日本では多くの企業に対してDXを推進しています。DXはAIを含むデジタル技術を活用し、業務プロセスや商品・サービス、ビジネスモデルをはじめ、企業文化を変革することを指します。DXに向けて取り組む企業が特に進めているのが、AI(人工知能)を使った業務効率化です。
この記事では、AIで業務効率化する8つの手順と、メリット・デメリット、AIを活用した事例について解説します。DX推進においてAIの導入を検討される方は、本記事を自社に沿ったAI技術を探す際の資料としてご活用ください。
AIとは?
AIが人工知能を指す言葉であることは理解していても、具体的にどのようなことが向いているのか知らない方も多いでしょう。ここでは、AIにできることとできないこと、AIが進む背景やメリット・デメリットについて解説します。
AIにできること・できないこと
AIとは「Artificial Intelligence」の略称のことで、和訳すると人工知能を指します。優秀なイメージがありますがすべてのことに対応できるわけではなく、下表のようにできることとできないことがあるのが現状です。
AIにできること |
AIにできないこと |
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AIにできることを例で挙げるとすれば、スマートフォンの音声アシスタントです。iOSであればSiri、AndroidであればGoogleアシスタントやGeminiなど、音声で質問するとユーザーの目的に応じた回答やヒントを提供するシステムがあります。
最近ではテキストを入力することでキーワードに合わせた画像が作成できるようになりましたが、完成したイラストには不自然な部分も多く、できる機能と挙げるには時期尚早です。また、汎用性に優れた機能が充実するものの、人間でいう空気を読むような状況判断にも対応していません。
参考:無料の AI 画像ジェネレーター、Microsoft Designer のテキストから画像へのアプリ | Microsoft Create
業務効率化できる理由
AIは、データ収集や分析作業を得意とします。例えば競合他社の情報を取得する場合、他社と自社の情報をそれぞれを取得し、分析しなければなりません。人の手で行うには多くの作業時間と労力がかかりますが、AIに任せれば圧倒的な速さで取得・分析ができます。
また、人が作業する際は、体調やモチベーションによって業務の質も左右されやすいです。AIであれば体調などに左右されることはなく、一定の品質を維持した生産が可能など、さまざまな理由によって業務効率化の実現につながっています。
AIの活用が進む背景と未来
AIの活用が進む背景には、国によるDX推進やAIのデータ処理・分析における能力、従業員の労力削減や人材不足の改善など、さまざまな理由があります。業務効率化や自動化を目的にAIが取り入れられていますが、その反面、AIの進化に不安を覚える方も増えています。
理由としてAIのさらなる進化により、これまで人が行ってきた業務がAIに代替され、やがて人の仕事が奪われると懸念されているからです。。この点については国でも活発な議論がなされていますが、現在では「AIの導入や普及のために必要な仕事」と「AIを活用した新しい仕事」が誕生し、タスク量は増加するとしています。
関連記事:AIをビジネスで活用するには?活用する上での目的や事例、成功のコツを解説
AI導入によるメリット・デメリット
AIを導入することで、企業にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。具体的には下表の通りです。
メリット |
デメリット |
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AIの導入によって、単純作業に従事していた従業員は、別の業務に労力を充てることができます。これまでは経験できなかった業務に従事できるので、従業員のスキルアップにつながるでしょう。仮に、従業員がスキルアップできれば、企業力の底上げにつながり、競争力の強化にも貢献する可能性があります。
AIの導入には単純作業における雇用が減るほか、情報漏洩リスクがあるなどのデメリットもありますが、多くのメリットをもたらすことは今後の社会にとって有益な存在となり得るでしょう。
AIで業務効率化に期待できる業務
AIで業務効率化に期待できる業務はさまざまです。具体的には事務作業や営業、製造などが挙げられます。
事務作業
