Peaceful MorningではRPA導入担当者をお招きして「本気でRPA導入企業の役に立つ、生の声が聴ける機会」というコンセプトの下、対談形式のウェビナーを企画しています。
2021年11月に行われた第13回のウェビナーでは2021年度のUiPath Japan MVP 2021にも認定されたシミックソリューションズ株式会社の森田唯さんをゲストにお迎えしました。
2018年に本格始動した社内でのRPA推進から約3年が経過した現在、UiPathロボットの作成数は220台を越え、その中の200台以上が今も稼働中とのことです。そんなシミックソリューションズ株式会社ですが、森田さんが入社した当時はPoC後の運用部署すら決まっていない状態だったそう。
今回はそこから逆転し、専門部署発足、全社展開するまでに至った経緯や苦悩、その乗り越え方について伺いました。また現場の開発者育成には当社の提供する「Robo Runner」を活用いただいており、導入後の効果も話していただきました。
社内での導入体制が定まらず、RPA導入または全社展開を諦めている方は是非今回の記事から森田さんのノウハウを学び、自社にお役立てください。
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企業紹介:シミックソリューションズ株式会社
東京都に本社を構えるシミックソリューションズ株式会社は、日本初のCRO(医薬品開発支援)であるシミックグループのノウハウと経験を最大限に活かし、医薬・医療業界や人材業界においてアウトソーシング、人材紹介、人材派遣を行っています。シミックグループ唯一の人材関連企業としてヘルスケア分野の転職・派遣を支援し人々のキャリア実現に貢献している企業です。
社名 |
シミックソリューションズ株式会社 |
代表者 |
代表取締役社長 羽野 佳之 |
本社所在地 |
東京都港区芝浦一丁目1番1号浜松町ビルディング |
公式サイト |
登壇者紹介
自己紹介
森田唯さん
新卒入社した企業にて様々なシステムの使いづらさをユーザーとして感じ、ユーザーとシステム開発者間のギャップを埋めるために自らの希望でシステム部へ移動。独学でプログラム開発を学び、社内SEとしてスキルを高めながらも、転機であった現場ユーザーとしての思いを忘れることなく様々なIT業務を幅広く行う。2018年にシミックソリューションズ株式会社に入社後は、PoCが終わった状態から膠着状態となっていたRPAの推進プロジェクトを通してRPAの可能性を実感。その後社内外のRPA普及活動に邁進し、その一環としてUiPath公式ユーザーコミュニティ「UiPathFriends」の運営・企画も行っている。それらの活躍が認められ、2021年度のUiPath Japan MVPに認定された。
UiPath Japan MVPについて
「UiPath Japan MVPって何?」という方のために、少し説明を挟みたいと思います。
UiPath Japan MVPとは、
- 技術的に深い知識・経験
- 知識・経験を世の中に発信・共有する意思
- UiPathへの情熱
の3点を兼ね揃えたUiPathユーザーをUiPathが公式に認定するプログラムです。
3回目となる2021年度は、新規メンバーが森田さんを含め2名、2020年度からの更新メンバーが8名の、計10名がUiPath Japan MVP 2021として認定され、2021年10月30日に行われたUiPath Friends Festival 2021にて表彰を受けました。その際、LTにて各MVPが取組みや今後のビジョンについて発表をされているので興味のある方はそちらもご覧ください。
▼UiPath Friends Festival 2021 アーカイブ配信はこちら▼
▼UiPath Friends Festival 2021 イベントレポートはこちら▼
担当部署すら決まっていなかった入社当時。RPAへの不信感が全社展開を阻む
RPA導入検討時期と導入理由
ーーRPA導入の時期とその経緯を教えてください。
森田さん:シミックソリューションズ株式会社としてRPAを導入したのは2017年の秋で、私が入社した2018年には既にPoCが終わっている状態でした。手作業で業務を行うことで生じるコストを減らし、業務のスリム化を行うことが目的であったと聞いています。
しかしながら定性面・定量面でのゴールは明確に定めていた訳ではなく、目的が曖昧な状態での導入でした。
RPA推進部署について
ーーその際、RPA推進を担当する部署は決まってたのですか。
森田さん:決まっていませんでした。
RPAを導入するとなった時に真っ先に担当を任されるのがIT部門ですよね。弊社の場合もIT部門がシステムの基盤を整えるというところまでは決まっていたのですが、「推進」となると現場と近い存在でなければいけません。そうなるとIT部門は踏み込めない。かといってどの部署も、事情の分からない他部署のRPA推進まで面倒を見る自信がないので手を上げづらい。
