Peaceful Morningでは、RPA導入企業担当者をお招きして対談形式でRPA導入のノウハウを本音で伺うウェビナーを企画しています。
2020年12月に行われたウェビナーでは、プログラム未経験でありながら社内に280人の開発者の育成に成功をされた田辺三菱製薬プロビジョン株式会社ワークイノベーション部の佐々木孝之様と対談をさせていただきました。
本記事では、佐々木様からお話いただいたRPA導入後の注意点や開発者育成のための具体的なノウハウを紹介いたします。
目次
会社概要
社名 |
田辺三菱製薬プロビジョン株式会社 |
代表取締役社長 |
後藤啓 |
設立 |
2019年1月1日 |
本社所在地 |
〒532-8505 大阪市淀川区加島3丁目16番89号 |
ホームページ |
インタビュイー紹介
佐々木孝之氏
田辺三菱製薬株式会社にて、工場の設備エンジニアとしてキャリアをスタートし、業務改革を司る部署に移動。
プログラミング経験がなかったことを強みに、一般ユーザーでもUiPathを使ったシナリオが短時間でできる仕組みを考案し、社内に280人の開発者の育成に成功。
社内へのRPA導入に至るまで
藤澤:RPAの導入に至った経緯を教えてください。
佐々木さん:当時システムは、システム会社に作ってもらう時代からクラウドを利用して自分たちで作る時代に変わってきたと感じていました。また、そうした人材を揃えている企業が次の時代を勝ち抜くとも考えました。日本企業はITリテラシーが高くないと言われている中、RPAの導入は、比較的簡単なロボット作りにより業務改善を通じて実益に貢献しながら、プログラミング思考や論理思考を身につけることができるDX推進の良いきっかけだと感じ、導入を決断しました。
藤澤:業務改善&デジタル人材の育成という意図があったのですね。
佐々木さん:はい。目先の業務削減よりも、5年先を見据えたデジタル人材育成のための投資をしよう、ということは常々言っておりました。
藤澤:UiPathを選ばれた理由はありますか?
佐々木さん:初めはWinActorを利用しており、操作が簡単であるためRPAの基礎的な事項はここで学べたました。
しかし、当時はOrchestrator的機能(管理機能)がなかったことと、改めてほしい要件をリストアップした結果UiPathがドンピシャだったので乗り換えしました。もう一つの決め手としては、Googleで検索するとUiPathに関するブログなど情報が多く載っていた点が挙げられます。ある程度自分で解決できるので、低コストで運営できると感じました。
目標設定は2つのアプローチから
藤澤:導入2〜3年での目標設定はどのように決められましたか?
佐々木さん:2つのアプローチがあります。
一つ目は、営業や製造を除いたスタッフ業務従事者数×1920時間(1年間)×10%を削減目標とすることです。この程度は確実にRPA対象業務があるので、中長期目標として妥当だと思います。
2つ目はヒアリングによる目標設定です。RPAに限らず困っていることをヒアリングし、自動化できそうな業務で絞り込んでいくと、現実味のある数字が出てきます。
藤澤:開発を独学で習得されたそうですが、どのように学ばれていたのですか。
佐々木さん:最初の製品では「変数」でつまずいたのですが、検討メンバーで教え合いながら学習していました。UiPathに切り替えて以降は、インターネット上に多くの情報が存在していたので、かなりの部分を独学で対応できました。
RPA導入後に気を付けるべき4点
1.ロボットの管理方法
藤澤:様々なロボットが24時間働いていると思いますが、いつ何が動いているかという管理はどのようにされていますか。
佐々木さん:先ほども紹介しましたが、UiPathのOrchestratorという機能で一時的に管理しています。しかしそれだけだと視覚的にやや分かりにくいので、Kibana(=データ視覚化ダッシュボード)というツールを合わせて見えるようにしています。
藤澤:まずはDesktop型のライセンスを入れてからOrchestratorを購入される企業が多いと思うのですが、最初からOrchestratorをご購入されたのですか?
佐々木さん:はい。最初から全社展開を考えていたので、OrchestratorはPoCの段階から導入し、初期段階からOrchestratorを使って管理していました。
2.ロボット化の仕組みづくりと運用方法
藤澤:「こんなロボットを作りたい!」と現場が声を挙げやすくするための工夫はありますか
佐々木さん:メールや電話、チャットで気軽に意見を出せるようにするなど、間口を下げることですかね。現場がモチベーション上がっている旬を逃さないことが大切だと思います。
3.ロボットの組み立てパターンについて
藤澤:ロボットを組み立てる際に、パターンはありましたか?
佐々木さん:はい。初期工程をしっかりやって本工程をシンプルにするというパターンを確立しました。Excelのデータテーブル化、ある列を日付化というような前処理を初期工程の中でやっています。
4.「動くロボットから使いまわせるロボット」=部品化への意識変化
藤澤:お客様と話をする中で、今後のことも考えて再利用可能なロボットを作ろうとすると、なかなか一本目のロボットが完成しないという声をよく聞きます。部品化はどのタイミングで意識されたのですか
佐々木さん:最初から部品化は大事だと考えていたのですが、ある日違うな、と気づきました。これは私のモデルの根幹となっている「一般のユーザーが開発者になるときの心の変化」が理由です。その心の変化は以下の5段階に分かれます。
①期待感・指名された喜び
②作る喜び・周りから感謝される喜び
③攻略する喜び
④エレガントに作る喜び
⑤効率化(共通プロセスやモジュールといった部品化)への意識
つまり最初にUiPathを好きになってくれれば、自然と部品化へ意識が向かうのです。だから、最初から部品化を意識する必要はないと考えています。
この3つを押さえれば社内にIT人材を育成できる!
