多種多様な業種・業務において一般的なものになりつつあるAI技術の活用ですが、そのなかでも注目を集めているのがGoogleのサービスである「Google Cloud」です。Google CloudにはさまざまなAIサービスが搭載されており、作業の自動化をはじめ業務の効率化につなげることができます。
この記事ではGoogle Cloudに搭載された13種類のAIサービスを中心に、特徴や活用のポイントについて解説します。あらゆる業務を効率的に進めたい方はぜひ参考にしてください。
目次
Google Cloudとは?
Google Cloudとは、Googleが展開するコンピューティングサービスのひとつで、Google社内で使用されているものと同様のテクノロジーやインフラを使い、企業のインフラ環境をクラウド化できます。
例えば、チームメンバーといつでも連絡を取ることができるGmailやGoogle Chat、Google Meetをはじめ、プロジェクトの実現に活用可能なドキュメント、スプレッドシートなどがGoogle Cloudで利用できます。
Google Cloudの特徴・できること
Google Cloudにはさまざまなサービスが展開されており、それぞれで特徴やできることが異なります。ここでは、そのなかでも共通する項目について解説します。
ハイレベルなAIを使用できる
Googleでは多くの方が利活用するGoogle検索エンジンを展開していますが、機械学習モデルのトレーニングにより、Googleが有する膨大なデータをハイレベルに予測・解析することができます。
例えばGoogleがリリースしたAIモデル「Gemini」は、Google検索エンジンに存在する膨大なデータを機械学習が取り込み、トレーニングを行った結果、高精度な解析につなげています。
AIは自由自在にカスタマイズ可能
Google Cloudのひとつである「Vertex AI」の活用により、自社の業務内容などのニーズに合わせてAIモデルをカスタマイズできます。いわゆる「かゆいところに手が届く」状態を確保できるので、これまで行っていた反復作業も効率よく取り組むことができます。
生成AIに関連するサービスが豊富
Google Cloudでは新規プロダクトの展開をはじめ機能アップデートも頻繁に行われることから、常に真新しいAI技術を活用することができます。
例えば2023年5月の「Google I/O 2023」ではAIに関する新たなプロダクトが発表されました。、同年8月には「Generative AI Summit」にてPaLM 2 や Codeyの日本語対応の実装が発表されるなど、サービスそのものの利便性も向上しています。
参考:YouTube|Google I/O ’23 in under 10 minutes
参考:Google for Developers|Google I/O 2023 のまとめ: モバイル、ウェブ、AI、クラウドの最新情報
続々と追加される新サービスも利用可能
Google CloudではAIサービスのほか、コンピュータープログラムが独自にデータや情報を新たに生成する能力を有する生成AIサービスも充実しています。例えばGeminiやImagen、Conversation AIなどが該当し、これらもGoogle Cloudで利用可能です。
生成AIの活用によって膨大なデータから精密な分析・判断が可能になるので、生産性の向上や企業競争力の強化につなげることができます。
Google CloudのAIサービスの主な機能
Google CloudのAIサービスにはさまざまな機能が搭載されていますが、ここでは代表的な機能について解説します。
翻訳
翻訳の精度はAIそのもののスペックや機能によって左右されるものですが、Google Cloudでは高度なAIや機械学習技術を採用しているため、高精度な翻訳が実現します。翻訳機能を備えたサービスとしては「Cloud Translation API」が該当します。
画像認識・検索
Google Cloudの画像認識・検索の精度が高いのも魅力のひとつです。例えば「Cloud Vision API」であれば事前にトレーニングされたAIを活用し、いつでも好きなタイミングで画像を解析できます。
問い合わせの自動対応
社内外の問い合わせ対応もGoogle CloudのAIサービスで自動で対応することができます。例えば「Conversation AI」であれば、あらかじめ自社に届くことの多い問い合わせ内容を設定することで、社内外からの問い合わせ内容をAIが解析・判断し、適切な回答を抽出し自動で対応することができます。
Google CloudのAIサービス13種類の特徴
ここからは、Google Cloudで利用できるAIサービスについて解説します。
サービス |
特徴 |
・高速なデータ分析を実現 ・BigQuery上で加工・前処理済みのデータをそのまま分析可能 |
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・事前学習が済んだモデルを用いてテキストの感情分析やエンティティ分析、コンテンツ分類や構文解析などを実現 |
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・リアルタイムによる音声や音声ファイルでの文字起こしが可能 ・125以上の言語、言語変種に対応 |
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・自然な会話音声を合成できる |
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・テキストデータを他の言語に自動翻訳する ・用語集を活用しカスタマイズした翻訳も可能 ・数100以上の翻訳に対応している |
