Peaceful Morningでは、RPA導入企業担当者をお招きして対談形式でRPA導入のノウハウを本音で伺うウェビナーを企画しています。
2020年11月に行われた第4回では、非IT人材でありながらも自動車部品メーカである自社にボトムアップでRPAの展開をされた株式会社ダイナックス 管理本部情報システム部 IoT推進チームの澁谷 匠(しぶや たくみ)さんと対談をさせていただきました。
RPAの情報が現在より少ない2年前に、都内よりも更に情報が少ない北海道でRPAの導入と拡大に成功されています。
本記事では、澁谷さんからお話いただいた具体的なノウハウを紹介いたします。
目次
会社概要:株式会社ダイナックス
(画像は企業ホームページより引用:http://www.dynax-j.com/)
株式会社ダイナックスは、北海道に本社を構え、自動車、二輪車及び建設機械・産業車両・農業機械用の湿式摩擦材ディスク、プレート、クラッチパック及びロックアップクラッチ、シンクロナイザーリング、その他構成部品の研究開発、設計、製造、販売を行う1973年設立の企業です。北海道以外に、静岡や名古屋、さらには欧米に営業所を持ち、グローバルに事業を展開しています。
社名 | 株式会社ダイナックス |
代表者 | 代表取締役社長 伊藤 和弘 |
設立 | 1973年 |
本社所在地 | 〒066-0077 北海道千歳市上長都1053番地1 |
営業品目 | 乗用車・商用車並びに産業用・建設機械用・船舶用の湿式摩擦材、プレート等、摩擦機能部品の製造販売 |
ホームページ | http://www.dynax-j.com/ |
RPA導入経緯とプロジェクト体制
藤澤:はじめにRPA導入の経緯を教えてください。
澁谷さん:RPA導入を検討し始めたのは2017年です。その時期から電気自動車や自動運転の話題が盛り上がりを見せていました。自動車業界は100年に一度の大変革期と言われていた時代でした。
そうした背景から、「このままでは国際市場から会社として淘汰されてしまうのではないか」という強い危機感があり、工場だけではなく間接部門(事務系の部門)についても何か生産性を上げる方法がないかと情報収集を行っていたところ、偶然本でRPAの存在を知りました。
ここからRPAの導入をボトムアップでスタートしたというところが導入の経緯になります。
藤澤:現在のRPAプロジェクトの体制について教えてください。
澁谷さん:ダイナックスにはRPA推進チームは存在せず、情報システム部内のIoT推進チームの中で、私を含め2名でRPAの推進を行っています。RPAプロジェクトは、RPA推進担当の2名でロボットの開発から維持管理メンテナンスまで全てを行っています。
藤澤:澁谷さんは情報システム部での経歴が長いのですか?
澁谷さん:私は株式会社ダイナック入社した2007年以降、11年間はITとは全く関係のない生産管理の部門にずっといました。2018年10月に部署異動を自ら志願し、そこで初めてRPAツールWinActorにふれました。そこからRPAの「WinActor RPA認定技術者エキスパート」の資格を取り、そして2020年10月に「WinActorエバンジェリスト」に認定されました。(のちにNTTデータ認定WinActorアンバサダーに改称)
藤澤:RPA導入を取り組むなかでうまくいったことや他社でも適応できそうなことが沢山ありそうですね。IT人材ではないRPA推進担当者の方が参考にしていただけそうなことが沢山ありそうです。RPA導入に関するポイントを伺っていきます。
RPA全社展開の5つのポイント
代理店に求める役割を決める
藤澤:RPAライセンスの代理店選びにも苦労されたのですよね?
澁谷さん:RPAを始めた2018年当時から代理店さんはいろいろ声掛けをさせてもらいましたが、私の考えに同調し一緒に歩んでいただける代理店を見つけるのには、2年ほどかかってしまいました。
藤澤:代理店を選ぶ際に大切なポイントはありますか?
