OpenAIのChatGPTやGoogleのGemini、最近ではMicrosoft社によるCopilotなど、さまざまなAIが多様な業務で利用されていることはご存じの方も多いのではないでしょうか。AI技術の進化が加速していることで、業務利用も急速に広がりを見せています。
しかし、なかにはAIそのものや関連する「機械学習」といった言葉について、深く理解していない方も少なくありません。この記事では、AIと機械学習の概要やできることについて解説します。AIと機械学習は併用できることから、その際のメリットについても解説しているので、興味をお持ちの方はぜひ今後の参考にしてください。
AIについて
AIは「Artificial Intelligence」の略語で日本では「人工知能」と訳されています。明確な定義はなく、研究者や業界などによって認識や解釈が異なるのが現状です。AIの可能性が未知数であるため、定義することができないとも考えられています。
では、現在のAIはどのようなことができるのでしょうか。AIにはいくつかの種類があることから、それぞれでできることも異なります。
AIの種類
AIには特化型AIと汎用型AIの2つに大別することができます。特化型AIは、気候変動の想定実験や対戦型ゲームのCPUなど、事前に決められた課題を解決することを得意とします。
特定の分野では人間を超越する能力に期待できますが、それ以外の分野に対する機能は持ち合わせていません。多様な業界や作業で活用されているAIは特化型AIが多く、なかでも音声認識や画像認識などが広く用いられています。
一方、汎用型AIは、あらゆる課題を広範囲な視点で解決する能力を持つAIです。特化型AIとは異なり、AIシステムがおかれた状況を自主的に分析・判断し、その上で適切な決断を選択し問題解決につなげる特徴があります。現状では実用化されていないものの、実現を目指して努力する企業や研究機関が増加しています。
ほかにも「強いAI」や「弱いAI」と呼ばれるAIも存在します。強いAIは、喜怒哀楽などの心を持つAIのことで、人間がプログラムしたデータを与えずとも自主的に判断し行動できる特徴を持ちます。一方、弱いAIは感情を持たないAIを指し、現在、さまざまなシーンで活用されているAIは弱いAIに該当します。
関連記事:特化型AIとは?メリット・デメリットや汎用型AIとの違いを解説
AIにできること
AIにできることは種類によってさまざまです。例えば特化型AIであれば、音声認識や画像認識に加えて、文章理解や推論・予測、異常検知や機械制御などに対応できます。人間の暮らしに合わせて具体例を挙げるとすれば、Androidに内蔵されたGoogleアシスタントやiPhoneのSiri、スマートスピーカーのAlexaは、特化型AIに該当します。
また、現在多くの企業において顧客からの問い合わせに対し自動で対応するチャットボットも特化型AIに含まれます。
なお、現在のところ汎用型AIの実用化はされていませんが、実現した場合、顧客からの問い合わせが機械的な文章から、人間が対応していることと相違ないやり取りができると考えられています。動画や音声などを処理する技術が高度化すれば、オンラインでの会議や面談の際、画面の向こう側にいる人が本当に人間なのか見分けが付かなくなる可能性も示唆されています。
AIの可能性は未知数であることから、多くの構想が進む一方で、実現においてさまざまな懸念も存在しています。
関連記事:AIで業務効率化する8つの手順|メリット・デメリットや事例もあわせて解説
ITやIoT、RPAとの違い
AIと類似した言葉として「IT」や「IoT」「RPA」などがあります。それぞれの特徴は下表の通りです。
種類 |
概要 |
IT |
・情報技術のこと ・コンピューターや通信技術を活用する際に利用され、パソコンやスマートフォンなどの普及に大きく貢献している |
IoT |
・モノをインターネットに接続するために必要な技術のこと ・機器の遠隔操作のほか、電子機器や家電製品などをネットワークにつなげる際に用いられる |
RPA |
