少子高齢化の進行によって各業界の人手不足が深刻化していますが、なかでも中小企業では経営課題のひとつと捉えられ、早急な対応が求められています。この記事では、中小企業の深刻さが増す人手不足において、把握しておくべき3つの要因と影響、対策例と取り組む前に知っておきたいポイントについて解説します。
目次
中小企業の人手不足が深刻化する3つの要因
中小企業の人手不足が深刻化する要因は、大きく分けて3つあると考えられます。ここからは具体的な要因について解説します。
1.加速する少子高齢化
内閣府の資料によれば、2023年10月時点の総人口は1億2435万人、そのうち65歳以上の人口は3,623万人、75歳以上の人口は2,008万人でした。このとき15～64歳の人口は何度か増減はあったものの、最終的に7,396万人にまで減少しています。現在65歳未満の方が将来的に65歳を迎えることで、すでに増加している高齢化がますます進むと考えられます。
また少子化についても、1973年の第二次ベビーブーム以降は緩やかに減少傾向にあったものの、その後も減少し続けていることが分かります。
つまり、現在活躍する現役従業員が高齢化を迎えたとしても、その後を継承する若手そのものがいないということになります。どうにもならない業界の人手不足を解決するべく、多くの企業ではデジタル技術の導入へと踏み切り、自動化や効率化を図りながら市場競争力の維持・強化を目指しています。
参考：内閣府｜高齢化の状況
参考：株式会社リベルタス・コンサルティング｜少子化が我が国の社会経済に与える影響に関する調査 報告書 令和5年3月
2.採用人材のミスマッチ
少子高齢化以外の要因として、採用人材のミスマッチも挙げられます。人材採用においては企業が求める能力を活かして働ける人材が求められます。しかし、働きたいと考える求職者と、自社で働いてほしいと考える企業の間にニーズのミスマッチが生じており、その結果、人手不足を強めているケースも少なくありません。
3.中小企業に対するイメージの影響も
ほかにも、中小企業に対するネガティブなイメージが人手不足に拍車を掛けていることもあります。例えばノルマの存在や業務負担、残業や休日出勤が多いといったネガティブな印象を与えやすいことが中小企業の欠点のひとつでもあります。
働き方改革の推進によって残業時間の削減や業務負担の軽減、福利厚生の拡充によるワーク・ライフ・バランスの確保などを行う中小企業も増えています。しかし、依然としてネガティブイメージは根深く残っており、その結果、ただでさえ少ない若手人材の確保が難航していることも要因と考えられます。
深刻な人手不足で起こりうる影響
ますます進行すると予測されている人手不足ですが、このまま何もせずにいた場合、中小企業には下記のような影響を与える可能性があります。
自社製品・サービスの品質低下
人手不足が進む一方、そのまま何もせずにいると、既存サービスに関する業務に十分な時間を確保できず、製品・サービスそのものの品質低下を招く恐れがあります。現実となれば顧客満足度の低下を招き、市場競争力の低下を引き起こす可能性やクレーム増加による従業員のモチベーション低下にもつながってしまうでしょう。
売上減による経営難
人手不足の進行によって高品質な製品・サービスの提供が続けられず、売上減少を招く場合もあります。売上が大きく目減りしてしまえば、資源確保が難しくなり、近い将来には経営難に至ってしまうでしょう。
業務過多による離職率増加
少ない従業員で多くの業務をこなさなければならない現状によって従業員の離職が増える可能性もあります。中小企業のネガティブイメージとしても根強い残業や長時間労働が現実となり、さらなる人手不足を招く可能性も高いでしょう。
企業価値および市場競争力の低下
人手不足を認識しているにもかかわらず何らかの手を打たなかった場合、企業が取り組む事業そのものが続けられなくなり、企業価値が低下する恐れがあります。人手不足によっては事業拡大に投じていた人的リソースも必然的に減るため、企業の市場競争力の低下にも至ってしまうでしょう。
人手不足に向けた中小企業の対策例
