ディスラプションとは？イノベーションとの違いや要因、対策ポイントを解説

デジタル技術の進化によって現代ビジネスはめまぐるしく変化しています。多様なシーンで利活用が増える一方で、その技術は破壊的なイノベーションを指すディスラプションによって企業の事業継続を脅かす存在になると考えられています。

脅威になる恐れについては理解できても、ディスラプションは漠然としたイメージが強いために、自社にどのような影響があるか、さらにはどのように対応すべきなのかを明確にできない方も多いのではないでしょうか。

本記事ではディスラプションの概要をはじめ、デジタルディスラプションとDXとの関連性、対策ポイントについて解説します。本記事に目を通し、自社に有効となる対策方法を見つけてください。

ディスラプションとは

ディスラプションは「途絶」「分裂」あるいは外的要因による「混乱」「崩壊」といった意味を持つ言葉です。ビジネスシーンで使われる場合、「すでに存在するモノ（または者）を破壊する可能性のある革新」を指し、デジタル技術の進化によって使う場合には「デジタルディスラプション」とまとめて呼ぶこともあります。

デジタルディスラプションとDXとの関連性

デジタルディスラプションとDXには、どちらもデジタル技術における変化を表す言葉であるものの、目的や影響に大きな違いがあります。デジタルディスラプションは、既存のビジネスモデルや市場に対して破壊的変化をもたらす存在とする一方で、DXはデジタル技術の活用を通じてビジネスモデルや組織を変革し、競争優位性を確立することを指します。

これらのことから、DXはデジタルディスラプションを回避する施策であり、むしろデジタル技術を活用するための取り組みと位置づけることができます。DXの積極的な推進によって古くから継承されたビジネスモデルを壊すことは、新たなビジネスモデルを創造するチャンスにつながるとも考えられるでしょう。

ディスラプションとイノベーションとの違い

ディスラプションと類似する言葉としてイノベーションがあります。ディスラプションは「混乱」「崩壊」などを指す言葉である一方、イノベーションは「技術革新」を意味します。イノベーションには「破壊的イノベーション」と「持続的イノベーション」の2つに分けることができ、それぞれの意味は下記の通りです。

破壊的イノベーションにはマイナスなイメージが残りますが、破壊によって新たなモノ・価値を生み出すことも少なくありません。破壊と創造は紙一重と考えられているように、すでに存在するモノを新しいモノへと置き換えることは、デジタル技術がめまぐるしく発展する現代社会においては避けられないこととも考えられます。

持続的イノベーションは、既存製品やサービスの品質向上を指し、一例としては折りたたみ式の携帯電話からスマートフォンへの進化があり、顧客ニーズを中心に社会全体の変化に応じて変容を遂げることを意味しています。

今後の動向

デジタル関連を含め、ディスラプションが起こるタイミングは予測できません。しかし、デジタル技術がめまぐるしく進化する現代だからこそ、近い将来には起こると考えられています。特に、金融・保険・エネルギー・IT業界での変化が早いことを理由に、どの業界よりもディスラプションが起こるとも予想されています。

ディスラプションはデータを取り扱う業界にとっては切り離すことのできない関係です。そのため、デジタル技術の動向を分析しながら適切な対応策について考えておく姿勢が不可欠といえるでしょう。

参考：Data Disruption Index｜ wie schnell verändern sich die Branchen?

デジタルディスラプションが起こる要因

デジタル技術におけるディスラプション、いわゆるデジタルディスラプションは、どのようにして起こるのでしょうか。デジタル技術の特徴からさまざまな要因が考えられますが、具体的にはDXに取り組むまでの難しさやイノベーションのジレンマが挙げられます。

例えばDXの難しさについては、仮に世界の企業が全てDXに成功すれば、市場にいる参入者が同等の競争力を持つことになり、デジタルディスラプションの発生率は低く保てるでしょう。

しかし実際のところはDXを成功させた企業が少ない状況です。そうした市場のなかでデジタル技術を活用し、変革を遂げた一部の企業がデジタルディスラプターと位置づけされ、デジタルディスラプションが起こると考えられています。

