソフトウェアロボットそのものを意味します。

ロボットというと人型のロボットなどを思い浮かべる人がいますが、PC内やサーバー内で動くソフトウェアだと考えてください。18世紀半ば~19世紀ごろには職人(ブルーカラー)が手作業で行っていた業務が産業機械(ロボット)により代替され生産性が向上したように、現代ではホワイトカラーによる繰り返しの業務をRPAに置き替え、人間はより価値の高い業務に注力しようという風潮が強まっています。

RPAは大量のデータを扱う単純な定型作業を得意としています。RPA導入により、「作業スピードの向上」「正確性の向上」「勤務時間の短縮」等の効果が見込まれ、組織の省人化、自動化、効率化、最適化に繋がります。

RPAを初めとする自動化ツールを導入し日常の業務の中に溢れかえる定形の事務作業を置き替えることが教育現場の働き方改革の促進を図ります。実際に、いくつかの教育機関において既に実用されているので、その背景、対象業務を見ていきましょう。

教育現場における業務別自動化ツール導入事例

自動化ツールを用いた業務自動化・効率化は既に様々な教育現場にて実施されています。いまから、大まかな業務内容を実際の導入事例を用いて紹介するので、教育現場における自動化ツール導入のイメージを明確なものにしてください。

①電話応対業務

聖徳大学附属取手聖徳女子中学校高等学校では、2021年5月時点で4人に1人の教員がMicrosoftが手掛ける自動化サービス「Power Automate」を活用しています。

「Power Automate」はアプリケーションとサービス間の自動ワークフローを作成し、ファイルの同期、通知の受信、データ収集など様々な業務を効率化するサービスです。Microsoft製品を含む様々なアプリケーションと連携してタスク自動化を実現します。

Power Automateについて詳しくはこちら

聖徳大学附属取手聖徳女子中学校高等学校では、Microsoft FormsとTeamsを、Power Automateを用いて連携することで「電話応対業務」を廃止することに成功しました。

学生の頃を思い出してください。欠席や遅刻が確定した場合、保護者に頼んで学校に電話を入れてもらっていませんでしたか。美容室や病院のオンライン予約が普及した現在も、「欠席・遅刻連絡等大切な連絡は電話で」という風潮が取り残されています。

電話応対はその場で内容を確認して終了ではありません。電話のあった生徒の担任に情報共有をし、更にそれをデータとして蓄積、その1つ1つの担当者が異なることが原因で、メモ・黒板・Excelと別のフォーマットへの転記作業が無駄な工数を生みます。もちろんこの業務を行うにあたって教員免許を必要とする部分はありません。まさに自動化ツールを用いて代替するのに最適な業務と言えるでしょう。

聖徳大学附属取手聖徳女子中学校高等学校ではMicrosoft Formsを通して保護者が必要な情報を入力・送信、送信された情報をPower AutomateによってFormsと連携されたTeamsに自動通知することで学校内での情報共有を行っています。聖徳大学附属取手聖徳女子中学校高等学校では以前、「出欠黒板の写真撮影→情報をExcelに転記→印刷→提出」という業務があったそうですが、業務自動化・効率化ツールを上手く活用することによってこの業務を無くすことが出来ました。今や出欠黒板は役目を終え、職員室には代わりに大型モニターが設置されているようです。

他にも「電話応対業務」を自動化した教育機関があります。
大阪府・堺市教育委員会は2021年3月16日に日本マイクロソフトと連携協定を締結し、学校園業務の効率化や利便性向上を図る取組の1例として出欠連絡をデジタル化しました。その方法は聖徳大学附属取手聖徳女子中学校高等学校と同じく、FormsとTeamsをMicrosoft Power Automateによって連携することで実現されています。

自動化を実施した堺市立金岡南中学校によると、朝の電話は「9割」減少し、教員だけでなく保護者の負担も軽減したとのことです。

聖徳大学附属取手聖徳女子中学校高等学校の導入事例はこちら

堺市教育委員会の導入事例はこちら

②生徒の健康管理

山梨県立甲府西高等学校では、コロナウイルスの影響を受けて新たに業務に追加された毎朝の検温を同じくMicrosoft社の自動化サービス、Power Automateを用いて自動化することに成功しました。

Power Automate導入前も、山梨県立甲府西高等学校では紙ではなくFormsを利用して生徒の検温報告を行っていました。しかしながら、未入力の生徒の確認、その生徒への催促は担任が直接行っていたため負担・時間共に軽減する余地がありました。