こういった膠着状態の中で、「誰もやらないのならうちがやらなければ」という流れで推進力のある私の上司が名乗りをあげ、結果として業務内容的にもターゲット的にも関連のない部署がRPA推進を引き受けることになりました。
UiPath選定理由
ーー多くあるRPAツールの中でUiPathを選定した理由は何でしょうか。
森田さん:当時重視していたポイントは「拡張性」です。ノーコードに近い操作のしやすさとサーバーサイドで動くロボットという2つの特徴が全社展開を見据えた時に規模拡大しやすいのではないか、という意見に結びつき、UiPathを導入する決め手になりました。
また、UiPathは日本をターゲットにしているという話を聞いていたので、日本人が課題としている箇所にアプローチしてくれるようなツールを提供してくれるのではと当初から期待をしていたのですが、その結果StudioXやAutomation Hub、Orchestratorのクラウド化など思い描いているものと一致する機能やツールが登場したので期待通りの結果となりました。
専門部署発足から開発者育成までの道筋。社内コミュニティで効率的な現場開発を実現
RPAプロジェクトの体制・規模の推移
ーーRPAプロジェクトの初期の体制はどのようなものでしたか。
森田さん:導入初期、コンサルティング会社やベンダーに入ってもらいPoC段階では20名ほどのメンバーが各自の業務と兼任する形でプロジェクトに携わっていました。そこから社内展開する際に、既存業務との兼ね合いが難しくメンバーが減少してしまった為、私がプロジェクトに参加した2018年は4、5名のメンバーが既存業務の傍らRPAを開発したり推進したりしている状態でした。
ーーそこからどのように推移されていったのでしょうか。
森田さん:そこから残ったメンバーで全社展開に取り組んだのですが、RPAに対する不信感や導入前の業務ヒアリングの煩わしさなどがRPA導入を阻み、思うように推進することが出来ませんでした。そのため、ターゲットを業務部門からバックオフィスに変更してみたり、グループ会社への導入を検討してみたり試行錯誤を重ねた結果、いくつかの部署での導入にこぎつけることが出来ました。その際に作成した数個のロボットによる業務改善の実績や社員の精神的・時間的な負荷からの解放がきっかけとなり、2019年の初めごろに「デジタルIT戦略部」という専門部隊の発足を叶えることが出来ました。
デジタルIT戦略部について
ーーデジタルIT戦略部のメンバー構成はどの様に選定されたのですか。
森田さん:当初は以前から兼任でRPAに携わっていたメンバーを専任化させただけだったので、大きなメンバー変更はありませんでした。その後新たなメンバーを迎えようとなったのですが、社内には人材が不足していた為、IT関連のベンダーにお声がけをしました。しかし2019年当時は今と違い、初めからRPAのスキルを持った人を募集しても集まらないのが現実でした。その為、「既に技術を持った人」ではなく「RPAの開発に興味や意思のある人」、「ローコードでもいいのでユーザー側の立場に立って業務改善に携わりたい人」という2軸で開発者を募集し、徐々にメンバーを増やしていきました。
対象業務の選定
ーーRPA対象業務の選定は具体的にどのように行いましたか。
森田さん:現場から課題を拾い上げる形式をとりました。こちらからRPAで置き替えられる業務をリスト化して提案する方法もありますが、現場の担当者が困っていて何とかしたいと考えているものを優先的に対象業務にしていきました。
開発者育成
ーー現在貴社ではデジタルIT戦略部での開発だけでなく現場の担当者自らが開発出来る環境作りにも取り組んでおられますが、開発者育成手段としてはどの様な方法を活用されましたか。
森田さん:UiPathが無料で提供している動画コンテンツであるUiPathアカデミーをフル活用しています。CoEとして、現場で開発するのが難しいロボットだったり、複数の業務や部署を跨ぐ高度なものはデジタルIT戦略部で取り組んでいるのですが、その場合にも根底にはUiPathアカデミーがあります。
ローカライズされたルール等に関しては、デジタルIT戦略部の中に開発者教育チームを作り、
開発者育成に取り組んでいます。他にも各部署・現場で開発を行う環境づくりの為の工夫としては、UiPath社の方を講師にお招きして80人程のハンズオン研修を行ったり、週に1回のショートスパンの研修を半年間継続的に行ったり、その研修の録画を教材コンテンツにして各自が自分のペースで学習を進められるようにしました。
学習を進める上では「質問できる環境」も必要なので、その為に社内コミュニティを作ったりもしました。現在では、RPA開発の疑問点を投稿するとデジタルIT戦略部の担当者ではなく、社員同士が技術を教え合うという素晴らしいルーティンが出来上がっています。
このような工夫により、CoEのコストを膨らませることなく各部署での開発を支援する体制を作り上げることが出来ました。
