デジタルツールの導入など全社を変革するにあたっては、事前に業務プロセスを洗い出し、日常的な業務がどのようなものかについて理解を深めることが大切です。その際有効とされる方法が「可視化」であり、DX推進に取り組む企業の多くは、業務プロセスを可視化し、DXの運用・実用につなげています。
この記事では、業務プロセスの可視化の概要と重要性をはじめ、メリットと取り組み方、有効なツールについて解説します。
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業務プロセスの可視化とは?
業務プロセスの可視化とは、社内で日常的に行われる業務の流れなどを指す「業務プロセス」と、目に見えないものを見える形に表現し分かりやすくすることを指す「可視化」を合わせ、全社に点在する業務を図表などを使い誰でもイメージできるようにする方法を意味しています。
可視化によって全社におけるあらゆる業務を把握できるので、改善を要する業務や作業が判断しやすくなるメリットがあり、DXをはじめ企業が変革をする際には、業務プロセスの可視化を実施することが推奨されます。
- いつ
- どの部署(あるいは業務)で
- どのような目的で
- どのような方法なのか
抽象的な把握や従業員の意見を聞かない状態では、業務にある問題や課題に気付きにくく、適切な変革につなげられません。そのことから、業務プロセスを把握するためには、上述した項目を使いながら可視化し課題解決を図ることをおすすめします。
可視化の重要性
業務プロセスを可視化する重要性は、無駄な業務プロセスや課題があることに気付けない環境を改善することです。無駄な業務プロセスに気付けない状態が続けば、従業員の作業時間の増加、それによる労働意欲の低下など、生産性や業務効率に影響を及ぼす恐れがあります。
また、すでに生産性や業務効率に直結していれば、製品やサービスの提供ラインで顧客満足度を低下させる恐れすらあります。
企業を支える従業員の労働意欲を維持しながら作業効率や生産性を上げるためには、早急かつ綿密な業務プロセスの見直しが必要です。そのためには、全社に点在する見えにくい業務プロセスまでもを把握するために可視化があります。
企業全体に潜むあらゆるリスクを最小限に抑えるため、業務プロセスの可視化は企業規模を問わず重要な取り組みといえるでしょう。
業務プロセス可視化のメリット
業務プロセスを可視化することでどのようなメリットがあるのでしょうか。代表的なものとしては下記の項目が挙げられます。
- 社内全体における問題の明確化
- 業務改善の実施
- 業務プロセスに対する共通認識
- 属人化の解消
- コスト削減
ここではこれらについて詳しく解説します。
社内全体にある問題の明確化
業務プロセスの可視化によるメリットは、社内全体にある業務に関する問題を明確にできることです。部署ごとや作業1つひとつに潜むさまざまな問題を、可視化によって具体的にイメージでき深く理解することにつながります。これまでは理解し切れていなかった業務にある問題を、適切に改善へ導くことができれば、結果的に企業全体の生産性向上に寄与するでしょう。
業務改善の実施
可視化によって業務1つひとつの課題が洗い出されるため、時代に則した方法へと改善を図ることができます。残業や休日出勤の多い部署があればデジタルツールを活用して自動化を図るなど、具体的な改善案の策定によって業務課題の解決につなげられるでしょう。
業務プロセスに対する共通認識
企業が目指す目標や、業務改善における進捗状況を全従業員で把握することも可能です。共通認識のもとで業務に取り組めるようになるため、従来よりも効率よく目標達成を目指すことにもつなげられます。
業務プロセスの改善には全社が一丸となって1つの目標に向かう姿勢・意識が必要です。業務プロセスが明確になっていないと、プロセスに対する認識が従業員で異なり、作業速度や品質にムラが生じかねません。そのままでは適切な業務改善にはつなげられないことから、業務プロセスの可視化は全社の共通認識のために欠かせない要素といえるでしょう。
属人化の解消
業務に関する取り組み方や進捗状況について特定の従業員しか把握していない状況も、業務プロセスの可視化によって解消することができます。可視化しない状態では、別の従業員が担当した場合、どのような手順や方法を用いて進めてよいのか適切な判断ができず、生産性や品質に問題が生じる恐れがあります。
業務プロセスを可視化すれば、例え特定の従業員が休みだったとしても、適切な業務プロセスを把握できるため、大きなトラブルを防ぎながら業務に従事することができます。
コスト削減