澁谷さん:代理店選びに悩んでいる方が何を一番求めるかによって、パートナーや代理店は変わります。
例えば、技術的なサポートが欲しいのか、教育のサポートをしてもらいたいのか、あるいはRPA担当者の思いを理解してほしいのかなど、会社としてRPA導入に際して何を重視するかを定めた上で、それらが得意な代理店を探すのが近道です。
藤澤:なるほど。代理店を選ぶ前に自社の課題や必要なナレッジを明確にするわけですね。
澁谷さん:WinActorの場合はWinActor.comに販売特約店一覧があり、そこでそれぞれの代理店が得意な分野や、表彰の有無などの情報が一目でわかるようになっています。アワードで表彰を受けている代理店は、実績のある強い代理店だと言えます。
他にも、ホームページでRPAが大々的に取り上げられているかどうかや、初期対応の質なども良い代理店を見つける際の判断基準となりますが、代理店を一つに絞る必要はなく、ダイナックスでは、3つの代理店にサポートしていただいております。
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業務のキーマンを探す・自動化のハードルを下げる
藤澤:RPAの導入はツールの導入と同時進行で、社内の業務精査も必要不可欠と考えますが、お金をかけずに行っていくコツはありますか?
澁谷さん:弊社は有料のコンサルやセミナーを受けないというスタンスを取っています。自分で苦労して学ぶことで、しっかり社内に根付いていくと考えています。
RPA導入を進めていく上で重要なポイントの一つは「業務のキーマンを見つける」ということです。各部署には業務について詳しく把握しているキーマンが必ずいます。そのキーマンからその部署の業務をできるだけ詳しくインプットしてもらうと同時に、RPAの得意不得意などの情報をキーマンと共有することによって、RPA推進を的確に進めることができます。
また、RPAの導入にあたっては業務のマニュアル化が必要ですが、通常業務とは別にマニュアル化作業を要求した場合、現場からは反発が出ることも予想されます。「現場の反発は回避したいが、手間のかからない業務マニュアル化ツールは高価なため導入できない。」といったケースも想定されます。
こうしたマニュアル化の障壁について、ダイナックスでは、RPA導入の提案段階では業務手順書・マニュアルの作成は指示せず、アンケートベースで業務の概要を抽出し、我々でどの業務をRPA化するかを決めた後に、決まったものについて、業務手順書をお願いするというようなステップを設けています。こうすることで現場の業務手順書を作る工数や反発を和らげることができます。
他社交流をして良いところをまねる
藤澤:よくある課題だと思いますが、シナリオ作成やロボット開発をする際のルール策定をする際はどうされていましたか?
澁谷さん:ルール策定は私も非常に悩んだところです。何から手をつけるべきかの判断がつかない上に、ルールをどこまで厳しくするかに悩み、当時はなかなか進めることができませんでした。
ルール策定については、他社交流が非常に効果があります。導入初期に、とある会社様を訪問しお話を伺う機会がありました。その会社では、厳しすぎず緩すぎず、きちんと管理できる的確なルール作りがされており、非常に感銘を受けて、内容を参考にさせていただいて、自社のルールを作りました。
また、ITの専任部署がなく現場で導入・開発を進めているという理由などで、通常業務が忙しくRPAプロジェクトに関わる時間が十分に取れないといった担当者の方も多いと思っています。業務の時間内でRPAに関わる時間を取るのが難しい場合は、業務外でRPA Communityに参加したり動画を見たりすることで、少しずつスキルアップすることを目指しましょう。
定期的にRPAの棚卸をする
澁谷さん:ダイナックスのRPA管理で工夫している点の一つとして、半期に一度、「RPAの棚卸」という、担当者へのヒアリングを行い、ロボットが処理したデータを適切に使っているかの確認をしています。
業務担当者の交代の際に引き継ぎが適切になされなかったことが原因で、ロボットが毎日稼働してデータを集計する一方、そのデータを人が利用せず、同じ作業を人とロボットが二重で行うという事例が過去にあったため、こうした「棚卸」の制度が生まれました。
他には、少ない人数でRPAを管理する工夫として、WinDirectorなどの高機能の管理ツールを導入する代わりに、簡易ツールをIoT推進チームで開発し、ロボットが正常に動作したか、エラーで止まっているか、などのステータスを管理しています。
RPAを社内で広く知ってもらう(社内報や動画)
藤澤:周囲を巻き込むために実施したことはありますか?
