日本をはじめ、さまざまな国がDX化を進める中、注目を集めているのがAI(人工知能)です。近年では企業のサポートセンターに対話型AIを導入し、チャットを使ってお客様からの問い合わせに対応するケースなど、ビジネスにおけるAI活用が増加しています。
どのようなAIも、活用にあたってはAIそのものに学習させる必要があります。この記事では、AI学習の概要や仕組み、求められる知識について解説します。AI学習の必要性についても触れているので、自社のDX化について検討中の方は、ぜひ参考にしてください。
AI学習とは?
AIに学習させることをAI学習と呼びますが、具体的にどのようなことを指すのでしょうか。ここでは概要や求められる知識について解説します。
概要
AI学習とは、AIに自己学習能力を与え、問題解決につなげる手法のことです。詳細は後述しますが、さまざまな情報・データからパターンを抽出して学習する「教師あり学習」や、事前に与えた情報・データから特徴を抽出する「教師なし学習」などがあります。
AI学習ではいくつかの学習法を活用しながら、最適解を導き出すことに向いています。AI技術は更なる進化が見込まれることから、AI学習も同様に重要なポジションになることが予想されています。
AI学習に求められる知識
AI学習においては、学習させる側にも下表のような知識が求められます。
求められる知識 |
概要 |
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数学 |
確立・統計 |
データ分布や不確実性にまつわる概念を数式化する場合や、データの外れ値の特定の際に使用する |
線形代数 |
機械学習のアルゴリズムを把握する際に使用する |
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微分積分 |
最適化問題を解く際に用いられる勾配降下法に使用する |
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プログラミング |
Python |
AI実装において必要となるプログラミング言語のひとつ 入力するコードがシンプルであり、覚えやすい特徴がある |
SQL |
データベースの操作において必要となるプログラミング言語のひとつ 膨大なデータを効率的に扱える特徴がある |
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機械学習 |
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数学やプログラミングのほか、機械学習と呼ばれる要素技術が必要となるAI学習。では、機械学習とはどのようなことなのか、次項で詳しく解説します。
AI学習の仕組み
AI学習には、数学やプログラミング知識のほか、機械学習についても学ぶ必要があります。機械学習には3種類あり、それぞれで特徴が異なります。具体的にどのような違いがあるのかを見ていきましょう。
教師あり学習
正解となるデータを通じてAIが学習することを「教師あり学習」と呼びます。正解とするデータや情報を大量に取得し、学習させることで、新しいデータを取り込んでも対応できるようになります。
「教師あり学習」では、正解のデータを使ってルールやパターンなどを学ぶ「学習」と、新規追加された「正解が不明なデータ」に対して、過去に学んだデータをもとに認識または予測する「認識・予測」で成り立っています。
教師なし学習
正解となるデータを使用せず、入力されたデータや、データそのものが持つ構造・特徴の分析を通じて学習することを「教師なし学習」と呼びます。多くのデータから学習するわけではないため、頻出パターンを見つけることや、データなどのグループ分け、データの簡略化に向いています。
強化学習
正解となるデータを使用せず、AIが試行錯誤しながら学習することを「強化学習」と呼びます。報酬を得るためにはどのような行動が最適かを見つけることが目的です。一例としては、ゲームを通じてAIが学習し、より有効な一手を探す仕組みを導入した将棋AIが挙げられます。
AI学習を重要とする理由
AIの進化が加速したことで、人々の暮らしは多方面でプラスの影響を受けていることは明らかです。多くの人々にプラスの影響を与え続けるため、AI学習は欠かせないプロセスといえるでしょう。ここではAIの存在や与える影響を踏まえ、なぜAI学習が重要なのかについて解説します。
汎用性の高さ
AI学習を重要とする理由は、業界を問わず広い分野で活用できるまでの進化に欠かせないからです。近年、人々の生活は、スマートフォンや自動運転システムなどを通じて、AIから支援を受けることが日常化しています。
例えばスマートフォンの音声アシスタントを使って情報を得る人々が増えたのは、AI学習で得た知識、経験を元に、的確な情報を提供するまでに進化したからです。AI学習によって分野を問わず学習し、適切な情報を提供できる特徴は、汎用性の高さに期待が持てることが理由といえるでしょう。
企業競争力の強化
AI学習はコンピューターやデータ、膨大な情報などを使い、自己学習します。時間が経過するにつれて知識が増え、高度な判断が可能になるので、業務効率化の向上が期待できます。業務効率化が向上すれば、市場で高い収益を上げられるほか、シェアの拡大や成長力にもつながります。結果的に、企業競争力の強化に寄与することも、AI学習を重要とする理由のひとつです。
無限の可能性
AI学習は無限の可能性を秘めています。例えば、医療分野において、医師による診断をAIがサポートし適切な治療法を提供するなどの例が報告されています。
AI学習は分野を問わず学び続けることができ、高精度な判断に結びつけます。AI学習の進化によって、人々の知識や経験は類を見ないものとなり、これからの社会はますます変貌を遂げると考えられるでしょう。
AI学習のステップ
AI学習は、人間が知識を身につけるための学習と類似しています。人間であれば、身につけたい分野の勉強を通じて、学習していきます。一方AIも、膨大なデータや情報を収集し、分析して学習します。以上の点を踏まえ、ここではAI学習のステップにおける工程について解説します。
