DX認定制度は、経済産業省による制度のことで、「デジタルを通じて自社ビジネスの変革を目指すため、ビジョンや戦略、体制が整った事業者であること」を認定するものです。認定を受けると、市場競争力や将来性が高い企業と判断されやすいことに加え、組織全体の見直しや経営方針の決定など、さまざまなシーンで役立てられます。
本記事では、DX認定制度の概要をはじめ、取得するメリットや制度と関連深いデジタルガバナンス・コードなどについて解説します。
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DX認定制度とは|目的や影響度、認定基準
DX認定制度とは、デジタル技術を活用した企業のDX推進状況が優良であることを認定する制度のことです。「情報処理の促進に関する法律」に基づき、後に紹介するデジタルガバナンス・コードに則した経営体制やDX推進の準備が進んでいる企業であることを認定します。
参考:経済産業省|DX認定制度(情報処理の促進に関する法律第三十一条に基づく認定制度)
創設の目的・背景
DX認定制度が創設された目的は、デジタル技術の活用を通じて業務をはじめ組織全体の変革を実現させ、競争上の優位性を確立するためです。DX認定制度では、DX推進の準備が整っている企業が認定レベルとして設けられています。
詳細は後述しますが、同制度はDX推進によってめざましい成果を成し遂げた企業だけでなく、DX推進に向けた準備を進める企業に対しても認定基準が設けられている特徴があります。
参考:経済産業省|デジタルガバナンス・コード3.0 ~DX経営による企業価値向上に向けて
認定基準・対象
DX認定制度の認定基準は経済産業省令で細かく定められています。基準に則しているかについては独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が審査し、経済産業省が認定する流れです。
具体的には上図の認定基準を基に判断され、下図の4レベルで評価されます。
認定を受けた後は2年間の有効期限があり、期限が切れた後は再度申請する必要があります。
対象者は個人事業主を含む全事業者です。企業規模・業種も問わない認定制度であるため、DX推進に向けて準備を進めている企業や、すでにDXに取り組んでいる企業は申請してみるとよいでしょう。
申請期間
DX認定制度に申請期間は設けられていません。年間を通していつでも申請でき、申請や更新にあたって費用は掛かりません。なお認定更新を受ける際は2年を経過する日の60日前までに更新申請書を提出する必要があります。
人材育成・確保の重要性とDX認定の関連性
経済産業省はDX認定制度について、514社の事業者(個人事業主を含む)にアンケートを実施しています。アンケート結果では、認定によるメリットや認定を受けた後の効果・影響について具体的にまとめています。
上図はDX認定を取得したことで人材育成・確保によい影響はあったかに関するアンケート結果です。資料からもわかるように事業者の約7割が「あった」「少しあった」と回答しています。
そもそも、DX認定をしたことでのメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。同資料の調査結果では、多くの企業が「DX戦略の推進」ができること、次に「顧客に対する企業イメージ向上」がメリットだと回答しています。また認定を受けることで使用できるロゴマークも、企業イメージの向上につながると感じた企業が多いようです。
これらのメリットを踏まえ、認定を受けた後、具体的にどのような効果・影響があったのでしょうか。この部分についてもアンケート結果が公開されており、回答の多くはポジティブなものが多かったようです。
一例としては「DX認定制度によって具体的なプロセスが把握できDX推進体制や戦略の構築・見直しにつながった」「DX認定を受けたことで企業ブランド力向上につながり、顧客との関係構築に結びついた結果、売上がアップした」などです。
また「DXリテラシー教育やDX専門人材育成がスタートした」「人材採用活動において認定企業として応募理由に挙げられることが多かった」など、DX認定を受けたことで得られるメリットが人材育成や確保にも寄与することが調査結果から判断できます。
アンケート結果を総括するのであれば、DXは今や組織内ではなく組織内外においてよい影響をもたらす可能性の高い施策であると考えられます。
出典:経済産業省|DX認定事業者アンケート結果 (2023年)
デジタルガバナンス・コードとは