大幅に時間が掛かっている業務やコストが発生しやすい作業も可視化を通じて洗い出すことができます。定型的あるいは反復的な業務であれば、デジタルツールを導入することでロボットに作業を任せることができます。これまでは大幅な時間が掛かっていた業務であれば従業員の残業時間の削減につながり、人件費の削減に期待できます。
業務プロセスの可視化|企業の取り組み方
業務プロセスの可視化には、社内全体における問題を明確にするなど、さまざまなメリットがあります。では、企業は実際にどのような取り組みをする必要があるのでしょうか。具体的なステップは下記の通りです。
業務内容を細部まで洗い出す
業務プロセスを可視化する場合は、業務内容や日常的に行われている作業について細部まで把握することが大切です。全社で目標を成し遂げるためには、従業員1人ひとりからヒアリングの実施やアンケートを取り、業務・作業に伴うあらゆるプロセスを把握しましょう。
部署ごとに会議を実施し課題・問題点を洗い出す
従業員へのヒアリングやアンケート調査以外にも、部署ごとに会議を実施し、業務に関する課題・問題を洗い出すことも大切です。従業員によっては取り組み方が異なる場合も多く、ヒアリングやアンケートだけでは状況把握が難しい可能性があります。
部署ごとでの会議のなかで日常業務のなかで無駄だと感じる部分や処理の仕方に困ることなどを話し合うことで、従業員それぞれの業務に対する認識を部署内で共有でき、部署ごとで問題意識を持つことができます。
優先順位をつける
業務や作業の把握が終わった後は、改善すべき項目に優先順位をつけましょう。問題の深刻度を考慮することで早急に対応すべき項目が判断しやすくなります。
例えば従業員5名で8時間掛かるAの業務と1名の従業員で8時間掛かるBの業務がある場合、それぞれの業務にデジタルツールを取り入れて時間を半分カットできるのであれば、Aの業務の方が従業員数の数が多いために期待値は高いと判断できます。
優先順位の付け方に迷うときは、デジタルツールなどの導入によって効率的に生産性を高められる業務を考えながら検討するとよいでしょう。
改善点の目標値を設定する
業務プロセスを洗い出し、改善すべき項目に優先順位を付けた後は、改善点の目標値を設定しましょう。例えば、Aの業務に掛かっていた作業時間を従来の3分の2まで削減するなどです。具体的な数字を使って目標値を設定することで施策が効果的であるかが判断しやすくなります。
改善施策の策定・実行
目標値を設定した後は、改善施策の策定・実行に移りましょう。例えば手書きでの返信とFAX送信が伴い、最終的に紙ベースで保管するといった業務であれば、労力と時間削減を図るため、パソコン上で手続きと書類のデータ保存に対応した書類管理ソフトの導入によって効率化を図ることができます。
改善施策の策定にあたっては施策に掛かる費用も考慮することで、費用対効果を踏まえて検討することができます。
効果測定の実施・分析・継続
改善施策を実行した後は、一定期間経過後に効果測定を実施しましょう。1~3か月を目処に効果測定を行うことで、目標値までの進捗状況を把握することができます。なお、業務プロセスの改善は1度で目標値に到達することはほとんどありません。そのため、効果測定と分析は複数回繰り返し、より効果的な業務プロセスへと改善していきましょう。
業務プロセスの可視化に有効なツール
業務プロセスを可視化するにあたっては、全社の業務フローを洗い出し、情報を細かく精査しながら分かりやすく資料にまとめる必要があります。ExcelやPowerPointでも作成できますが、スムーズに可視化につなげられるツールの活用もおすすめです。ここでは、おすすめしたいツールについて解説します。
Robo Runner
「RoboRunner」は、PeacefulMorning株式会社が提供するRPA・AIツールの活用・開発を支援するサービスです。RPAやAIに精通した人材によるサポートを受けながらツールの有効活用を図ることができ、過去には世界トップシェア製品「UiPath」のトレーニングパートナーとして「Japan Partner Award」から強力なサポート体制について評価された実績もあります。
なお、Robo Runnerでは業務可視化コンサルティングサービスを展開しており、現場へのヒアリングや業務データの分析を通じて、属人化や効率を下げている業務プロセスを明らかにします。業務効率化のプロがサポートに入ることで、課題の本質を見極めたうえで改善策を設計でき、RPAやAIをはじめとするツールの導入効果を最大化するための土台づくりを実現します。
関連記事:営業所ごとの独自管理からデータ管理の標準化へー大転換期の物流業界DX事例|日本梱包運輸倉庫株式会社
クラウドログ