・ロボットを活用して業務の自動化を図るといった意味を持つ ・一例として「RPAツール」があり、日々の業務を人間からツールに切り替え、自動的に作業させることを指す |
AIは人工知能のことです。そのため、ITやIoT、RPAの特徴と比較すると、大きな違いがあることが分かるでしょう。しかしAIの活用にあたってITやIoTは欠かせない存在であり、またRPAの進化にもAIが必要であると考えられるでしょう。
関連記事:AI化とは?ITとの違いやDXとの関係性、導入によるメリット・デメリットを解説
生成AIとの違い
AIと類似した言葉として「生成AI」と呼ばれるものもあります。生成AIとは、さまざまなコンテンツを新規で生み出すAIのことです。人間がプログラムした行動を自動化するAIに対し、生成AIは収集したデータからパターンや関係性を使用し、テキストや画像、音声などを新たに生成できます。
新たになにかを生み出すためには、ディープラーニング(深層学習)という学習方法を行い、AIが自主的に学習を重ねる必要があります。ディープラーニングによって、従来のAIよりも高品質な画像や映像、音声なども生成できます。
機械学習について
AIとセットで使われることの多い言葉のひとつに「機械学習」があります。機械学習は、特定の問題・課題を解決するための手順または計算・処理方法を指すアルゴリズムを使い、ある分野に絞って大量のデータを解析して規則性や関係性を見いだす方法のことです。
AIは、人間の知能や行動などを再現したコンピューターのシステムを指すのに対し、機械学習はデータの解析により、規則性や関係性を見つける役割のことです。そのためAI技術を支えるひとつとして機械学習が含まれるイメージです。
自主学習を介して自主的に判断し規則性や関係性を見つけるのではなく、人間があらかじめ、取り込んだデータのどこに注目すべきであるかを設定します。一例としては、Amazonなどで見かける購入履歴や調べた商品の履歴などを介して、顧客が「好き」または「探しているだろう」とする商品を「おすすめ(レコメンド)」として表示するなどの機能があります。
機械学習でできること
機械学習でできることは下表の通りです。
項目 |
概要 |
回路分析 |
予測したい値を1つ、または複数の変数を使い予測する |
分類 |
分類したいデータを一致するグループに分ける |
次元削減 |
データの要約・圧縮する |
さまざまな事柄の予測 |
膨大なデータから取り込んだ分析結果を基に、未来を予測する |
例えば、美容室の待ち時間を予測する機能も、機械学習の特徴に含まれます。このように機械学習は、実は人間の暮らしのさまざまなシーンでその役割を果たしています。
機械学習の用途
機械学習は膨大なデータにより、さまざまな事柄について予測する能力に長けています。具体的には下表の通りです。
項目 |
概要 |
需要・ 売上予測 |
・過去の売上実績や在庫情報などを取り込むことで、未来の売上を予測できる ・生産・発注の調整に役立てられる |
故障予測 |
・IoTセンサーなどを使って収集したデータを分析することで故障の前兆を予測できる ・故障してからの修理を防ぐことができ、業務への影響を最小限に抑えられる |
顧客分類 |
・顧客の購買傾向などをグループ分けすることで、顧客ごとに適切なマーケティングが実現する ・「Aの商品を好む人」「定期的にBの商品を購入する人」「月額契約を解約しそうな人」などと分けることができればニーズに沿ったマーケティング施策が行える |
機械学習も、AI同様に大きく進歩しています。現在でもインフラや設備などで活用されていますが、今後は文書作成の高度化や医療診断の精度向上などにより、今以上に専門的な分野での応用が予想されています。
統計学やディープラーニングとの違い
機械学習と関連する言葉に、統計学やディープラーニングがあります。統計学は、データの収集、分析、解釈を経て数理的基盤に基づく結論を導く、いわゆる数学に関する言葉で、確率論に基づいた推定や仮説検定などが該当します。