デジタルガバナンス・コードとは、デジタル技術を適切に活用して企業価値を高めるための指針のことです。日本政府が掲げる未来社会の構想を指す「Society5.0」の実現や企業による自発的なDXへの取り組みを促すため、経営者が企業価値を高めるために実践すべきポイントが集約されています。
内容は上場・非上場・大企業・中小企業・法人・個人事業主などを問わず、幅広い事業者を対象としたもので、DX推進に向けた自社課題の把握に用いられるDX推進指標もデジタルガバナンス・コードに則して作成されています。
こちらでも触れたように、DX認定を受けるには「情報処理の促進に関する法律」に加えてデジタルガバナンス・コードに準じているかも問われます。各ポイントには必ず目を通し、確認の上申請しましょう。
参考:経済産業省|デジタルガバナンス・コード3.0 ~DX経営による企業価値向上に向けて
DX認定制度を取得するメリット
DX認定制度の取得にはどのようなメリットがあるのでしょうか。こちらでも少し触れていますが、ここではメリットについてより具体的に解説します。
DX推進にある課題の発見
DX認定を受けるための審査過程では、特定のチェックシートを使い、自社状況を自己診断する必要があります。チェックシートに設けられた設問に回答することで、DX推進に向けて改善を要する自社課題の発見につながります。
例えば申請時に記載する「DX認定制度 申請チェックシート」には「デジタル技術が社会・自社の競争環境にどのような影響を及ぼすのかについて認識しており、その内容を公表しているか」など、自社での取り組みを自己判断を通して現状確認できる項目が設けられています。
1つひとつの設問に「これはできている」「これはできていない」と回答することで、自社のDX推進状況を客観的に評価できます。できていない項目を自社課題として全社に共有できればDX推進に対する意識改革につながり、DX推進にスピード感を持たせることも可能です。
DX戦略の推進につながる
世界的に取り組まれているDX推進ですが、どのように進めればよいのか判断に迷う経営者も少なくありません。しかし、「DX認定制度概要」内にある「DX認定の項目」などを「DX推進に必要な手順」と考えることで、推進を後押しすることができます。
企業価値・社会的認知度の向上
DX認定を受けると、DX推進ポータル内の「DX認定制度 認定事業者一覧」で企業名が公表されます。厳格な審査が行われることから、一覧に公表されれば取引先や消費者、就職を希望する人材に対するアピールにつながります。新規顧客や既存顧客との取引増加、優秀な人材の応募など、多方面でよい影響をもたらす可能性がある点もメリットです。
税制優遇や金融支援措置を受けやすい
DX認定を受けることで情報処理システムに関する設備資金の融資を民間金融機関から受ける場合「中小企業信用保険法の特例」の対象となり、普通保険などとは別枠での追加補償、または保証枠の拡大が受けられます。
また日本政策金融公庫から融資を受ける場合も、基準利率に比べて低い特別利率が適用されるなど、税制優遇や金融支援措置が受けられます。各優遇措置の詳細については経済産業省が公表する資料あるいは以下リンクをご確認ください。
参考:経済産業省|DX認定制度(情報処理の促進に関する法律第三十一条に基づく認定制度)
DX銘柄への応募が可能
DX銘柄への応募が可能になる点もメリットのひとつです。DX銘柄とは、経済産業省と東京証券取引所が共同で、デジタル技術を活用してビジネスモデルを変革し、企業価値を高めた企業を選定・公開することです。
DX銘柄に選定された企業は、優れた情報システムの導入やデータの利活用に留まらず、デジタル技術を前提としたビジネスモデルおよび経営の変革に果敢にチャレンジし続けていると評価されます。
また、企業の競争力強化に寄与するDXに向けた取り組みを後押しする目的から、選定された企業の中からはデジタル時代を先導する企業として「DXグランプリ企業」も発表されます。こうした取り組みが活発に行われているのは、経済産業省を中心に国がDXを強く後押しするためです。
グランプリを受賞した企業などは、経済産業省公式ホームページで一覧表示される仕様となっており、特に3年連続でDX銘柄に選定されるなど達成要件が高い「DXプラチナ企業」に選ばれれば、取引先や消費者をはじめ、就職希望者へのアピールポイントとして有効活用できるでしょう。
参考:経済産業省|「DX銘柄2025」「DX注目企業2025」「DXプラチナ企業2025-2027」を選定しました