どのような理由であっても、デジタル技術が利活用される現代社会だからこそ、ディスラプションの発生はいつ起こってもおかしくない状況であることを理解し、適切な対策を講じる姿勢が重要といえるでしょう。

ディスラプションによるビジネスへの影響

ここではディスラプションはビジネスにどのような影響を及ぼすのかについて解説します。

顧客ニーズへの対応

情報社会ともいえる現代であるがゆえに、顧客ニーズも大きく変化しています。従来のビジネスモデルでは通用しない業界も増えていることから、現状維持のような状態では事業継続が困難になる恐れがあります。

顧客ニーズへの対応は企業の持続的な経営と紐付いています。そのため、ディスラプションの影響を受ける前に新たなビジネスモデルを構築し、時代と共に変化する顧客ニーズに適切に対応することが大切です。

市場競争の激化

持続的な成長には、競争力強化に有効な製品・サービスの開発および提供が欠かせません。このような取り組みによって、既存客の囲い込みにつながるほか、新規顧客の呼び込みに期待できるためです。

競争力強化を図るにはコスト削減や業務の効率化・自動化といったDXに紐付く項目に留まらず、技術やアイデアを新たに創出し、競合他社にはない独自の強みや価値を生み出すことを意識してみましょう。

ディスラプションの対策ポイント

いつ起こるのか具体的な予測はできないものの、近い将来には起こると考えられているディスラプション。企業はどのように対応していくことが推奨されるのでしょうか。ここではディスラプションへの対策ポイントについて解説します。

現状を正確に把握する

自社の現状を正確に把握し、どの部分を改善すべきなのかについて洗い出しを実施しましょう。例えば現状の既存システムについてです。デジタル技術の進化によってITシステムも大きく変化しており、既存システムでは対応できない部分も増えています。

既存システムが現代ビジネスに追いついていないままでは、業務の効率化が図れなかったり、システムエラーに適切に対応できなかったりするなど、さまざまな問題が立て続けに起こる可能性があります。現状把握を行う上では、多少なりとも時代の変化に目を向けることが大切といえるでしょう。

新たな市場を開拓する

既存顧客の囲い込みも重要ですが、新たなビジネスモデルを創出するとともに新たな市場を開拓する方法も効果的です。

斬新な市場開拓に成功した企業といえば富士フイルムホールディングス株式会社が有名でしょう。スマートフォンの普及と共に厳しい状況に陥ったカメラ業界でしたが、同社はフィルム技術を活かしスキンケア商品「アスタリフト」を発売し、新たな収益源の確保を実現しています。

新たな市場を開拓する上では、なぜその市場を選ぶのか適切な情報の収集・分析に加えて、自社の強みを見つけることが大切です。闇雲に市場開拓しても、自社の特徴を活かしきれなければ、収益源の確保にはつながらないためです。

このようなときはビッグデータを活用することで自社課題の発見から自社の強みを活かせる市場の発見、市場開拓前後の企業の収益率などを総合的に把握できるでしょう。

関連記事：ビッグデータを活用するには？種類や分析手法、今後の課題を解説　

スモールスタートでDX推進を図る

企業競争力の向上や市場開拓に向けて動くときは、スモールスタートでDX推進を図りましょう。企業・市場分析には情報収集が欠かせませんが、自社の強みを活かせる市場を把握するためには多様なデータに対応したビッグデータの活用がマストであり、またビッグデータを活用できるだけの準備が必要です。

このときに頭に入れておきたいものがDXです。DXは情報通信技術の活用によって企業競争力の向上や企業全体の価値を高める取り組みを指し、DXの推進によって必要なデータを収集できることに加え企業競争力の向上につなげられます。

ただし、いきなりITシステムを一新させてしまうと、現場には混乱が生じトラブルにつながりかねません。持続的な経営につなげるためにDXを推進するのであれば、スモールスタートで始めることをおすすめします。