一方、ディープラーニングは、機械学習をさらに進化させた手法のことで、機械学習のうちの1つです。人間の神経細胞の仕組みに寄せて作り出した技術をベースとしていることから、人間の認識過程に近い過程を踏み、正解を導き出すことができます。
これらのことから、統計学と機械学習はお互いを補完し合う関係であり、機械学習のさらなる発展に欠かせない要素の1つがディープラーニングと言えることから、それぞれの要素がかみ合うことで機械学習の発展は続くと考えられるでしょう。
AIと機械学習を併用するメリット
特化型や汎用型、強弱などで表されるAIと、さまざまな予測を可能にした機械学習ですが、2種類を併用することでどのようなメリットが期待できるのでしょうか。
広範囲でのデータ取得
AIと機械学習の併用によって広範囲でのデータを取得した後は、適切なグループに分けながら必要に応じてデータの要約や圧縮、将来の予測までを一貫して行うことができます。
AIはさまざまな情報を即座に収集し分析する能力、一方、機械学習は収集した情報の解析やグループ分けを得意としています。
それぞれを併用することで、自社競争力強化につながるマーケティング戦略が可能になるほか、販売予測に活かせば需要と供給に見合った商品の製造・販売が実現できるでしょう。
迅速な意思決定
AIと機械学習との併用によって、人間が解釈するよりも迅速かつ正確にデータを解釈することができます。そのため、解釈・認識の齟齬を防いだ上で多くの情報に基づいた意思決定につなげることが可能です。
企業や商品の改善や経営戦略の変更には、膨大な情報から適切なデータを抽出し、目的に沿った意思決定を行う必要があります。人間が情報を集め分析するよりもはるかに速く正確な情報を収集・解析できることから意思決定までがスムーズに進み、速やかな改善・戦略の変更につながるでしょう。
自動化・効率化
業務の自動化や効率化も実現可能です。例えば会計処理に伴うExcelを使ったデータ入力に関するデータをAIと機械学習に読み込ませ、テストを繰り返し精度を上げることで、人間よりも迅速かつ正確に進めることができます。
分析結果の整理・統合
機械学習には収集したデータをグループに分けるという特徴もあります。AIが収集したデータを機械学習が適切なグループに分けることができれば、膨大な情報の整理・統合が可能になります。
特に顧客情報は居住地や電話番号のほか、氏名や趣味・嗜好など登録される項目が複数あります。それぞれを細かくグループ分けができれば、適材適所なアプローチが実現し、マーケティング戦略に大いに役立つでしょう。
AIと機械学習の併用でできること
AIと機械学習の併用によって、広範囲にわたる情報収集や自動化・効率化、分析結果の整理などが実現します。では、具体的にどのようなシーンで活用できるのでしょうか。
商品・サービスのレコメンド
AIと機械学習の特徴は、商品やサービスのレコメンドに役立ちます。レコメンドは特定の商品、サービス、コンテンツなどをユーザー1人ひとりに推奨することです。
例えばAmazonで商品を閲覧していると「あなたにおすすめの商品」といった項目が表示されますが、これは過去または現在探していた商品と共通するものをAIと機械学習が学び、おすすめとして表示しているのです。このような取り組みはECサイトに限らず、さまざまな業種でも取り入れられています。
ユーザーにとっては気になっている商品やサービスなどを探す手間が省けるので、より自分に合ったものを探しやすくなります。企業にとっても自社商品やサービスを多くの方に知ってもらえるので、企業そのものや商品の認知度向上、売上増加など、あらゆる相乗効果に期待できるでしょう。
配信・通知の最適化
ユーザーがメールを開封するタイミングや商品を購入する時間などをAIがデータとして取り込むと、収集した情報をもとに機械学習が1番最適な時間帯を解析し、自動でメールやプッシュ通知を送信する、といったこともできます。
ユーザーのなかには、購入を検討していた商品を「買い物カゴ」に入れたままサイトを離れることがありますが、この「カゴ落ち」の状態から購入へこぎつけるための手法として用いられます。
購入忘れや購入まで踏み切れなかったユーザーに対し、ユーザーの情報から収集したタイミングに合わせてフォローアップメールやプッシュ通知が行われるため、効率的にコンバージョンにつなげることができます。
