2021年3月よりWindows10(/11)ユーザー向けに追加費用なしで提供され注目が集まったマイクロソフト社の手掛けるRPAツール、「Power Automate Desktop」。
追加費用無しでの提供発表時だけではなく現在も月に1度のアップデート時にはまとめ記事が登場するなど、今なお注目度の高いツールの1つです。
マイクロソフト社は他にもPower Apps、Power BI、Power Virtual Agents等の製品を提供しており、様々な角度から企業の業務効率化、DXに貢献しています。
今回はマイクロソフトにて、Power Platformのグローバル組織でテクニカルスペシャリスト(技術営業)として活躍されている川端様にインタビュー協力いただき、理想の導入ステップや今後のアップデートの方向性などについてお伺いしました。
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目次
インタビュイー紹介
マイクロソフトコーポレーション
ビジネスアプリケーション事業本部アジア
グローバルブラックベルト テクニカルスペシャリスト
川端祐人様
マイクロソフト本社に入社以前はRPA関連の製品開発を担当。
その後、総合商社で技術専門職として投資案件の技術的なサポートやデータサイエンティストの役割を担う。
現在はビジネスアプリケーション事業本部にてテクニカルスペシャリスト(技術営業)としてPower Platformの提案を行う。
RPAの領域を減らしていく重要性と自動化を軸にした複合的DXとは
現在の業務内容
ーー川端様の現在の業務について詳しく教えて頂けますか。
川端さん:現在はテクニカルスペシャリスト(技術営業)としてPower Platformの提案を行っています。RPA(マイクロソフトではPower Automate Desktopの機能に相当)を単体で提案するというアプローチではなく、RPAを通じてお客様が持っている課題を明らかにし、Power Platform全体でのDXを推進させていただいています。
ーーRPAだけに頼らない方向性について詳しくお伺いしたいです。
川端さん:RPA製品としてPower Automate Desktopを提供している立場からの発言として逆説的に捉えられるかもしれませんが、DXを進める上でRPAの領域を減らしていくことが大事であると考えています。
RPAを導入するメリットして、もちろん人間のマニュアル操作をRPAで置き替えることになり、ロボットが素早く正確に入力などしてくれるので、効率化にはつながります。しかし一方で単にRPA化するだけでは業務プロセスや既存のシステムの構成に関しては現行踏襲で改善が見られない、もしくはRPAの操作対象のシステムのバージョンなどで発生するRPAのフローのメンテナンス、保守稼働が増大してしまうという点がデメリットとして顕在化するケースが多くあります。
そのような事態を防ぐためにはRPAだけを特別視するのではなく、業務全体を見てDXを推進するためにあるべき構成を鑑みたうえで、RPA操作対象のシステムの置き換えにより、適材適所でPower Appsでのローコードアプリケーションの構成やAPI連携するPower Automateクラウドフローを提案したりしています。
導入検討時の留意点
ーー導入担当者の支援を行う日々の業務を通して、担当者はRPA導入を検討する際にどのような点に気を付けるべきだとお考えですか。
川端さん:RPA導入検討のみに限られた話ではありませんが、DXを推進する上で「RPA」ではなく広い意味での「プロセス自動化」という軸に沿って行動することが大切です。RPAが万能なイメージで捉えられてしまっている日本において、RPA単体ではなく「周辺のローコードツールとの連携をうまく行ったり、利用できるAPIを最大限有効活用すること」を重視する必要性を伝えていくことが求められます。お客様の多くは既にRPAを導入している方なのですが、RPA単体での活用に苦労された経験のある方が大半なのでこの提案に納得して頂けることが多いです。
手軽だからこそ覚えておきたい理想の導入ステップ。明確なターゲットからの逆算が組織の効率性を上げる。
Power Automate Desktop無償提供を受けて
