DXの必要性を感じながらも、「どこから始めればいいかわからない」「社内の理解が得られない」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、DX（デジタルトランスフォーメーション）を成功に導く進め方を、実際の失敗例とあわせて解説します。多くの企業がつまずいたポイントを踏まえ、段階的に取り組める7つのステップと具体的なコツを紹介。DX推進を着実に進めたい方は、本記事を参考にしてください。
DXとは？
DX（デジタルトランスフォーメーション）とは、ITの力を使って生活や仕事の形を変えていく考え方です。もともとは、スウェーデンのウメオ大学の教授が提唱し、「ICTの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させること」とされています。
また、デジタルデータを軸に社会全体を変えていく点も特徴だと言えるでしょう。日本では経済産業省が、デジタル技術を使ってビジネスモデルを変えることと定義しています。つまり、単なるIT化ではなく、企業の仕組みや働き方そのものを見直し、競争力を高めることが目的です。
出典：経済産業省｜そもそもDX（デジタルトランスフォーメーション）とは何か
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DXの推進が必要な理由
変化のスピードが早い現代社会において、企業が成長し続けるためにはDXの推進が欠かせません。ここでは、DXがなぜ重要とされているのか、その理由を3つの視点から解説します。
業務の効率化と生産性向上が企業の存続を左右する
世界と比べて、日本企業はデジタル化の取り組みに遅れがあると言われています。また、労働人口が減少傾向にあるため、人材・リソース不足が多くの企業で課題とされています。こうした背景の中、業務の効率化と生産性の向上は企業にとって急務です。
DXを推進することで、無駄な手作業を減らし、業務を正確かつスピーディーに行うことができます。限られた人材や時間の中で成果を出し、企業が生き残るためには、ITの力を取り入れることが欠かせないでしょう。
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イノベーションの創出が競争優位につながる
DXの魅力は、業務の効率化にとどまらず、新しい価値を創出できる点にもあります。たとえば、無人コンビニではAIカメラで顧客の動きを分析し、新しい販売戦略に役立てているケースがあります。
このようにデジタル技術を活用することで、従来は把握できなかった情報を可視化し、事業やサービスの新たな可能性を広げることができます。競争が激しさを増す今、他社と差別化するには、イノベーションの創出が不可欠です。
データ活用による価値提供が市場で求められる
多様なサービスが次々と展開される昨今において、データを活用して業務を進める重要性がますます高まっています。顧客のニーズを正確に読み取り、製品やサービスに反映させるためには、データの活用が欠かせません。
そのためには、情報を収集・分析し、具体的なアクションにつなげる仕組みが必要です。DXを推進することで、こうした仕組みを整備し、より高品質な価値提供が可能になります。変化の激しい時代に適応していくためにも、データ活用の体制づくりは喫緊の課題と言えるでしょう。
DXの進め方7ステップ
DXを成功させるには、やみくもにツールを導入するのではなく、順序立てて取り組むことが重要です。ここでは、DX推進を効果的に進めるための7つのステップを具体的に紹介します。
ステップ1：導入後のビジョンを明確にする
DXを成功させるには、まず「なぜDXを進めるのか」という目的を明確にしましょう。経営陣がビジョンを示し、それを社内全体に伝えることで、現場の理解と協力が得られやすくなります。
目的が曖昧なままだと、業務の変更に対する反発が生じやすくなり、DXが浸透せずに形だけの取り組みで終わる恐れがあります。トップの意思を明確にし、経営の方向性と一致した目的を設定することが重要です。従業員がDXの目的を正しく理解すれば、主体的な協力も得られるでしょう。
ステップ2：現在の状況を分析し課題を洗い出す
次に、自社の現状と課題を正確に把握することが重要です。DXの取り組み状況や業界の動向を比較することで、自社の立ち位置が明確になります。その上で、特に時間や手間がかかっている業務や、改善効果が大きい業務を優先的に洗い出しましょう。
外部の診断ツールやコンサルティングの活用も有効です。また、複数部門から情報を集め、偏りのない分析を行うことがポイントです。経営層を含めて課題を共有し、全社的な基盤を整えることが、スムーズなDX推進につながります。
ステップ3：DX推進体制を整え計画を立てる
