データ活用が主流化する現代ビジネスにおいて、データリテラシーは身につけておきたい知識のひとつです。特にビッグデータを取り扱う際に注目を集めるワードですが、詳細について理解している方はまだまだ少ないのが現状です。本記事では、データリテラシーの概要と身につけ方、メリットについて解説します。
データリテラシーとは
データリテラシーとは、データに表示された内容を正確に理解すると共に、信頼性を評価した上で適切に活用するための能力のことです。つまりデータの読み書きができる能力を指します。データを多用する現代社会においては、企業から個人までデータを適切に理解し活用する能力が欠かせません。
特に、世界各国でDXが進む最近では、業務中にデータを利活用する場合、内容が正確かどうかを業務時に判断できるよう、ビジネスシーンでもデータリテラシーが不可欠なものとなっています。
なお、データの読み書きができる能力を指すデータリテラシーには、大きく分けて5つの能力で構成されています。
能力 |
概要 |
収集力 |
・情報収集ができる能力 ・膨大なデータのなかから求める情報を迅速に見つけられる能力 |
読解力 |
・データから何を得ることができるのかを理解する能力 ・数字の羅列、表、円グラフなどが該当し、データの内容を取捨選択して業務に必要なデータであるか判断できることを指す |
分析力 |
・情報収集によって得たデータを理解したあと、統計に必要な方法を使い洞察する能力 ・データ処理技術も分析力に該当する |
活用力 |
・分析したデータをもとにアクションを起こす能力 ・活用力が高いほどビジネスにおける生産性向上が見込まれる |
伝達力 |
・ビジネスパーソンとのコミュニケーションにおいて、データを使い説得力のある伝達ができる能力 ・伝達力が高いと、ある問題に対し答えを提示した際「それが正しいこと」をデータを使って証明できる |
データ収集ができる、データを使うことができるといった単純なものではなく、データと向き合う上で必要になる1つひとつの能力がデータリテラシーの基本です。
活用シーン
データリテラシーを活用するシーンは、主に日常業務や私生活です。ビジネス社会では、データの利活用が一般化しつつあり、近年では膨大なデータ、いわゆるビッグデータを取り扱う業種が増えています。
例えば企業の新卒採用において前年に生じたコストに関するデータがあれば、翌年はデータに基づいて必要コストを洗い出し、必要経費を捻出することができます。採用後の教育費もあわせてデータ化しておけば、コストに見合った採用人数が明らかになり、社内教育にかけるコストまでも調整できるでしょう。
また、個人がデータを取り扱うシーンであれば、スマートフォンアプリが代表的な例です。例えばダイエットをする方がスマートフォンアプリで日々の食事や運動、体重など詳細なデータを活用すれば、前日に比べてどれくらい、あるいは3か月前と比べてどのくらい効果が出ているのかが判断しやすくなります。
このようにデータの活用シーンはビジネスだけでなく私生活にも広がりをみせています。身の回りにさまざまなデータが溢れる時代だからこそ、データリテラシーを身につけることにも重要さが増しています。
データリテラシーを身につけるメリット
企業や個人など、幅広いシーンでデータが活用されているため、データリテラシーは欠かせないものとなっています。では、データリテラシーを身につけることでどのようなメリットがあるのでしょうか。ここではデータリテラシーを身につけるメリットについて解説します。
仕事に対する意識改革になる
データリテラシーを身につけることで、仕事に対する意識改革になります。例えば反復的な業務の場合、何も考えなければ単なる作業のひとつで終わってしまいます。しかし「データ収集をする」といった目的に切り替えることで業務に「意味」を見つけることができます。従来は単なる作業であっても、意味が見つかれば仕事に対する姿勢が変わります。
1つひとつの仕事に意味がみつかれば、業務に対する理解度が増します。自分が従事する業務だからこそ「自分ごと」として考えやすくなり、改善点や効率的にできるツールについて考えられるようになります。
データリテラシーによって従業員1人ひとりの意識改革が実現すれば、生産性向上に期待できるシステム導入につながるなど、企業の変革を伴うDX推進にも期待できるでしょう。
有効なPDCAサイクルをまわせる
データリテラシーを身につけることで有効なPDCAサイクルをまわすこともできます。PDCAサイクルとは以下4つの項目を繰り返し行う方法のことで、業務改善や品質向上、目標達成のため多くの企業で用いられています。