ーーマイクロソフトから2021年3月にPower Automate DesktopがWindows10(/11)ユーザー向けに追加費用なく(無償)提供されたことが話題になりました。無償提供により利用者の層が広がった印象を受けますが、製品ベンダーとして利用を勧めていきたい層はどのあたりでしょうか。
川端さん:今までRPAを利用したことのない層がまず挙げられます。無償版の範囲でも可能な内容ですが、Excelファイルを読み込んでチェックしてみるなど定型作業の自動化をしてみて、RPAでどの程度のROIが見込めるのか、最初に検討する手段として有効活用していただけると考えています。市中のRPAは高価なツールが多い傾向にありますが、Power Automate Desktopではライセンス購入に踏み切る前に十分に検証できる機能が用意されていますので、効果測定の結果をもって本格導入の検討をしていただけると思います。
既に他のRPAツールを使用されている層にとっては、無償版/有償版共に価格面でのメリットがありながらも、既に稼働しているアクティビティやシナリオをまた1から作ることがネックになってしまいます。そういった場合は、既存のRPAのシナリオの見直しの取り組み手段として少しずつ取り入れて頂きたい、と考えています。
例えば、既に動いているロボットが200体あれば、10体だけをPower Automateに置き替えてみて、同製品が得意としているクラウドフローを活用しながらクイックに成果を出す、そして費用対効果を感じて頂けるのであれば50体、100体と徐々に置き替えるロボット数を増やしていく…といった風にスモールスタートで導入していただくのが、既存のRPAの資産を有効に活用しながら、当社のツールを使ってコストカットに繋げていただける導入ステップかと思います。実際に他のRPAツールからの移行をされている公開事例(出光興産様)もあるので、ご興味のある方は是非ご覧ください。
他RPAツールよりPower Automateに移行した出光興産様の導入事例
ーーPower Automate Desktop導入前に気をつけたほうがよいことはありますでしょうか。
川端さん:導入の敷居が低いPower Automate Desktopですが、無償版と有償版のライセンスの違いは、導入前にある程度認識して頂いた方が中長期的に見て整理しやすいと思います。
SNSなどの情報から、無償版範囲の広さを印象として持たれる方も多いかもしれませんが、有償版でしかできない機能は多く、具体例を挙げるとデスクトップフローの共有やAIの機能、フローの管理機能は有償版の範囲となってきます。
組織としての理想的な導入ステップ
ーー導入の敷居が低いという点で、我々のお客様の中には感度の高い現場担当者の方が個人アカウントと紐づけてPower Automate Desktopの利用を開始されるケースがあります。また、組織アカウントでも無償版の利用を開始した後にどのように導入を進めていけばいいのか分からないという方もいらっしゃるのですが、組織としての理想的な導入ステップはどの様なものだとお考えですか?
川端さん:最も理想的なのは、まず社内で自動化対象業務を洗い出すことです。個人のアカウントを用いて先陣を切る形でRPAの利用を始める方がいらっしゃることは生産的でとても良いことです。しかし組織の観点で見たときには、そのような個人のパワーを活かしつつも、並行して組織全体としてDXを実現することが最終目標ですので、優先して自動化すべき対象業務の意思決定が組織全体でコンセンサスとなっている必要があります。
そのように進めないと、組織全体としてRPA及び自動化の導入効果を正しく認識することができません。まずは組織の中で「どういった自動化が可能なのか」、「ターゲット(目標)は何か」、「それに対してRPAは効果的なアプローチになるのか」といった点を分析し、意思決定の権限を持つ人や現場担当者の間で共通認識を持つ必要があります。それらを踏まえたうえで具体的な実装の方法などの話に繋げていくのが理想的です。
ーーターゲット(目標)を明確にして共通認識を持ったうえで、そこから逆算して考えていくという事ですね。
川端さん:そうですね。冒頭で申し上げた通り、我々はRPA単体のアプローチを取っていません。その為、無償提供によりRPAを手軽なものとしてツールとして浸透させていくとともに、本当の意味でDXを達成するために必要な構成要素は何かという観点が重要と考えています。
無償版のサポート体制
ーー無償版Power Automate Desktopの利用の仕方で躓いてしまった場合、その方はどの様に導入を進めていけばいいとお考えですか。
