テクノロジーの進化に伴い、多くの企業では膨大なデータの行き来が活発化しています。これまでに蓄積されたデータをビジネスに活かし、ビジネスチャンスの創出や企業課題の解決につなげるべく、近年では「データマイニング」と呼ばれる手法が注目を集めています。
この記事では、データマイニングの概要と注目を集める具体的な理由をはじめ、種類や分析方法について解説します。データマイニングを成功に導くコツについても解説しているので、ビジネスシーンで膨大なデータを今以上に活用したい方は参考にしてください。
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データマイニングとは
データマイニングとは、集められたデータのなかから傾向やパターンを見つける分析手法のことです。たとえば自社製品に関する売上予測や市場の動向といったデータから新たな仮説を立てるなどに役立ち、ビジネスシーンにおける視野を広げる効果に期待できます。
AIや機械学習を用いるケースが多く、近年ではMI(マテリアルズ・インフォマティクス)などの先端技術にも活用され、開発速度の向上に貢献しています。
注目を集める理由
データマイニングが注目を集める理由は、マーケティング分野における「4P」を明らかにすることが挙げられます。4Pとは「Product」「Price」「Place」「Promotion」の頭文字を取ったもので、ターゲットに対する価値提供の最適化を図る際の基本概念です。
これらを明確にするべく、近年では社内に蓄積された膨大なデータに加えオープンデータを使用し、マーケティング課題の解決を図っています。しかし、ターゲットを色濃くイメージした上で膨大なデータのなかから課題を明らかにするためには、分析に多くの時間がかかってしまいます。
こうしたときにデータの規則性やパターンの特定に有効なデータマイニングを利用することで、自社製品を好むターゲットを深く理解した上で、ターゲットの視点に立った課題の発見につながり、最適な意思決定を可能にします。
データマイニングで得られる知見
データマイニングの実施を通じて、DIKWモデルという知見が得られると考えられています。DIKWとは、データや情報などの英単語の頭文字を取った言葉で、それぞれに下表のような意味を持っています。
| Data(データ) | 画像や音声などの素材 |
| Information(情報) | 集められたデータを整理し、分析・解析できる形式に変えたもの |
| Knowledge(知識) | 情報分析の結果、得られたパターン |
| Wisdom(知恵) | 知識を使い物事を判断する |
データマイニングは、意味のある情報へとデータを変換し、そのなかから知識を抽出するまでを領域としています。なお、知識を活用し適切な判断が行える「知恵」は、データマイニングそのものではなく取り扱うユーザーの技術に依存するといわれています。
データサイエンスとの違い
データマイニングと類似する言葉にデータサイエンスがありますが、こちらは統計学や数学など幅広い知識を駆使し、データからビジネスに潜む課題を解決することを指します。データマイニングは大量のデータからパターンをみつける手法のため、データサイエンスを構成するひとつの要素と考えることができます。
データマイニングの種類
データマイニングには、主に3つのモデリング手法が存在します。ここからは記述的、処方的、予測的の3つについて解説します。
記述的モデリング
記述的モデリングは、過去のデータがどのようになっているか明らかにすることを目的としています。データに隠れたパターンや構造を可視化し、理解を深める際に用いられます。具体的には、顧客の購買行動を分析した後、顧客セグメントを分類するなどがあります。
処方的モデリング
処方的モデリングは、特定の目標達成のためにどうすべきかを明らかにすることを目的としています。複数の選択肢のなかから、最適な行動を提案する際に用いられます。たとえば在庫を最小限に抑えながら需要を満たすための最適な発注量を算出するときなどは処方モデリングを使用します。
予測的モデリング
予測的モデリングは、将来どのような結果になるかを予測することを目的としています。過去のデータに基づいてモデルを構築し、将来値を予測します。たとえば特定の顧客が将来的に解約する確率を予測したいときは、予測モデリングを使用します。
データマイニングの分析方法
データマイニングと一口にいっても、さまざまな手法が存在します。ここからは代表的な手法について解説します。
クラスター分析
クラスター分析は、データにある類似性でグループ分けする手法です。たとえば顧客の購買データを分析し、共通の属性をもつ顧客をひとつのグループにまとめることで、グループごとに適切なマーケティング施策を行えるようになります。
マーケット・バスケット分析
マーケット・バスケット分析は、ある商品と同じタイミングで購入される傾向のある商品を分析する手法です。同じ買い物カゴに入る製品を重点に置く手法により、こうした名前がついたと考えられています。具体的には、顧客の購買データを使うことで複数の製品の売れ行きを調べることができます。
ロジスティック回帰分析
ロジスティック回帰分析は、複数の要素を用いてある事象が起こる確率を予測する手法です。たとえば顧客の年齢や購入頻度、利用サービスといったさまざまなデータを使えば、その顧客が次の1か月のうちに解約する確率を予測できます。
ABC分析
