各現場で自動化を行う際にどのようなハードルがあるのか?
先日RPA DIGITAL WORLDの際に行われたRPALTに登壇、経理業務などバックオフィスの自動化など、RPAコンサルティング経験が豊富なオートメーションラボ株式会社のCEO村山毅さんに、「経理部門における自動化のハードル」について教えていただきました。
また記事後半では、本日12月10日にローンチリリースが出たばかりのオートメーションラボ株式会社で新たに開発された請求書AI-OCRのsweeepが、なぜ今必要だったのかについても教えていただきました。
経理部門の自動化における課題
ーー先日のRPALTお疲れ様でした。新サービスもローンチされましたね!
よろしくお願いします。RPALTではsweeepの話をしていたのですが、一応これまで非公開でやってきていまして取材も今回はじめてなんですよ(笑)
ーーそれは最高のタイミングでありがたいです。でははじめに、オートメーションラボがどういった会社か教えてください。
ミッションとしてバックオフィス革命を掲げており、バックオフィスを改革したいという想いで立ち上げた会社です。元々、私は10年以上バックオフィス系のコンサルティングやシステム開発を行うコンサルティング会社にいました。そこでコンサルティングを行う中で、バックオフィスはかなり非効率なことをやっているなというのをずっと課題として思っていて、2011年に会社を設立しました。コンサルティングを行っていると自動化というテーマが多く出てきて、当時はマクロを活用したりしてオーソドックスなものをやっていましたが、RPAが出てきて実際自分で使い始めると「これはつかえるぞ!」ってなって。エクセルワーク以外も自動化できることがわかったので、「バックオフィス×自動化にしぼってやろう!」と思い、社名もオートメーションラボに変えて自動化のコンサルティング中心にやるようになったのが2年前です。
ーーRPAのコンサルティングについてもう少し詳しく教えてください。
RPAのコンサルティングについては、UiPathやWinAutomationを使って行っていました。プロジェクトとしては、バックオフィス全般をやっていますが、経理系のものが多いです。
ーー経理部門に対するコンサルティングをされているとのことですが、今現場の自動化における課題はどんなところにあるのでしょうか?
まずコンサルティングをする場合、経理部門があって20-30人くらい在籍しているとすると、それぞれ1人あたりどんな業務ことをやっているか、業務一覧があってそれに対して何人くらいが携わっているのか、どれくらいの時間がかかっているのかといった点をばーっと洗い出します。その中で一番単純な仕事だと、ボタンをポチポチ押して印刷をするという仕事があります。こういったものは先にRPAで自動化していきます。
自動化における課題でいうと、システムとシステムの間をつなぐところの業務がアナログから抜け出せないという課題があります。例えば銀行系のシステムと、入金消込(売掛)のシステムがあるとすると、データを落としてきてシステムに吸い込めれば良いのですが、当然銀行系システムのデータはカタカナなので入金消込のシステムとデータ形式が違い、それをそのまま取り込めないという問題があります。また、企業特有のコードがありプロジェクトとか部門とかそういった区分に分けてあげないといけないケースも多くあり、人が1回エクセルに落として手作業でやっているというのがあります。そこがネックになってRPA化できないねという話を何度も見ています。
ーーなるほど。銀行入金と売掛金消込の問題、解消はなかなか難しそうですね…。
例えば請求する段階から入金消込がしやすいように請求書を分ける、極論入金口座をバーチャル口座にして1つずつ分けるといったことができれば自動化もすーっとできるんですが、普通に成長してきた企業は今まで通りのやり方で続けてきているんですよね。業務フローを変えなきゃいけないね、業務を清流化しないといけないねという話が先に来て、なかなかRPAに行きつかないというケースがいくつもありました。
ーー経理の業務は清流化していない分断した業務が多い印象です。
そうですね。請求書の読み込みもそういった業務の一つです。請求書に関する業務で一番良いのは、発注段階からデータ化しておくということですが、お客様とのネゴシエーションがあったり、システムの機能としてユーザにあったような形でできていなくてなかなか発注段階からデータ化ということができません。結局請求書の紙をもらってから業務が始まるという流れです。経理の処理としてはAP(債務)の計上をして支払いにつなげなければいけないのですが、それが紙というアナログデータで来るのでとても大変です。
請求書AI-OCRのsweeepの破壊力
ーーたしかに請求書って今でも紙が多いですね・・・。それで先日のRPALTでお話されていた請求書読み取りAI、sweeepを作ったのですか?
ずっと経理関連のコンサルティングをしていて、この請求書処理の大変さが気になっていました。プロダクトを開発して解決したいという構想がずっとあったのですが、その時はOCRがまだ進化していなかった。ちょうど1年ほど前にsweeepの開発を始めたのですが、①自動化+OCRの技術が高まり、②自社でもRPAのコンサルティングを行いノウハウが溜まっていた、全てが重なったタイミングで開発をスタートし今に至ります。
ーー素朴な疑問なのですが、RPAのOCRバンドル機能を使ってこの問題は解決できないのですか?
請求書を読み込んでみたけどダメでした…。
ーーそれはなぜなのでしょうか?
ものによりますがかなり文字化けします。OCRエンジンによって得意な文字と不得意な文字があってすべての文字を文字化けせずに読むことが難しいです。ですのでOCRの精度の問題が一つ。もう一つはフォーマットの問題。どのOCRエンジンでも文字を認識してRPAに返すところまでは可能です。しかし、どの場所に何が書いてあるかはRPA側では判断ができないのです。請求書のフォーマットって会社ごとにバラバラで非定型なんですよ。なので結局文字の羅列にしかならなくてキーとなる必要な情報を抜き出せない、使ってみてRPAで請求書を読むのは無理だねという結論になっています。
ーー創られたsweeepに関してはバラバラなフォーマットの請求書を読めるのでしょうか。
読めるんです(笑)
ーーすごいですね!それは革命ですね!