AIを使うことで、数字を入力する事務作業の効率化に期待できます。例えば業務や出勤・給与などの管理業務には、Excelなどを使って数字を入力する必要があります。この作業をAIに任せることで、正確性を保った管理業務が実現します。
ほかにも、AIが搭載されたチャットシステムの活用により、顧客や従業員からの問い合わせにも対応できます。自社Webサイト上に設置した問い合わせを自動受付に切り替えれば、事務員の業務負担やオペレーターの削減にもつながります。
営業
営業では顧客情報の収集を経て、自社商品やサービスの改善点などを分析する業務があります。AIに代替すると、顧客情報や売上データ、競合・市場調査の結果を迅速に収集・分析できます。
人間では膨大な作業時間が伴う業務もAIによって速やかに分析結果を得られるので、早期的な自社課題の発見や経営戦略の立案に活かすことができます。顧客ニーズの洗い出しも可能なため、提案の成功率を上げることにも役立ちます。
製造
製造現場では、商品の不備の検知に役立たせることができます。画像認識機能を搭載したAIカメラの設置により、商品の形状や重量などをチェックし、正規品と異なる商品はないかを確認し、不良品の出荷を予防します。
これまでは人による目視確認で進められていた部分も、AIによって業務効率化につながるほか、正確性を保った管理が可能になり、高品質を維持した生産性の向上に期待できます。
保守・点検
保守・点検では、設備・機械の故障や老朽化を検知する業務にAIが用いられています。製造現場と同様に人の目視確認が行われていた業務をAIに代替することで、業務効率化につながります。
一例としては、設備の動作において正常な動作と異なる動作がないかを常時チェックし、早期の異常検知につなげるなどです。些細な異常も早期的な見地により、劣化や故障による事故・トラブルを予防します。
マーケティング
マーケティングでは、営業と同様に、顧客情報の分析や競合・市場分析などにAIが役立てられています。最近ではAIを取り入れた広告運用も行われ、Copilotをはじめとした生成AIの活用により、インパクトのあるキャッチコピーを作成できます。
農業
農業では画像認識機能を搭載したドローンを使った農薬散布などが挙げられます。虫食いが生じた場所をドローンが見つけるので、適切な場所にピンポイントで農薬を撒くことができます。
広大な田畑に農薬を撒く作業は、温暖化が進む国では命取りとなります。また、田畑全体に農薬を撒くことは、健康被害やコスト増加などの懸念もあります。AIに代替させることで最低限の農薬で抑えられるため、健康被害への懸念が減り売れ行きアップの可能性にもつながります。
AIを使って業務効率化する手順
AIの導入を決めた後は、どのように業務効率化するとよいのか、その手順について抑えておきましょう。
一般的には、以下の手順で進めることが多いです。
- 業務を選択する
- 目標を決める
- 適したAIツールを導入する
- データを準備する
- AIのトレーニングを行う
- テストの実施
- 分析
- フィードバック・改善
ここでは、文章や資料の作成、編集や添削を業務効率化するケースを例にした手順を解説します。
業務を選択する
最初に、AIを使って効率化させたい業務を選びましょう。AIに向いている業務は時間がかかる業務、単純作業、データ・情報の生成・処理が必要な業務の3つです。
これらを参考にすると、レポートやメディア用コラム、マーケティング資料の作成や事務作業が挙げられます。
目標を決める
次に、どのくらい業務効率化させたいのか、時間や品質向上などの観点から業務に対する目標を決めます。例えばマーケティング資料の作成を効率化させたい場合です。このようなときは、顧客・競合・自社情報の分析と作成までの作業時間を従来の50%まで削減させたい、などです。
適したAIツールを導入する
続いて、選択した業務に適したAIツールを導入します。適切なツールを選ばないと、導入しても使用できなかったなど、トラブルにつながります。リサーチした結果、いくつかのツールが見つかったときは、対応機能やコスト、現システムとの利便性の高さなどから比較して決めましょう。
例えば、AIツールの良さを把握してから導入を決めたいといったときは、無料に対応したツールから試すのもおすすめです。マーケティング資料の作成の場合であれば、ChatGPTやGeminiなどを使用することで、どの程度まで対応できるのかなど、一定の情報を把握してから決めることができます。
データを準備する