最初に自動化に取り組まれたのは数学科教諭の志村さんです。問題視していた催促メッセージの送信をPower Automateによって自動送信に切り替えました。マニュアル化し校内で共有することにより、数人の担任の先生も「体温未入力の生徒に催促メッセージを自動的に送る方法」を活用し始めました。

一方でまだ課題は残されていました。催促は自動化できても、志村さんは毎朝5時台に起床しFormsを作成、送信していたのです。ここに注目したのが生徒の保坂さんでした。プログラミング経験のあった保坂さんはPower Automateにも興味を示し、「生徒主体」の校務効率化を成し遂げたのです。

これまで5時に起床し、Formsを作成、送信、データ共有という一連の作業は毎朝30分を要し、校内の担任の作業時間を合わせると相当な所要時間になっていました。Formsを使用せずに検温報告を行っている学校もあり、その場合は紙に記入、確認、口頭注意という管理面でもコスト面でも好ましくない方式が用いられていました。

保坂さんの作成したシステムの概要は以下の通りです。

「検温丸」と名付けられたこのシステムは、毎朝、生徒に体温を入力するための Forms のリンクが自動的に届き、データは Microsoft Excel に保存されていきます。未入力の場合は、Teams でリマインドされます。生徒は自身のモバイルデバイスからでも、生徒用の Surface Pro からでも入力が可能です。先生は Excel ファイルから、自分のクラスや顧問を務める部活、委員会などをフィルタリングして確認する事ができます。さらに、新型コロナウイルス感染症の陽性者が出てしまった場合、「追跡モード」にすることで、陽性者とクラスや部活などの所属が同じ生徒のデータを一覧し、接触者を迅速に特定することができます。引用:https://customers.microsoft.com/ja-jp/story/1428001085931250320-nishi-k12-edu-microsoft-teams-jp-japan

キャッシュレスやペーパーレス、身の回りの変化だけで十分なほどに社会は以前と比べて大きく変化しています。新たな社会Society5.0の到来、それによる変化をポジティブなものとして捉え、そこで必要となる資質や能力を伸ばすために小学校、中学校、高校では学習指導要領が改定されました。

新学習指導要領では、ICTの活用と情報活用能力の必要性がポイントとして述べられています。情報活用能力とは、ただプログラミングを学ぶことで身につくのではありません。将来的に必要となるのは身の回りから課題を拾い上げ、その課題に対する解決手段としてプログラミング等の理論、方法を活用することです。今回の山梨県立甲府西高等学校における生徒主体の業務(校務)改善は現代に必要な資質とそれを実現する「主体的・対話的で深い学び」を体現しているモデルと言えるでしょう。

山梨県立甲府西高等学校の辞令について詳しくはこちら

③申請業務

茨城県では大井川和彦知事の主導でRPAの導入が決まり、ICTを活用した業務効率化・働き方改革推進の1つの手段として令和元年度に本格導入を始めました。

20業務に対してUiPathを導入することで職員の業務時間年間35,783時間(見込み)の削減を成し遂げた茨城県。その中でも教育関連では2業務にRPAを導入し「県立学校教職員の出張旅費の入力業務」において年間16,354時間(見込み)の削減を達成しました。

使用ツールであるUiPathについて詳しくはこちら

茨城県総務部行政経営課係長の佐藤さんはUiPath主催の『教育改革の展望「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン答申」と「初等中等教育機関の働き方改革答申」セミナー』にてこう述べています。

現状の教育現場でのRPA化の取り組みは、学校の先生方の直接的な支援ではなく、事務職員の業務効率化です。しかし、1校あたり年間180時間が削減できれば、先生方の校務の一部を事務職員が担える可能性や余裕が生まれてきます。事務職員から巡り巡って先生方の負担が減ると考えています。ゆくゆくはRPAによって先生方の負担軽減にも取り組み、教育の質向上につなげていきたいです。引用:https://www.sentankyo.jp/articles/17ef76ec-06d4-4b65-a44a-c7879ead7b65

導入に注力しているとどうしてもRPA導入は「目的」ではなく「手段」という認識が薄れてしまいます。このように直接ターゲット(今回ならば教員)の仕事を自動化するのではなく、その為の手段としてどういったアプローチがあるか検討し、間接的であってもRPAが最も活躍できそうな箇所に落とし込むことが必要です。県立学校教員旅費申請代理登録という業務はRPA導入前は、教員の申請内容を事務職員が総務事務支援システムに入力していました。RPA導入後は教員がExcelを用いて書類を作成し、それをRPAが自動で入力します。