1.現場担当の選任方法
藤澤:事務職系の現場担当を選任する際の方法はありますか?
佐々木さん:一言でいうと、開発つまり、プログラミングが好きな人を選ぶことですね。あとは、手法を教えるだけで、自然と力を発揮してくれることでしょう。また、エクセルが得意な人も良いと思います。エクセルが得意だということは大抵エクセルが好きということなので、開発も好きになると思います。
2.教育内容
藤澤:開発者への具体的な教育内容について教えてください。
佐々木さん:当社では二日間の研修(8時間×2)を行っています。市販の教材を使うと、難しい部分や必要のない部分もあるので、自社で作成したオリジナル教材を使います。研修では操作を覚える必要はなく、RPAに対し興味を持ってもらい、どのような業務が自動化できるのかを理解してもらうことが重要と考えています。
その後、RPAを使いたいと声を上げてくれた人と共にUiPathを開くところから、一緒にロボットを作っていくという流れですね。でも一番多いパターンは、研修後にエレベーターで会った際の「どう?」「なかなか声をかけるタイミングがなくて…」という会話からロボット開発が始まるパターンです。やはり、フォローが最も大切だと感じます。RPA相談会を開くと多くの人が参加してくれます。
藤澤:興味はあるけれど経験がない人に習得してもらうために、どのようなことをしていましたか?
佐々木さん:やはり「RPAの楽しさ」を最初に感じてもらうことが一番大事だと思います。説明会を行った際に、ロボットが動くところを参加者の目の前で見せましたが、これは効果的でしたね。また、ロボットを作る実際の操作を目の前で見せることで、自分にもできるかも、と感じてもらうようにしていました。
3.ユーザーと情シスの壁をなくす
藤澤:ユーザーと情シスの壁をなくすために心がけていることはありますか。
佐々木さん:「同じゴールを描く」ことですね。当社では、削減数値をゴールにするのではなく、「デジタル人材の育成やITリテラシー底上げの大きな一歩にしたい」というように、「ユーザーの琴線に触れるゴール設定」にしました。また、開発者のやる気を引き出すことも大切ですが、説明時に使った「単純作業からの解放」というワーディングは、開発者によく刺さるキーワードだったと感じます。
当社では、専門部署とユーザーの業務認識のギャップによる非効率性や開発後の引き継ぎコストの問題を避けるために、現場の人をRPAエンジニアとして育てる「自走型」を目指しています。
今後の取り組みビジョン
藤澤:2021年度以降の取り組みビジョンについて教えていただきたいです。
佐々木さん:取り組みたいことは2つあります。AI-OCRの導入と脱ハンコに向けた自動承認フローの作成です。自動承認フローについては、需要が高いのに対し外部に発注すると割とコストがかかるので、社内で作れるようにPowerAutomateで対応中です。
また来期に向けて、PowerBIでの見える化によるデータに基づく意思決定を取り組んでいきたいです。ホワイトカラーの生産性を上げるためには、見える化は欠かせないと感じています。会社を大きく変えるためには5年以上の取り組みになると思いますが、そのための一歩としてセルフBIを従業員が使えるようにしていきたいと思います。将来的にはプロセスマイニングもやりたいので、そのためにもPowerBIを使いこなしていきたいですね。
あとはAI ChatBotです。問い合わせ対応がホワイトカラーの生産性を妨げていると感じているので、それをAIに任せていきたいです。「従業員の右手にRPA、左手にChatBot」という、二人のデジタルアシスタントが各人の仕事を支援してくれる時代が来る日も近いでしょう。また、どの業務にも対応できる「汎用型AI」の活用も検討していきます。
藤澤:RPAで困っている企業の方へメッセージをお願いします。
佐々木さん:RPAは、デジタル時代に向けた布石です。やればすぐに実績が出る、その上、ロボットを作るのは楽しいのでデジタル時代への入り口として最適です。難しいと感じることもあると思いますが、最初の工程を上手く乗り越えることができれば、できることがどんどん増えていくので、RPAの導入に是非取り組んでいただきたいです。
藤澤:本日は貴重なお話をありがとうございました。貴社の更なる成長を応援しております。
開発者はお客様
今回インタビューさせていただいた佐々木様は、RPA導入の際、「開発者はお客様」というスタンスでどのように事務局が振る舞うべきかを考え抜かれた姿が印象的でした。今回伺ったお話は是非、RPA内製化を目指す企業様の参考にしていただきたいです。
現場主導でRPAを成功させるには:Robo Runner
RPA全社展開のため、現場の人をRPAエンジニアとして育てる「自走型」を目指していた佐々木様。同じように内製化を目指したいけれど、RPA導入が成功するか不安といった方でもRPA推進・導入をすることを可能とする「Robo Runner」というサービスをご紹介します。
「Robo Runner」はRPAツール導入後の開発・運用・保守などの困りごとを専任サポーターと共に解決していきます。RPAツールはUiPath・WinActor・PowerAutomateなどのRPAツールに幅広く対応しています。オンラインミーティングやチャットで気軽に相談することが出来、そして開発進歩をレポートにすることで悩んでいる問題を可視化することが出来ます。
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