関連記事：DXの進め方完全ガイド｜失敗例をもとに解決策やコツを徹底解説

中長期での計画を策定する

DX推進が仮に成功したとしても、一度で終わらせないようにしましょう。新たな技術の導入と業務の変革は、デジタル技術がめまぐるしく発展する時代だからこそ継続させる必要があります。継続的に行うことでデータは蓄積され、必要に応じて利活用できれば、デジタルディスラプターに対応できるだけの競争力を持ち続けることができます。

ディスラプションの事例

ディスラプションについて詳細を知りたいときは、日本や海外企業の事例を見ることでイメージしやすいです。ここでは、日本企業に絞り、ディスラプションが起きた企業について解説します。

参考：総務省｜令和3年版 情報通信白書｜デジタル・ディスラプション

mixi

2004年に本格的にサービスがスタートした「mixi」はディスラプションを経験したサービスのひとつです。会員であるユーザーから招待されないと登録できないという斬新な特徴を持つ同サービスですが、アメリカ発祥の「Facebook」が日本に進出したことで状況は一変し、”SNSの主流”は「Facebook」という流れに変わりました。

“匿名性”から”実名性”に魅力を感じたユーザーが急増し、やがてFacebookに敗れてしまったという事例です。

当時から「Facebook」は、実名性を主軸とした正確なデータベースによるターゲティング精度の高い広告が表示されたり住所や電話番号などユーザーの登録情報から「知り合いかもしれない人」を自動表示する機能が搭載されていたりなど、それまでのSNSにはない真新しい機能が充実していました。

ネットワークの効果をうまく活用したDXによってさらにユーザーは拡大し、開発力でも劣勢の「mixi」は対抗できませんでした。

グリー

携帯ゲームの雄としてその業界を牽引していた「グリー」も、2012年以降から業績が低迷しました。具体的な数字で表すと、2012年6月期には1,582億円だった売上高が、6年後の2018年6月期には589億円にまで激減しました。

その背景にあるものとしては、iOSユーザーに向けた「App Store」やAndroid端末用の「Google Play」などを中心としたスマートフォン向けのアプリ配信プラットフォームが注目を集めたためです。

iOSとして有名なものには「iPhone」、Googleは検索エンジンやさまざまなクラウドサービスという競争力の高い製品およびサービスがあり、それらをいずれの企業も適切に活用し、大量のユーザーを囲い込んだことが理由です。

グリーの強みは「ガラパゴス携帯向け自社プラットフォーム」でした。この強みを捨てきれずにいたことから、スマートフォンの普及とともに乗り遅れ、敗北しました。

そのほか身近なディスラプション

ディスラプションにはポジティブな側面も持ち合わせています。例えばECサイトのなかでも有名な「Amazon」は、小売業界にディスラプションを起こし、消費者の購買行動を大きく変化させました。

「Amazon」の特徴は、その品ぞろえの良さにあります。豊富な商品を取り扱っているからこそ、実店舗に行かなくても好きな物・欲しい物をいつでもどこにいても買うことができます。実店舗に出向いていたユーザーも、利便性の高さから「Amazon」に流れてしまう結果となりました。

「Amazon」の登場によってECサイトの利便性に魅力を感じるユーザーのなかには、買い物はECサイトを覗いてから、といったユーザーも増えました。ECサイトを収益源とする企業にとってはポジティブなディスラプションだったという見方もできるでしょう。

まとめ

ディスラプションには「混乱」「崩壊」といった意味があることから、ビジネスシーンにおいては脅威と捉えがちです。しかし「Amazon」の事例からもわかるように、実店舗を持つ個人店にとっては売上低迷を招いた「厄介者」だとしても、ECサイトで収益源を確保する企業にとってはビジネスチャンスを広げた「先駆者」でもあります。

ディスラプションに対しては過剰に怯えるのではなく、DX推進を通じて自社の強みを洗い出し、積極的に変革を目指すことでポジティブな影響をもたらすでしょう。

そのためには企業競争力強化や市場分析が必要であり、ITシステムやビッグデータを利活用できる人材確保が欠かせません。

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