最近では5G(第5世代移動通信方式)の発展も進み、DXに取り組む企業は多いでしょう。しかし、DXといっても、その技術や用途、活用における目的はさまざまです。
DXの実現には、改善したい業務や目的を踏まえた検討を進めながら、自社に沿うテクノロジーを導入することが大切です。この記事では、DX化を実現させるデジタル技術と事例、メリットや選び方について解説します。
DX化の実現に必要な8つのデジタル技術
まずは自社のDX化実現に向けて、必要なデジタル技術について押さえておきましょう。
- AI
- ICT
- IoT
- 5G
- RPA
- XR
- ビッグデータ
- クラウド
ここでは8つの代表的なデジタル技術について解説します。
1.AI
AIは人工知能を指す「Artificial Intelligence」の略語です。人間が介入せずに作業タスクをこなすことが可能な自立性と、自主学習によってパフォーマンスの向上を図る適応性があることが特徴です。AIは以下3つに大別でき、あらゆる業界や用途で活用されています。
AIの種類 |
概要 |
認識系 |
画像判別、情報の仕分け・検索、音声認識が可能 |
予測系 |
数値・ニーズ・意図の予測、マッチングが可能 |
実行系 |
デザインの生成・設計、行動・作業の最適化が可能 |
AI技術の導入を検討する場合は、上表を参考にしながら適した技術を選びましょう。
関連記事:AIをビジネスで活用するには?活用する上での目的や事例、成功のコツを解説
2.ICT
ICTはコミュニケーションを主軸とした情報通信技術を指す「Information and Communication Technology」の略語です。主にメールやSNS、スマートスピーカーなどがあり、情報伝達とコミュニケーション深度の向上により、生活が豊かになることに加え業務・教育の効率化を図ることができます。
ICTと混同されやすい技術にITがありますが、ITは情報技術を指す言葉なのでそれぞれの違いを押さえておきましょう。
3.IoT
IoTは、モノとインターネットを介した技術を指す「Internet of Things」の略語です。家電など生活で使うモノにセンサーを装着し、インターネットなどを通じてあらゆる情報が得られる技術です。
「モノ」「センサー」「ネットワーク」「アプリケーション」の要素で構成されており、それぞれをつなぐことで、従来は抽象的だったスマートフォンやタブレットなどモノの使用における状況・頻度などを数値で可視化できる特徴があります。
4.5G
5Gは、高速かつ大容量の通信に対応した第5世代移動通信システムを指します。ビッグデータやIoTなどとの組み合わせにより、DX推進に寄与する技術の1つです。
5Gの普及によっては、IoTデバイスの受発信に必要とする膨大なデータ通信にも耐えられると考えられています。あらゆる端末からビッグデータの収集が効率化につながれば、AIシステムの精度が向上する可能性もあります。
5.RPA
RPAは、人間だけが対応可能と考えられていた作業を人間に代わって進行できる取り組みのことです。AIや機械学習などの認知技術を使うことから、利活用には専門知識を要しますが、DX推進に活用することで、人為的ミスの削減や作業品質の向上、処理速度の向上による業務時間の削減につなげられます。
関連記事:【2025年最新】業務自動化を実現するRPAとは?
