DXの推進には、DX人材の確保と育成が欠かせません。 近年、デジタル技術の進化により、業務効率化や新たなビジネスモデルの構築が求められていますが、その実現には適切なスキルを持つ人材が不可欠です。
本記事では、DX人材に求められるスキルや必要とされる人材類型を解説し、人材不足への対策や獲得方法についても詳しく紹介します。 DX推進を成功させるためのポイントを知り、自社のデジタル戦略に役立ててください。
目次
DX人材に求められるスキルとは？
DX人材には、主に以下の6つのスキルが求められます。
- マネジメントスキル
- 企画立案・構築スキル
- 基礎的なITスキル
- データ分析スキル
- AI・ブロックチェーンの知識
- デザイナーに必要な知識
それぞれ解説します。
マネジメントスキル：戦略策定・問題分析・解決・スケジュール管理など
DXは、単なるITツールの導入ではなく、ビジネスモデルや組織体制の変革を伴う大規模なプロジェクトです。 そのため、関係者との調整やプロジェクトの進行管理を適切に行うマネジメントスキルが必要になります。
DXは、一度の開発で完結するのではなく、アジャイル開発の手法を取り入れ、PDCAを繰り返しながら改善を続けるケースが多いです。このような特性を理解し、スケジュール管理や予算管理、チーム間の調整を適切に行うマネジメントスキルが不可欠といえます。
企画立案・構築スキル：現場と連携をとりビジネスを構築する
DXを成功させるためには、事業全体の戦略に沿った企画立案のスキルが必要です。ただ技術を導入するのではなく、どのような目的でDXを進めるのかを明確にし、具体的な施策を策定する力が求められます。
また、企画を立てるだけでなく、それを実現するための構築スキルも不可欠です。 具体的なビジネスモデルや業務フローを設計し、現場と連携しながら実行に移す能力が求められます。
基礎的なITスキル：最新のIT情報を定期的にインプットする
DXを推進するうえで、基礎的なITスキルは欠かせません。 ITエンジニアでなくても、業界のトレンドや技術の基本を理解し、専門部署と円滑にコミュニケーションを取る力が求められます。
クラウド、データベース、セキュリティの知識があると、DXの導入がスムーズに進みます。 また、国内外の最新技術がどのように活用されているのかを把握し、自社のビジネスに適用できるかを見極める力も重要です。
技術的な知識だけでなく、ITを活用する際のリスクや課題についても理解しておく必要があり、最新のIT情報を常にインプットし、柔軟に活用する姿勢が必要となるでしょう。
データ分析スキル：分析をもとに意思決定・判断を行う
DXでは、データを活用して意思決定を行うことが重要です。 企業活動の多くがデジタル化される中で、データや機械学習を活用した分析の重要性が増しています。
データ分析スキルを活かすことで、業務の課題を可視化し、改善策を見つけることが可能です。 顧客の行動データを分析し、最適なマーケティング施策を立案したり、売上予測を精度高く行ったりすることができるでしょう。
AI・ブロックチェーンの知識：AI(人工知能)、ディープラーニング、ブロックチェーンなど
DXの分野では、AIやブロックチェーンなどの最先端技術の知識が求められます。 これらの技術を活用することで、企業の競争力を高める新たなビジネスモデルの構築が可能になります。
AIを活用することで、業務の自動化や顧客データの分析をより高度に行うことが可能です。 ディープラーニングの技術が進化するなかで、音声認識や画像解析の精度が向上し、多くの業界で導入が進んでいます。
ブロックチェーン技術は、金融業界や物流業界でのデータ管理に活用されており、取引の透明性を高めると同時に、安全なデータ共有を実現する技術として注目されています。 DXの取り組みを成功させるためには、最新技術を理解し、適切に活用する視点が不可欠でしょう。
デザイナーに必要な知識：ユーザーがいかに使いやすいかを模索する
DXでは、ユーザーの視点に立ったデザインが重要です。新しいサービスやシステムを導入する際、安易に操作できる設計でなければ、ユーザーが導入時からスムーズに活用できません。
デザイナーには、ビジネスの視点とユーザーの視点の両方を総合的に考えるスキルが求められます。また、サービスや製品の方針を明確にし、それに沿ったデザインを考えることも重要です。DXでは、単なるデザイン作業ではなく、ビジネス全体を考慮した設計が求められるため、デザイナーも戦略的な視点を持つことが必要でしょう。
DX人材に必要とされる人材類型
DXの推進には、専門的な知識やスキルを持つ人材の確保が不可欠です。経済産業省が発表した「デジタルスキル標準」では、DXを推進する上で必要な人材類型が明確に示されています。
- ビジネスアーキテクト
- データサイエンティスト
- ソフトウェアエンジニア
- デザイナー
- サイバーセキュリティ
ここでは、経済産業省のデジタルスキル標準の内容をもとに、それぞれの人材類型について解説します。
