Microsoft社のエクセル(Excel)は、多くの業務で用いられるツールのひとつです。数値の計算をはじめ、グラフやデータ分析、帳票など多様な作業に対応していることから、すでに使いこなしているといった方も多いのではないでしょうか。
基本的な機能以外にも、関数やマクロなどの活用によって業務の効率化を図ることができます。この記事では、エクセルを使って業務効率化に成功した事例について解説します。
目次
エクセルを使って業務効率化に成功した事例4選
まずはエクセルを使って業務効率化に成功した事例を4つ紹介します。どのような業務が効率化できたのか、詳細について見ていきましょう。
1.資料や各種書類の作成業務
アンケート結果の集計や資料作成は、エクセルの関数やマクロを使うことで効率化につなげることができます。例えば、ある条件に合致する値のみを合計することが可能なSUMIF関数を使えば、選択式でのアンケート結果をスムーズに集計可能です。
アンケートが定型のエクセルファイルで回答されている場合、マクロを用いればファイルの内容をコピー&ペーストでき、より迅速な作業が実現します。
2.情報処理・入力業務
すでに存在するエクセルファイルのデータを別のエクセルファイルへと転記したい場合も、関数やマクロが有効です。例えば、既存ファイルのパス名を使うことで、外部参照としてデータを参照できるなどです。
ほかにも、マクロを使えば特定フォルダに保存された複数のファイルを開いた上でデータを取得し、転記することもできます。
3.情報の自動取得業務
Web上にあるデータも、エクセルのWebクエリの活用によって効率よく取得できます。使用方法は下記の通りです。
- エクセルの「データ」をクリックする
- 「Webから」をクリック
- 「Webクエリの実行」からURLを指定する
この方法ができない場合「データ」をクリック後「外部データの取り込み」をクリックし、「Webクエリの実行」からURLの指定を行うことでエクセルにデータを取り込むことができます。
なお、ファイルを開く際にデータを更新するよう設定を変えることで、ファイルを開く度に最新の情報に更新されるのでおすすめです。
4. メールマガジンの配信業務
顧客や従業員に配信するメールマガジンも、エクセルとOutlookを組み合わせることによって一斉配信が可能になります。この場合、メールアドレスや送信先の氏名などを記載した配信先リストをエクセルで作成・管理すると、マクロでのデータ差し込み送信ができます。
手動による作業だと、送信先が大量な場合コピペミスにつながることがあります。些細なミスを防ぎながら業務の効率化を図りたいときは、エクセルの機能を使い自動化することをおすすめします。
エクセルによる業務効率化のメリット
エクセルを使った業務の効率化ですが、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。ここではエクセルによる業務効率化のメリットについて解説するので、深くまで利用していない方は今後の参考にしてください。
データ処理の効率化
エクセルの活用によって、複雑な業務を迅速に処理できるメリットがあります。例えばエクセルのなかでも比較的多く使われる、合計値を算出するSUM関数や平均値を表すAVERAGE関数などの活用により、マウスを使って各数値の合計値を出したり平均値を出す手間を省略できます。
合計値や平均値を表したいセルに該当するセルの数値や関数を入力すれば、即座に確認することができます。わざわざマウスに手を伸ばす必要がないので、その分だけ作業時間をカットできるのは、エクセルならではのメリットといえるでしょう。
効率化の向上
エクセルのさまざまな機能の活用によって作業の効率化を高められるのもメリットです。例えばエクセルにはマクロという機能がありますが、マクロはいくつかの処理を一括で実行できる機能を指します。
エクセルで開発タブを有効にした後「マクロの記録」をクリックして操作することで、ボタンをクリックして実行できたり、ショートカットで実行できたりするなど、業務の割り当てが可能になります。
ただし、マクロは操作を記録する機能であるため、この使い方では汎用性に乏しいままです。記録したマクロにVBAで編集する一手間を加えることで、さらなる効率化につなげられます。
利便性が高まる
エクセルファイルにさまざまな情報を集約する際は、ファイルサーバーにファイルを保存し、複数の従業員で作業できるように設定しておくと利便性の向上につながります。