人手不足による影響は、企業や顧客、取引先などさまざまな場面に対し大きく与えてしまうと考えられます。こうした影響を最小限に抑えるため、企業では人手不足対策に踏み切っています。ここからは中小企業で行われた5つの対策例について解説します。
採用活動の見直し
人手不足の要因として企業と求職者による採用のミスマッチが考えられることから、採用活動の根本的な見直しを図る企業が多いです。例えばSNSを通じた情報発信を積極的に行うことで、企業の魅力や特徴を多くの求職者に伝えることができます。
これまでは就職・転職サイトへの登録・掲載だけだった企業であれば、SNSやホームページなどを積極的に活用し、企業の中身を発信していくことを検討しましょう。
福利厚生の見直し・拡充
人手不足の要因のひとつに中小企業に対するネガティブなイメージが依然として残っている点が挙げられます。この点を解決する方法として福利厚生の見直し・拡充を実施する企業も増えています。
福利厚生は従業員だけが利用できる特権であり、企業で働くことで得られるメリットでもあります。求職者にとって福利厚生が魅力的なポイントになればなるほど大企業との共通ポイントとなり、ホワイト企業の印象が高まるだけでなく求職者からも選ばれやすくなります。
なお、賃上げを図る企業もみられますが、人手不足が解決する前に実施すれば経営負担になりかねません。まずは適切な賃金を得られるような仕組みとして、福利厚生のなかに人材育成制度や資格取得支援などを追加・新規導入することで、経営圧迫を防ぎながら採用活動を改善へとつなげ、企業の市場力強化も実現できるでしょう。
働き方改革の推進
新型コロナウイルス感染症の流行・蔓延を機に働き方の多様化が浸透しています。コロナ禍を学生として過ごした若手社員が想像する企業の働き方は、従来の出社・勤務・退勤といった一連の働き方と大きく違う可能性が考えられます。この点を考慮し、多様な働き方に順応する環境を構築する方法も有効です。
例えばリモートワークやフレックスタイム制、週休3日制や時短勤務のような働き方を導入することで、若年層に限らず、子育てや介護と仕事の両立を実現させたい方にとって大きな魅力ポイントとなるでしょう。
外部リソースの活用
社内改善や自社リソースでの解決が難しいと判断する場合は、外部リソースに頼る方法もおすすめです。外部リソースのメリットは、即戦力となり得る人材を迅速に確保できる点です。即戦力となる人材を育成するためには、時間や労力、コストも掛かります。その点、外部リソースに頼ることで、専門性の高い人材を確保し、業務品質の向上を実現できます。
Peaceful Morningでは、デジタル人材の素早い確保を実現させるためのサービス「DX Boost」を提供しています。貴社へのヒアリングを通じて、適切な人材を最短即日でご案内し、DX推進を後押しします。
業務の効率化・自動化の実施
人手不足による既存従業員の業務負担の増加が懸念される場合は、デジタル技術を導入・活用し、業務の効率化・自動化を図る方法も有効です。例えばExcelを使ったデータ入力に多くの時間が掛かり属人化していた場合、RPAツールの導入によって自動化することで時間と労力、さらには人件コストの削減につながります。
また、人の手からロボットに切り替わり、モチベーションや体調に左右されることがなくなるため、安定的な速度・品質を保ちながら進めることが可能です。
人手不足対策に取り組む前に把握すべき5つのポイント
人手不足対策には採用活動の見直しや福利厚生の見直し・拡充などさまざまなものが挙げられますが、自社の人手不足がなぜ起きているのか根本的な問題について理解していないと、どれだけ対策を講じても解決しない可能性もあります。
ここからは、人手不足対策に取り組む前に把握しておくべき5つのポイントについて解説します。
1.従業員数と業務量のバランスを確認する
人手不足が続いていると、必然的に従業員1人ひとりの業務負担が増えています。そのため、まずは従業員と業務量のバランスについて確認することをおすすめします。ここで念頭に置いてほしいことは、経営側が考える人手・業務量（業務工程）と、現場の従業員による人手・業務量（業務工程）における乖離です。
