多くの企業で進むDXですが、実現にあたってはデジタル技術に熟知した人材の確保が欠かせません。特にDXは組織全体の変革にあたるため、DX推進部門を設置した上での推進が求められます。しかし、部門の設置にあたっては、どのような人材を配置すべきかわからない方も多いでしょう。
既存人材を活かしながらDX推進を図る際は、デジタルをはじめDXに関連する資格を取得し、従業員のDXスキルを底上げする方法が効果的です。本記事では、デジタル人材育成に有効な19種類の資格について解説します。
目次
デジタル人材育成に有効な資格6選|能力
「デジタル人材育成に関する資格」とひとまとめにすると多様な資格が該当しますが、そのなかでも「能力」「推進」「エンジニア」など目的で分けることでどの資格がどのような人材を育てられるかがイメージしやすくなります。ここではまずDX部門設置などに有効な「能力」に関する資格について解説します。
1.デジタルトランスフォーメーション検定
「デジタルトランスフォーメーション検定」は一般財団法人全日本情報学習振興協会が主催する資格です。DX推進を目指す部門・部署の責任者やエンジニアなどがターゲットで、3つの試験から目的に合わせたものを選び受験することができます。それぞれの概要は下表の通りです。
資格 |
概要 |
DXパスポート認定試験 |
・DXの基礎知識を証明する試験 ・社会人から学生までと幅広く対象 |
DX推進アドバイザー認定試験 |
・IT・デジタルを活用した事業改革や企業競争力強化に通用する人材を育成する目的を持つ試験 ・管理職・DX担当者などが対象 |
DXオフィサー認定試験 |
・DX推進における責任者を育成する目的を持つ試験 |
「DXパスポート認定試験」はDXの基礎知識が試される試験で、DXの概要や目的などが問われます。「DX推進アドバイザー認定試験」は「DXパスポート認定試験」よりも一歩DXに踏み込んだ内容となっており、ITやデジタルを活用し組織変革や企業力強化に通用する人材かが問われるなど、企業目線での内容が多いです。
「DXオフィサー認定試験」はDX推進に向けて自発的に動ける責任者を育成する目的があり、DX推進部門の設置を検討する企業にとっては効果的な試験となっています。いずれも正答率70%と難易度は高いですが、資格の取得によってDX推進部門の設置や組織全体の変革が実現しやすくなるでしょう。
参考:DX検定 DXパスポート、DX推進アドバイザー、DXオフィサー、デジタルトランスフォーメーション検定|一般財団法人全日本情報学習振興協会
2.DX検定
「DX検定」はDXにおける人材育成を目的としたDX検定委員会による知識検定です。2020年には、DX推進を図る企業の人材育成や知識評価の標準指針としての活用を視野に入れ、DX知識レベルの認定をスタートしています。最上位は850点以上と高いことから、DX推進には有効な資格です。
3.+DX認定資格
「+DX認定資格」はIoT検定制度委員会による認定試験で、DX推進に欠かせないスキルやリテラシーがあることを証明する資格です。DX推進に関わる業務遂行を前提としているため、DX推進を目指す企業にとっては頼もしい資格といえるでしょう。またIoT検定制度委員会が主催していることから、社会的信頼度が高い点も特徴のひとつです。
4.G検定(ジェネラリスト検定)
「G検定」は一般社団法人日本ディープラーニング協会が実施する検定で、AIやディープラーニングの基礎知識をはじめ、適切な活用方針を決定できる能力・知識を認定する資格です。
試験では技術と法律・倫理の2つの分野に区分され、技術分野では人工知能と近年の動向、ディープラーニングの技術やAIの社会実装など専門知識が試されます。法律・倫理分野ではAIに関する法律や契約、ガバナンスなど社会的に注目度の高い問題が出題されるため、技術と法律の双方を身に付けた上での活躍が期待できるでしょう。
参考:G検定とは – 一般社団法人日本ディープラーニング協会【公式】
5.ITパスポート
「ITパスポート」は、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が実施するITを利活用する社会人と学生を対象としたITに関する基礎知識を認定する国家試験です。
IT系の国家試験のなかでは入門レベルではあるものの、試験範囲はAIやビッグデータのほかIoTや経営戦略、マーケティング、セキュリティなど幅広い項目を熟知していなければ突破できません。DX推進部門の設置にあたって優秀な人材確保が期待できるでしょう。
6.DS検定
「DS検定」は一般社団法人データサイエンティスト協会による試験で、データサイエンティストに必要なデータサイエンス力をはじめ、ビジネス力やデータエンジニアリング力の3つの知識・実務能力・リテラシーレベルがあることを認定する資格です。
データサイエンティストの基本能力が試される試験ではあるものの、試験難易度は平均より高いといわれています。DX推進に踏み切りたいのであれば、DX検定保有者の確保が推奨されます。
参考:DS検定® |一般社団法人 データサイエンティスト協会
デジタル人材育成に有効な資格7選|推進
ここからは、デジタル人材育成に有効な資格のなかでも「推進」にフォーカスした資格について解説します。
1.基本/応用情報技術者試験
「基本/応用情報技術者試験」はIPAが実施する資格試験のひとつです。ITの専門知識があることを証明する国家資格で、IT企業で働く従業員に限らずDXにまつわる実務経験が少ない人でも合格しやすいといわれています。
