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世界最高齢開発者が伝えるこれからのシニア世代の働き方(後編)

『これからのシニア世代の働き方』についてヒントをいただくべく、前編では『世界最高齢プログラマー』若宮正子さんの紹介をしました。

後編のインタビューでは、これから迎える2025年問題(団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になる年)に向けて『これからのシニアの活躍の仕方について』『ジェンダーギャップ指数の低いこの日本社会における女性の活躍の仕方について』など日本の抱える課題について、若宮さんのご意見を聞きました。

前編はこちら↓

 

 

自分で自分を育てる感覚を持つことが大切

――これからの『シニアの働き方』についてはどのようにお考えでしょうか?

若宮さん:私は人生に定年はないと思うんです。子育ても終わった人はこれからやりたいことができるはずです。

これからは海外旅行、大学、色々なことが自由にできる時代であって、どの世代も独学をしながら主体性をどんどん高めるべきだと私は思います。学生のときは親に学校に行けと言われて強制的にでも学校にいったと思います。でも自分でやりたいと思って学校に行った人はそんなに多くはなかったのではないでしょうか?

だから今度は『自分で自分を育てて欲しい』と思います。これまで企業勤めしている人も後輩の指導をすることが多かったと思いますが『自分で自分を指導する』といったことに今度は是非挑戦していって欲しいです。

 

大切なことは「人生の3D化」

――『女性が活き活きと働く』ためにはどのようなことが必要だとお考えでしょうか?

 若宮さん:私の場合はそういう風になっちゃったからやっているという感じもあるのですが、やっぱりまずは自分でできることからやってみて、それを1から2に増やし、2から4に増やし、4から8にと共感できる仲間を増やしていくようにできたらいいのかなと私は思います。

既にある大勢の中に入って満足するのではなくて『自分でやってみて仲間を作ってシェアしていく』というやり方のほうが人は幸せになりやすいような気がします。

就職するときなんかは、そこで働いている人に直接『そこで働いていて本当にやりがいがあるの?』というのを聞くのが一番いいと思いますし、とにかく自分が活き活き挑戦できる環境が大事だと思うんです。

なかなか理解して貰えない人もいるかもしれませんが、そういう人達の意見よりも私は『自ら失敗を経験して学ぶ』というプロセスがとっても大事だと思うんです。たまに自分の子供がなかなか歩けない姿をみて『うちの子はだめだ』と思う親もいると思うのですが、それって私は違うと思うんです。

だって初めから予定どおり歩きはじめたら、それ以上に何もならないけど、何度も転んで失敗することで、その失敗に対しても『ありがとう』という気持ちになって自分の力で歩けるようになると思うからです。

今までの教育の多くは親のいうとおりに育てられたり、企業の中間管理職を育てるような平たい2D的な教育だったように思います。私の知人で有名になっていった人たちは、みなさんそれぞれ物語をもっていて、困難な時代を過ごした深い経験をお持ちの方がたいていご立派になられているように思います。その方々を見ると私はつくづく『人生の3D化』って大事なんだなぁって思います。

そんな形でこれからは苦労をたくさん経験した人が活躍していくようになるんじゃないかなって思います。

だから今は出口が見つからない人も、もしかすると『熟成の期間』で樽の中で熟成されているのかもしれません。そういった人が何かちょっとした行動をきっかけに表の世界に出れるようになるときもあると思います。

2019/5/9に中央公論新社より発売された著書 『独学のススメ』

 

お互いの国の文化を知る大切さ

――『国際社会との良いつき合い方』についてはどのような工夫をされていますか?

若宮さん:私はそんなに外国語が得意じゃないし、そもそも苦手なんですけど『メロウ倶楽部』は、韓国の『KJ倶楽部』というカウンターパートナーがいまして、そこと相互訪問などをやっていました。

どうしてそういうことをやったかというとお互いの国の文化を知ることが大事なことだと思ったからです。

現在『メロウ倶楽部』では70代前半が若い人達になるのですが、その方々が中心になってきました。

『メロウ倶楽部』はネット上にしか存在していないので、今の会長(HN:グルーさん)も第2の人生は『メロウ倶楽部』の会長兼WEBマスターとして『縁の下の力持ち』をしながら運営されています。こうしたみなさんの居場所があることっていいことだと思います。

昔からいるメロウ倶楽部のメンバーには、子供の頃に戦争があって大変な経験をした人もいます。それは海外の人たちも同じで、今では海外の人たちともお互いに苦労話を共感しあえるような関係になり『メロウ倶楽部』が、そこにいけばいつも誰かがいて、話し相手になってくれるみんなの『茶の間』みたいな場所なっているんです。

 

まとめ

如何でしたでしょうか?

このように60歳の定年間際にパソコンを手にし、80歳からプログラミングをはじめ、活き活きと現在進行形でご活躍されている若宮さんを見ていると『IT業界における35歳定年説』や『労働年齢65歳未満』とする考え方も疑いたくなります。

シニアの方々の中には様々な面で私たちよりも長い歴史的背景を見てきており、社会に対する課題についても知見やノウハウが豊富な方々も多いことと思います。

テクノロジーや医療の発展によって『人生100年時代』と呼ばれるようになった反面、日常で扱うデジタル機器の進化も速く、扱う情報量の多さなども以前よりも比較にならないほど多くなり、その扱いに苦労されているシニアの方々も少なくないのではないでしょうか。

また、シニアの方の中には孤独に対しても不安を抱える人が多くいると聞きます。気持ちもやる気も十分ある方でも歳とともに身体的な機能が低下してしまうことによって、新しい挑戦の機会を失ってしまっている方々もたくさんいるのではないでしょうか。

しかしこれからはAI・RPAやIoTなどの技術を駆使してその低下した機能を補うようなものがこれから先どんどん開発されるようになってくると、この先の高齢化社会の中では『同じ気持ちのわかるシニアの方々こそが活躍できる』といったケースも増えてくるのではないかと個人的には思います。

私自身、RPAとの出会いは新たにプログラミングを学ぶきっかけとなり、効果もわかりやすく体系的に基礎から学ぶのにとてもよいツールでした。そのためこうしたシニアの方々もRPAをきっかけにしてみたり、その延長線上でシニア向けのIoTツールなどを若い人たちや企業と一緒に共同開発することを楽しめるような社会になることをこれからもみなさんと一緒に応援していきたいと思います。

 

若宮正子さんの著書はこちら

 

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