近年、業務効率化・働き方改革に向け注目を集めているRPA。大手企業を中心に導入が進んでいますが、導入コストの高さなどにより中小企業の導入率は未だ3割以下という結果がでています。
これらの現状を打破するために、ITツール導入の際のコストの一部を国が補助する補助金制度があることをご存知ですか?補助金の中には申請期間が終わってしまったものもありますが、2021年以降も例年と同じように実施される可能性があるので、今回この記事では補助金の種類や申請条件を詳しく解説していきます!
目次
RPAとは?
RPAとは「Robotic Process Automation」の略で、従来、人がコンピュータを使って行っていたマウス操作やキーボード操作といった業務を、自動化する技術のことです。RPAによる業務効率化により、人材不足解消や生産性向上につながっています。
RPAについての詳しい解説はこちら↓
RPAとは何か?簡単にわかるまとめ!特徴~導入ポイントまで幅広く解説
RPA導入の現状
(引用:https://www.m2ri.jp/release/detail.html?id=391)
株式会社MM総研が発表した「RPA国内利用動向調査2020」によると、大手企業の導入率は2019年11月時点で、51%に達したことがわかりました。前年の調査では38%であったことから、大企業では急速に導入が進んでいることがわかります。
一方で中堅・中小企業の導入率は25%と、年々大企業と大きな差が生じています。理由として考えられるのは、RPAは業務効率化を実現できるものの、導入するにはツールの価格・RPA人材の確保など懸念すべき様々な問題があるということです。
参考:RPA国内利用動向調査2020 ≪ プレスリリース | 株式会社MM総研
RPAの導入に活用できる補助金とは?
ここでは実際、RPAの導入に活用できる補助金の種類を紹介します。すべての中小企業がIT導入補助金を活用できるわけではないので、条件や注意点も踏まえ解説していきます!
IT導入補助金
概要
IT導入補助金とは、中小企業・小規模事業者に向けたITツールの導入経費の一部を国がサポートする補助金のことです。
RPAを導入したいと思っても、コストの高さから導入を諦めてしまう中小企業が多いことが現状です。IT導入補助金はRPAツールも対象となっていますので、コストを押さえてRPAを導入することができます。
IT導入補助金で定義されるITツールは大きく3つに分類されます。
大分類Ⅰ・・・ソフトウェア(業務プロセス)
大分類Ⅱ・・・ソフトウェアオプション ←RPA
大分類Ⅲ・・・役無(付帯サービス)
RPAは大分類Ⅱのソフトウェアオプションの中の「自動化・分析ツール」に分類されます。
なお、IT導入補助金はRPA単独では申請することができません。
他のITツールと組み合わせて申請することが条件となっています。
大分類Ⅰのソフトウェア(業務プロセス)は6つに分類されています。
RPAツールと一緒に組み合わせて使いたいITツールが、以下の6つのプロセスのいずれかに該当する必要があります。
①顧客対応・販売支援
②決済・債権債務・資金回収管理
③調達・供給・在庫・物流
④業種固有プロセス
⑤会計・財務・資産・経営
⑥総務・人事・給与・労務・教育訓練
大分類Ⅲの役無(付帯サービス)は、ソフトウェアの導入に必要な導入経費や導入後のサポート費のことです。最長1年間の役無費用が補助対象となります。(1年未満も可)
RPAのシナリオ作成が必要な場合は、役無カテゴリーの中の導入設定の登録が必要となります。
対象
中小企業・小規模事業者
以下の画像に記載のある中小企業社が対象となります。
(引用:令和元年度補正サービス等生産性向上IT導入支援事業費補助金)
さらに詳しい対象者の条件は以下をご確認ください↓
令和元年度補正サービス等生産性向上IT導入支援事業費補助金
IT導入補助金の申請型は通常枠A類型、通常枠B型、特別枠C型の3種類があります。
補助額・条件によって自社に適した型を選択します。
通常枠A類型
補助額:30万〜150万円未満
補助率:1/2以内
買い取り製品 …ソフトウェア価格が補助対象
月額・年額等のサブスクリプション …1年間分のソフトウェア利用料が補助対象(1年未満の利用も可)
条件:
最低1つ以上の業務プロセスを保有するソフトウェアを申請すること。
事業実施報告が必要(2022年〜2024年までの3回)
gBizIDプライムを所得していること。