単にファイルをサーバーに保存するだけでは、ある従業員がファイルを開いている間は他の従業員で開くことができません。機密性の高いファイルほど、共有する従業員をあらかじめ決めておき、その上で共有することで複数人での編集が可能になるほか、情報漏洩のリスクを最小限に抑えることができます。
エクセルを使って業務効率化する方法
エクセルを使って業務の効率化を図るには、どのような方法が有効なのでしょうか。ここでは6つの方法について解説するので、ぜひ試してみてください。
効率化させたい業務を明確にする
業務の効率化を図るには、まずどの業務をよりスムーズに行いたいのかを明確にしましょう。エクセルを使えばあらゆる業務がスムーズに進められますが、効率化とは異なります。
例えば、手動でのデータ入力では、どれだけ努力しても、1時間で入力できる数値には限界があるでしょう。集中力を維持して取り組むことはできても、翌日に体調不良となれば、作業速度や品質が低下する可能性があります。
エクセルとさまざまなツールの併用によっては、業務の自動化も可能です。自動化した業務は24時間365日、速度や品質を落とすことなく生産できるので、年単位で考えると飛躍的な生産性向上に期待できるでしょう。
ショートカットキーを活用する
よく使う動作は、簡易的なコマンドの入力で即座に実行できるショートカットキーの活用もおすすめです。1回のショートカットキーでの業務時間の削減は微々たるものですが、1回1回マウスに手を移動させ、必要な項目を探してクリックする必要がなくなるので、キーボードだけで簡単に作業を進められます。広く使われるショートカットキーは下表の通りです。
ショートカットキー |
概要 |
[Ctrl]+[C] |
対象セル、文章のコピー |
[Ctrl]+[V] |
対象セルにコピーした文章を貼り付ける |
[Ctrl]+[X] |
対象セルや文章を切り取る |
[Ctrl]+[Z] |
1つ前の動作に戻す、または戻した動作を1つ先に進める |
[Ctrl]+[S] |
上書きして保存 |
[Ctrl]+[F] |
シート内または選択した範囲で検索 |
[Ctrl]+[H] |
シート内または選択した範囲の置換 |
[Ctrl]+[A] |
全て選択 |
[Ctrl]+[矢印] |
矢印の向きにある最後のデータまで移動 |
[Ctrl]+[-] |
セル、行、列の削除 |
[Ctrl] +[ Shift]]+[+]( |
セル、行、列の挿入 |
F12 |
名前を付けて保存 |
なお、ショートカットキーはエクセルに限らず、Googleスプレッドシートやドキュメントなどでも利用できるものが多く存在します。ショートカットキーを覚え、どのシーンでどのように使えるのかを覚えておくと、さまざまなツールでの効率化にもつながります。
関数を活用する
関数は、入力によってエクセルシート内で定められたルールに従い、自動的に計算や集計、処理できる機能です。顧客情報をはじめ、従業員の名簿などは関数を活用することで、入力ミスを防ぎ、正確な情報を管理することができます。
関数 |
概要 |
SUM |
セル範囲内の数値の合計値を計算する |
SUMIF |
選択範囲内で1つの条件に一致するセルの合計値を計算する |
SUMIFS |
選択範囲内で複数条件に基づき合計値を計算する |
AVERAGE |
セル範囲内の数値の平均値を計算する |
VLOOKUP |
垂直方向にデータ検索し、一致する値を取得する |
MAX |
指定された範囲で最も大きい値を取得する |
MIN |
データセットから最も小さい値を取得する |
請求書では8%や10%と複数の消費税を計算して合計金額を入力しますが、この場合は「INT」や「ROUNDDOWN」と呼ばれる関数を使うと、金額に対する消費税や合計額に対する消費税を自動で計算できます。
細かな数字の入力にはミスが生じやすいです。入力ミスによって合計額が大きく変わる可能性もあるので、正確さを要する業務はエクセルで対処しましょう。
なお、Googleスプレッドシートでも利用できるので、ショートカットと合わせて覚えておくと、さまざまなシーンで効率化を図ることができます。
マクロを使用する
いくつかの操作を繰り返し行う業務では、マクロ機能の活用がおすすめです。マクロは複数の操作を記録できる機能があるので、反復作業を自動で進められます。複数の作業を通して行う必要がある業務は、年間で見ると多くの時間をかけています。マクロを通じて一連の作業を記録させることができれば、大幅な業務時間の短縮につながるでしょう。