経営側は問題ないと考えていても、実際に従事する従業員にとっては、このままでいけばキャパオーバーを迎えてしまうと考えている可能性も否めません。こうしたことから、経営側と従業員側の考え方に乖離がないかを確認するため、次項で解説する方法を実施してみましょう。
2.従業員が抱える不満を聞き出す
経営側と従業員側の間に業務に対する考え方の乖離がある可能性を踏まえ、この機会に不満を聞き出すとよいでしょう。経営側は順調に利益が出ていると考えていても、その背景には従業員の残業、休日出勤など、多くの負担によって生まれている可能性が考えられるためです。
可能性のひとつではありますが、実際にそのような現状に至っているのであれば、従業員1人ひとりにアンケートやヒアリングを実施し、改善点を洗い出すことをおすすめします。なお、企業の改善点は経営課題と捉えることもできるため、正直な意見を求め、きちんと受け止める姿勢を心がけましょう。
3.労働環境整備が変化する可能性を念頭に置く
従業員へのアンケートやヒアリングによって企業の改善点が洗い出された後は、どのような方法を用いることで改善できるかについて検討しましょう。仮に定型的・反復的な業務によって多くの時間と労力を費やしていることを特定した場合は、業務効率化・自動化を実現できるツールの導入が伴うでしょう。
デジタル技術を導入する場合は、これまでの働き方を大きく変えることが予想されますが、導入を控えてしまえば人手不足だけでなく業務負担の増加による既存従業員の離職が危ぶまれます。この機会を企業の変革のタイミングと捉え、労働環境が大きく変化することは念頭に置くよう留意しましょう。
4.人材育成・確保には積極的に投資する
人手不足を解消するべく、組織的に大きな変革を成し遂げようと考えるのであれば、人材の育成・確保における働きかけには積極的に投資することも大切です。例えば教育制度の導入によって既存従業員の知識の底上げを実現できるだけでなく、新たな人材が入社しても適切に育て上げる環境を構築できます。
5.必要に応じてDX推進を目指す
従業員の業務負担の軽減や多様な働き方への適応などを考慮するのであれば、この機会にデジタル技術を導入するとともにDX推進へと踏み切ることも検討しましょう。定型的・反復的な業務にはRPAツールを、リモートワークや時短勤務に対応するためには、書類の高精度なテキストデータ化を叶えるAI-OCRの導入などが有効です。
業務効率化・自動化でRPAを導入した企業事例
ここからは、人手不足解決を目指すため、業務効率化・自動化でRPAを導入した企業事例について解説します。定型的・反復的な業務を中心に効率化、自動化を図りたい方はぜひ参考にしてください。
人は人にしかできない仕事を追求するー業界の「当たり前」を覆した、新たなDXのカタチ｜阪和興業株式会社
阪和興業株式会社では、毎月約15,000件もの発注書を紙で処理するという膨大な事務作業が常態化・属人化しており、キャリア形成や人的ミス、利益機会損失につながることを経営課題と捉えていました。RPA導入にあたって同社は「従業員は機械ができることはせず、人にしかできないことをすべき」という考えのもと、単純作業をRPAで自動化させました。
大きな決断となりましたが、結果は従業員はコミュニケーションや創造性を発揮できる業務に注力でき、同時にDX推進に向けた第一歩を踏み出しています。なお、同社は大手企業に該当しますが、一部の部署での導入事例につき、解説させていただいています。
関連記事：【前編】人は人にしかできない仕事を追求するー業界の「当たり前」を覆した、新たなDXのカタチ｜阪和興業株式会社
2時間の業務がたった10分に？その理由とは？ ー DXの真の価値は商習慣を見直す「業務プロセスの最適化」｜株式会社ホンダカーズ三重南
株式会社ホンダカーズ三重南では、人手不足を機に業務の自動化・効率化が急務となっていました。なかでも基幹システム「e-Dealer」にまつわる業務の引き継ぎが難しかったために、RPAの導入を検討していました。
直感的な操作性とスムーズな動作によりUiPathの導入を決定し、現在では前日来店客へのSMSアンケート送信や営業項目のデータアップロードといったルーティンワークを自動化し、1日2時間掛かっていた業務を10分に短縮させています。