(※複数の行政サービスを1つのアカウントで利用することができる認証システム)
通常枠B類型
補助額:150万〜450万円
補助率:1/2以内
買い取り製品 …ソフトウェア価格が補助対象
月額・年額製品等のサブスクリプション …1年間分のソフトウェア利用料が補助対象(1年未満の利用も可)
条件:
最低4つ以上の業務プロセスを保有するソフトウェアを申請すること。
事業実施報告が必要(2023年〜2025年までの3回)
gBizIDプライムを所得していること。
通常枠C類型
内容:C類型は、新型コロナ感染症によってテレワークや非対面型でのビジネスモデルに転換した事業者を、IT導入によって優先的に支援するために作られたIT導入補助金の特別枠です。テレワーク推奨に向けた補助金であることから、A類型・B類型の役務(付帯サービス)ではなかったハードウェアレンタルも補助対象になっていることがポイントです。
A類型とB類型とは制度等で一部異なることが注意点としてあげられます。
補助額:30万〜450万円
補助率:2/3以内
条件:補助対象費用の1/6以上が、以下に記してある「甲」「己」「酉」のいずれかの要件を満たす投資である事業であること。
甲:サプライチェーンの毀損への対応 …顧客への製品供給を継続するためのIT投資
己:非対面型ビジネスモデルへの転換 …非対面・遠隔でのサービス提供実現のために必要なIT投資
酉:テレワーク環境の整備 …テレワークでの業務環境を整えるためのIT投資
参考:IT導入補助金2021通常枠(A・B類型)版|一般社団法人サービスデザイン推進協議会
参考:IT導入補助金2021低感染リスク型ビジネス枠(特別枠:C・D 類型)|一般社団法人サービスデザイン推進協議会
公募期間
2021年4月上旬から公募開始されています。
最新情報は、経済産業省や中小企業庁のホームページから確認してください。
経済産業省ホームページ:https://www.meti.go.jp/index.html
中小企業庁ホームページ:https://www.chusho.meti.go.jp/index.html
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
概要
「ものづくり補助金」とは、中小企業が経営革新のために新しい製品やシステムを導入するための設備投資等の補助金のことです。
RPAを導入するにあたり、どの補助金を活用すれば良いかわからないという方もいるのではないでしょうか。ものづくり補助金は、機械装置やシステム構築費といったシステム関係で活用できる補助金となっています。補助上限額は、最大で1000万円で、補助率は1/2となっています。導入費用の約2分の1が返ってくる補助金制度となっています。
対象
日本国内に本社及び補助事業の実施場所を有する中小企業者
さらに詳しい対象者の条件は以下をご確認ください↓
公募要領ー「ものづくり補助金
RPAを導入するにあたって
補助金申請から受け取りまでは5つのステップがあります。
①事業計画書の提出(電子申請)
↓ 採択通知
②交付申請書の提出
↓ 交付決定
③RPAの発注・導入
↓ 中間監査
④実績報告書の作成
↓ 確定検査(交付額の確定)
⑤補助金請求・受け取り
RPAを導入するにあたり、補助金の申請から受け取りにはいくつかのステップがあり、すぐに補助金を受け取ることはできないということを知っておく必要があります。
また、申請すれば誰でも補助金が受け取れるわけではなく、提出した事業計画書に沿って補助金の受給が判断されます。そのために、今までの業務で何をRPAに代行させるのか、どんな課題があるのかを見直し、今後の具体的な目標を明確にしておくことが大切です。
「ものづくり補助金」には一般型とグローバル展開型があります。
一般型
内容:中小企業者等が行う「革新的な製品・サービス開発」又は「生産プロセス・サービス提供方法の改善」に必要なシステム投資等を支援する補助金のことです。具体的には、機械装置やシステム構築費だけでなく専門家経費、クラウドサービス利用費なども補助対象経費になります。
補助額:100万円〜1000万円 +50万円(特別枠に限り、事業再開枠の上乗せが可能)
補助率:[通常枠]中小企業者…1/2 小規模企業者・小規模事業者…2/3
条件:単価50万円(税抜き)以上の設備投資が必要
グローバル展開型
内容:中小企業者等が海外事業の拡大・強化等を目的とした「革新的な製品・サービス開発」又は「生産プロセス・サービス提供方法の改善」に必要な設備・システム投資等を支援する補助金です。
