本記事では2021年12月時点の不動産業界におけるRPA事情を紹介します。不動産業界でRPAが注目される理由から導入事例まで詳しく紹介しているのでRPAを検討している方はぜひお役立てください。
RPA活用辞典を無料でDL目次
RPAとは
まず「RPAってなに?」とRPAをあまり理解できていない方に向けてRPAの基本的な情報を紹介します。
RPAとは、「Robotic Process Automation」の略称で、ソフトウェアによるロボット化でホワイトカラーの仕事を効率化する業務自動化技術、またはその業務自動化ツールやソフトウェアロボットそのものを意味します。
「RPA」という言葉は、グローバルでTOP3のRPAソフトウェアベンダーであるBluePrism社が初めて使ったと言われています。
日本語でも「RPA(アールピーエー)」と呼ばれ、「AI→人工知能」のような広く使われる訳語はありません。また、ソフトウェア化されたロボットのことをデジタルレイバー(Digital Labor)と呼ぶこともあります。
ロボットというと、人型のロボットなどを思い浮かべる人がいますが、RPAはPC内やサーバー内で動くソフトウェアだと考えてください。
18世紀半ば〜19世紀の産業革命以降、職人(ブルーカラー)が手作業で行なっていた業務が産業機械(ロボット)により代替され生産性が向上してきたように、現代ではRPAを用いたホワイトカラー業務の自動化によって生産性の向上が進んでいます。
▼RPAについて詳しくはこちら▼
不動産業界でRPAを導入する企業が増える理由
RPAはなぜ不動産業界でも注目されているのでしょうか。
大きな理由としては、人口減少によって既存人材への負担が増加したことにあります。
全国賃貸住宅新聞が発表している調査結果によると賃貸を扱う大手6社では、2019年の採用人数は前年に比べて減少しており、人員を確保できていない状況があります。
また、少子高齢化の影響により、新しい人材の確保が難しいだけでなく、熟練の人材が退職し残った社員への負担が大きくなっています。このような理由から不動産業界でもRPAが注目され始めています。
参照元:全国賃貸住宅新聞「賃貸大手6社、新卒採用減少」
不動産業界でのRPA導入のメリット
不動産業界では人材不足を解決するために、多くの企業がRPAを導入しています。RPAを導入することでどのようなメリットを得られるのでしょうか。
作業工数・時間の削減
RPAで定型業務を自動化することにより、人が付加価値の高い作業に専念することができます。定型業務の負担が減ることにより生産性向上もつながります。
さらに、従業員の残業が減り自由時間が増えることによって、QOLの向上にもつながります。
ミスの抑制
人が行う作業にはヒューマンエラーの発生はつきものです。特に業務量が多く、労働時間が長い不動産業界の現場では、ヒューマンエラーの発生率も高くなりがちです。
しかし、ロボットが作業を行うRPAであれば、長時間作業でもヒューマンエラーが発生することはありません。
RPA導入事例(業務編)
これまでRPAについて説明しましたが、ここからは不動産業界での活用例を業務・企業に分けて紹介します。
物件情報の更新
不動産仲介業者が毎日行う物件情報の更新は、毎日必ず発生する定型業務ですが、データベースとサイトをRPAによって紐づけ、自動更新できるシステムを構築することで自動化することができます。
また、RPAに任せることによりリアルタイムで正確な物件情報を公開でき、集客力の向上、営業の事務工数を減らし接客にかける時間を増やすことに繋がります。
情報収集
競合他社に勝つためには膨大な量の物件情報を集め分析する必要があります。しかし、各媒体や他社サイトから手作業で情報を集めるのは効率が悪く、多くの時間を要します。RPAのスクレイピング機能(Webサイト上の情報を集めて修正・加工を可能にする技術)を使うことで、情報を自動で効率的に収集することが可能です。住所・面積・価格などの膨大な情報を自動で得られるのでこれまで手作業で集めていた時間を別の業務に当てることができます。
問い合わせ対応
問い合わせの対応もRPAで効率化することができます。
問い合わせの内容をもとに顧客の知りたい情報をシステムから検索して、その結果をメールに記載して自動返信することによって大幅に時間を削減できます。
入力作業
不動産業界にはFAXなどによる物件情報のやり取りが残っています。中には手書きの資料もあるため、従業員が内容を確認後システムに手入力して、物件情報を更新する作業が今も行われているのが現状です。
顧客や取引先が多い不動産業界では、さまざまな集計作業を行う必要があります。集計作業も比較的作業方法が固定されているケースが多いため、RPAで置き換えることが出来ます。
忙しい月末月初などは、集計作業の量も増え、ヒューマンエラーが発生する可能性が高くなることがこれまでの課題でした。しかしRPAであれば、24時間継続して集計作業を続けても、正確にこなしてくれます。そのため、ヒューマンエラーがなくなり生産性が向上します。
営業活動
営業活動にもRPAを活用することで業務効率化することが可能です。
行動履歴から不動産に興味のある見込客をスコアリングしアプローチすることで、効率的な営業活動を進められます。また、出先で顧客から物件の関連情報について尋ねられた際に、物件の関連情報をRPAが検索してメールを返信する仕組みを構築することにより、必要な資料が数分で集まります。顧客が知りたい情報を的確に提示することで成約率が上がる可能性も高くなります。
RPA導入事例(企業編)
次に不動産業界でRPAを導入した3社を紹介します。
アパマンショップ