6.XR
XRは、現実世界には存在しないものを表現・体験できる技術の総称を指します。「Cross Reality」や「X reality」「Extended Reality」の略語といわれており、現在のXRには下表の種類が含まれているとされています。
種類 |
概要 |
仮想現実 |
仮想世界を現実と同じように体験できる技術 |
拡張現実 |
現実世界に仮想世界を重ねる技術 |
複合現実 |
現実世界と仮想世界を融合させ、新たな空間を映し出す技術 |
代替現実 |
過去の映像を現在の映像に重ねて、現在進行形で起こっているように見せる技術 |
ゲームなどによって発達した技術であるものの、最近では会議やシミュレーションなどビジネス領域でも活用されています。
7.ビッグデータ
ビッグデータは、エクセルなどをはじめとした管理システムでは記録や管理、解析が難しい巨大なデータを指します。「データ量」「データの多様性」「データの速度」「データの正確性」の4つで構成されており、大部分を占めるのはさまざまな種類・形式を含む非構造化データや非定型的データとされています。
大量のデータをリアルタイムで高速処理できれば、これまででは難しかったシステム開発を実現できます。
8.クラウド
クラウドは、ネットワークを通じてサーバーやソフトウェアなどを使用する技術で「クラウド・コンピューティング」の略語です。インターネットさえあれば場所を問わずデータやアプリケーションを使用でき、利便性や柔軟性に優れているという特徴から、今では企業に限らず日常生活でも用いられています。
デジタル技術を活用しDX化を実現させた5つの事例
デジタル技術を活用した企業は、国によるDX推進を受けて増加傾向にあります。ここではDX化を実現させた5つの企業事例について解説します。DX化を検討する際は、事例をもとに自社に適した技術を導入しましょう。
1.農林水産省
農林水産省では、人材不足や過酷な労働環境、後継者不足など深刻な課題を多く抱える農業において、ロボット技術やIoTなどの先端技術を活用した「スマート農業」をスタートさせました。
実際の生産現場に先端技術を導入し、2年にわたって技術検証を実施。低消費電力で遠距離通信が可能なLPWAや超高速通信技術などのDX化により、コスト削減と高品質化を可能にしました。
ほかにも最新のIoT技術により、24時間365日いつでもデータ計測が可能になるほか、収穫量や病害発生リスクの予測も実現し、労働環境の改善やデータ収集による分析・予測、利益率の向上にもつながっています。
参考:農林水産省|スマート農業
2.NTT西日本
NTT西日本では、ICTを取り入れた熱中症対策として、暑さ指数の可視化を実現しました。検証実験では、中学校のグラウンドと体育館の2か所に計測センサー・パトランプを設置。温度や湿度、輻射熱などを6分ごとに測定しました。
これらの情報を職員室に設置されたタブレットで可視化できるようにしたことで、レベルに応じた対応が迅速に行えるようになり、熱中症の未然防止につながりました。
体育館とグラウンドに設置されたパトランプには、色や音などに変化をつけて、あらゆる方法で暑さ指数の可視化を可能にしました。NTT西日本では、今後もICTを活用し街の熱中症対策に貢献する姿勢を見せています。
参考:NTT西日本|熱中症対策×ICT~暑さ指数の視える化~ – 通信・ICTサービス・ソリューション
3.楽天損保
万が一に備えた補償のために加入する各保険には、事故や病気などのエビデンスが欠かせません。楽天損保では、補償に欠かせないエビデンスなどを含む膨大な書類を適切に処理するため、紙データの引き継ぎ作業を自動化へと切り替えました。
導入後も迅速かつ正確に対応できるよう、全社で環境整備を実施。業務自動化を推進する意識を社内全体に広められたことで、6か月で約7,000時間超の作業時間短縮を可能にしました。
参考:WinActor®|導入事例【楽天損害保険株式会社】保険業界の大量の事務作業をRPAで解決!
