経理業務の負担が大きく、手作業の多さや人員不足に悩んでいる方も多いのではないでしょうか。紙ベースの書類管理や手入力の作業は時間がかかりミスの原因にもなるため、業務の効率化が不可欠です。
経理業務を効率化すれば、ヒューマンエラーを減らし、コア業務に集中できる環境が整います。本記事では、経理業務の効率化方法5選を紹介し、成功事例や注意点を解説します。経理業務の改善を検討している方はぜひ参考にしてください。
経理業務とは？効率化が必要な理由
経理業務とは、企業のお金や取引の流れを記録・管理することです。日々の支払い処理や請求書の作成、決算業務などを通じて、会社の財務状況を正確に把握する役割を担っています。
経理業務は、大きく「出納」「起票」「記帳」「集計」の4つに分類され、業務の内容によって処理のサイクルも異なります。以下では、経理業務が必要な理由について解説します。
手作業の業務が多い
経理業務では、多くの作業が手作業で行われています。請求書や領収書の確認、システムへのデータ入力、伝票処理など、細かな業務が積み重なるため、作業負担が大きくなりがちです。特に、紙の請求書が届いた場合は、一つひとつ手作業で確認しながら入力しなければならず、業務にかかる時間が増えてしまいます。
このように手作業が多いと、どれだけ慎重に作業を進めても入力ミスや計算間違いが発生する可能性があります。ミスが生じると、修正作業や再確認の手間が増え、さらに業務の負担が大きくなってしまいます。
紙ベースでの書類がほとんど
経理業務では、紙ベースの書類が多く使用されています。請求書や領収書、契約書など、日々の業務で扱う書類のほとんどが紙の形式で保存されており、データの検索や管理に時間がかかる要因となっています。
紙の書類は整理して保管していても、業務の効率を下げる要因となり、大量の書類を管理する企業では、必要な書類をすぐに見つけられないことも少なくありません。また、紙の書類は紛失や劣化のリスクがあり、重要な情報を適切に保管するための対策が必要になります。
専門的なスキルと知識が求められる
専門的なスキルと知識を必要とする分野のため、仕訳のルールや税制の理解、正確な計算能力が求められます。これらの知識がないと、正しい処理ができず、ミスが発生する可能性が高まるでしょう。
また、会計基準や法律の変更にも対応しなければなりません。業務が属人化しやすく、担当者が異動や退職した際に、引き継ぎが難しくなることもあります。そのため、効率的な業務体制の構築が求められます。
人員不足
経理部門は、直接的に利益を生み出す部署ではないため、企業によっては最低限の人数で運営されています。そのため、担当者一人あたりの業務量が多くなりがちです。業務過多になると、ミスの発生リスクが高まり、処理が遅れる可能性もあります。
特に、決算期や月末月初は業務が集中し、残業が増える傾向にあります。人員が不足していると、こうした繁忙期の負担がさらに大きくなり、結果として業務効率が低下することが懸念されるでしょう。
経理業務を効率化する方法5選
経理業務を効率化する方法は、主に次の5つが挙げられます。
- 経理業務のフローを可視化する
- 会計ソフトや請求書発行システムを導入する
- ECRSのフレームワークを活用する
- 一部の業務を経理代行サービスに任せる
- RPAツールを導入する
以下でそれぞれ解説します。
経理業務のフローを可視化する
経理業務を効率化するためには、業務フローの可視化が欠かせません。どの業務に時間がかかっているのか、どの工程でミスが発生しやすいのかを把握することで、改善すべきポイントが明確になります。
具体的には、各業務の流れをフローチャートなどで整理するとよいでしょう。請求書処理、入金管理、月次決算といった業務ごとに担当者や手順を見える化することで、無駄な作業を削減できます。
さらに、タスク管理ツールを導入すれば、進捗状況をリアルタイムで共有できます。結果、業務の属人化を防ぎ、作業の抜け漏れも減らせるでしょう。
会計ソフトや請求書発行システムを導入する
手作業での経理業務は時間がかかり、ミスの原因にもなります。会計ソフトを使えば、仕訳の入力や帳簿管理を自動化でき、作業時間を大幅に短縮できるでしょう。また、請求書発行システムを活用すれば、取引先ごとに請求書を作成する手間を減らすことも可能です。