- Plan(計画の立案)
- Do(実行する)
- Check(検証)
- Action(検証結果からどのような対策・改善が必要か検討)
PDCAサイクルを回すといった言葉は多くの企業で使われていますが、なかには意味をきちんと理解できていないために上手にサイクルをまわせていない企業も少なくありません。理由の多くはPlanの部分が明確に定まっていないために、Checkの段階でサイクルをまわすことができず中断してしまうケースです。
企業に適したPDCAサイクルをまわすためには、正確なデータを収集し、分析を行い、企業にふさわしいデータを抽出することが欠かせません。データリテラシーを身につけることで、従来とは違い、成功率の高いPDCAサイクルにつながります。
経営の知識を習得できる
データリテラシーを通じて経営の知識を習得することもできます。企業に対する投資は基本的に企業データを参考に行われます。例えば投資家が企業に投資する場合は、下記3つの項目を見比べます。
- 株価収益率(PER)
- 株価純資産倍率(PBR)
- 自己資本利益率(ROE)
自社により多くの投資を希望するときは、単に売上率を上げるだけでなく上記の指標に対して適切な改善を取り入れなければなりません。そのとき使用するものも自社の各指標を集めたこれまでのデータです。
仮に上層部に所属していない従業員であっても、各指標に対する理解が深まれば、正確な自社状況を把握でき、業務に対する姿勢や立ち回りに変化が訪れます。どのような改善が自己資本利益率向上につながるのかなどを日常業務と掛け合わせて考えることができれば、従業員の働き方にもプラスの変化が生まれ、全社の意識改革にもつなげられるでしょう。
論理的な意思決定ができる
DX推進では、企業が抱える課題やデジタル技術の活用によって改善される業務プロセス・フローなどを含めた説明が必要ですが、いずれもデータを活用することで論理的な説明が可能になります。
「どの業務に対して」「どのツールを使うと」「どのようなメリットがあるか」は、言葉で説明してもうまく伝わらなかったり、従業員の感想で終わったりすることも多いです。データリテラシーを身につけ論理的な説明に必要なデータが提示できれば、DXの必要性に説得力が増し、意思決定の後押しにつながります。
データマネジメントへの活用ができる
データリテラシーを身につけることで、データの取り扱い方法や重要性について理解が深まり、適切なデータマネジメントにつながります。データマネジメントに必要なことは、信頼性の高いデータを集め、日常業務をはじめ多様なシーンで活用することです。
データリテラシーが低いままだと、業務に必要なデータの取捨選択はもちろん、データから何を理解すればよいのかなど適切な判断ができません。データリテラシーを身につけることは、データマネジメントを実行する上で欠かせない要素といえます。
データリテラシーの身につけ方
データが溢れる時代だからこそ、多様なシーンで求められるデータリテラシーですが、どのような方法で身につけることができるのでしょうか。具体的には下記の通りです。
読解力|統計学を活用する
データを読む力を身につけるには、まずは統計学を用いたデータを読み解くことからはじめましょう。ビジネスシーンに限らず、世の中には意外なところに統計学を使ったデータが点在しています。例えば、日本の統計局が収集・公表する国勢調査や気になる業界の平均年収を調べたときに閲覧できる具体的な数字も、統計学を用いて示されています。
このような統計をみながら平均値や相関の基礎を身につけることで、データ化されている情報を統計学に沿って読めるようになります。
収集力・分析力|分析ツールを活用する
データを集め、適切に分析できるための能力を身につけるのであれば、分析ツールを活用する方法が効果的です。収集力や分析力といった能力は、どのように収集・分析すれば自分が有効活用できるデータを得られるかについて知ることが大切です。
収集力や分析力を高めるためには、分析ツールの存在について理解を深め、実際に利用してみることがおすすめです。ツールの活用によってどのようにデータが分析されるのかが理解できるので、どのようなデータに適しているのかが判断しやすくなります。
一例としてはWebサイトやブログのアクセス解析に使われるGoogleAnalyticsが挙げられます。GoogleAnalyticsがどのような目的で提供されているのかを押さえながら実際に使ってみることで活用シーンが明らかになるほか、目的に応じて使いこなすための学習も自発的に取り組むことができます。