「クラウドログ」は、株式会社クラウドワークスが提供する作業の工数管理が行えるサービスです。部署ごとなどの働き方やプロジェクトごとの損益を「見える化」し、生産性の改善を図ることができます。集計作業の手間を95%カットし、半自動化を可能にするため、工数管理やプロジェクト管理を円滑に行いたいときにおすすめです。
ツールはGoogleカレンダーやOutlook上で入力できるほか、スマートフォンを使っての操作にも対応しており、用途や場所を問わず好きなタイミングで操作できるといった利便性が高い点も魅力のひとつです。
参考:クラウドログ
MITERAS仕事可視化
パーソルグループが提供する「MITERAS仕事可視化」は、パソコンでどのアプリケーションが使用されているか、キーボードをどの程度押下しているのかなど操作ログから業務内容を可視化できるツールです。勤怠管理では、申告時間と実際のパソコン使用時間を照合し必要に応じてアラート通知が届く機能もあり、入力ミスを迅速に解決することが可能です。
操作ログからさまざまな部分を可視化できるので、例えばリモートワークによるサービス残業や隠れ残業などにも速やかに気付くことができ、企業に点在する隠れた課題の解決にもつながります。
参考:MITERAS(ミテラス)仕事可視化 | アスピック|SaaS比較・活用サイト
TimeCrowd
「TimeCrowd」はタイムクラウド株式会社によるタイムトラッキングツールで、チームメンバーの作業時間、業務の進捗状況などをリアルタイムで可視化することができます。
操作方法はシンプルで、作業の開始・終了の際にワンクリックするだけで稼働状況が自動記録されるので、デジタルツールに苦手意識のある従業員でも容易に操作できます。監視されている感覚がないので、リモートワークでも活用できる点も魅力のひとつです。
参考:TimeCrowd | アスピック|SaaS比較・活用サイト
MylogStar
株式会社ラネクシーが提供する「MylogStar」は、パソコンによる操作ログから情報を収集し、管理・分析を可能にする業務可視化ツールです。「いつ」「誰が」「どのファイルを」「どうしたのか」など詳細な操作も記録・可視化でき、業務プロセスにおける非効率な部分の特定につなげます。
シークレットモードによるWebサイトのアクセスやSSL通信の監視にも対応しているので、従業員1人ひとりのパソコン操作に潜むリスクも細かく管理できます。
参考:MylogStar
Backlog
株式会社ヌーラボが提供する「Backlog」は、チームメンバーの作業を一か所にまとめ、その上で担当者や期限を設け、優先順位を決めながら作業が進められるプロジェクト・タスク用管理ツールです。ガントチャートによってタスクの可視化が容易なため、進捗状況の確認や作業遅延の早期フォローにも役立ちます。
シンプルなデザインなので、デジタルツールに苦手意識のある従業員でも能動的な操作感でなじみやすい特徴があります。利便性の高さから、Web制作会社をはじめ、広告代理店やソフトウェア開発事業など、企業規模を問わず多くの企業による導入実績があります。
参考:Backlog
Confluence
「Confluence」は、リックソフト株式会社による情報共有ツールで、文書ファイルを作成するかのような容易な操作感で簡単にページを作成できるほか検索機能も搭載されているため、部署ごとに異なるノウハウやマニュアルをページ作成すれば、いつでも検索し、内容を閲覧・確認することができます。
チャットツールの多くは内容が次々に流れているフロー型であるのに対し、Confluenceは企業における重要な情報を資産として管理できるストック型という特徴があります。
参考:Confluence(コンフルエンス)-情報共有ツール|製品概要|リックソフト
まとめ
業務プロセスの可視化とは、社内に点在する業務工程を、図表などを用い誰でも把握できるようにするための方法のことです。業務プロセスを可視化することで全社における業務を細かく把握でき、どの業務に改善が必要かが判断しやすくなります。
可視化によって改善すべき業務が見つかったときは、最終目標と一定間隔での目標値を設定した上で改善施策を実施することで、進捗状況と効果分析を同時に行うことができます。
なお、RoboRunnerでは、現場へのヒアリングや業務データの分析を通じて、属人化や非効率の要因となっている業務を可視化し、改善の土台をつくるコンサルティングサービスを提供しています。
RPAや生成AIの導入を検討している方、何から着手すべきかお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
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