澁谷さん:まずはRPAを広く正しく知ってもらうことが絶対必要です。そのためにダイナックスでは、全社員に配布される社内報や社内ポータルサイトにRPAの記事や情報を載せるなどの工夫をしました。その中で最も効果があった取り組みは「動画」です。RPAに少しでも興味を持ってもらうために社員食堂でお昼に動画を流したところ、後日行ったアンケートにおいて「動画でRPAのことを知った」という回答が多く見られました。
他にも弊社での実績はありませんが、一定規模以上の部門で開発を行っている企業であれば、社内の「ロボットコンテスト」の実施なども非常に効果的と考えています。
動画リンク:【株式会社ダイナックス提供】RPA啓蒙動画(#3 人VSロボットIPPON勝負)
藤澤:今回のような緊急事態では製造業は徹底的な経費削減活動が始まり、生産に直結しないIT予算はカット、人員削減のターゲットとなり、活動が停滞してしまうという問題があります。経営層や他部署へ、長期的なIT投資継続を納得してもらうため、どのような働きかけをされているか教えていただきたいです。
澁谷さん:この非常に深刻かつ重要な問題に対して、我々ができることは、日々着実に効果の出るロボットを開発し、現場にRPAの効果を実感してもらうと同時に、そうしたRPAの有用性を経営層にもアピールするということです。
そして、RPAを導入した部署から声を上げてもらうことも重要です。IoT担当者が直接役員に提案するのではなく、それぞれの部署から自然にRPAの良さが他部署や上長に徐々に広まることがダイナックスではありました。
経費削減でRPAをやめるのではなく、経費削減のために逆にRPAの導入を進めようという流れに導くために、RPAで目標としていた開発すべき案件がきちんと終わったかどうかに加え、開発したロボットが業務効率化を実現する場を実際に見てもらうことが重要なので、なるべくデモをしたり、動画を見てもらったりすることを心がけています。
今後の展開
藤澤:最後に、RPAを活用し、これからやっていきたいことを教えてください。
澁谷さん:現在は北海道でRPA導入を推進していますが、ダイナックスは海外に拠点がたくさんありますので海外拠点にもRPAを展開していきたいと思っています。そして、最近導入したAI-OCRであるDXSuiteとWinActorとの連携により、職場から紙をなくすことに挑戦したいです。
また、個人的にはより大きな舞台でWinActorの良さを広めていきたいなと考えつつ、会社としてはRPAを積極的に活用している点を企業イメージのアップに活用し、新規事業を始める、あるいは社員を募集するといったときに、RPAが企業が評価される理由の一つになれば非常に嬉しいです。
藤澤:本日は貴重なお話をありがとうございました。貴社の更なる成長を応援しております。
現場主導でRPAを成功させるには:Robo Runner
澁谷様はRPA導入プロジェクト開始時はIT人材ではありませんでしたが、代理店のサポートを受けつつ他社交流を積極的に行うことで、高額なコンサルや外部セミナーを利用することなく、ボトムアップからのRPAの全社展開に成功しました。
ITの専任部署がない、エンジニアがいないといった場合でもRPA導入を成功させることは可能です。そのための手段の一つとして「Robo Runner」というRPAのオンラインサポートサービスを紹介します。「Robo Runner」は、RPAの導入から開発・管理運用までの様々な「困りごと」を専任のサポーターがオンラインで解決するサービスです。UiPath、WinActor、BizRobo!、Automation Anywhereの複数のツールに対応しており、サービス利用者はオンラインチャットとWebミーティングを利用することでRPAに関するあらゆる相談を、いつでもどこにいてもすることができます。
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