次に、効率化させたい業務に活用できるようにするためのデータを用意しましょう。マーケティング資料の作成であれば、過去に収集した顧客・競合・自社情報や分析結果などが効果的です。
AIのトレーニングを行う
続いて、用意したデータを使ってAIをトレーニングします。用意したデータからどのような分析が実現したのか、AIモデルのパフォーマンスをいくつかの段階に分けて評価することで、成長過程や改善点などを見つけやすいです。
トレーニング後、予想していた以上にパフォーマンスが悪いときは、必要に応じてチューニングを行います。チューニングといっても難しいものではなく、例えばマーケティング資料の作成が不十分だったときは、トレーニングで取り込んだデータとは別のデータを読み込ませ、資料作成のパターンを増やすなどです。
AIはデータとなる資料を多く得るほどパターンが増え、さまざまな問題も分析できるようになります。適切な資料をAIに与え、業務効率化につながるよう幅広く学習させましょう。
テストの実施
トレーニングやチューニングが終わったら、次はAIを試験的に導入し、その効果を検証します。テスト結果を確認し、どのような改善が必要かを特定することで、用意すべき資料の種類などを洗い出すことができます。
分析
テストが終わった後は、次にAIを実際に導入します。導入後のパフォーマンスは継続的なモニタリングを実施し、AIの成長度合いを評価しましょう。
マーケティング資料の業務効率化を目的とした場合、実際に、文章や資料作成、編集や添削といったプロセスにAIを取り入れましょう。作業時間や生成された資料の品質、わかりやすさなどを総合的にチェックすることで、AIに不足する項目を特定しながら改善を図ることができ、理想的なAIへとつなげられます。
フィードバック・改善
AIを導入した後は、使用感に対するフィードバックを従業員から集めましょう。どの部分が良くなっているのか、どの部分が使いにくいと感じるのかを精査し、チューニングを継続することでAIの最適化につながり、業務プロセスの効率化が実現します。
AIを活用した事例
経済産業省を中心としたDXの推進により、多くの企業ではAIの導入が加速しています。ここでは、AIを活用した事例を3つ解説します。どのようなシーンでAIが活用できるのかを押さえ、導入の際の参考にしてください。
チャットボットによる問い合わせ対応
帝人株式会社では、社内業務の効率化を目的に、従業員向けの生成AIサービス「Chat テイジン」を導入しています。
導入当初は従業員のうち8,000人を対象に約3か月の試用期間を決めてサービスを提供し、取得したデータの分析結果や従業員によるフィードバックを集約しサービスを拡充させます。
日常業務のうち、文章作成や翻訳、要約や分析などに取り入れ、さらなる生産性の向上を目指しています。
参考:帝人株式会社|独自仕様の生成AIサービス 「chat テイジン」 を導入
AI OCRによる書類作成
株式会社みずほ銀行では、請求書の受領をはじめとする企業の支払業務効率化支援を目的に、AI OCRを活用した「みずほデジタルアカウンティング」の提供をスタートしました。
AI OCR技術の活用により、請求書の情報を文字データへの変換を実現。市販の会計ソフトにも取り込み可能なCVS形式での仕訳データや、インターネットバンキングなどに取り込み可能な全銀形式の振込データの自動作成が実現し、業務効率化につなげました。
参考:株式会社みずほ銀行|みずほデジタルアカウンティング」の提供開始について
不良品検知向上による作業員負荷の軽減
キユーピー株式会社では、惣菜の原料検査工程にAIを導入し、従業員の業務効率化を実現しています。原料検査装置にはディープラーニングを活用した画像解析が行われ、良品選別が可能になりました。
変色や変形、夾雑物などの不良パターンが無限にあることで、チェック作業が難航します。これらをAIに学習させることで、良品以外を不良品と検知させることに成功。検査精度が飛躍的に向上し、従業員の業務効率化とともに消費者の安心・安全を確保した惣菜の提供が可能になりました。
参考:AIを活用した原料検査装置をグループに展開 | ニュースリリース | キユーピー
まとめ
AIは、さまざまなビジネス環境において、多様なシーンで業務効率化を実現できるツールです。従来は人手に頼る必要のあった業務も、AIの導入によって大きな効果をもたらすと考えられます。
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