これがすごいんです。バラバラな請求書でも読めるので、帳票定義が必要ないのです。バラバラの請求書をOCRを使って読み込ませる場合、すべて帳票定義しなくてはいけないのですが、それをしなくていいのがsweeepです。経理の仕事の中でアナログな請求書、それに対してルールを決めずにつっこんだらデータ化されて会計システムのフォーマットに対応したデータで出てくるといったサービスです。
ーー請求書は企業の数だけフォーマットがあるわけなので、それぞれ帳票定義しなければいけないのではないでしょうか?
企業の場合、月の取引のうち1~2割はかならず新規のお客様が出てくるので、そうするとその都度帳票定義しないといけないというのが一般的なOCRツールだと必要となります。それがsweeepだと読み込ませた請求書を見て(以下UI参照)、勘定科目の情報を入力すればこれで帳票定義が済んだことになる。一度入力すれば2回目からは入力せずとも勝手に入ってくる、業務の延長で学習してくれるので余計なことをする必要がないのです。
今までやっている業務と違うことしなくてよいので経理担当として違和感がない。帳票定義をするって普通の経理の人だとあんまりなじみのない仕事なので、これをやらなくて良いというのは大きいと思います。
ーー今、日本に同じようなサービスはないのでしょうか?
ぼくが知る限りはないですね。フォーマットの非定型に対応、クラウド、会計データ連携ができるというのは聞いたことがないですね。他のOCRツールでも請求書の読み取りができるそうですが、帳票定義が必要であったり、設定にすごく時間がかかると聞いています。
請求書関連のマーケットは3兆円!
ーー請求書という一つのカテゴリーに特化・・・。マーケットが小さそうですけど・・・。
それがでかいんですよ。月間5億枚の請求書が日本には流通していると言われていて、年間の人件費コストに直すと3兆円。請求書回りの作業は①請求書を受け取る、②請求書を確認して部門のなかで伝票をきって回す、③部門長が承認、④これを経理に回す、⑤経理がまた仕分けとして打ち込む、⑥承認してファイリング、⑦監査があると対象の伝票を探す、これらの時間をカウントすると膨大な時間が請求書周りでかかっているのです。トータルすると1枚あたり少なくとも10分はかかっています。1000枚あれば1万分です。紙だからファイリングしないといけないですし探さないといけないですが、デジタルだったらそんなことをしなくていいのです。実はマーケットは大きくて、どんな企業でも請求書はもらっていますのですべての企業がターゲットになります。
ーーすごいですね・・・!
経理の仕事の最たるものは月次決算。いかにそれを早く締めるかが経理最大の仕事です。月初1営業日に請求書が集まってきて、それを2-3日で経理が処理しないといけない。そこに3~4人はりつきで打ち込ませるが、決算早期化のコンサルティングをするとそこの課題に必ずぶち当たります。請求書だけは届くのを待つしかなく、そこからよーいドンです。下手したら請求書の到着が2-3日遅れたりもするのでそのために決算の締めがズルズル遅れていきます。決算早期化したいというニーズに対してsweeepだったらAIで解決できる。100枚読んでも1~3分で処理してしまうので。顧客からはこういった背景もあるので、sweeep利用料の月10万円~は安いと言われます。
ーークラウドで提供するサービスとのことですが、請求書をクラウド上にアップすることは企業としてはOKなのでしょうか。
昨日も売上1兆円を超える規模の企業さんから問い合わせがありましたが、うちはSaaSに慣れているので大丈夫だと言っていました。人事系の仕事は個人情報であったりよりセンシティブな情報を扱うと思いますがその領域でもクラウンドの採用が進んできています。クラウドは危ないという固定概念がなくなり、本質的な評価をするようになっていると感じます。、もちろん、セキュリティーには万全の対策をとっていますが、企業側としてはだいぶハードルが低くなっていると思います。
ーー現在導入している会社はどういった業種でしょうか?
人材系、不動産、IT系、会計事務所などが使っています。
ーー今後の展開はどんなことを考えているのでしょうか。
SaaSのサービスやSAPなど基幹システムとの連携を強化していきたいですね。また、今RPAベンダーさんにいろいろお声がけさせていただいて一緒にロボットを作りましょうという話をしています。かならずRPAのコンサルティングを行うと請求書の処理がネックになるので、いくつかお声がけしたらぜひやりましょう!といってカタチになってきています。これをどんどん拡げていってベンダー、コンサル会社と連携してライブラリを増やしていきたいと思っています。
まとめ
今回、経理部門の自動化における課題からお話をお聞きし、その課題を解決する手段としてのsweeepを紹介いただきました。以前のRPAしくじり先生進藤さんへの取材でもお話されていましたが、今後は汎用型のRPAだけでなく特化型のRPAも増えていくと言っており、まさに今回のsweeepは請求書特化型の自動化ツールです。
請求書マーケットの大きさを考えると、AIスタートアップで第二のSmartHRになりうる可能性を持った企業になるのでは・・・!?
毎月初大変な思いをしている経理の現場をsweeepが改革する、そんな日も近いなと感じたインタビューでした。
sweeepのHPはこちら
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