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・画像に含まれる情報の検出・分類が可能 |
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・動画の内容を自動で判別する |
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・高度なOCR技術により、情報の自動抽出が可能 |
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・AIチャットボットを作成できる |
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・自社保有する膨大なデータについて、Googleの高精度な検索・レコメンデーションの機能を適用できるサービス ・ECサイトに活用すれば、ユーザーニーズに基づいた検索結果の表示やレコメンドが実現する |
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・AI開発に欠かせない機械学習ライブラリ |
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・機械学習APIの活用やモデルの保存・予測のリクエストなど、機械学習に関連するさまざまな作業が可能 ・専門知識を持たない方でも直感的な操作でプロンプトのデザインやチューニングが行える |
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・ユーザーがアップロードした文書・資料に基づき会話ができる ・情報整理や検索の効率化を促進させるAIツール |
13種類の多様なサービスについてさっそく見ていきましょう。
1. BigQuery ML
BigQuery MLは、専門知識がない方でも機械学習を行うことができるサービスです。データベース言語のひとつである「SQL」のみで機械学習ができます。機械学習と聞くと複雑な操作感をイメージしますが、データベースの操作感と類似しているため、普段からデータベースを操作する方であればスムーズに作業が行えます。
また、言語はSQLのみのため、実用化にあたって複雑な研修を何度も行う必要がなく、マニュアルの配布・共有で誰でも使用できるでしょう。なお、利用に際してはGoogleが提供するクラウドデータウェアハウスである「BigQuery」を使用する必要があります。
参考:Google Cloud|BigQuery の AI と ML の概要
2. Cloud Natural Language API
Cloud Natural Language APIは、事前学習を済ませたモデルを用いて、テキストの感情やエンティティ感情の分析のほか、コンテンツの分類や構文解析に対応したサービスです。機械学習に関する知識がない方でもテキスト分析が行えます。
例えばサポートデスクに届いた顧客の声を使用した場合、その内容がポジティブなものまたはネガティブなものなのかを分析できます。その結果をサービス改善に役立てることで、顧客ニーズに沿ったサービス改善・提供が実現し、サービスの停止・解約の防止や顧客満足度の向上につながります。
参考:Google Cloud|Cloud Natural Language
3. Cloud Speech-To-Text API
Cloud Speech-To-Text APIは、機械学習の活用によって音声をテキストに変換するサービスです。音声の認識精度が高いほか、125以上の言語に対応していることから、多様な音声をテキストに変換することができます。
例えば海外映画の字幕を作成する場合、日本語や英語、中国語やロシア語などで撮影された映画であっても、多様な言語に処理しながら字幕を作成することができます。また、多数の外国人が参加した会議の議事録も自動作成が可能です。
参考:Google Cloud|Speech-to-Text AI
4. Cloud Text-To-Speech API
Cloud Text-To-Speech APIは、自然な会話音声を合成できるサービスです。英語やフランス語、ドイツ語のほか、デンマーク語やポーランド語などさまざまな言語に対応しています。Googleの高精度な機械学習を搭載しているので、ナチュラルな発音による音声合成が可能です。
参考:Google Cloud|Text-to-Speech AI
参考:Cloud Text-to-Speech API|Supported voices and languages
5. Cloud Translation API
Cloud Translation APIは、クラウドベースの翻訳サービスで、自作したアプリケーションやサービスに翻訳機能を追加できます。テキストデータは自動で多国語に翻訳できるほか、用語集の活用によって翻訳を自在にカスタマイズすることも可能です。多国語の勉強用としてはもちろん、各国のニュースを翻訳するなど、さまざまなシーンで応用できます。
参考:Google Cloud|Translation AI
6. Cloud Vision API
Cloud Vision APIは、画像データから多くの情報を取得できるサービスです。後述する「Cloud Video Intelligence API」の画像版のようなイメージで、Google独自の機械学習モデルにより高精度な画像認識が行えます。
あらかじめ、検出対象に「動物」などの抽出条件を設定することで、抽出対象が自動でカテゴライズされ、「動物」に関連した適切なラベルが出力されます。
7. Cloud Video Intelligence API