DXを進めるには、専門のチームを設ける必要があります。体制づくりでは、ITの知識を持つ人材、現場業務に詳しい担当者、マネジメント力のあるリーダーなど、役割ごとに適切な人選が求められます。加えて、経営層との連携体制を築くことが欠かせません。
現場と経営が一体となって目的を共有することで、全社的な推進が可能になります。体制構築が完了したら、DXを実現するためのロードマップを策定後、目標を逆算し、マイルストーンを設けて進捗を見える化することが成功のカギとなります。
ステップ4：必要な予算と最適なツールを選定する
DXを進めるには、必要な費用の確保とツール選びが重要です。近年では、DX推進に多くの企業が予算を投じており、特にテレワーク環境の整備や人材育成に投資が集まっています。予算を立てる際には、コスト削減や業務効率化による効果を具体的な数字で示すと、上層部の理解を得やすくなるでしょう。
また、ツール選定では、自社の課題や目的に合致しているかを見極めることが重要です。ITの知識が十分でない場合は、扱いやすさも判断基準となります。目的に沿ったツールを選ぶことで、実行段階でのズレを防げるでしょう。
ステップ5：DX戦略を実行し業務に適用する
準備が整ったら、実際にDX戦略を業務に取り入れていきます。この段階では、「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」「デジタルトランスフォーメーション」の3つのステップを意識しましょう。
まずは、紙や手作業をデジタル化するデジタイゼーションから始め、次に個別の業務やプロセスを整理・最適化するデジタライゼーションを行います。最終的には、組織全体の仕組みをデジタル中心に再構築することが目標です。段階的に進めることで、混乱を防ぎつつ効果的に業務改善が進められます。
ステップ6：成果を評価し改善点を見直す
DXを進めた後は、成果を正しく評価することが欠かせません。あらかじめ設定したKPIや戦略に沿って、計画通りに実施できているかを確認しましょう。結果が目標に届いていない場合は、その原因を分析し、施策や人員配置の見直しを行います。
改善点が明らかになれば、次のアクションに活かすことができ、評価は一度きりで終わるものではなく、継続的に行うことでDXの質が高まるでしょう。数値に基づいた評価を行うことで、客観的な判断が可能になります。
ステップ7：継続的に最適化しDXを定着させる
DXの取り組みは、短期間で完結するものではなく、長期的に継続することが求められます。そのため、PDCAサイクルを用いて常に最適化を図ることが大切です。単にツールを導入しただけで満足していないか、目的に沿った取り組みとなっているかを定期的に確認しましょう。
成果を見える形で評価し、必要に応じて戦略の修正を行うことで、DXが組織に定着しやすくなります。継続的な見直しと改善を通じて、時代や市場の変化に柔軟に対応できる体制が整います。
DXの進め方でよくある失敗例
DXを進める中で、多くの企業が共通の課題に直面しています。ここでは、よくある失敗例とその原因、さらに失敗を防ぐための具体的な解決策を5つの視点から紹介します。
DX導入が目的になり本質を見失う
ありがちな失敗のひとつが、DXを「導入すること」自体が目的となり、本来の業務改善や価値創出といった本質を見失ってしまうケースです。ツールだけを導入しても、現場の課題が解決されなければ意味がありません。
この問題を避けるには、DXの導入前に明確な目的を設定し、「なぜ進めるのか」を全社で共有することが重要です。経営課題の解決や生産性の向上など、具体的な成果を軸に据えれば、形式的な導入に終わらず、実効性のある取り組みが可能になります。
解決すべき課題の優先度が曖昧
課題を洗い出したものの、どれから取り組むべきかの判断がつかず、施策が中途半端になる失敗も少なくありません。すべてに手をつけてしまい、成果が見えにくくなるケースもあります。
このような事態を避けるには、課題の影響度や実現可能性を軸にして、優先順位を明確に決める必要があります。特に、効果の大きい業務や、時間がかかっている業務から着手することで、早期に成果を実感できるようになり、社内の理解と協力も得やすくなるでしょう。
経営トップの関与が不足している
DX推進を現場任せにしてしまい、経営層が関与しないまま進めると、全社的な連携が取れず停滞してしまうリスクがあります。トップが無関心である場合、現場のモチベーションも維持しにくくなるでしょう。
そうならないためには、経営層がDXの意義を理解し、自らの言葉でビジョンを示すことが重要です。経営トップの意思表示は、社内への影響力が大きく、現場の動きを後押しする力になります。経営層が積極的に関与することで、DXは組織全体の課題として認識されるようになるでしょう。
社内の協力が得られず推進が停滞