実はUiPathのRPAツール「StudioX」のメインターゲットはExcelであり、多くの自動化アクションが備わっています。UiPathは直感的にドラッグアンドドロップで操作できると評判なのでExcelタブからアクション一覧を見るだけで普段の業務の自動化が想像できるかもしれません。

このようにExcelを使用した申請業務は県立学校教員旅費申請代理登録以外にも沢山あります。導入事例からヒントを得て、身の回りの業務を自らが行う必要性を改めて考えてみてはいかがでしょうか。

Excelを用いた自動化について詳しくはこちら

デジタイゼーションの留意点

Power AutomateやRPAがどういった校務を自動化するのかイメージを掴んで頂けたでしょうか。次に、実際にデジタイゼーションを進める際に気を付けてほしいことをお伝えします。

①ツール導入は目的ではなく手段であることを意識する

工場などの生産現場で使われる業務改善方法としてECRSの原則というものがあります。

このECRSの原則は、「E(Eliminate):排除、C(Combine):結合、R(Rearrange):再配置、S (Simplify):単純化」の4つの改善の視点にもとづき、改善部分を洗い出すことを表しています。

ツールの導入を進めていくことは、業務効率化のためにECRSを達成することです。つまり、ツール導入は、業務を洗い出す中で無駄なものを取っ払うことと同じなのです。導入することだけに拘ってはいけません。

例えばRPAの場合、すべての業務をRPAを用いて自動化することを意識してしまうと、本当にRPAを必要とする業務ではなくても、RPA化を強行してしまい結果的に効果が薄くなってしまいます。あくまで自動化ツール導入は目的ではなく手段です。もし適切に判断した結果「導入しない」という選択肢を選んだ場合でも、業務の可視化を行うことで問題点が浮き上がり、改善すべき点を見つけられたことは企業にとって大きな意義があります。

②スモールスタートを意識する

人員やコストをかけた分だけ導入効果を期待してしまいがちですが、最初から「業務時間を何千時間減らすぞ!」という大きな結果を求めることは、失敗につながります。小さな業務を自動化して組織内に広げ、そこから様々な業務に広がって行くというイメージを持っていただきたいです。何でも出来る万能ツールは存在しません。

このことを認識した上で、身近にある作業で小さなものから自動化を進めていくことが非常に重要となってきます。1つの業務の自動化・効率化を成功体験とすることで社内の他の業務でも同じように自動化出来るものはないか、少し応用すればもっと大規模な業務を自動化出来るのではないか、というように組織内の自動化を広めましょう。このプロセスを経ることで、結果的に大きな効果が見込めます。

③時には専門家に頼る(RPA)

RPAを導入する際には外注と内製の2つの場合があります。外注の場合はRPAの専門家を採用し、社内に常駐してもらいますが、中小企業などはコスト面で外注が難しい場合は内製のケースが多いです。内製の場合は、他の業務と兼業する形でRPAの担当者を決めますが、ほとんどがRPAに関する知識が乏しく、社内で育成していくことが必要になります。

その際に大事なのがRPA専門家を上手く活用していくことです。RPA専門家は、RPA導入においてどんな場面で失敗することが多く、どのようなRPA導入をすれば効果が高く活用できるかをよく理解しています。内製を選択した場合は上手く外部のRPA専門家を活用していくことがRPA導入を成功させていく秘訣です。

また現在はRPA関連サービスの数も年々増加しており、一言でRPAに関するサービスと行っても導入支援から学習支援など自身の置かれている段階によって頼るべきサービスが変わります。

当社では、RPAの導入を検討している方やRPA導入後に悩みを抱えている方がそれぞれの課題に沿って適切なサービスを選択するために毎年RPA業界カオスマップを作成しています。

無料でダウンロードが可能なので、興味のある方は是非ご覧ください。

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業務自動化へ一歩踏み出そう

現在の教育現場におけるデジタイゼーション、自動化の事例について知っていただけたでしょうか。Power AutomateやRPAといったツールは効率化や業務改善を進めるために無くてはならない存在ですが、特性や仕組みを理解しないまま見切り発車で進めてしまうと大きな効果が得られません。注意すべき点をきちんと意識してデジタイゼーションを成功させてください。

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