関連記事：2時間の業務がたった10分に？その理由とは？ ー DXの真の価値は商習慣を見直す「業務プロセスの最適化」｜株式会社ホンダカーズ三重南
【RPAを全社展開へ】業務効率化を「当たり前」にするためのRobo Runner活用事例｜シミックソリューションズ株式会社
シミックソリューションズ株式会社では、RPAの全社展開を機に、業務効率化を当たり前にすることを目指しています。RPA推進事務局はエンドユーザーが主体的にワークフローを内製することでRPAの規模拡大と業務自動化を推進しています。
専門知識がないなか、技術的な問題解決が課題となっていましたが、弊社サービス「Robo Runner」の活用を通じて非エンジニアの業務担当者を作り続けていく環境を構築し、現在ではPDFデータのテキスト変換をはじめ、SCM業務の自動化を実現させています。
関連記事：【RPAを全社展開へ】業務効率化を「当たり前」にするためのRobo Runner活用事例｜シミックソリューションズ株式会社
中小企業の人手不足対策ならPeaceful Morning
中小企業の人手不足は今後はさらに深刻化する見通しです。デジタル技術の導入・運用を検討していても、デジタル人材が不足していては、導入を妨げてしまう可能性があります。
そのようなときにおすすめしたいものが、Peaceful Morningが提供する以下のサービスです。ここからは弊社が提供するサービスが人手不足のなかでもどのようなシーンで有効であるかについて解説します。
Robo Runner｜既存業務の可視化・デジタル人材の育成
「Robo Runner」は、RPAやAI開発・導入・運用のプロから直接サポートが受けられるサービスです。企業が抱えるRPA・AIの悩みを速やかに解決へとつなげながら人手不足対策に貢献します。経験豊富なプロと画面共有を通じて質問・相談ができるオンライン相談が月4時間用意されているため、技術的な問題であっても適切に解決しながらデジタル人材の育成・確保を実現できます。
また、業務可視化コンサルティングサービスも展開しており、現場へのヒアリングや業務データの分析を通じて、属人化や効率を下げている業務プロセスを明らかにします。
DX Boost｜デジタル人材の確保
「DX Boost」は、企業のDX推進に必要な即戦力となるデジタル人材を最短即日でご案内し、社内開発体制の構築をサポートするサービスです。UiPathやPower Platformなどのローコードツールをはじめ、生成AI活用に特化したプロをご案内するため、社内リソースが不足している中小企業であっても、DX推進を加速し、開発体制を強化できます。
AI JIMY｜書類管理業務の効率化
「AI JIMY」は、生成AIを搭載した最新のOCR「AI-OCR」ツールで、中小企業の人手不足対策として有効な定型的・反復的なデータ入力業務の完全自動化をサポートするサービスです。世界最高レベルのOCR文字認識精度を誇るだけでなく、RPA機能が標準搭載されているため、OCRで読み取ったデータを各業務システムへ自動で入力するプロセスを構築できます。
Peaceful Morningでは、AI-OCRツール「AI JIMY（エーアイ・ジミー）」の正規販売代理店として導入のご支援を行っています。無料トライアルの提供に加え、サンプル帳票をご提出いただければ、弊社で精度検証を無料で実施するキャンペーンも実施中です。OCRツールを導入し効率化を実現したいとお考えの方は、お気軽にお問い合わせください。
関連記事：AI JIMYとは？概要や種類、使い方について解説
まとめ
人手不足は中小企業にとって企業成長を妨げかねない壁と考えられます。少子高齢化が進み、超高齢化社会へと突入した現代だからこそ、自社に点在する改善点を速やかに把握し、適切な対策を講じる姿勢が必要です。
Peaceful Morningでは、貴社の経営・業務状況に応じた最適なサービスで人手不足解消を支援します。サービスの概要やサポートの範囲などについて興味をお持ちいただいた際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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