DXは一部の部門だけで進めるものではなく、全社的な協力が不可欠です。しかし、関係部門からの理解が得られず、非協力的な雰囲気が生まれてしまうと、プロジェクト全体の進行が遅れてしまいます。
この問題を解決するには、事前に社内への丁寧な説明を行い、目的やメリットをしっかりと共有することが求められます。あわせて、各部門に責任者を置き、現場との橋渡し役を担ってもらうと、意見の食い違いを減らし、スムーズに進められるようになるでしょう。
必要なDX人材を確保できず進まない
DXを進めるうえで、人材の不足は大きな課題となります。社内にITやデータ分析の専門知識を持つ人がいない場合、プロジェクト自体が進行できない事例も多く見られます。
この課題を乗り越えるには、社内育成と外部人材の活用をバランスよく行うことが重要です。短期的には外部の専門家の協力を得ながら、長期的には社内の人材育成に取り組むことで、持続的な体制を整えることができます。必要に応じて、外部の研修プログラムなども活用しましょう。
関連記事：DXサービスおすすめ10選｜種類やメリット・選び方を完全網羅
DXの進め方のコツとポイント
DXを成功させるためには、正しい手順を踏むだけでなく、実行段階での工夫や視点の持ち方が重要になります。ここでは、失敗を防ぎ、成果につなげるための実践的なポイントを解説します。
なお、業界別のDX事例については、以下の記事で解説しているため参考にしてください。
関連記事：製造業DXとは？必要性やメリット、手順や成功のポイントを解説
関連記事：農業DXとは？スマート農業との違いやメリット、課題や事例を解説
関連記事：医療DXとは？概要やメリット、詳しい手順や事例を解説
関連記事：小売DXとは？推進の理由やメリット、取り組み事例を解説
ツール導入だけで満足せず業務改革を進める
DXは単に業務をデジタルに置き換える取り組みではありません。目的は、デジタル技術を活用してビジネスモデルや業務の仕組みを根本から変え、企業の価値を高めることにあります。
よくある失敗として、ツールを導入した時点で満足してしまい、本質的な改革につながらないケースがあります。これを防ぐには、ツールはあくまで手段であることを社内全体に周知し、業務フローや提供価値の見直しを継続的に進める姿勢が必要です。段階を追って変化を加えながら、最終的な目的に向かって改革を進めましょう。
DXを担う専門人材を確保し育成する
DXを推進するには、ITに強い人材だけでなく、戦略立案やチームマネジメントに長けた人材も必要です。プロジェクトを前に進めるには、技術と業務の両方を理解したメンバーが不可欠だといえるでしょう。DXを推進するにあたり、必要な人材のスキルについては、以下の記事を参考にしてください。
関連記事：DX人材に必要なスキルとは？育成方法やマインドセットを徹底解説
また、Peaceful Morning株式会社が提供する「DXBoost」は、グループ累計600万名を超える人材データベースから、最短1週間でDX人材を提案するエージェントサービスです。実務経験が豊富な人材を紹介するため、プロジェクトをスムーズかつスピード感を持って推進できます。高度なスキルを持つ人材をすぐに確保したい場合にお役立ていただけます。
社内のデジタル活用スキルを向上させる
DXを進めるためには、現場の社員一人ひとりがデジタルリテラシーを身につけることが重要です。デジタルリテラシーとは、ITスキルのことではなく、デジタル技術を理解し、適切に使える力を指します。
たとえばAIを活用する際、得られた情報の正確性を見極めたり、目的に合った使い方を考えたりする力が求められます。この力を身につけるには、eラーニングや社内研修、外部セミナーなどの活用が効果的です。従業員全体のリテラシーが高まることで、DX推進の土台がより強固になります。
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全社的な戦略に沿って一体となり推進する
DXは特定の部署だけが進めても効果は限定的です。情報処理推進機構の調査でも、全社戦略に基づいてDXを進める企業ほど高い成果を上げていることが示されています。
そのためには、まず経営陣が明確な方向性を示し、それを全従業員に伝えることが重要です。そして、部門間で連携を取りながら、共通の目的に向かって取り組む体制を整えましょう。全社的な理解と協力体制が整えば、DXの推進力は大きく高まります。
まとめ
本記事では、DXの基本的な考え方から、推進のステップやよくある失敗例と解決策、実践時のコツまでを網羅的に解説しました。
目的や課題を明確にし、全社で一体となって取り組むことで、DXは確かな成果につながります。まずはできることから一歩ずつ始め、自社に最適なDXを目指して進めていきましょう。
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