ABC分析は、購買データをもとに自社製品の売れ筋を分析して、どの製品を重点に売り出せばよいかを明らかにする手法です。売れ筋と死に筋を明確化できる特徴から、主に小売業界の最適な在庫管理を目的に活用されています。
データマイニングを成功へと導くコツ
データマイニングは、ただツールを導入すれば成功するというわけではありません。これから解説するコツを押さえ、データマイニングを成功へと導きましょう。
データウェアハウスを整える
データマイニングを成功させるためには、膨大なデータを効率的に管理できるDWH(データウェアハウス)の整備が欠かせません。
DWHは分析しやすい形式でデータを統合・保管するだけでなく、優れたセキュリティ機能も備えているため、データマイニングの精度と安全性向上に貢献します。データマイニングを導入する際は、あわせてDWHの活用も検討するとよいでしょう。
データクレンジング環境を確保する
データマイニングには、データの欠損・ノイズの修正や整形するためのデータクレンジングも必要です。データクレンジングは分析結果の精度に大きく関わる作業のため、適切に行うことで企業活動の効率化に期待できます。
なお、データクレンジングはデータ1つひとつを手作業で整形する必要性により、大きな工数がかかることが一般的です。データマイニングを効率よく進めるためには、データクレンジングに精通した人材を確保し、スムーズに進められる体制に整えておくことが大切です。
ツールを導入する
データマイニングを成功させるためには、目的に応じたツール導入の検討も必要です。ツール導入によってデータマイニングが滞りなく進められるだけでなく、正確な分析結果によるさまざまな意思決定にもつながります。
なお、ツールを選定する際は、あらかじめデータマイニングにおける目的や得たい知見について明らかにすることが大切です。また、優れたツールを導入しても従業員が使いこなせなければ意味がないため、ツールを現場で定着させるためにも、無償トライアルを利用し、利便性やUI/UXを確認しておくことをおすすめします。
各業界のデータマイニング活用事例
データマイニングは、ビジネスチャンスの創出や企業課題の解決を視野に多くの業界で活用されています。ここからは、各業界におけるデータマイニングの活用事例について解説します。
製造
製造業界ではデータマイニングの活用を通じて、既存システムや設備の計画的なメンテナンスにつなげています。データマイニングを活用すると、既存システムや設備に関する稼働データを効率的に分析できます。そのデータを細かく分析・パターン化し、故障の兆候の把握に役立てています。
また、品質データの分析によって不良品が発生する具体的なパターンを把握することもできます。特定したパターンを原因と捉え適切な再発防止策を講じ、品質向上と不良品発生によるコストの削減も実現しています。
医療
医療業界では、医師による診断精度の向上と医療ミスの削減につなげています。これらは過去の患者データや症例データ、検査結果といった医療データの分析を通じて実現しています。また市販の医薬品においても、電子カルテなどの情報から副作用の発生パターンを分析・特定し、被害の拡大防止に役立てられています。
金融
金融業界では、与信管理におけるリスクの軽減や不正取引の検知・防止につなげています。与信管理については、申込者の取引履歴などのデータを分析し、デフォルト率の予測を通じてリスクに見合う融資可否の意思決定に役立てられています。
クレジットカードの不正利用や金融犯罪の検知においても、不正取引などに関するデータからパターンを特定・リアルタイムで検知し、速やかな対処につなげています。
小売・EC
小売・EC業界では、需要予測の高度化と在庫管理の最適化、レコメンド機能の精度向上などを実現しています。一例としては、販売データの分析を通じて自社で取り扱う製品ごとの需要予測を行い、在庫数の最適化につなげながら機会損失を防止する、などです。
また、膨大に収集された購買履歴や閲覧履歴のデータを分析し、顧客1人ひとりに応じた製品レコメンドも行われています。データマイニングによってレコメンド機能が向上するため、エンゲージメント数や客単価の増加につなげています。
教育
教育業界では、生徒1人ひとりの理解度に合わせた学習コンテンツの提供や苦手分野の可視化を実現しています。生徒の成績データや学習ログの分析によって各科目に対する理解度やつまずきやすい分野を明らかにできます。学習の総合的な最適化によって、学習課題や復習用の教材も生徒の能力に応じたものを提供しています。
このほか、授業評価アンケートの回答結果を活用し、教師の指導における効果検証にも役立てられています。エビデンスに基づく指導改善サイクルが生まれるため、教師1人ひとりの指導の質向上にもつながっています。
まとめ
データマイニングは、膨大なデータに潜むパターンを表面化した上で企業活動の意思決定を支援する手法です。単なる過去のデータ分析に留まらず、未来の予測や最適な行動提案にもつながる可能性を秘めていることから、多くの企業から注目を集めています。
データマイニングを自社ビジネスで有効活用するためには、ツール導入だけでなく、DWHの構築や高品質なデータに整えるなどの地道な作業が欠かせません。データマイニングを成功へと導く上では、専用ツールに関する知識・技術を持つ人材やデータマイニングに精通するいわゆるDX人材の確保を検討しましょう。
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