マクロを使用する際は以下の手順で設定しましょう。
- 「ファイル」タブ内の「オプション」を開く
- 「開発」を有効にする
専門知識を要する業務もマクロによって業務の自動化が可能になるので、さっそく試してみましょう。
共有フォルダ機能を使用する
共有フォルダ機能とは、エクセルファイルを複数のユーザーがアクセス・編集できるネットワーク上のフォルダのことです。エクセルは基本的に誰かが開いている間は他の人がアクセスできないよう設定されています。しかし、共有フォルダ機能を有効にしておくことで、部署やプロジェクトメンバーが共同で作業できるようになります。
共有フォルダの活用によってデータの一元管理も可能です。1つのプロジェクトに複数のデータがある場合は、1つのエクセルで管理・編集が可能になります。
RPAツールを使用する
エクセルで業務を効率化させるのであれば、RPAツールの活用がおすすめです。RPAは「Robotic Process Automation」の略語で、ソフトウェアロボットやAIを使い、定型的かつ反復する業務プロセスを自動化できる技術です。
RPAツールは単純作業の自動化を軸としており、人間の介入を減らすことで業務の効率化やコスト削減、精度の向上などにつながります。
エクセルとRPAを活用すると、時間外勤務時間の集約や集計のほか、所得状況の調査なども可能になります。集約や集計に多くの時間がかかっているときは、RPAの併用をおすすめします。
エクセルとの併用によってさらなる業務効率化につなげる方法
ここからは、エクセルとの併用によってさらなる業務効率化を実現させる方法について解説します。
VBAを活用して操作方法をプログラミングする
VBAとは、Microsoft社がOfficeの拡張機能として提供するプログラミング言語のことです。主にマクロを設計する際に用いられ、エクセルl上で行う操作を記録し、自動で再現するほか反復作業を実行するよう指示できます。
取得には時間がかかりますが、活用することで作業を全て自動化できるので、生産性の向上に期待できるでしょう。
RPAを活用して処理の自動化を図る
RPAツールの活用によって処理の自動化につなげられます。マウス操作やキーボード入力による操作手順を記録すれば、大幅な業務時間の削減に寄与します。
正確な手順を踏めば、エラーなく正確な作業が行えます。毎日欠かさず行う作業や決まった時間に行う必要のある作業は、RPAの活用によって時間短縮や生産性の向上につながるでしょう。
エクセルを使って業務効率化させる際の注意点
エクセルは便利な機能が多く、さまざまな業務を自動化、効率化することができます。しかし、使用においてはいくつかの注意点もあります。
向き不向きの業務があることを把握する
エクセルは表計算ソフトとしても有名ですが、大量のデータ処理には向いていません。エクセルの行数は1,048,576行に上限設定されているため、特にビッグデータを使った作業には適していないのが現状です。仮に、1,048,576行のデータ処理が可能だとしても、処理が遅くなったりフリーズしたりするなどのトラブルにつながりかねません。
自動化はできても、効率化にはほど遠くなるので、エクセルには向き不向きの業務があることをあらかじめ念頭に置きましょう。
改善すべき部分を見つける
エクセルを使い業務効率化を図るには、エクセルを使うことを目的とするのではなく、そもそものワークフローの見直しや改善を視野に入れましょう。エクセルで顧客情報を管理する企業の場合、見積書や契約書、請求書の作成を効率化させたいと考えることが多いです。関数やマクロの活用によって自動化することはできても、別のツールを使って作成・出力した方が遙かに管理がシンプルに行える場合があります。
このような場合、クラウドサービスであれば作成や編集、管理の全てが可能なので、エクセルだけに的を絞らず、適材適所のツールを検討することをおすすめします。
関連記事:業務効率化ツールとは?種類やポイント、特徴を簡単に紹介!
まとめ
エクセルを使うことで、単純作業や反復作業を自動化でき、業務の効率化を図ることができます。エクセルはVBAやRPAとの相性がよいので、ツールの併用によって、より迅速な業務が実現できるでしょう。
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