これらのツールを導入することで、経理担当者の負担を軽減しながら、業務の正確性も向上します。紙の請求書をなくすことで、保管や管理の手間も削減できるでしょう。
ECRSのフレームワークを活用する
ECRSのフレームワークを活用すれば、経理業務の見直しを効果的に行えます。このフレームワークは、「排除（Eliminate）」「結合（Combine）」「入れ替え（Rearrange）」「簡素化（Simplify）」の4つの視点から業務を改善する方法です。
たとえば、不要な書類や手続きを排除すれば、業務量を削減できます。また、似たような業務を結合し、一連の作業として管理することで、無駄を減らすことも可能です。
ECRSのフレームワークを取り入れることで、経理業務の効率が向上し、担当者の負担も軽減されます。特に紙ベースの業務が多い企業では、ペーパーレス化と組み合わせることで、より大きな効果が期待できるでしょう。
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一部の業務を経理代行サービスに任せる
経理業務の負担を軽減するには、一部の作業を外部の経理代行サービスに任せるのも有効な手段です。特に、仕訳入力や請求書の発行、給与計算といった定型業務は、外部委託することで社内リソースを有効活用できます。
経理代行サービスを活用することで、社内の人員をより重要な業務に集中させられます。また、専門家による正確な処理が期待でき、ヒューマンエラーのリスクも減らせるでしょう。
ただし、委託先の選定には注意が必要です。サービス内容やサポート体制を十分に確認し、自社に適した代行サービスを選ぶことが重要になります。
RPAツールを導入する
単純作業が多い経理業務では、RPAを導入することで、大幅な業務効率化が可能です。RPAは、定型業務を自動化するツールであり、データの入力や照合作業などを人の手を介さずに処理できます。
たとえば、請求書のデータをエクセルに転記する作業をRPAで自動化すれば、入力ミスを防ぎつつ処理時間を短縮できます。さらに、銀行の入出金データを自動で取得し、帳簿に反映させることも可能です。
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経理業務を効率化するメリット
経理業務を効率化すると、以下のようなメリットがあります。
- ヒューマンエラーが軽減される
- コア業務に注力できる
- 用紙や印刷コストが不要になる
それぞれ解説します。
ヒューマンエラーが軽減される
経理業務の多くは、数値の入力やデータの照合といった正確性が求められる作業が中心です。しかし、手作業による処理では、どれだけ慎重に行ってもヒューマンエラーが発生する可能性があります。ミスが発生すると、修正作業に時間がかかり、結果的に業務全体の効率が低下してしまいます。
会計ソフトやRPAを活用すれば、ヒューマンエラーを大幅に減らすことが可能です。データの入力や計算ミスを防ぎ、作業の正確性を向上させられるでしょう。
また、自動化されたシステムでは、手作業では気付きにくい入力ミスや重複データを即座に検出できます。修正の手間を減らしながら、より正確な経理処理が実現できるでしょう。
コア業務に注力できる
請求書の発行や仕訳入力など、経理業務には定型的な作業が多く含まれています。これらの業務に時間を取られると、財務分析やコスト削減などの戦略的な業務に割く時間が不足しがちです。
業務の効率化を進めることで、こうした定型業務の負担を軽減し、重要な業務に集中できる環境を整えられます。たとえば、会計ソフトを活用すれば、手作業によるデータ入力の手間が削減され、経理担当者が財務戦略の立案に時間を確保しやすくなるでしょう。
また、業務フローの見直しを行い、効率的な作業手順を確立することで、チーム全体の生産性向上にもつながります。結果として、企業の意思決定を支える業務にリソースを割くことができるようになるでしょう。
用紙や印刷コストが不要になる
経理業務では、請求書や領収書、決算書類など、多くの書類を紙で管理することが一般的でした。しかし、紙ベースの運用では、印刷や保管にコストがかかるだけでなく、書類の検索や管理に手間がかかるという課題があります。