「基本」ではITの基礎を習得でき、「応用」ではセキュリティインシデント対策など実技的な知識を身につけられます。ITエンジニアとしての基礎的なスキルがあることが証明されるため、DX推進にあたっては注目したい資格のひとつです。
参考:基本情報技術者試験 | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
参考:応用情報技術者試験 | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
2.AWS認定試験
「AWS認定試験」はAmazonが提供するPaaS「AWS」の実践スキルがあることを証明する資格です。クラウドシステムは開発不要で導入後は誰でも利活用できる便利さがあります。しかしだからこそ、さまざまなトラブルをあらかじめ予測し、適切に対応できる人材確保が欠かせません。
クラウドシステムの利用を検討する企業にとっては、資格保有者の育成・確保によって万が一のトラブルにも迅速に対応できるなどのメリットに期待できるでしょう。
参考:AWS 認定 – AWS クラウドコンピューティング認定プログラム | AWS
3.ITコーディネータ試験
「ITコーディネータ試験」は特定非営利活動法人ITコーディネータ協会による企業経営やITに熟知したプロであることを証明する資格です。DX推進や業務支援に役立つ資格ともいわれており、経済産業省でも推進する資格のひとつとして注目を集めています。IT人材の確保や育成における指標として活用できるのも特徴です。
参考:ITコーディネータ試験|特定非営利活動法人ITコーディネータ協会
4.ITストラテジスト試験
「ITストラテジスト試験」はIPAによる試験のひとつで、IT活用を通じて事業改革や最適化の推進を目的としています。ITに関する技術・知識をはじめ、事業戦略や業務改革推進などビジネス実務に高い知識があることが証明されます。
15%前後と低い合格率であることから、「資格保有者=高度IT人材」と判断しても問題ないともいわれています。
参考:ITストラテジスト試験 | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
5.AI実装検定
「AI実装検定」はAI実装検定実行委員会(AIEO)による試験で、ディープラーニングの実装能力や知識があることを認定する資格です。試験ではAI技術者としての実力が試され、IT業界に限らず幅広いビジネスシーンで活躍できる資格としても注目されています。
近年では業務プロセスなどにAIを導入し作業効率の向上を図る企業が増加しています。AI実装検定保有者の存在は、業務の効率化や生産性を高めたい企業にとって頼もしい逸材になるでしょう。
6.プロジェクトマネージャー試験
「プロジェクトマネージャー試験」はIPAによる試験のひとつで、ITプロジェクトのマネージャースキルを有することを認定する国家資格です。
DX推進におけるマネージャーの役割は、全社の意思決定や限定的なリソースの活用方法など多岐にわたります。合格者はIT・デジタル領域に限らず、経営的視点やビジネス全般に関する知識を身につけている特徴から、DX推進による組織の変革を柔軟性を持って進めたい企業におすすめです。
参考:プロジェクトマネージャ試験 | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
7.データベーススペシャリスト試験
「データベーススペシャリスト試験」はIPAによる試験のひとつで、データベースにおいて高いスキルがあることを証明する国家資格です。
DXではデジタル技術が用いられることが多いですが、適切な運用にあたってはシステムの核であるデータベースを管理できる人材が欠かせません。データベース管理者が不在のままだとシステムにトラブルが生じた場合、迅速に対処できないためです。
データベーススペシャリストの取得によって、適切な運用が実現できます。デジタル技術を長期的に利活用したい企業にとっては頼もしい存在となるでしょう。
参考:データベーススペシャリスト試験 | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
デジタル人材育成に有効な資格3選|エンジニア
ここではデジタル人材育成に有効な資格のうち「エンジニア」に関する資格について解説します。
1.Python3エンジニア認定試験
「Python3エンジニア認定試験」は一般社団法人Pythonエンジニア育成推進協会が実施する資格試験です。汎用プログラミング言語としても知名度の高い「Python」における専門知識があることを証明できます。
機械学習や統計なども学ぶことができるほか、文法がわかりやすい言語であることから入門編として学習する人も多いです。なお同認定試験は下表のように4種類の試験に分かれています。
試験名 |
概要 |
Python 3 エンジニア認定基礎試験 |
・Pythonプログラミングの基礎知識を評価 ・文法・基本操作に対する理解度が問われる ・プログラミング初学者に向いている |
Python 3 エンジニア認定実践試験 |
・エンジニアのコーディング力の向上を目的とした試験 ・Pythonを実用化する上で必要となる仕様・ライブラリの使い方が出題される ・実践試験の前に基礎試験が出題されるため、基礎内容を身につける必要がある |
Python 3 エンジニア認定データ分析試験 |