参考:経済産業省|デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄) (METI/経済産業省)
認定制度のロゴマークを使用できる
DX認定を受けると、自社公式ホームページや名刺で認定事業者であることをアピールできるロゴマークの使用が可能になります。
支援措置のひとつとして設けられており、積極的な利活用によってDX推進が実現している企業と判断できます。そのため、自然な流れで企業競争力の高さを競合他社にアピールすることにもつながります。
なおロゴマークの使用にあたっては、経済産業省による使用規約に遵守する必要があるほか、認定事業者以外の事業者・団体・報道機関などは、DX認定制度の普及につながる用途がある場合に限り利用が認められているので注意しましょう。
出典:経済産業省|DX認定制度(情報処理の促進に関する法律第三十一条に基づく認定制度)
DX認定制度を受ける手順
企業競争力の向上や人材育成・確保など、さまざまなシーンでメリットがあるDX認定制度ですが、どのような手順で申請するのでしょうか。ここでは認定を受けるまでの手順について解説します。
申請要件を確認する
まずは申請要件を確認しましょう。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の公式ホームページ、あるいは以下リンクから、「DX認定制度 申請要項(申請のガイダンス)」の内容を確認しましょう。
参考: IPA 独立行政法人 情報処理推進機構|DX認定制度のご案内 | 社会・産業のデジタル変革
申請用紙のダウンロード・作成する
次に申請用紙をダウンロードし、各設問に回答します。作成方法については、仮に新規申請に向けた準備に該当する企業であれば、1~6の設問に回答するほか、各設問に添付する資料を準備しなければなりません。
設問項目や必要な資料については「DX認定制度 申請要項(申請のガイダンス)」から確認できますが、各設問で回答数が異なる点に注意が必要です。
設問1:3問 + 資料 設問2:2問 + 3問 + 1問 + 資料 設問3:1問 + 資料 設問4:1問 + 資料 設問5:1問 + 資料 設問6:3問 + 資料 |
例えば設問1-1であれば、以下のような設問があります。
データ活用やデジタル技術の進化による社会及び競争環境の変化が自社にもたらす影響(リスク・機会)について、どのように認識しているか。 |
このような設問に対しては、取り組み内容を要約し、申請チェックシートに記入する必要があります。なおチェックシート下部には注意事項として、取り組み内容欄は自社ホームページなどで公表している内容を記入するとともに、どの部分に記載されているのかがわかるよう具体的な場所を提示する旨が記載されています。
申請にあたっては、要約して記入が必要なほか、各設問に対する注意事項に留意しなければなりません。記入に不安がある方は、情報処理推進機構公式ホームページあるいは以下リンクから記入例をダウンロードできるので、参考にするとよいでしょう。
参考: IPA 独立行政法人 情報処理推進機構|DX認定制度のご案内 | 社会・産業のデジタル変革
参考:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構|DX認定制度の申請方法 | 社会・産業のデジタル変革
Web申請する
作成した申請用紙と提出資料は、DX推進ポータル公式ホームページでWeb申請します。Web申請にあたっては「GビズID」が必要になるため、取得していない方は取得してからログインしましょう。
ログイン後はメニューから「DX認定制度」を選び申請します。事務局での審査や経済産業省での認定手続きが終わると、事務局から認定事業者に対して「認定通知メール」が送付されます。なお一度送られた認定通知メールは再送付に対応していないことから、誤って削除しないよう保護機能を活用する、あるいはPDFデータで保管することをおすすめします。
参考:IPA 独立行政法人情報処理推進機構|DX認定制度 申請要項 (申請のガイダンス)
まとめ
DX認定事業者になると、支援措置の利活用によって企業価値や社会的信用度の向上が見込まれるなど、副次的効果に期待できます。デジタルガバナンス・コードでは、DX推進を支える人材として、計画的な人材育成や中途採用をはじめ、外部パートナーの活用などを挙げています。
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