業務における無理や無駄、ムラをなくし、仕事を効率的に行うため、近年は多くの企業がSaaS、AI、ITなどをはじめとしたツールの活用やペーパーレス化などに取り組んでいます。なかでもAIツールは単純作業の削減や生産性の向上につながることから、さまざまな業界が導入・活用し、業務の効率化を図っています。
この記事ではツールの導入のみならず、仕組みの改善なども含めて業務効率化に成功した10社の企業事例を解説します。どのような取り組みによってどのような効果を得ているのかを知り、自社にとって有効なツール活用や業務効率向上をさせるための施策について考えてみましょう。
業務効率化に成功した企業事例10選
業務の効率化は現在、大小問わず多くの企業で導入されています。ここでは業務効率化に成功した10社の企業事例について解説します。
1.キューサイ株式会社
キューサイ株式会社では、契約書や発注書、委任状や解約関連書類までの文書をデジタル管理する仕組みへと移行しました。従来は契約業務に月62.7時間かかっていたものを15時間にまで減らすことに成功し、文書処理の効率化が実現しました。
また、企業ミッションとして掲げる“ウェルエイジングの浸透・普及”を目指し、社内でのAI活用促進を目的とした独自アプリ「Q’sAI 冒険門」の立ち上げに伴い、従業員参加型のイベントを実施。イベントの参加を通じて従業員のAI活用率が、企画前に比べ1.5倍と大幅に向上しました。
参考:マネーフォワードクラウド|月62.7時間から15時間へ!2名体制でひっ迫していた契約業務の大幅な工数削減を実現。
キューサイ株式会社|ゲーミフィケーションで社員の生成 AI 活用率が約 1.5 倍アップ! ウェルエイジングの浸透・普及に向け”最先端を取り込む”挑戦で社内 DX が加速
2.株式会社ブリヂストン
株式会社ブリヂストンでは、会議スペースを設置し、業務運営の効率化へつなげています。会議室を増やすのではなく、立った状態による短時間の会議や少人数での打ち合わせ、顧客との打ち合わせにも対応できるよう、目的に合わせた空間利用により、業務の質と効率の向上を図っています。
会議スペースの設置により、年間平均休暇取得日数は約12日から15日へと増加。従業員にとって働きやすい労働環境が実現しました。
参考:働き方・休み方改善ポータルサイト|株式会社ブリヂストン|取組事例
3.東日本電信電話株式会社(NTT東日本)
東日本電信電話株式会社(NTT東日本)では、ITツールの活用により、事務作業をはじめとした時間的コストの短縮が可能になりました。在宅勤務の推進と合わせてWeb会議も導入したことで、従業員のワークライフバランスが大きく変化しました。
ITツールを活用したことで13%の時間外労働の減少に加えて、45時間以上の月間時間外労働となっていた従業員が34%も減ったそうです。この取り組みによって業務効率化に限らず、労働環境の改善にも役立っています。
参考:働き方・休み方改善ポータルサイト|東日本電信電話株式会社|取組事例
4.株式会社Amazia
株式会社Amaziaでは、経理処理をシステム化し、業務の大幅効率化を果たしています。従来は交通費精算において、訪問した取引先の経路をインターネットで検索し、手入力していました。システム化によって検索・手入力が不要になり、ICカードの読み取りのみで済むよう改善されました。
参考:マネーフォワードクラウド|紙の経費精算業務をなくし、マネーフォワードクラウドで締め作業までスピーディに完結できました
5.株式会社シップス
株式会社シップスでは、社内ではごく当たり前になっていたルールの見直しを図り、業務効率の大幅向上に成功させました。例えば、掃除は営業時間外に行うルールを、客数が少ない時間で店内フロアを4分割して行うルールへと変更するなどです。
営業時間外は販路戦略を策定する時間として活用でき、5億円の売上アップに加えて25%の残業時間の削減につなげています。
参考:株式会社ワーク・ライフバランス|【page.2/5】[店長研修]株式会社シップス
6.ヨネックス株式会社
ヨネックス株式会社では、戦略技術的需要予測と需給計画に特化したソフトウェアを活用し、需要予測や出荷見込みをはじめ、販売計画の作成や編集、補充計画などにおいて、2割ほどの業務効率化に成功しました。
ヨネックス株式会社SCM部長の柴崎雅司氏は、精度の高い需要予測をシステムに求めるのは無理があるものの、ルールを決めた上で人による補正が行われれば実現できると考え、今後はシステムの精度を上げながらSCMの組織ミッションの達成を掲げています。
7.株式会社マイナビ
株式会社マイナビでは、RPA活用を組織戦略に組み込み、71体のロボットによって年間35,356時間、1億607万円相当の最適化を実現させました。次のステップは「UiPath Orchestrator」の導入を検討し、現在活用しているロボットのエラー検知や業務管理、権限管理などの統合的な運用管理を目指しています。