出典：経済産業省｜デジタルスキル標準Ver1.1 人材類型の定義
ビジネスアーキテクト
ビジネスアーキテクトは、DX戦略の全体設計を担う重要な役割を持ち、企業がDXを進める際、新しいビジネスモデルの構築や業務プロセスの最適化が求められます。 これらを実現するために、デジタル技術を活用した戦略立案やプロジェクトの統括を行うのがビジネスアーキテクトの役割です。
また、現場と経営層の橋渡しをするポジションでもあり、組織全体を巻き込みながらDXを推進する力が求められます。 そのため、業務改善やデジタル技術の知識に加え、プロジェクトマネジメントスキルやコミュニケーション能力が不可欠です。
ビジネスアーキテクトは、単なるシステム導入の調整役ではなく、DXの成功を左右する中心的な役割を果たします。 そのため、デジタル技術の進化に対応しながら、ビジネスの変革をリードできる視点を持つことが重要です。
データサイエンティスト
データサイエンティストは、企業の意思決定をデータに基づいて支援する役割を担います。DXの進展により、企業は膨大なデータを収集・分析し、経営判断や業務改善に活かす必要があります。
この職種では、統計学や機械学習などの知識を活用し、データの傾向を分析するスキルが必要です。 具体的には、売上の予測、顧客行動の分析、不正検知、マーケティング戦略の最適化など、多岐にわたる業務で活用されています。
また、データを分析するだけでなく、結果を経営層や他部門に分かりやすく伝える能力も必要です。そのため、プレゼンテーション能力やビジネス課題を解決するための論理的思考も求められるでしょう。
ソフトウェアエンジニア
ソフトウェアエンジニアは、DX推進のためのシステム開発やアプリケーション設計を担当する技術者です。DXの基盤となるシステムの構築や、業務プロセスを効率化するソフトウェアの開発が主な業務となります。
求められるスキルとしては、プログラミング、データベース設計、クラウド技術、API連携などが挙げられます。 さらに、アジャイル開発の知識を持ち、継続的な改善を行う能力も重要です。
また、DXではビジネスの変化に迅速に対応できるシステムの構築が求められます。 そのため、単なるコーディングスキルだけでなく、ビジネス要件を理解し、適切なシステム設計ができる能力が不可欠です。
デザイナー
DXにおいてデザイナーは、ユーザー視点でのサービス設計を担う重要な役割を果たします。デジタル化が進む中で、システムやアプリの使いやすさが、企業の成功を左右する要因の一つです。
特に、UIやUXを最適化するスキルが求められ、顧客が容易に操作できるデザインを設計することで、サービスの利便性を向上させ、利用率の向上につなげられるでしょう。
また、デザイナーにはビジネス視点と技術視点の両方を持つことが求められます。 企業の方針を理解し、開発チームと連携しながら、事業の価値を最大限に引き出すデザインを作ることが重要です。
サイバーセキュリティ
DXが進む中で、サイバーセキュリティの専門家の重要性が増しています。 企業がデジタル化を推進する一方で、サイバー攻撃のリスクも高まっており、情報漏洩やシステム障害を防ぐ対策が不可欠です。
サイバーセキュリティ担当者は、企業のデータやシステムを守るための戦略を策定し、ネットワークの監視、不正アクセスの防止、セキュリティポリシーの策定、従業員への教育など、幅広い業務を担当します。
また、最新のセキュリティ技術やサイバー攻撃の動向を把握し、継続的に対策を強化することも求められるため、 企業の信頼を守るために、サイバーセキュリティの専門家は欠かせない存在となるでしょう。
DXスキルを身につけた人材不足が企業の課題に
日本のDX人材不足は深刻な課題となっています。IMDの「世界のデジタル競争力ランキング2023」では、日本は63ヶ国中32位に後退し、特に「人材/デジタル・技術スキル」は最下位でした。
総務省の調査でも、日本は米国・ドイツ・中国と比較して、人材不足を最大の障壁と認識する割合が高いことが示されています。企業は、DX人材の採用・育成や外部人材の活用を進め、デジタル技術を活用できる環境を整備する必要があるでしょう。
出典：総務省｜国内外における最新の情報通信技術の研究開発及びデジタル活用の動向に関する調査研究（2022）
DXスキルを身につけた人材を獲得する方法
DXスキルを身につけた人材を獲得する方法は、以下の3つが考えられます。
- DX人材の採用：採用活動や競合他社からスカウトする
- DX人材を育成する：座学・OJT・ネットワーク構築にて育成
- 経験豊富な外部の人材を活用：専門性の高いスペシャリストをアサインする
それぞれ解説します。
DX人材の採用：採用活動や競合他社からスカウトする
DXを推進するには、即戦力となる人材の採用が有効です。特に、データ分析、AI、システム開発に強みを持つ専門人材を確保することで、企業のDX推進を加速できるでしょう。