不動産賃貸仲介店「アパマンショップ」を全国に約1140店舗を展開している(フランチャイズ店も含む)Apaman Network株式会社はRPAツールの1つであるUiPathを導入し空室情報の収集と登録を自動化しました。RPAを導入し、1つの物件を登録するのに、15分から20分を要していたものを自動化することにより1店舗あたり8時間の作業時間を3.2時間にまで削減しました。
引用:https://www.uipath.com/ja/solutions/case-study/apaman
株式会社日本財託グループ
日本財託グループではRPAを活用しデータ入力などの定型業務や家賃滞納者への電話を自動化することで月間で約150時間、年間1,800時間の業務時間の削減に成功しました。また毎月1,000件におよぶ家賃の払込伝票の作成業務を1部自動化し月に約20時間近くの業務を削減しています。
削減された時間は入居者様のトラブルやお困りごとの対応などに時間を割くことができ、長く入居していただけるための取り組みに時間を費やしています。
引用:http://www.nihonzaitaku.co.jp/mailmag/category03/post-492.html
株式会社オープンハウス
株式会社オープンハウスでは、土地などの仕入れを担当する開発事業部からの相談をきっかけにRPAを導入しました。オープンハウスではグループ全体でおよそ8千棟の戸建て住宅を扱っており、膨大な件数の物件情報の基幹システムへの入力を手作業で行っていました。そこで独自にRPAの機能部品を開発し、これらを組み合わせることにより入力業務の自動化を実現しました。これをきっかけに他の業務にもRPAを導入し、合計34,773時間の工数削減に成功しました。
引用:https://www.uipath.com/ja/solutions/case-study/open-house
RPAを導入する時に気をつけるポイント
では実際にRPAを導入する際に気をつけるポイントを紹介します。
RPA導入は目的ではなく手段という意識をもつ
業務改善方法としてECRSの原則というものがあります。
このECRSの原則は、「E(Eliminate):排除、C(Combine):結合、R(Rearrange):再配置、S (Simplify):単純化」の4つの改善の視点にもとづき、改善部分を洗い出すことを表しています。
RPAの導入を進めていくことは、業務効率化のためにECRSを達成することです。
つまり、RPAの導入は、業務を洗い出す中で無駄なものを取っ払うことと同じなのです。RPAを導入することだけに拘ってはいけません。
すべての業務をRPAで自動化することを意識してしまうと、本当にRPAを必要とする業務ではなくても、RPA化を強行してしまい結果的に効果が薄くなってしまいます。あくまでRPA導入は目的ではなく手段です。もし適切に判断した結果「RPAを導入しない」という選択肢を選んだ場合でも、業務の可視化を行うことで問題点が浮き上がり、改善すべき点を見つけられたことは企業にとって大きな意義があります。
小さな成功体験を作ることから始める
人員やコストをかけた分だけRPAの効果を期待しますよね。しかし、最初から「業務時間を何千時間減らすぞ!」という大きな結果を求めることは、失敗につながります。小さな業務を自動化して社内に広げ、そこから様々な業務に広がっていくというイメージを持ってください。RPAは何でも出来る万能ツールではありません。
このことを認識した上で、身近にある作業で小さなものからRPAで自動化を進めていくことが非常に重要となってきます。1つの業務の自動化・効率化を成功体験とすることで「社内の他の業務でも同じように自動化出来るものはないか」、「少し応用すればもっと大規模な業務を自動化出来るのではないか」というように社内にRPAでの自動化を広めていきましょう。このプロセスを経ることで、結果的に大きな効果が見込めます。
▼RPAの「スモールスタート」について詳しい説明はこちら▼
RPA専門家を上手く活用していく
RPA導入におけるコストを説明する際にも後述しますが、RPAを導入する際には外注と内製の2つの場合があります。外注の場合はRPAの専門家を採用し、社内に常駐してもらいますが、中小企業などはコスト面で外注が難しく内製のケースが多いです。内製の場合は、他の業務と兼業する形でRPAの担当者を決めますが、ほとんどがRPAに関する知識が乏しく、社内で育成していくことが必要になります。
その際に大事なのがRPA専門家を上手く活用していくことです。RPA専門家は、RPA導入においてどんな場面で失敗することが多く、どのようなRPA導入をすれば効果が高く活用できるかをよく理解しています。大企業とは違って社内に常駐のRPA専門家を置けない分、上手く外部のRPA専門家を活用していくことがRPA導入を成功させていく秘訣です。
RPA導入に一歩踏み出そう
不動産業界におけるRPA事情を理解していただけたでしょうか。
RPAを導入することにより業務時間を大幅に削減し業務の効率化が可能になります。RPA、ロボットなどの単語を聞くと難しそうと思いがちですが、RPAの導入を検討するだけでも自分の仕事を見つめ直す良い機会になります。ぜひRPA導入を検討してみはいかがでしょうか。
RoboRunnerスクールの紹介
RPA導入に関する基本的な内容を理解し、いざRPAを導入しようと導入前に入念に準備をしていても、実際にRPAを導入してみると想定外の困難に直面する可能性は十分にあります。先ほどの「RPA導入の成功事例」でも紹介したPeaceful Morning株式会社が提供する「RoboRunner 」はそうしたRPAに関する「困りごと」をオンラインサポーターが即座に解決するサービスです。
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