8.三井住友海上火災保険株式会社
三井住友海上火災保険株式会社では、働き方改革の推進に伴い、ロボットによる業務自動化などによって生産性の向上を実現しています。RPAやエクセルVBAを活用したことで、月1,200時間の労働時間削減につなげました。
9.株式会社フィナンシャル・エージェンシー
株式会社フィナンシャル・エージェンシーでは、AIを活用した書き起こしサービスを導入し、応対品質管理業務の効率化を実現させました。
同社は約40の保険会社の商材を取り扱う保険代理店です。金融商品を取り扱うなかでは禁則ワードチェックや重要事項の説明ができているのかについて、常に細かなチェックが実施されていました。
チェックに費やす時間やコストを考慮し、通話内容を聞き起こせる「書き起こしサービス」を導入します。AIの音声認識技術によって通話内容を自動テキスト化でき、禁則ワードの自動チェックが可能になりました。従来に比べて聞き起こし作業が劇的に短くなったほか、吹き出しによるテキスト化により、確認作業の効率化につなげています。
参考:株式会社フィナンシャル・エージェンシー|AIの活用でコンタクトセンターにおける応対品質管理業務の効率化とチェック体制の均一化を実現!
10.株式会社電力サポート中国
株式会社電力サポート中国では顧客情報と申込、請求までを一括管理できるツールを導入し、業務効率化を図りました。ツール導入前は、複数拠点での申込に対する個別対応の集約化や電話対応から発注までのワークフローに懸念があったそうです。
ツール導入後は顧客情報と進捗情報を紐付けた管理が可能になり、従業員での共有も実現しました。不特定多数の顧客情報をはじめ、申込から発注の手続き、請求までのワークフローの一括管理も可能になりました。
参考:NECソリューションイノベータ|株式会社電力サポート中国様・導入事例|Salesforce
業務効率化によるメリット
多様な業界で行われている業務効率化ですが、具体的にどのようなメリットをもたらすのでしょうか。
人材不足の解消
ツールや技術の活用によって従業員の業務を代替できれば、人材不足の解消につながります。収集した情報やデータの分析によって正確性を維持した業務が可能になるため、従業員数が少なくても高品質な生産を維持できます。
例えば反復的な作業をAIツールで自動化すれば、従業員は別の業務に従事でき、知識の底上げや技術の向上につながります。当初はAIツールの導入が人材不足の解消といった目的であっても、多方面で思いがけないメリットにつながるのは業務効率化の魅力ともいえるでしょう。
利益の増加
単純作業や正確性を要する業務を効率化すると、利益の増加が見込めるのもメリットです。例えば営業活動での顧客管理や契約書・請求書などの発行業務を営業支援サービスで自動化させれば、各手続きがシステム内で完結します。
これまで書類の発行や確認、管理に充てていた時間を顧客とのコミュニケーションや競合他社の分析、自社の戦略立案に活用できれば、自社商品やサービスの開発・改善が実現し、今以上の利益が見込めます。
また、生産ラインの業務を自動化させれば生産性の向上にもつながります。これまで生産ラインを担当していた従業員は迅速な顧客対応が可能になり、顧客満足度の向上によって利益が増加するパターンにも期待できるでしょう。
コスト削減
単純作業や重複しがちな作業を排除・自動化し、業務の最適化を図ることで、リソースの無駄遣いの防止につながり、最終的にはコストの削減が実現します。例えば、従来は手入力によって行われていたデータ入力を自動化ツールに置き換えれば、人件費や労働時間の削減に期待できます。
多様な働き方の実現
リモート出社やフレックスタイム制など、近年では柔軟な働き方に対応する企業が増えています。しかし、柔軟な働き方に対応するためには業務プロセスの効率化が欠かせません。
例えばリモート出社を取り入れる場合、クラウドを用いたコミュニケーションツールの導入やデータ共有に対応したプラットフォームの導入が必要です。このようなツールを導入することで、出社しなくても好きな場所で働くことができます。
ワークライフバランスや生産性の向上
業務の効率化によって従業員のワークライフバランスの向上につながります。ワークライフバランスは、仕事とプライベートのどちらも充実させる働き方や生き方といった意味があります。2019年の働き方改革関連法の施行に伴い、企業は従来よりも働きやすく、その上で充実した生活につながるよう労働環境や雇用環境の見直しを図っています。
労働環境の見直しに伴い、業務を効率化できれば、就業時間内で多くの成果を上げられることに加え、残業や休日出勤の削減にもつながります。プライベートの時間が増えれば従業員は高いモチベーションで業務に取り組めることから、生産性の向上にも寄与することは大きなメリットといえるでしょう。