採用方法としては、転職市場での募集やリファラル採用、競合他社からのスカウトなどがあります。優秀なDX人材は限られているため、柔軟な雇用形態の導入や魅力的な報酬体系を整えることが必要です。社内でDX推進チームを組織し、企業文化としてDXを定着させることも重要でしょう。
DX人材を育成する：座学・OJT・ネットワーク構築にて育成
企業がDXを推進する上で、既存社員のスキルアップを図ることも有効な手段です。外部からの採用が難しい場合、社内研修や実践的なOJTを通じてDXスキルを育成することが求められます。
最新のデジタル技術に関する座学研修、プロジェクトを通じた実践的な学習（OJT）、外部の専門家や他企業とのネットワーク構築などが効果的です。デジタル技術の活用事例を学ぶ機会を増やし、現場レベルでのDX推進を支援する仕組みを整えることも必要です。
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経験豊富な外部の人材を活用：専門性の高いスペシャリストをアサインする
即戦力が求められる場合は、外部の専門家を活用するのも有効な手段です。特に、AIやデータ分析、クラウド技術などの高度なスキルを持つ専門家をプロジェクト単位で採用することで、迅速なDX推進が可能になります。
外部のDX人材は、最新の技術動向に精通しているため、企業に新たな知見をもたらすことが期待できます。フリーランスやコンサルタントの活用、外部企業との提携など、多様な方法で人材を確保することが可能です。
DXスキルを向上させるために必要なマインドセット
DXスキルを向上させるために必要なマインドセットは以下の5つです。
- 新しい知識やスキルを積極的に学び変化を受け入れる
- 事実ベースで物事を判断する
- 従来の枠組みにとらわれずに発想する
- 小さな改善を繰反復してアプローチする
- 異なる専門性を持つ人々と共に価値を創造する
それぞれ解説します。
新しい知識やスキルを積極的に学び変化を受け入れる
DXの領域では、技術や市場の動向が常に変化し続けているため、最新の知識を積極的に学ぶ姿勢が欠かせません。新しい技術やツールの登場に伴い、従来のやり方が通用しなくなるケースも多くあります。 そうした変化に対応するためには、固定概念を持たず、新しい情報を学び続けることが重要です。
また、変化に対する抵抗を減らし、試行錯誤しながら柔軟に適応できる姿勢も求められます。新しい知識を吸収し、業務に活かすことで、DXの成功確率を高めることができるでしょう。
事実ベースで物事を判断する
DXでは、データに基づいた意思決定が求められます。 感覚や経験だけに頼るのではなく、客観的なデータを分析し、根拠のある判断を行うことが重要です。顧客の購買行動を分析し、最適なマーケティング戦略を立てる際には、収集したデータを正確に評価し、仮説を立てながら改善を進める必要があります。
また、事実ベースの判断を習慣化することで、ビジネスの透明性が向上し、組織全体の意思決定スピードが高まるでしょう。DXを推進する上で、論理的思考とデータ活用のスキルを磨くことが重要です。
従来の枠組みにとらわれずに発想する
DXでは、過去の成功事例に固執せず、新しい発想を取り入れることが求められます。 例えばこれまで紙ベースであった申請業務をデジタル化することで、大幅に業務効率を向上させられる可能性があります。 また、AIや自動化技術を活用することで、これまで人が行っていた作業をよりスムーズに実施できるようになるでしょう。
小さな改善を繰り返してアプローチする
一度の大きな改革ではなく、小さな改善を積み重ねることが重要です。特に、アジャイル開発の手法を取り入れ、PDCAサイクルを回しながら継続的に改善を進めることが求められます。
新しいシステムを導入する際に、最初からすべてを変えるのではなく、一部の業務で試験運用を行いながら、フィードバックを反映させていくといった手法が有効です。こうした小さな改善の積み重ねにより、DXの効果を最大化し、スムーズな変革を実現できるでしょう。
異なる専門性を持つ人々と共に価値を創造する
DXでは、異なる分野の専門家が協力し、チームで価値を創造することが求められます。 デジタル技術は単独で機能するものではなく、ビジネス、デザイン、エンジニアリングなど、複数の分野が連携して初めて成果を生み出します。
例えば、エンジニアが開発したシステムをスムーズに活用するには、ビジネス部門やデザイナーの視点を取り入れることが重要です。 各分野の知見を統合し、最適な解決策を生み出すことがDXの成功につながります。
まとめ
DXを推進するには、適切な人材の確保とスキル向上が欠かせません。 DX人材には、データ分析やIT技術の活用、従来の枠組みにとらわれない発想が求められます。 企業は、採用や育成、外部人材の活用を組み合わせ、DX推進体制を強化することが重要です。
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