DX推進が世界的に進むなか、最近では業務の効率化を図るツールも多く展開されています。そのなかのひとつに「Power Platform」があります。Microsoft社が提供する業務効率化アプリケーションで、すでにOffice製品を使用している方にとっては利便性が高く使いなじみやすいことが特徴です。
この記事では、Power Platformの概要と現在展開されている5種類のサービス、使用におけるメリットや注意点について解説します。
目次
Power Platformとは?
アプリケーション作成やデータ収集・分析などを最小限のコードで行えるMicrosoft社の業務効率化ツールを「Power Platform」と呼びます。いわゆるローコード開発ツールと呼ばれており、高度なプログラミングスキルを使うことなく業務アプリケーションの開発から運用、管理までを一貫して行うことができます。
自社にとって利便性に長けたツールを作りたいなど内製化の実現はもちろん、トラブルや管理などに欠かせない存在だったベンダーからの脱却にもつなげられます。特にPower Platformの場合は、Microsoft社の「Microsoft 365」との併用によって、幅広い業務の最適化を実現できます。
Power Platformにおける5つのサービス
Power Platformは下記のように5つのサービスで構成されています。
- Power BI
- Power Apps
- Power Pages
- Power Automate
- Copilot Studio(旧Power Virtual Agents)
ここではそれぞれのサービス概要について解説します。
参考:Microsoft|Power Platform のライセンスに関する FAQ
1. Power BI
Power BIは、ビッグデータの迅速な解析や可視化するアプリケーションです。Microsoft社のExcelでもデータの作成・編集・管理ができますが、データ量が多いほど重くなり、ファイルが開きにくくなるなどの欠点があります。膨大なデータに対応したPower BIであれば、分析における負荷を最小限に抑え、スピーディなデータ解析が行えます。
参考:Microsoft Power Platform|Power BI – データの視覚化
2. Power Apps
Power Appsは、アプリケーションを作成し、チームでの共有が可能になるクラウドサービスです。業務目的など多様なシーンでのニーズに合わせやすい実用的なアプリケーションが作成でき、従来の作業工程が崩れる心配がありません。
種類は3つあり、それぞれで特徴が異なります。
- キャンパスアプリ:作成者によってデザイン・機能を自由に設定できる
- モデル駆動型アプリ:データを基にアプリケーションが半自動で構築される
- ポータル:デフォルトで用意されたフォームやビューを組み合わせてチーム内外にWebサイトを公開できる
多様な目的に合わせやすいので、さまざまなシーンで活用できるでしょう。
参考:Microsoft for business|Power Apps の使い方を解説! コードを書かないアプリ作成の極意とは
3. Power Pages
Power Pagesは最小限のコード、または使うことなくビジネス用Webサイトが作成できるツールです。Power Appsの「ポータル」がリニューアルされたサービスにあたり、充実したデザインを使用しながらWebサイトの構築が可能になりました。
デフォルトのテンプレートを活用すればコードを入力する手間を省きながらWebサイトを作成できます。
参考:Microsoft Learn|Power Pages とは
4. Power Automate
Power Automateは、業務の自動化プロセスの作成に使用するツールです。あらかじめ目的に合わせた設定が必要ですが、例えば英語で届いたメールを自動で翻訳させるプロセスを作成すれば、メールを開いたタイミングで日本語に訳しスムーズな把握が実現します。
また設定する内容によっては、特定の方からメールが届いたときにチャットツールから通知が届く仕組みや、メールに添付されたファイルをGoogle Driveに自動保存する機能など、業務における細かな作業の自動化につなげることができます。
なお、Power Automateは1,000以上の外部サービス・アプリケーションに対応しており、「コネクタ」という機能を使うことでスムーズな連携が可能です。
参考:Process Automation プラットフォーム|Microsoft Power Automate
参考:Microsoft|Power Automate に関する入門情報
Power AutomateとPower Automate Desktopの違い
Power Automateはクラウドベースの自動化ツールで、SharePointやTeams、Asanaなどのオンラインサービスと連携し、データ処理やワークフローの自動化を行うことができます。一方、Power Automate DesktopはPC上での操作を自動化できるデスクトップアプリで、ファイル操作やブラウザ操作、エクセル処理、特定の時間にPCをロック・シャットダウンするといったローカル作業に特化しています。用途によって両者を使い分けることで、より広範な業務自動化が可能になります。
関連記事:Microsoftが提供するPower Automate forDesktopとPower Platformとの関係とは?