4.富士通
富士通では、スマートフォンやIoTビジネスの浸透によって、ビッグデータの最適な活用がビジネスを左右すると考え、データ駆動ビジネス(データドリブン)を促進する製品「ODMA(Operational Data Management & Analytics)」を展開しました。
ODMAは、複数の店舗を抱える大手業者であっても、どこの店舗でどのくらい売れたといった販売状況をはじめ、気候や統計といった外部データも同時に蓄積され、業種に合わせた適切なデータ管理を可能にしました。収集したデータの活用によって、販売戦略や経営戦略の策定につながり、売上増加やユーザーニーズに則した商品販売などに寄与しています。
参考:富士通|成功するデータ活用とは。説明可能なAIによるデータ分析と活用事例を紹介
5.浜松市
浜松市では2019年10月にデジタルファースト宣言により、デジタル技術などを活用した地域コミュニティや産業の活性化を目指す取り組みを推進しています。一例としては、行政の各部署や民間が収集・保有するデータを連携し、データ利用やサービス間の連携を支えるデータ連携基盤「都市OS」の構築です。
クラウド上にデータ基盤を設置することで、官民の円滑な連携を維持することができます。都市OSの設置により地域課題の解決や産業の活性化へとつなげ、市民のよりよい暮らしの実現を図っています。
デジタル技術を活用するメリット
さまざまな事例に共通することは、デジタル技術の活用によって何らかのメリットを得ているということです。デジタル技術の活用には多くのメリットがありますが、ここでは特筆したいメリットについて解説します。
生産性の向上
デジタル技術の向上によって生産性の向上につながります。例えば手動で対応することの多い事務作業をデジタル技術に切り替えることで、従業員の作業負担を削減した上で単位時間あたりの生産数量増加を可能にします。
従業員がどれだけ努力しても、1日の業務時間で対応できる範囲には限界があります。業務プロセスについて学んだデジタル技術を活用することで、迅速な進行が可能になることに加えて、正確性を保った業務が可能になる点もメリットです。
データの収集・活用による戦略の策定
デジタル技術の活用によって、データの収集・分析が行いやすくなります。その結果、ビッグデータを活用したとしても、高度な分析が可能になり、これまでとは異なる視点での経営戦略や企業戦略の策定につながります。データを活用すれば売上予測なども可能になるので、流行や顧客ニーズに沿った商品・サービスの開発も実現できるでしょう。
顧客体験の提供
デジタル技術では、顧客との接点を強化する特徴があります。例えば、企業のカスタマーセンターにAI技術を取り入れたチャットボットを導入することで、24時間365日いつでも顧客からの問い合わせに対応できます。深刻なトラブルであれば従業員が対応することになりますが、軽微なトラブルや些細な疑問であれば、チャットボットで完結します。
デジタル技術の活用によって顧客に提供できるサービスが広がるだけでなく、迅速に解決まで導けることはメリットといえるでしょう。
企業力の底上げ
デジタル技術の活用によって、従来とは違い、同じ時間で多くの作業を処理できます。その結果、従業員は割り当てられた業務に加えて新しい業務を覚えることができ、満遍なく社内業務に従事できるようになるでしょう。
必要に応じて研修やスキルアップに要する資格取得などによっては、従業員の知識の底上げにもつながります。知識が身につき、対応できる業務の幅が広がれば、給料アップにもつながるでしょう。
デジタル技術の導入によって豊富な知識を有する従業員が多く在することで、企業力の底上げにつながり、企業競争力の強化にも貢献するでしょう。
デジタル技術におけるデメリット
デジタル技術の活用にあたっては、いくつかのデメリットもあります。具体的には、デジタル技術の特徴に関するものです。どのような内容なのか見ていきましょう。
情報漏洩リスク
厳重に情報を取り扱うため、デジタル技術を活用する際はセキュリティ対策ツールも合わせて導入しましょう。例えばクラウドを活用する場合、インターネットを介して情報の管理が行われますが、第三者によるサイバー攻撃を受けた場合、収集した情報が漏洩したり改ざんされたりする可能性があります。
情報漏洩によっては顧客情報が犯罪に利用されるなどのトラブルにつながりかねません。企業としても大きな損失につながる恐れがあるため、情報漏洩を防ぐよう万全の体制を整えましょう。
システムに対する体制の整備
デジタル技術をはじめて導入する際は、社内体制の整備も欠かせません。社内の上層部がある目的を持ってデジタル技術を導入しても、導入に至った背景や目的、どのようなデジタル技術なのかを把握していない従業員は混乱するだけです。