業務の効率化を進め、デジタル化を取り入れることで、紙の使用を削減し、経費を抑えることが可能です。電子請求書を導入すれば、印刷や郵送の手間が不要となり、作業負担の軽減にもつながります。
経理業務の効率化成功事例2選
経理業務の効率化に成功した事例を2つ紹介します。
商社
幅広い資材を扱い多くの取引がある商社では、毎月15,000件に及ぶ発注書の処理を手作業で行っていました。紙ベースの管理が中心で、データ入力の負担やヒューマンエラーが課題となっていました。
そのため、業務効率化や担当者の負荷削減のためにRPAを導入し、発注書の仕分けやデータ入力を自動化、処理時間の大幅な短縮と入力ミスの削減を実現しました。結果として、従業員は付加価値の高い業務に集中できるようになり、経理業務の効率化が進みました。
運送業
社員の離職がきっかけとなり在職者の負担が増えた運送業の企業では、請求書や経費精算など多くの手作業が発生し、業務の負担が大きくなっていました。特に、取引先ごとに異なるフォーマットで請求書を管理していたため、確認作業やデータ入力に時間を要していました。
そこで、RPAを活用し請求書発行プロセスを自動化し、フォーマットの違いに対応しながら、一括処理を実現することで、作業時間を大幅に削減しました。さらに、データの一元管理により、過去の請求情報の検索・確認も容易になり、業務の正確性とスピードが向上し、取引先とのトラブル減少にもつながりました。
経理業務を効率化する際の注意点
経理業務を効率化する際の注意点は、以下の3つです。
- システム導入時にセキュリティ対策をする
- ツールを導入する際には自社システムに適合するか確認する
- 従業員へマニュアルやフォローを欠かさない
それぞれ解説します。
システム導入時にセキュリティ対策をする
経理業務の効率化には、クラウド会計ソフトやRPAツールの活用が有効ですが、データの取り扱いには十分な注意が必要です。特に、経理業務では機密性の高い情報を扱うため、セキュリティ対策を怠ると情報漏洩や不正アクセスのリスクが発生します。
このリスクを回避するには、システム導入時にアクセス権限を適切に設定し、多要素認証を導入することが重要です。また、定期的にセキュリティチェックを行い、社内のセキュリティポリシーを整備することで、安全な環境を維持できます。
ツールを導入する際には自社システムに適合するか確認する
ツールを導入する際は、自社の既存システムとの互換性を確認することが重要です。システム同士の連携がうまくいかない場合、データの移行作業やフォーマットの変換に手間がかかり、かえって業務が煩雑になる可能性があります。
導入前には、会計ソフトや請求書発行システムが現在の業務フローに適応できるか検討し、必要に応じてAPI連携の有無を確認しましょう。また、試験運用を行うことで、実際の業務にどのような影響があるのかを把握できます。
従業員へマニュアルやフォローを欠かさない
業務効率化のために新しいシステムやツールを導入しても、従業員が適切に使いこなせなければ十分な効果を得ることはできません。特に、経理業務は専門的な知識が求められるため、新しいツールに対する抵抗感を持つ人も少なくありません。
そのため、導入時にはわかりやすいマニュアルを作成し、従業員がスムーズに操作できる環境を整えましょう。また、研修や勉強会を実施し、実際の業務で活用できるようにフォローアップすることも効果的です。
まとめ
本記事では、経理業務を効率化する方法として、業務フローの可視化、会計ソフトの導入、ECRSの活用、経理代行の活用、RPA導入の5つを紹介しました。実際に、商社や運送業の事例でも、RPAを活用することで大幅な業務改善が実現しています。
経理業務の効率化は、業務負担の軽減やヒューマンエラーの削減につながる重要な取り組みです。紙ベースの書類管理や手作業の多い業務は、時間がかかるだけでなく、正確性を欠くリスクもあります。
効率化を進める際には、セキュリティ対策や社内体制の整備も欠かせません。自社の状況に合った方法を選び、よりスムーズで生産性の高い経理業務を目指しましょう。
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