Generic selectors
Exact matches only
Search in title
Search in content
Search in posts
Search in pages

年間1,480時間の業務削減に達成、国立大学附属病院から学ぶDX化推進の秘訣とは?

Peaceful Morningでは、RPA導入企業担当者をお招きして、対談形式でRPA導入・運用のノウハウを本音で伺うウェビナーを企画しています。

2021年5月に行われたウェビナーでは、組織内にRPA推進室を設置し、開発者の育成・業務RPA化に成功された信州大学医学部附属病院経営管理課の白木康浩様をゲストにお迎えしました。

本記事では白木様からお話しいただいたRPA導入の際の周囲の巻き込み方や担当者の選定方法など、具体的なノウハウをご紹介します。医療機関×RPAという意外性、医療機関ならではの課題などにも注目です。

インタビュイー紹介

白木康浩氏

信州大学大学病院や大学本部勤務を経て、現在は経営管理課・主査として病棟改修計画の企画・立案・運用フォロー、医療機器整備を主に担当している。2018年度よりUiPathを使い始めたことをきっかけにRPAの面白さを周囲に発信し続けた結果、同大学内に2020年度よりRPA推進室が設置され参画する。

「アリバイ作りの業務を減らす」医療機関にRPAを導入するまでのストーリー

RPAを導入する経緯

藤澤:RPAの導入に至った経緯を教えてください。

白木さん:当院のような国立大学の大学病院では、公務員気質であったり、関係省庁からの指導が多いことが原因でアリバイ作りのような業務が増えてしまっていたり、常々生産的な業務ではないと感じていました。購買業務を担当していた時に思ったのが、購買業務で1番大切なのは人と交流して自分の病院に1番良いものを安く買うことなのに、それに付随していない無駄な作業が多くて、それを解決する術はないかなと考えたのがRPA導入のきっかけです。

藤澤:組織の風土的に問題意識を持たれたのがきっかけということですね。RPA導入に当たって周りからの抵抗はありましたか。

白木さん:病院長や医師の方は研究者としての仕事柄新しいことに対する感度が高く、むしろ「成長することなく同じことを続けている=怠慢」と見なす風潮があったので、意外と上手くフィットしました。特に医師の方は他の病院に足を運ぶ機会があるので、「何故同じ業務をしているのにうちの病院の方が多くの人手を必要としているのだ」と問題視されていたようです。

ツールの選定基準

藤澤:RPAツールとしてUiPathを選択されたのは何故でしょうか。

白木さん:当時選択肢が多くなかったというのが1つですが、UiPathを知ったのは当時仲の良かった会計士・コンサルタントの方の薦めがあったからです。機能面でも価格面でも申し分無かった為、UiPathが日本語化されたタイミングで導入を決めました。

導入までの具体的なプロセス

藤澤:RPA導入が決定されるまでのプロセスについてお伺いしたいです。経営層や現場に対してどういったアプローチを行われましたか。

白木さん:運のいいことに当時の病院長がボトムアップ型の改善を強く求められる方で、業務改善のアイデアをプレゼンして予算獲りを行える環境がありました。経営層に対してはそこで正当なプロセスを踏んで提案しました。直接コミュニケーションをとれる環境だったのが良かったです。現場とのコミュニケーションは、導入の方針が決まるまでは特に行いませんでした。導入後には私自身がハンズオンのセミナー講師として、データを扱う頻度の高い部署の医師や看護師に向けてRPAの紹介を行いました。反応は職種や普段触っているITの種類によってそれぞれだった覚えがあります。

藤澤:RPAツールを購入するリセラーはどのような基準で選定されたのですか。

白木さん:当初は安価なセミナーを開催している等の理由でリセラーを選んだりしていましたが、売り切りなので導入後のサポートを何も受けられなかったのが痛かったです。そこからはサポートや運用フォローを重視しています。特にUiPathはライセンスがかなり複雑化しているのでそこに詳しいことはマストですね。運用フォローに関しては、課題に対してきちんと向き合ってくれる担当者がいることが大切です。

RPA推進室参画をステータスに。導入担当者に求めたのはスキルではなく「考え方」だった

業務RPA化の際に苦労した点

藤澤:日頃の業務をRPAに置き換える際に困った点や難しかった点を教えてください。

白木さん:1番苦労したのは人材育成です。最初、バックオフィスの経理から始めたのですが、置き換えるために今まで紙で行っていた請求をウェブデータに変えるなどの工夫が必要だったので、PCに合わせる形でフローを見直しました。その際に新規増員した開発者たちがシステムに合わせたフロチャートを書けなかったのです。今行っている業務がどういう流れになっているのか体系立てて上手く説明できない状況でした。変数などは出来なくても仕方ないと思っていたのですが、その前段階のフロー図の作成から始めなければいけなかったので苦労しました。

藤澤:その状況に対してどのようにアプローチされましたか

白木さん:まず事務に5つある課の中から1人ずつ選定し、RPA推進室を構成しました。そしてそのメンバーたちにフロー図の作成方法を教えて回ったりしてもらいました。

導入担当者の選定方法

藤澤:推進室の導入担当者はITに関する技能やスキルを見て選定されたのでしょうか。

白木さん:導入当初は8人中4名が.NETやVBAを使うことの出来る人でした。私が集めたというより、その方たちが活動を聞いて興味を持ち名乗り出てくれました。しかし現在はプログラミング等の経験が全くない人の方が多くなりました。実際開発を始めて思うのは、ITのスキルよりも考え方の方が大切ということです。つまらない業務を面倒くさいと感じていたり、自分はこんな仕事をするためにここに入ったんじゃない、といったような潜在的な欲求を抱えている人が向いていると感じます。