データ収集
AIにとってデータ収集は、知識を養うことにつながります。まずはAIにどのような問題解決能力を身につけさせたいのかを明確にしましょう。学習における目標を設定することで、適切な情報やデータを与えやすくなります。
例えば、工場で多いAの商品とBの商品を判別させたい場合です。Aの商品情報とBの商品情報を大量に用意し、AとBの違いをAIに学習させます。形や色、重さや使用用途などの情報を取り込むことで、より正確に判別できるようになります。
モデルを使った訓練
データ収集を終えた後は、次にモデルを使った訓練を行います。訓練の前には、取り込んだデータを使いやすい形に整えることを意味する「データラングリング」と呼ばれる作業を行い、データ分析やモデルの訓練に応じた状態にします。
データラングリングを終えた後は、データ拡張と学習・評価用に分類し、訓練へと進みます。AIにデータを与えた後は、目標に達しているかを判断しましょう。なお、訓練には多くの時間と労力を要します。何度も繰り返し試行錯誤を経ることで、高精度な判断になることが期待できます。
予測・改善の実施
訓練が終わった後は、予測・改善へと移行します。AIはモデルを使い、新しいデータに対する予測をします。その精度を評価し、モデルの改善作業へと移ります。予測・改善フェーズでは、AIが新しいデータにも適切に対応できるようになるための大切な工程です。訓練と同様に、繰り返し行うことで、高いパフォーマンスが可能なAIが誕生します。
AI学習によってみられる企業のメリット
AIが学習することには、企業にとってさまざまなメリットをもたらします。具体的には、以下3つです。
- 業務効率化
- 人材不足の解消
- 生産性・正確性・安全性の向上
具体的にどのようなメリットがあるのか、それぞれ以下で詳しく解説します。
業務効率化
AI学習によって、AIは膨大なデータの収集や分析を繰り返し、精度の高いAIへと進化します。企業の単純作業をAIに学習させることで、膨大な業務を一定の速度で行うことが可能となり、業務効率化が期待できます。
AIに業務を任せた従業員は、別の業務に集中することができます。仮に、これまでは膨大な業務によって学ぶ機会のなかった別の作業も、AIが代わりに行うことで、知識を身につけるきっかけにつながります。
結果として従業員のスキルアップが期待できることから、企業の競争力の底上げにも寄与するでしょう。
人材不足の解消
AI学習によって、人材不足を解消できる点もメリットです。近年の日本は少子高齢化が深刻化し、今後は超高齢化社会に移行するといわれています。その影響から労働人口が減少するため、将来的に企業はより一層人材の確保が難しくなるでしょう。
AIが分野を問わず学習し、精度の高い判断・行動ができるようになれば、担い手が不足しても、AIで代用することができます。人材不足の解消にあたり、AIは時代と分野に合わせて重要度が増すと考えられるでしょう。
生産性・正確性・安全性の向上
AI学習によってさまざまな分野に精通したAIが誕生すると、一定の速度でミスをせずに業務に対応できるので、生産性の向上が期待できます。
例えば、経理などを扱う部署ではミスを防ぐ目的から、ダブルチェックを行うための従業員など、1つの業務に対して多くの工程や人員を必要とします。
ミスが起きやすい業務ほどAIに学習させることで、ミスに関する膨大なデータの収集・分析により、正確性を確保したAIが誕生します。
ほかにも、建築・土木業界などでは、作業中の事故によって、作業員のケガなどが多く報道されています。AI学習によって、危険とされる業務について熟知したAIが誕生すれば、作業員の安全を守りながら業務を進めることができます。
AI学習における課題
AI学習によって知識を養ったAIは、多方面での活用が期待されます。しかし、なかにはいくつかの課題もあります。
学習環境によるバイアス
AIの学習環境によるバイアスは、避けては通れない課題といえます。例えば、特定の性別によるデータを使った場合、AIはその属性に関する行動や判断のみをパターンとして学ぶことになります。偏りのない全方位を見据えた判断ができないため、バイアスは生まれやすくなるでしょう。
バイアスが強まれば、公平性や公正性を持たない判断が行われることになります。特に近年では、人種や性別における多様性が重視されやすい特徴から、公平性や公正性を担保したAI学習が課題となるでしょう。
データ・プライバシー
AI学習には膨大なデータを要しますが、データを不適切に取り扱うことで、人々のプライバシーが危険にさらされる可能性があります。AI学習においては、データの収集方法や使用用途に関する透明性が欠かせません。
AIを使用する際には、使用目的や取扱方法をまとめたプライバシーポリシーの作成のほか、データ・個人のプライバシー保護を意識した運用も課題となるでしょう。
倫理性
AIが自主学習を経て人間の行動を代わりに行うようになれば、その利便性の高さから職を失う人が増える恐れがあります。最近では、音声生成AIの誕生によって有名声優が声の権利を侵害されているとの報道が注目を集めました。
AI学習によって、人間の支援をすることは利便性や汎用性の向上に期待でき、メリットとなります。しかし、AI学習も正しい活用方法が守られなければ、侵害な行動につながりかねません。
AI学習においては、利便性の先を追求する意識がかえって人間を侵害しかねないと考え、適切な対策を講じることも必要になるでしょう。
参考:山寺宏一、梶裕貴ら声優26人が「声の無断生成AI」に“NO”…法律で守られない「声の権利」侵害の実態
まとめ
AI学習とは、膨大なデータや情報を通じてAIに自己学習能力を付与し、問題解決につなげる手法のことです。データや情報の種類や業種は問わないため、内容によっては、多方面で活躍が期待される存在です。
しかし、データの内容によっては職を失う人や侵害の危険にさらされる可能性などいくつかの課題もあり、AI学習に際しては、適切な対策を講じることが求められます。
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