場合によっては業務が遅延する恐れもあるため、導入を決める際は背景や目的、使い方などが総合的に理解できる研修の実施やマニュアル作成を行い、全社で共通認識を持ちましょう。
技術に関するスキル・知識を持つ人材が必要
デジタル技術の活用に際しては、適切な人材の育成や確保も必要です。デジタル技術に精通した人材がいないまま導入すると、導入前後の操作や使用方法がわからず、業務に活かすことができません。
人材育成や確保について相談したいときは、PeacefulMorningが提供する「DXBoost」をおすすめします。グループ600万名を超える人材データベースから、貴社に最適なDX人材を即日ご提案できるため、スピード感を持ってDXを推進できます。
デジタル技術に詳しい人材を確保したい方は、ぜひこの機会にDXBoostをご活用ください。
目的や方向性の齟齬
デジタル技術の活用によっては、当初の目的や方向性がブレることがあります。例えば、デジタル技術を使ううちにさまざまな自社課題と直面すると、露呈した課題を目的と受け止めてしまい、当初の目的からブレてしまいます。
目的や方向性がブレると、共通認識の内容に齟齬が生まれ、社内に混乱を招きます。目的や方向性は形がないため視覚化することをおすすめします。
デジタル技術を導入する背景や目的、今後の変革などについて可視化した後は、使用期間やフィードバック内容に合わせて段階的に変えていくことで齟齬を防ぐことができるでしょう。
DX化に効果的なデジタル技術の選び方
経済産業省を中心に、現在の日本ではDX推進が積極的に行われています。DX化においては、条件を満たすことでDX投資促進税制などの制度が利用できることから、国の後押しを受けた上でデジタル技術を導入することができます。
しかし、デジタル技術にはさまざまなツールが展開されているため、自社にとって有効な技術が選びにくいといった懸念があります。ここではDX化に効果的なデジタル技術の選び方について解説します。各ポイントをチェックしながら、自社に最適なデジタル技術を導入しましょう。
自社課題を明確にする
まずはデジタル技術を使いどの業務をどのようにしたいのかを明確にしましょう。例えば手動でのデータ入力作業を自動化したい、などです。どのシーンでどのように活用したいのかを洗い出すことで、作業や業務に適したデジタル技術を選ぶことができます。
自社課題に沿った技術を探す
次に、自社課題に沿ったデジタル技術を探します。洗い出した自動化・効率化させたい業務に合わせたツールを選びましょう。業務効率化を目的とするのであればクラウドやAI技術など、顧客体験の向上を目的とするのであれば、デジタルツインやビッグデータの活用を検討しましょう。
自社リソースを把握する
デジタル技術の導入では、予算や導入体制などを総合的に判断して決めることも大切です。導入前後には初期費用やランニングコストに加えて、一定の期間や人材などのリソースを要します。情報漏洩リスクを考慮するのであれば、万全なセキュリティ整備も欠かせないでしょう。
デジタル技術の特徴に絞るのではなく、自社の課題や状況を見極め、過度な投資とならないよう現実的な範囲で選ぶことを意識しましょう。
外部パートナーによる意見・知識を活用する
自社の判断だけでデジタル技術の検討・導入は控え、ITサービスを提供する企業やスタートアップ企業といった外部パートナーの意見・知識を活用しましょう。
例えば、成功事例を参考に自社課題に沿ったデジタル技術を導入しようと考えた場合です。このような場合、自社と同じ課題を持つ企業が導入したデジタル技術を選びたくなりますが、デジタル技術に対する情報や準備が極端に少ないと考えられます。
外部パートナーとDXにおける成功・失敗それぞれの事例について情報交換することで、失敗を未然に防ぎながら適したデジタル技術を選ぶことができるでしょう。
まとめ
DX化の実現には、IoTやAI、XRや5Gなど、さまざまなデジタル技術について知識を深めることが大切です。単に成功事例だけを参考にデジタル技術を導入しても、社内の導入体制が整備されていなければ、かえって混乱を招く可能性があります。
デジタル技術の導入・活用に際しては成功事例だけでなく、外部パートナーとの情報交換や失敗事例について調べ、収集した情報と自社課題を照らし合わせながら決めることをおすすめします。
自社にとって有効なデジタル技術について知った上でDX化を進めたい方は、この機会に「DXBoost」のご利用をおすすめします。Peaceful Morningが提供するDXBoostは、DX推進を加速させるプロ人材を紹介するサービスです。(※)グループ600万名を超える人材データベースから、貴社に最適なDX人材を即日ご提案できるため、スピード感を持ってDXを推進できます。
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