活用力・伝達力|検定を受ける
データの読み書き能力が身についた後は、活用力や伝達力向上につなげられるよう、検定を受けるのもおすすめです。
この場合はデータサイエンティスト検定の受検によって、業務に活かせる知識を養うことができます。データサイエンスやエンジニアリング、ビジネス力が問われる試験のため、データの取り扱いに関する実務能力があることを示せます。データから読み取った内容を合理的に判断できる能力が培われるため、意思決定者を支援する役割を担う方にも適しています。
試験は4つの難易度に分かれていますが、「アシスタント データサイエンティスト」と呼ばれる見習いレベルでも、ビジネスにおける論理とデータの重要性、一般的なアクセス解析システムの取り扱いなど、ビジネスに活かせる知識を身につけることができます。
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データリテラシーを組織内に醸成する手順
データを用いる業務が一般化しているからこそ、データリテラシーは従業員だけでなく、全社で身につける必要があります。
とはいえ、知識や技術は1日で身につけられるものではないことに加え、適切な手順を踏んで全社で共通認識を持たなければデータリテラシーに必要性を感じることができません。
ここでは、組織内にデータリテラシーを醸成する手順について解説します。
必要性の共有
組織でデータリテラシーを身につけるためには「なぜ身につける必要があるのか」について共有することからはじまります。必要性は、データリテラシーを身につけるための動機づけと紐付いています。そのため、一例としては、下記のような根拠を全社に共有することが推奨されます。
- 属人化したデータ入力業務を効率的に行うためにデータの活用が必要である
- 新商品や新サービスの提供にあたって顧客ニーズの深掘りが欠かせないことから、幅広く客観的なデータを収集し分析する必要がある
- 営業力強化・効率化を図るため、顧客別での売上実績や進捗状況をリアルタイムで収集し、データを使って有望顧客の判別をする必要がある
ただし、データ活用をこれまで以上に推進する際は従来の業務に変更が伴い、従業員に対して多少なりとも負荷が掛かることを認識しておかなければなりません。
そのうえで、上記のように具体性のある根拠の共有によって、データ活用の必要性について理解を得ることが大切です。
現状把握の実施
従業員1人ひとりの業務に対する姿勢を見ると、感覚的にデータリテラシーの低さを感じるときもあるでしょう。感覚的に感じる部分を具体的な数字を使って現状把握することで、データリテラシー教育の必要性について訴求しやすくなります。
例えば、人事評価項目にデータリテラシーに関する項目を盛り込む、データサイエンティスト検定の取得推奨を機に資格取得費用の支援を導入するなどです。企業がデータリテラシー向上にむけて積極的に働きかけることで、スキルアップに対する従業員のモチベーション向上を図りながら組織内での醸成につなげられます。
教育体制の整備
組織内でデータリテラシーを醸成するためには、教育のためのカリキュラムを用意することも大切です。教育体制が整っていなければ、データリテラシーに関する知識を適切に身につけることができません。また、座学で知識は身につけられたとしても、応用力を身につけるカリキュラムがなければ業務で活用することはできないでしょう。
基礎知識と応用力の双方が身につくよう、できるだけ日常で触れるデータを基にしたコンテンツをカリキュラムに盛り込みましょう。過去に起きた現場での失敗事例などを交えると、データリテラシーの必要性を「自分ごと」として考えられるのでおすすめです。
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まとめ
データリテラシーは、データの読み書きができることを指し、近年、データの多様化が進む現代社会には欠かせない項目です。難しい知識ではないものの、日常生活だけでなく業務でも活かせるなどの実用性の高さから、組織に属する従業員全員が幅広く理解している必要があります。
特に、組織全体でデータリテラシーを高めていくには、「実践できる人材が身近にいること」が大きな効果をもたらします。すでにデータを業務で使いこなしているメンバーの姿は、他の社員にとって学びの指針となり、組織全体のスキル向上を自然と促します。
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