業務効率化を成功させるコツ
業務の効率化を図るには、成功につながるコツを押さえておくことをおすすめします。ここからは、以下6つのコツについて解説します。
- 自社課題を明確にする
- 目標を設定する
- 導入体制を整える
- 自社課題に適したツールを導入する
- 社内共有する
- 社内全体での評価・改善を継続する
具体的にどのようなことなのか内容を見ていきましょう。
自社課題を明確にする
まずは自社課題を明確にさせましょう。例えば、データ入力に要する時間を、AIツールの導入により自動化させたいなどです。どのような業務・作業をどう効率化させたいのかを明確にすることで、課題に合わせたツールが探しやすくなります。
目標を設定する
次に、自動化・効率化させたい業務・作業にかかる時間やコストなどを洗い出し、具体的な数字を用いてどの程度削減させたいのか目標を決めましょう。
仮に、従来のデータ入力では3人の従業員で1日あたり3時間かかっていた場合、自動化を通じて1人の従業員で対応する、もしくは1日あたり1時間で終わらせるといった目標を設定することで、ツールを導入した後の効果が判断しやすくなります。
導入体制を整える
次に、導入したツールを従業員が活用できるよう、マニュアル作成などを行い、導入に向けた体制を整えましょう。作成したマニュアルは、メールやコミュニケーションツールなどを用いて全社に共有します。共有するファイル・データは誰でも閲覧できるよう、アクセス権限の付与は失念しないよう注意しましょう。
自社課題に適したツールを導入する
全社での導入体制が整った後は、自社課題に適したツールを導入します。導入後は自動化・効率化させたい業務に関する情報やデータをツールに取り込み、トレーニングを実施しましょう。
さまざまな情報やデータを取り込むことで、分析結果が精度の高いものになります。分析結果が思うようなものでなければ、別のデータを取り込みチューニングして、ツールの精度を上げましょう。
社内共有する
ツールを導入したら、その旨を全社に共有しましょう。ログインアドレスやパスワードを要するツールの場合は、それぞれの情報はマニュアルに記載し、メールやコミュニケーションツールなどで共有しておくと安心です。
社内全体での評価・改善を継続する
ツールの活用から一定期間経過したら、使いやすさや分析結果などを総合的に判断したフィードバックを受けましょう。細かなフィードバックも漏れなく確認・分析することで、不足していた情報やデータが判明し、随時取り込むことができます。
フィードバックをもとにツールの精度を上げることで、理想としていた自動化や効率化の実現につながります。
業務効率化における注意点
業務効率化を図るためには、これから紹介する注意点に留意しましょう。
導入前に優先順位をつける
成功事例を見ると、業務効率化に向けた気持ちが一層高まります。しかし、事例と同じようなツールを導入し活用をしたとしても、全社の導入準備ができていなければ現在よりも業務が遅くなる可能性があります。
まずはツールを導入する前に、導入を担当する従業員の選任や配置決め、自動化・効率化させたい業務の洗い出しなどを行いましょう。
やるべきことに優先順位を付けると導入後のトラブルを防止し、スムーズかつ適切なツールの活用が可能になります。
目的は社内全体に共有する
業務効率化に向けたツールを導入するのであれば、なぜ導入を決めたのか具体的な目的があるはずです。上長などによる一方的な導入では、従業員は目的や理由がわからず、混乱を招く恐れがあります。
業務効率化は、従業員全員が導入したツールを活用することで実感できる効果です。そのため、ツールの導入に際しては、その目的について全社へ共有し、理解を求めることが大切です。
品質が低下しないよう気を配る
業務効率化を目的としたツールなどの導入も、使い方を誤ると品質低下を招く可能性があります。例えば、ダブルチェックを要する業務を自動化した場合、効率化を重視しすぎるあまり最終チェックを省いてしまうと、ミスに気付くことができず、大きなトラブルや損失につながる恐れがあります。
ツールを導入する目的の多くは、単純作業の自動化や品質を維持した生産性の向上です。AIツールなどによって自動化や効率化が実現しても、商品やサービスに対する最終的な確認作業は実施するよう努めましょう。
まとめ
DXの推進が加速する現在では、多くの企業がAIの活用やペーパーレス化などを通じて業務効率化を図っています。自社にふさわしいツールを知りたい方やDX推進に必要な人材を確保したい方は、この機会に「DXBoost」をおすすめします。
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