5. Copilot Studio(旧Power Virtual Agents)
Copilot Studioは従来のPower Virtual Agentsがリニューアルされたもので、ビジネス用のチャットボットをコードを使わず作成できるツールです。
自然言語処理技術を搭載した自己学習対応AIによりボットに対して継続的な修正・改善が行われるので、社内外の問い合わせ用などの長期使用に向いています。Power Automateとの連携によって高度な業務フローの自動化も可能です。
参考:Microsoft Copilot Studio|Copilot のカスタマイズとエージェントの作成
参考:Microsoft|Copilot Studio の統合作成へのアップグレード
Power Platformのメリット
最小限のコード使用、あるいはまったくコードを使用せずに業務の細かな作業を自動化につなげられるPower Platformですが、活用においてどのようなメリットが期待できるのでしょうか。
Microsoft製品との親和性に優れている
Power Platformは、Microsoft社の製品です。既にMicrosoft社のOfficeをはじめとしたツールを使用しているのであれば、円滑な操作が見込まれるのはメリットでしょう。例えばDynamics 365を利用している場合、Power Platformでデータをそのまま使うことができます。Dynamics 365の機能をさらに増やしたいといったときにも有効です。
また、現在Microsoft社の製品を使用していない場合でも、コネクタが用意されているので、一般的なツール連携では手間がかかる作業もコストを抑えて連携できます。
費用の削減につながる
最小限のコード使用、あるいはまったく使用せずにアプリケーション開発ができるので、ベンダーとの連携などに生じていた開発コストを削減できます。5種類のサービス・ツールが1つに集約されているので、複数のシステムを活用することで運用コストの増加も予防できます。
幅広い業務の最適化に期待できる
業務全体の最適化に対応した特徴から、さまざまな分野・作業の最適化につながります。例えば、業務全体に対応したツールを複数導入した場合、どのツールがどの業務に適しているかなどがわかりにくく、混乱を招く可能性があります。
アプリケーション作成からデータの連携をはじめ、収集したデータ分析もPower Platformで完結できるので、既にOfficeソフトを使用しているのであれば、現在の業務状況に応じた最適化が可能になります。
Power Platformの注意点
Power Platformには業務全体の最適化や、5つのサービス・アプリケーションの活用によるコスト削減など、魅力的なメリットが多く存在します。しかし、使用においてはこれから解説する2つの注意点に留意する必要もあります。
費用がかかる
Power Platformの基本機能は無料ですが、充実度や利便性を求める場合はライセンス費用が掛かるので注意しましょう。
例えばPower Automate Freeを使用している方が、他社のサービス・アプリケーションと連携したい場合です。この場合、標準コネクタのみに限定されることから、これまでのサービス・アプリケーションと連携できない可能性があります。
さまざまな他社サービス・アプリケーションと連携しながらPower Automateを使いたいときは、Power Automate Premiumのライセンスを取得し、コネクタを充実させる必要があります。
参考:Microsoft Learn|Power Automate ライセンスの種類 – Power Platform
細かい仕様の設定が難しい
Power Platformは、最小限のコード入力、あるいはコードをまったく使用せずに利用できる特徴がある一方で、使うシーンによっては設定に難しさを感じる可能性があります。
例えば特定のニーズに合わせたアプリケーションを作成する場合です。自動化や最適化を目的とする場合だと、基本機能では対応できないことがあります。この場合、Power Platformの機能を拡張しなければならず、Premiumライセンスの取得やカスタム開発の追加、外部プラグインの導入が必要になります。
デジタル技術に精通した従業員が在籍しているのであれば、スムーズに対応できますが、適した人材が不足しているときは、外部企業によるサポートを検討することになるでしょう。
Power Platformを導入|必要なライセンスや価格
Power Platformを導入する上では、必要なライセンスや価格について押さえておくことも大切です。ここでは導入における基本知識について解説します。
導入にはライセンスが必要
Power Platformの使用にあたってはライセンスが必要です。とはいえPower Platformというライセンスはなく、基本的には使いたいアプリケーションに応じて個別で有償ライセンスを契約する必要があります。
Power Platformの種類 |
ライセンスの種類 |
Power BI |
・無料アカウント ・Power BI Pro ・Power BI Premium Per User ・Power BI Embedded |
Power Apps |
・無料アカウント ・Power Apps Premium(月額2,998円・1,799円の2種類あり) |
Power Pages |
・無料試用版 ・Power Pages 認証済みユーザー ・Power Pages 匿名ユーザー |
Power Automate |
・無料試用版 ・Power Automate Premium ・Power Automate Process |
Copilot Studio(旧Power Virtual Agents) |
・Microsoft Copilot Studio ・従量課金制 ・Microsoft 365 Copilot |
サービス・ツールによって、無料アカウントの作成ができるものや試用版として期限付きで無料で利用できるなどの違いがあります。また、Copilotの使用はいずれも有料となっており、すでにMicrosoft 365のライセンスがあれば使用することができます。
参考:Microsoft Power Platform|Power BI:料金プラン
参考:Microsoft Power Platform|Power Apps の価格
参考:Microsoft Power Platform|Power Pages: 料金プラン
参考:Process Automation プラットフォーム|Microsoft Power Automate
参考:Microsoft Copilot Studio|Copilot のカスタマイズとエージェントの作成
価格は各アプリケーションによって異なる
Power Platformの価格は、アプリケーションの種類やライセンスによって異なります。例えばPower BIであれば、Power BI Proだと月額1,650円(税込)ほど、Premium Per Userであれば月額3,300円ほどの料金が掛かります。
また、Power BI Embeddedになると料金は変動制となり、Microsoft社に問い合わせる必要があります。詳細についてはMicrosoft社の以下のリンクからご確認ください。
Microsoft Azure|価格 – Power BI Embedded
また、Power Platformの価格については別記事でも紹介していますので、こちらもご覧ください。
関連記事:【初心者必読】Power Platformとは?価格〜導入ポイントまで幅広く解説!
まとめ
Power platformは、Microsoft社が提供する業務の効率化を図るアプリケーションです。エンジニアがいなくてもスムーズな導入・活用が実現することから、Microsoft365やOffice365を使用している人にはおすすめといえるでしょう。
とはいえ、使いやすいツールを導入したとしても、使用においては何らかのトラブルによって業務が中断するなどのリスクもあり、この場合は迅速な対処が求められます。エンジニアをはじめとしたデジタル技術に精通した従業員がいないと対処できず、業務に遅れや支障を来す可能性があるでしょう。
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