Webコンテンツの品質向上
自社ホームページを運用している際、いくつかのコンテンツ(記事・コラムなど)を公開している企業も多いでしょう。コンテンツ作成もAIと機械学習の併用により、効率的にユーザー視点に合わせたものを作成できます。
コンテンツ作成を自動化し、企業や商品の認知度向上につなげたいときなど、AIと機械学習の併用が有効と言えるでしょう。
問い合わせ対応
AIを搭載した機械学習型チャットボットを活用すると、企業のサポートデスクに届く従業員からの問い合わせに自動で対応することもできます。あらかじめ、問い合わせの多い内容をFAQとしてまとめておくことで、1日に何度も回答していたトラブルもチャットボットが対応し、業務の効率化を図ることができます。最近では帝人株式会社やNTTデータマネジメントサービス株式会社などでも導入が進んでいます。
参考:チャットボットを活用し、バックオフィスへの問い合わせを20%削減。利用した社員の自己解決力向上を実感 | OfficeBot
参考:チャットボット「チャットプラス」の導入活用事例|AIsmiley
AIと機械学習のモデル開発する際のステップ
AIと機械学習を企業に導入する際、スムーズに活用できるようにするため、それぞれのモデルを開発しなければなりません。具体的には、以下のステップを踏む必要があります。
- 目的・課題の洗い出し
- データ収集
- 学習
- 精度評価と試行錯誤を繰り返す
具体的にどのようなことを行うのか見ていきましょう。
目的・課題の洗い出し
まずはAI・機械学習に学ばせたい内容を決めます。学ばせたい内容は活用する上での目的や課題と等しくあるよう、具体性があることが大切です。簡単な例を挙げるとすれば、膨大なメールの中から迷惑メールだけを抽出し「迷惑メールフォルダ」に分類させたい場合です。
迷惑メールだけを選び、適切なフォルダへと自動的に移動させるためには、AI・機械学習それぞれで以下のような流れを経由する必要があります。
AI |
迷惑メールとされる内容を収集・分析する |
機械学習 |
あるフレーズを特定して「迷惑メール」と判断しグループ分けが実現する |
AIと機械学習のそれぞれあるいは併用して活用するときは、事前にどのようなことを成し遂げたいのかを明確にしましょう。目的や課題を洗い出すことで必要な情報を集めることができ、AIや機械学習も適切な情報を取り込むことができます。
データ収集
次にデータ収集です。AIや機械学習の精度を高めるためには、目的や課題に関連した情報が不可欠です。情報の密度が細かいほど緻密な解析につながります。上記の例で挙げるとすれば、10通に厳選した迷惑メールではなく、1,000通の多種多様な迷惑メールを取り込むなどです。取り込む情報が多く、また細かいほど、理想に近い能力が期待できます。
学習
データ収集は1度ではなく何度か行うことも大切です。業種や作業内容によっては特徴や取り組み方が日に日に変化することがあります。過去に収集したデータが古いと精度が低くなり、目的達成や課題解決に至りません。
アップデートされた内容があれば速やかにAIや機械学習にも取り込み、常に新しいデータを盛り込んだ能力を維持しましょう。
精度評価と試行錯誤を繰り返す
データ収集や学習を繰り返し行った後は、AI・機械学習の精度評価を実施します。上長だけでなく全社で使用することで、操作性や理解力についてのフィードバックを受けることができます。
届いたフィードバックをもとに、不足したデータがあれば順次取り込むことで、AI・機械学習の精度が向上し、当初に洗い出していた目的の達成、あるいは課題の解決に近づくでしょう。
まとめ
AIや機械学習は多くの企業が注目・導入しているデジタル技術です。単体でも使用できますが、それぞれの併用によって問い合わせの自動対応や商品・サービスの認知度向上、購入につながり、企業にとって多くのメリットをもたらす存在です。
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