藤澤:当たり前の業務を当たり前で済まさない人が向いているのですね。RPAの開発研修を受けた人の中で現在も開発を継続できている人は何割程いらっしゃいますか。

白木さん:実際研修受講者の2割ほどです。そこを嘆いても仕方ないので現在はコアになる人を育成して、RPA推進室に入ることが一種のステータスになるような状況を目指しています。あまり知られていないのですが大学病院の事務職は学会に参加することができます。当院の事務職にはやる気のある人が多く、そういう人たちにとって学会参加は今まで業務のモチベーションになっていたのですが、コロナの影響で難しくなってしまい、モチベーションとなるものが必要です。公務員というのは給料面以外での差別化の難しい職業ですが、RPA推進室参画をステータスにすることで、そこを上手くモチベーションにしていければいいなと思っています。

藤澤:UiPath導入に携わり、個人やチームにいい変化はありましたか。

白木さん:1番いい変化だと思うのは、以前縦割りで行っていて業務改善しにくかった業務を見直せたことです。コロナ禍に入ってから医療用ガウンや手袋の残量を厚生労働省のシステムに報告しているのですが、導入以前は情報を取りまとめるのは経営管理課なのに対して入力するのは何故か総務課が請け負っていたりして、業務が二重になってしまっていました。そこにRPAを導入することによって経営管理課の業務を丸ごと置き替えて、入力の省力化と正確性が実現しました。

G-MISとは厚生労働省が所管している医療資材の保有状況や活用状況を報告するシステム。医療資材の在庫状況を報告する習字報告の業務において自動化を実現した。①SPD事業者より在庫状況の報告を受ける ②経営管理課が報告書に在庫状況を転記・総務課へ転送 ③総務課がG-MISに入力 という3つのフローを自動化し、RPA導入後はSPDからのデータを経営管理課のワンクリックでG-MISに入力されるようになった。

医療業務におけるRPA導入


藤澤:RPAの導入はカルテ操作等の医療業務でも行われているのでしょうか。

白木さん:カルテの操作は厚生労働省との取り決め上出来ないというのが実情です。しかしながらカルテに書き込むことはしなくても、カルテから出るデータを用いて、医事会計システムの保険者番号などに一律の修正があった場合などにRPAを上手く活用しています。

自動化で浮いた時間を有効活用。RPAを導入した医療機関が見据える未来とは

RPA導入後の活動

藤澤:自動化によって浮いた時間をこれからどの様に活用していく予定ですか。

白木さん:2つあります。まずは現在病棟改修に携わっているのですが、業務においてヒアリング等現場の方とのコミュニケーションがとても大切だと実感しているのでそこに時間を割いていきたいと考えています。もう1つは医療従事者のITスキルの向上に貢献していきたいと思っています。特に看護師の方の間で少し要望があったりするので、そこに貢献する形で改善の手伝いをしていきたいです。

藤澤:今後医療機関の中でRPAを推進するに伴うクリアすべき課題としてどういったものが挙げられますか。

白木さん:難しいことは電子カルテの取扱いに尽きると思います。電子カルテは個人情報の宝庫ですし、「真正性」「見読性」「保存性」を確保という電子カルテの3原則があるので1つの病院だけではどうにもできない部分が大きいです。そこに、厚生労働省から一方通行で与えられるようなガイドラインではなく、ユーザー自身がユーザー本位なガイドラインを作っていければいいと思いますね。

導入に不安を抱える企業に向けてメッセージ

藤澤:そうなってくると白木さんのような医療機関でRPAを推進されている方と情報交換を行ったり、タスクフォースのようなものを立ち上げる動きが必要になってくるのでしょうね。最後に、これからRPAを社内に導入しようと考えている、もしくは既に導入したけれど困っている企業の方にメッセージをお願いいたします。

白木さん:私も導入して3,4年しか経っていませんし、RPA導入者はほとんど皆初心者だと思っていて、その中で大切なのが「仲間づくり」だと思っています。1人でできないことは結構ありますので、是非周囲の業務内容に疑問を持っている人だったり、「ずくの無い人」(信州の方言で面倒くさがりな人)を仲間に引き入れていくと段々と組織・1つの勢力になり、導入が進んでいくと思います。私も頑張っていくので一緒に頑張りましょう。

藤澤:本日は貴重なお話をありがとうございました。更なる成長を応援しております。

周囲を巻き込み業務改善を実現

今回インタビューをさせていただいた白木様は、RPA推進室の設置やセミナーの開催等、周囲を巻き込んでRPA導入を進めていく姿が印象的でした。現在RPA導入を考えている企業様には是非今回のお話を参考にしていただきたいです。

RPA内製化に向けた強い味方、Robo Runner

自身でRPA人材を育成し、業務改善を実現していた白木様。同じように社内で内製化を実現したいけれど、上手く進められるか心配な方に、当社の「Robo Runner」というサービスをご紹介します。

「Robo Runner」とはオンライン面談や経験豊富なサポーターといった心強いサポートを月9.5万円から受けることの出来るサービスです。

RPAツールに関して設計・開発・保守等の困りごとを抱えている方は是非ご検討ください。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です