Cloud Video Intelligence APIは、動画データからあらゆる情報を認識・抽出できるサービスです。例えば「人間」が映る動画を設定することで、オブジェクトやどの場所で撮影されているかなどを自動的に認識します。
また複数の動画を広範囲にわたって分析する機能もあり、例えば「犬」と検索すれば犬が含まれる動画だけをリストアップするほか、どのシーンに犬が映っているかも提示されます。ネットワーク上にある膨大なデータから必要な情報を短時間で抽出することができるので、多様なシーンでの活用が可能です。
参考:Google Clousd|Video Intelligence API
8. Document AI
Document AIは、紙媒体やデジタル文書から情報を自動で抽出するサービスです。企業やチームで取り扱う膨大な文書を効率的に管理できるので、手動による作業を削減することができます。サービスはクラウドベースによる提供のため、インターネット環境があればいつでもどこでも使用可能です。
9. Dialogflow
Dialogflowは、手軽にAIチャットボットが作成できるサービスです。Googleの最先端AIが搭載されており、多様な会話に対応したAIチャットボットを生成できます。英語や中国語をはじめとした多言語に対応しているので、社内外の問い合わせ用として使用できます。
参考:Google Cloud|Dialogflow Documentation
10. Discovery AI
Discovery AIは、膨大なデータに対し、検索やレコメンド機能を適用できるサービスです。例えば自社ホームページに活用することで、流入したユーザーの検索意図に沿った結果を表示したり、ニーズに合わせたレコメンドが行えます。
参考:Google Cloud|小売業向けの新たな AI ツールを発表
参考:Google Cloud|Vertex AI Search for Commerce
11. TensorFlow
TensorFlowは、人間の脳の働きに近いデータ処理が利用できるサービスです。計算処理やシミュレーションが可能で、迅速に計算できる特徴があります。どれだけ複雑な計算であっても短時間で答えを導き出すことを得意としています。
12. Vertex AI
Vertex AIは、生成AIモデルの構築をはじめ、トレーニングやパフォーマンスの監視、モデルの予測など、AIモデルを自由かつ包括的に行えるサービスです。活用によってモデル構築にさまざまなツールを組み合わせる必要がないので、AI開発における業務負担を軽減できます。
参考:Google Cloud|Vertex AI Platform
13. NotebookLM
NotebookLMは、アップロードした資料の情報に基づき、読み込んだ情報に大規模言語モデルが対応する形で質問に回答するAIツールです。資料の要点を抽出する能力を有しているので、取り扱う資料が多いときに活用できます。
また、AIが回答した内容にはどの情報をベースにしたのかがわかるよう引用元が表示されます。ユーザーは提示された引用元リンクをクリックするのみで整合性の確認が行えます。コンテンツ作成をAIで行うときなど、多様なシーンで活用できるサービスです。
参考:NotebookLM
参考:NotebookLM ヘルプ|NotebookLM や NotebookLM Plus を使ってみる
Google Cloudを活用する際のポイント
Google Cloudを利活用する上では、下記のポイントを参考にしましょう。
目的・用途を明確にする
Google Cloudには13種類と多様なサービスが展開されています。今後も新たなサービスが実装される予定ですが、まずは自社にとって有効なサービスはどれかを調べることが大切です。流行に乗るようにサービスを試した場合、最終的なゴールがないため、思うような効果を得ることができません。
そのため、サービスを使ってどのようなことを実現させたいのか、目的や用途を明確にする必要があります。
例えば、高度な解析結果を共有チームのメンバーと自由に共有しながらプロジェクトの完遂を目指したいなどです。具体的な目的や用途を明確にすることで、適切なサービスを選んだ上で実用化できるでしょう。
環境を整える
Google Cloudに限らず、企業にAI技術を導入する上では、全社で利活用できるような環境整備も大切です。従業員によってはデジタルについてあまり知らない方や、使い方に順応できない方もいるでしょう。そのような従業員でもツールの利便性を感じてもらうには、適切なフォローアップが欠かせません。
全社でツールの使用を検討する際は、従業員に向けてどのような目的でどういったツールの導入を検討しているかについて事前説明しましょう。事前説明によって目的の共通認識が実現し、ツールの必要性や操作性の理解につなげられるでしょう。
技術者・有識者を育成・確保する
AIをはじめとしたデジタル技術を導入する際は、専門知識を有する外部企業との連携や、従業員の育成・確保が必要であることも念頭に置きましょう。例えば導入後にトラブルが生じた場合、専門知識を有する従業員が迅速に対処しなければなりません。迅速な対処ができなければ、業務の遅延や停止を余儀なくされるためです。
ツールの利活用は、業務の自動化や効率化が主な目的です。円滑な業務体制が維持できるよう、専門知識を有する人材育成や確保は事前に行っておくことをおすすめします。
まとめ
Google Cloudは多種多様なAIサービスの展開により、業務の自動化や効率化につなげられる特徴があります。さまざまな業種・業務に対応できる魅力から、最近では多くの企業での導入も進んでいます。しかしその一方で、自社にとって有効なツールを導入しても、トラブルが起きれば迅速な対応が必要となり、その際には専門知識を有する従業員の存在が欠かせません。
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