川端さん:実は無償版で躓いてしまった方をどうサポートしていくのかというのはマイクロソフトとしては模索中です。無償化された効果として、オープンな記事がどんどん書かれて行っている点が挙げられますので、それらのコンテンツをうまく利用してソリューションを見つけて行って頂きたいと考えています。現在はトラブルシューティングであったり活用のコツやポイントをMicrosoft Docs(技術ドキュメント)や公式Youtubeなどを通して配信しているので、それらのコンテンツも今後は豊富にしていく予定です。無償版で詰まってしまった方はそちらも参考にしてみてください。
ーー無償で閲覧できるコンテンツとしてはRPAHACKでも使ってみた記事をいくつか公開しているので参考にしていただければと思います。
マイクロソフトだからこその強み。より高機能、より広範囲な自動化で企業のDXに並走していく
今後のアップデートの方向性
ーPower Automate Desktopは頻繁にアップデートがあり、日々進化されているのを使い手として感じております。Power Automate DesktopだけではなくPower Platform全体の話なのですが、今後どういった方向性で発展されるのでしょうか。
川端さん:現時点では、大きく分けて「自動化範囲の拡大」と「RPAの高機能化」に着眼しています。
「自動化範囲の拡大」ですが、RPAの作成やどれだけ効率化されたかを調べる集計作業自体が手間や負荷を増やしているといった課題があると考えています。
今後のアップデートではRPAを作成すること自体を半自動化していくとか、組織におけるRPA導入前後の効果の試算、検証を自動化していければと思います。このようなアプローチが現実的な解として提供できるのは、Windows OSだけでなくクラウド上でのOffice製品を提供しており、それらをトータルにソリューション提供できるマイクロソフトだからこそ成し遂げられる強みであると言えます。
「RPAの高機能化」という点に関しては、現在は主にPower Appsの利用者向けに発展的なプロ開発者向けの機能追加がなされています。Power AppsやPower AutomateといったPower Platformの製品の根底には「市民開発、ローコードのアプローチを通じてより多くのことが達成できるように」という基本思想があり、ローコードでの利用の裾野を広げることをベースとしつつも、様々な利用用途でより広く使われることを目指し、プロ開発者向けの機能の充実も図っています。
ー具体的にはどのような機能を予定されていますか。
例えば、Power FXというオープンソースのプログラミング言語を取り入れる、GPT-3という自然言語処理で自然言語文からコードが自動生成される、といった世界をPower Automateの中にも拡げてくことが想定されます。
導入担当者の方にメッセージ
ーー最後になりますが、企業の導入担当者の方に一言メッセージを頂けますか。
川端さん:私はRPAをはじめとする、人とコンピュータの協業(Human-machine Interaction)といった研究分野のテーマに長く携わってきましたが、Azure上で提供されている様々なクラウドサービスやデバイス、Windows OSを提供しているマイクロソフトの規模・環境下にあり、Power Platformの中でPower Automateが提供されているのは改めて素晴らしいことだと思います。
これは、細部の自動化(ロボット化)に留まらず、企業のDXまでナビゲートしていける構成をマイクロソフトが1社でもってご提供できるからです。Windows10(/11)ユーザーであればPower Automate Desktopを無償で利用できるわけですし、企業のDXを進めるまず第一歩の取り組みとして、ぜひPower Automate Desktopを実際に触れてみていただきたいと考えています。
ーー本日は貴重なお話をありがとうございました。
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いかがでしたでしょうか。日本マイクロソフトにて製品を勧める川端様の視点から理想の導入ステップや今後の方向性を教えて頂き、新たな発見があったのではないでしょうか。
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