補助額:1000万円〜3000万円
補助率:中小企業者…1/2 小規模企業者・小規模事業者…2/3
条件:①海外直接投資 ②海外市場開拓 ③インバウンド市場開拓 ④海外事業者との共同事業のいずれかに合致するシステム投資であること。単価50万円(税抜き)以上の設備投資が必要。
公募期間
第10次の応募締切は、2022年となっていますのでこれから応募して申請することも可能です。
申請受付:令和4年3月15日(火) 17時〜 (予定)
応募締切:令和4年5月11日(金)17時 (10次締切)
小規模事業者持続化補助金
概要
小規模事業者持続化補助金とは、小規模事業者等に向けた補助金のことで、地域の商工会議所または商工会の助言を得て作成された経営計画の費用の2/3を補助するものです。
小規模事業者持続化補助金は、地道な販路開拓(生産性向上)の取組をすることが対象となっていますが、販売開拓とあわせて行う業務効率化の取組も補助対象事業となっています。この事業で定義されている業務効率化は、「サービス提供等プロセスの改善」と「IT利活用」があり、RPAは「IT利活用」の場合で補助金制度を活用することができます。
具体的には、配送業務や売上管理業務の効率化のためにRPAを導入することもIT利活用の取組として活用できます。
対象
小規模事業者・一定要件を満たす特定非営利活動法人
さらに詳しい対象者の条件は以下をご確認ください↓
小規模事業者持続化補助金<一般型>についてー日本商工会議所
補助額:上限額…50万円
業種ごとのガイドラインに基づいた感染拡大防止の取組を行う場合は、定額補助・上限50万円を上乗せ。また、クラスター対策が特に必要と考えられる事業者はさらに上限を50万円上乗せ。
条件:
・国が助成する他の制度と合わせて利用することはできない
・商工会議所の支援を受けながら取り組む事業であること
・補助事業実施期間中に実際に使用し、対象期間中に支払いを完了すること
・補助事業計画に記載した取組をしたことを記載した実績報告を提出すること
公募期間
公募要項に随時公開しているので、公募スケジュールや内容を確認しましょう。
補助金を活用する際の注意点・ポイント
補助金にはさまざまなものがあり、申請型や補助額も内容によって異なり複雑であるという点が注意点としてあります。より詳しい申請条件や申請の流れを知りたい方は各補助金の公募概要をご覧ください。
また、補助金にはそれぞれ独自で定めた公募期間がございます。申請期間中に申し込みができなかった場合は、補助金を習得することができないので、申請したい補助金のスケジュールを逐一チェックしておくことが必要不可欠です。
各補助金の最新情報は下記のページから確認できます。
◆経済産業省ホームページ
・トップページ:https://www.meti.go.jp/index.html
・情報化・情報産業 主要施策:https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/outline.html
◆中小企業庁ホームページ
・トップページ:https://www.chusho.meti.go.jp/index.html
・補助金等公募案内:https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/koubo/index.html
◆独立行政法人 中小企業基盤整備機構
・トップページ:https://seisansei.smrj.go.jp/
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今回紹介したIT導入補助金をはじめ、事業を促進するための補助金にはさまざまなものがあります。補助金を活用してITツールを導入すれば、生産性が上がる、業務が効率するといったわけではありません。補助金を申請する前に、どんなことを実現したいのかを明確にし、適切なものを選択する必要があります。
RPAをはじめ、ITツールは、適切に使いこなすことができれば業務効率化につながり、高い確率で生産性をあげることができます。自社の課題に対してどのITツールが必要なのかを考えた上で、導入コストをサポートするための手段として補助金の活用を検討してみてはいかがでしょうか。
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