目の前の費用より現場ユーザーの声を優先。「無償対応」で見えた真の費用対効果
プロジェクトを大きくしたカギ
ーー社内のRPA推進プロジェクトを大きく出来たポイントや、反省点等ありましたら教えて頂きたいです。
森田さん:弊社の場合、プロジェクト発足当時は費用対効果をかなり気にしていたのですが、その結果相談を頂いても目の前の費用対効果に縛られすぎて開発に踏み切れない事態が起きてしまいました。
そこで、現場のユーザーが対象業務を自ら行うことに関して価値を感じているかどうかを1つの判断軸にし、依頼のあったもの全てに無償対応することにしました。もちろん全部ロボット化することが良いという訳ではありませんが、こうすることで目の前のコストに縛られない業務選定軸が新たに出来るので、自動化の対象となる業務が大幅に増加しました。
実際、そういった依頼を受けて課題を深堀してみたところ費用対効果が見込めるケースも多く、目の前のコストだけで判断しない重要性に気付くことが出来ました。
Robo Runner導入のきっかけ
ーー現在貴社ではStudioXの研修を受けられた現場のユーザー様にRobo Runnerをお使いいただいておりますが、Robo Runnerを導入されるきっかけや決め手は何だったのでしょうか。
森田さん:まさしく求めていたサービスだったからです。
我々のリソースは有限なので、社内のプロモーションや開発、現場ユーザーへの指導等を全て自分たちで行うには充分ではありませんでした。ただ、手が回らないからと言って「研修の録画を見れば分かるでしょう」と現場ユーザーに丸投げしてしまうのは違うと思っていました。
現場ユーザーが学習を進めて自分たちで解決することの難しい課題に直面したときに助けを求められるような、そして兼任が前提である現場ユーザーが「忙しさ」を理由に挫折してしまわないようにある意味強制力のような役割を担いたかったのですがそこに割くリソースが足りず、どうしたものかと考えていた時にRobo Runnerに出会いました。
ーーありがとうございます。現在シミックソリューションズ株式会社様には現場ユーザーの方々に対する開発のペースメイキングをさせていただいております。
森田さん:ミーティングに参加しているメンバーの様子を見ていても、自分たちではここまでサポートすることが出来なかっただろうというのはいつも感じますし、教育のプロフェッショナルとして信頼できるノウハウをお持ちなので安心して任せることが出来ました。また、現場ユーザーだけでなく私たち(デジタルIT戦略部)としても学ぶ点が多くありますので、これからも上手く活用していければと思います。
UiPath Friends運営にも携わる森田さん。「1人で悩まず課題の共有を」
RPA担当者に向けたメッセージ
ーー最後に現在RPAの開発を行っている担当者の方々へお言葉を頂ければと思います。
森田さん:現在は私が参画した2018年当時に比べるとRPAに関する情報が増え開発が進めやすい環境になったと思います。その中でも今回のように経験談を共有する機会は貴重ですし、プロジェクトを進める中で重要になってきます。是非1人で悩まず、皆で課題を共有していきましょう。手段はTwitterのような手軽なものでもいいですし、UiPath Friendsのようなユーザーコミュニティに所属すれば情報交換、共有が出来るのでそういった機会を上手く活用して輪を広げていって下さい。
ーーありがとうございました。
今回インタビューをさせていただいた森田さんは、RPAの担当部署すら決まっていなかった状態から専門部署を発足させ、開発者教育にも自ら携わるという推進力や周囲を巻き込む力が印象的でした。社内でのプロジェクト体制が定まっておらず、全社展開に課題を抱えている方には是非今回のインタビューを参考にしていただければと思います。
最後の言葉にもあった通り、課題を周囲と共有することで悩みを素早く解消することが出来るだけでなく、そこでの関係性が開発や学習のモチベーションとなりより良いサイクルが出来上がります。UiPath Friendsにご興味のある方は是非公式HPをご覧ください。
▼UiPath Friends公式HPはこちら▼
RPA開発者育成に不安がある方へ
今回インタビューをさせていただいた森田さんは限りあるリソースを有効活用するために、現場ユーザーの開発支援においてサポートサービス「RoboRunner 」を取り入れていました。
「Robo Runner」ではRPAの開発・保守等の困りごとをオンラインミーティングやチャットサービスを通してサポートしています。オンライン型の万能サービスなので場所を選ばず現役エンジニアに悩みを相談することが出来ます。
14日間の無料トライアルも用意されているので、開発者教育に不安のある方や業務が多く手が回らない方は一度検討してみてはいかがでしょうか。
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