・Pythonを使いデータ分析の知識・スキルを評価 ・データサイエンティスト・データアナリストを目指す方を対象としている ・試験では基礎・データ処理・可視化・統計学などが出題される |
Python3エンジニア認定データ分析実践試験 |
・Python3を活用したデータ分析の能力を評価 ・基礎知識にあわせて実務で求められるデータ加工、分析技術が出題される |
Pythonはもちろんプログラミングについて詳しくない方は基礎試験を、ある程度の知識・実務経験がある方は実践試験やデータ分析試験がおすすめです。
参考:Pythonエンジニア認定試験 | Odyssey CBT | オデッセイ コミュニケーションズ
2.CIW JavaScript Specialist
「CIW JavaScript Specialist」はJavaScriptに関するスキルの理解度を評価する資格です。世界的にも有名なJavaScriptの資格のため信頼度が高い特徴から、一定以上の知識・スキルを持つエンジニアには有効です。なお、英語での出題もいくつかあるため、英語力も求められる点に注意しましょう。
参考:CIW JavaScriptスペシャリスト|Certification Partners
3.ネットワークスペシャリスト試験
「ネットワークスペシャリスト試験」はネットワークシステムに関する知識・技術があることを証明できる国家試験です。ネットワーク・セキュリティ構築・運用や保守など、DXの利活用にあたっては欠かせない知識・技術を学ぶことができます。
資格があることでネットワーク全般の運用・管理を任せられるため、自社でシステムを開発する場合やシステム導入後の運用においては頼もしい活躍が期待できます。
参考:ネットワークスペシャリスト試験 | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
DX関連の資格が注目される背景
世界各国でDXが進んでいますが、日本でも推進される理由のひとつに経済産業省が発表した「DXレポート」にあります。ここでは、DX関連の資格が注目される背景を、経済産業省の「DXレポート」を基に解説します。
参考:経済産業省|DXレポート平成 30 年9月7日 デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会
「2025年の崖」
「2025年の崖」は経済産業省の「DXレポート」内で用いられる言葉で、2025年以降に既存システムの問題を解決しない場合、年間12兆円に達する経済損失が生じることを指しています。
経済損失が多額に膨らむ理由のひとつと考えられている要因が、多くの企業で用いられる既存システムのブラックボックス化です。DXを推進するべく新たなシステムを導入したくても、ブラックボックス化した既存システムに絡む問題を先に解決しなければ導入は困難です。
既存システムのブラックボックス化を解決させるためには、システムに関する知識・技術を持つDX人材の確保が求められます。スキルの高い人材確保を実現するためにDX関連の資格が注目されています。
関連記事:「2025年の崖」とは?起こりうる問題や対応策を解説!
DXに精通する人材の不足
「DXレポート」では、既存システムの問題解決に必要な人材に限らず、DX人材そのものが不足している点もDX推進を妨げる要因としています。みずほ情報総研の資料では、DX人材は日本人口の減少やDX人材に対する需給ギャップによって2030年までに最大79万人も不足する可能性があるとしています。
人手不足を解決するためには、従業員が新たにITにまつわる知識・技術を身につけ「先端IT市場」に則した仕事に移行する必要があります。この流れを作るためにDXに有効な資格が注目を集め、知識と技術をはじめリテラシーや法令などを学ぶ流れが形成され始めています。
参考:みずほ情報総研株式会社|IT人材需給に関する調査ー調査報告書ー
DX関連の資格を取得するメリット
DX関連の資格取得によって既存システムにまつわる問題を解決できます。システムやネットワークに関する知識や技術が身についているため、外部企業に依頼しなくても自社で問題解決を図ることができます。また既存システムの問題の解決によって、踏み切れずにいたDXも実現できます。
DX実現によって反復・定型業務の自動化やAIなどを利活用した効率化につながり、企業力の強化にも期待できます。従業員にはDXに関する知識や技術、DXリテラシーが身についているため実力の底上げにもなり、結果的に企業競争力の強化に寄与する点もメリットといえるでしょう。
デジタル人材育成に有効な資格を取得する上での注意点
デジタルをはじめDXに有効な資格は、その多くが社内DXの取り組みに活かせるものです。しかし従業員が資格を取得しても、社内のDX推進に貢献できなければ取得した意味が薄まり、仕事に対する意欲が低下しかねません。資格保有者を必要とするのであれば、企業側が支援策を用意しておく姿勢が大切です。
支援や資格取得後のキャリアまで幅広く提供することでDX推進が加速し、企業力強化につながるでしょう。
まとめ
DXに関わりのある資格が注目を集めている背景には、2025年以降に訪れる可能性の高い多額な経済損失やDX人材不足が挙げられます。資格を取得することで既存システムにまつわる問題を解決できる可能性は高まりますが、技術や実務経験を要することも多く、スムーズに進まない可能性もあります。
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